経営労働政策委員会報告 2011年版を弾劾する2011・1・21 東京生きさせろ! 連絡会1月例会学習会
東アジア共同体構想を全面化
1月18日に日本経済団体連合会より「経営労働政策委員会報告 2011年版」(以下「報告」と略す)が出されました。今回のスローガンは「労使一体となってグローバル競争に打ち勝つ」というものです。
1章の「新たな成長に向けて」の核心は「(2)環境・エネルギーなどの強みを活かした海外需要の獲得」(16頁〜)で、TPP推進が打ち出され、「(4)日本のものづくりの強化」という項もアジア侵略、東アジア共同体構想が全面化しています。第2章の「成長を支える人材の確保・育成」も「グローバル競争に対応しうる人材の確保・育成」が中心的に展開され、トピックスは「経営の現地化に対応した労務管理の必要性」です。ここでは「長期雇用を前提に、従業員にノウハウや技術を蓄積して競争力を図れる点」が日本企業の強みだと書かれています。ここで昨年の8月3日に出された『労働経済白書』(厚生労働省)における「労働経済の分析」の目玉が「日本型雇用の再評価」であることの意味が明らかになります。「アカハタ」を含め、商業新聞はその記述が「非正規雇用拡大に対する批判」と書いていましたがそうではないのです。95年の「労働問題研究会報告」で言われていた1割の正規職がアジア侵略、東アジア共同体を担う尖兵としての長期雇用労働者なのです。現地の労働者を支配し、搾取する管理者を長期雇用労働者が担うという戦略です。他方、失業者対策として「日本語教師」を育成し、東アジアに送り込むプランも進んでいます。「日本語教師」は滞日外国人を対象とするのみならず、中国やベトナム、インドネシアなどの現地での教師育成でもあるのです。
賃下げ・非正規雇用の拡大を目論む
春闘の最大のテーマである賃金については連合が所定内賃金の1%を要求していることに対して、2009年、2010年のベースアップは所定内賃金比では0・03%であったのだから「1%の処遇改善要求であるならば、極めて厳しい要求と言わざるを得ない」(69頁)とはねつけています。「正規労働者の賃金カーブの見直しの動き」と題する囲みの「トピックス」(62〜64頁)は正規雇用労働者の賃下げ攻撃を目論む内容です。これまでの賃金カーブ、いわゆる正規雇用労働者の生涯賃金は①右肩上がりの一律上昇型、②上昇率逓減型(一定上昇した後わずかな右肩上がりで進む)、③上昇後フラット型(一定まで上昇した後賃金は上がらないで推移する)が多くを占めてきたが、これからは「上昇後減少型」が増えるというのです。これは賃下げ宣言に他なりません。
「非正規雇用労働者の処遇改善には総合的視点が重要」(70頁)であるとして「すべての労働者の総額人件費の問題として考える視点が大前提となるため、非正規労働者の賃上げだけを取り上げて議論することはできない」(同70頁)と述べています。非正規雇用労働者は「企業組織を支える重要な人材」であるから、非正規雇用のままでモチベーションを高めて使う必要があり、したがって「従業員間あるいは雇用形態間の処遇の納得性を高めるため」に総合的に判断していく必要があるとして、「必要に応じ、正規労働者の賃金決定方法、賃金カーブを含めた検討が求められる」(71頁)というのです。ここで述べられていることは、非正規雇用労働者の納得性を高めるために正規労働者の賃下げを行って総額人件費を引き上げることなく正規労働者と非正規労働者をうまく使っていくべきだということを言っているのです。
ここで登場して来る論理が昨年の「報告」にも書かれていた「同一価値労働同一賃金」論です。今回は昨年にも増して正規雇用労働者と非正規雇用労働者の分断を図り、正規雇用労働者の賃金引き下げの論理に使われています。「個々人が生み出す付加価値を適宜処遇に反映する必要性が高まっている。仮に処遇の一部に強い年功色が残ったままであれば、有期労働契約の従業員を含め、意欲と能力のある従業員のモチベーションの維持、向上を阻害しかねない」(59頁)と主張しています。さらに仕事内容が異なる労働者間の処遇の均衡に努めるために「正規労働者の人事・賃金制度を年齢・勤続軸から仕事・役割・貢献度を基軸とするものへ見直しをはかることが一つのポイントになる」(同)と書いています。ここで言わんとしていることは、例えば非正規雇用の労働者と正規雇用の労働者を「同一価値労働同一賃金」論で比較して、両者が「仕事・役割・貢献度」で同じかまたは非正規雇用労働者の方が上なのに、賃金が非正規雇用労働者が低い場合は、モチベーションが下がり、労働者の間に不協和音が生じる。だから正規労働者の賃金を年功・勤続年数で決めるような賃金体系を改めて、能力給や業績給に転換すべきだということです。JR東日本が新たに提案してきた「新賃金制度」はこの「報告」の先取りです。
非正規雇用労働者の問題については「多様性に富む労働市場の確保」という項目で、非正規雇用労働の拡大を画策しています。「正規労働のみを理想型とし、これに収斂させることは適切ではなく、多様な働き方を可能とする労働市場を維持していくことは雇用のミスマッチを解消し、新たな雇用を生み出していく上で欠かせない」(52頁)とか「有期労働契約における雇い止めに関する判例法理(解雇権濫用法理の類推適用)などの一層の周知は不可欠であるが…契約締結事由の規制、更新回数や利用可能期間の規制などは自発的に働く有期契約労働者の雇用機会の減少につながるおそれがある」(54頁)という下りがそれです。「非正規的な就労を自発的に選択している労働者も多い」「…満足している有期契約労働者も少なくない」(同)というのはどういう統計やアンケートを根拠にしているのでしょうか。いつ首になるかも知れない、2カ月や3か月、あるいは半年、1年の有期労働契約という不安定な雇用形態を自ら好んで選択している労働者はほとんどいません。やむなくそういう雇用形態を強いられているだけです。
「雇用への影響が懸念される最低賃金引き上げ問題」(13〜15頁)は使用者側委員が最低賃金の引上げに反対したのに昨年は全国加重平均で17円上がったのが問題であるとしています。「全国最低800円、全国平均1000円」の数値目標を決めたのは不当だと述べているのです。2010年度の全国加重平均は730円です。これを800円にするなどとんでもないというのが「報告」です。しかし、これは平均であって600円台の最低賃金の県がまだあり、その最低賃金さえ守られていないのですから「報告」の主張は許し難いものです。
日本共産党・全労連が主張している「内部留保の取り崩しによる賃上げ論」については「老朽化する設備を更新し、M&Aも含めた国内外の投資などを一層積極化することが必要」(73頁)とバッサリと切り捨てています。
「労働分配率は賃金決定の基準とならない」(74〜76頁)というトピックスもブルジョアジーの側の利害を鮮明にした独善的主張でしかありません。労働分配率というのは労働者が新たに生み出した剰余労働を資本が取得するのか、労働者の賃金部分にどのくらい回るのかという問題です。『資本論』でいう剰余価値率が何百%かという問題になります。「出どころはひとつ」ですから労働者に支払われる賃金分を低く抑え、資本の取り分を大きくしているということが問題になっているということです。「労働側はマクロの観点から、労働者への利益配分が低く抑えられている点を問題視している」(75頁)という一節はそういうことです。しかし「報告」は個別企業(ミクロ)の労働分配率を考えた場合、それが高すぎると「債務超過や倒産を招きかねない」(75頁)として「重要なことは企業の持続的な発展」(76頁)だから、労働分配率が低く、賃金が低いのは企業のためには当然のことなのだと言い張っているのです。「役員報酬の水準の高さが、配分のゆがみの一因」(同)という批判に対しては、両者が連動して増減しているのだから「全体でみれば正しいとは言えない」と言っています。しかし問題は最初から存在しているその差です。二億円の役員報酬が一億五千万に下がるということと、五百万の賃金が三百万に下がるということを同義で語ること自体が間違いなのです。
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