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お医者様ごっこ
向こう三軒両隣の
ミーちゃんハーちゃんが
お母さんに手をひかれて
保育園に行くのを見送りながら
長屋ずまいの私が
保育園に行けないのは
家が貧乏だからだと
子供心にも分かっていた
でも私は寂しくなんかなかった
何故かは知らないが
向かいの一軒家のミヨちゃんも
保育園に行かなかったから
私は寂しくなんかなかった
ミヨちゃんと私は早速
筵代りに古新聞を敷いて
草の葉っぱの食器に
草の実の料理に
あかまんまの赤飯で
ままごと遊びをして遊んだ
ままごと遊びに飽きると
お医者さまごっこをした
袋小路の路地裏の
小さな空き地が二人だけの
秘密の遊び場だった
新聞紙の端をちぎると
ミヨちゃんはそれを小さく丸めて
自分でパンツを脱いで
割れ目にそれを挟むと
しゃがんでジャーとおしっこをした
新聞紙がおしっこと一緒に
弾かれて転がるのを見ながら
同い年の二人は幸福だった
秘密のお医者さまごっこを
止めることができたのは
ミヨちゃん一家が
ミヨちゃんのお父さんの転勤で
遠くへ引っ越して行ったからだ
1947年4月、めでたく
ミーちゃんハーちゃんと一緒に
私は小学校の一年生になった
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