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詩による自分史 9

  告白しますので、お許しください

貧乏という言葉が
まだ死語でなかった
昭和20年代
私は小学生だった

そのころの下町の
庭のある家の多くには
イチジク、ザクロなどの
実のなる木が植えられていた

男の子の遊びといえば
パッチ、ビー玉、ベイゴマが
流行の遊びだった
その遊び仲間に隣近所の
春ちゃん、正ちゃんがいた

三人はクラスは別々であったが
放課後はいつも一緒で、時には
よその家のイチジク、ザクロの実など
無断で失敬する悪さもした

運悪く家の人に見つかって
「こら、泥棒するのは
どこの家のガキだ」
と怒鳴られて逃げるのがこれまた
スリルがあってたまらなかった

あるとき、今となっては
どういういきさつで
あんなことをしてしまったのか
忘れてしまったが
万引きをしてしまったのだ

学校の通り道に
普通の住宅の一階に
文房具屋ができた
その店のおばさんの目を盗んで
三人で万引きをしてしまったのだ

春ちゃんは鉛筆一本
正ちゃんは鉛筆削り
私は消しゴム一個を
万引きしてしまったのだ

貧乏で買えなかったからではない
イチジク、、ザクロの実を失敬すると
同じ感覚で、万引きしてしまったのだ
やってしまってから怖くなって三人で
万引きした品物をどぶに捨てた

そのことがきっかけとなって
何となくお互いに気まずくなり
小学校を卒業するころには
仲良し三人組は
自然解消してしまった

それから20年ほどが経過した頃
春ちゃんは県庁の役人になり
正ちゃんは銀行員になって
結婚したということを私は
風の便りで知った

私はと言えば
そのことを胸にしまい込んだまま
売れない詩を書きながら
職を求め歩いていた

そして、そのことを知らないまま
平成になって、父も母も他界してしまった
せめて両親にだけはそのことを話して
謝るべきだったと自責の念に駆られながら
67歳の今を私は生きている

閉じる コメント(6)

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一気に読んでしまい、涙があふれました。
お互いに、過去はつらいね。

2008/12/5(金) 午前 10:31 [ トム ]

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トムさん
過去は私の財産です。
そう思って生きて生きたいと思っています。

2008/12/5(金) 午後 1:51 [ 豊さんさん ]

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父母に知らせないことっていっぱいあります。特に思春期以降は、知らないほうが幸せということも、自責の念を持つのは純粋だからかな、知らされる父母の身になってみれば万引きを悪いことだと子供が自覚してくれたことはうれしいでしょうね。

2008/12/7(日) 午後 10:22 bi*yo1

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bin✵yo1さん
その当時、「嘘は泥棒の始まり」という言葉が我が家の家訓の一つでした。正直に生きるということは難しいですが、正直に生きたいと思ってます。

2008/12/8(月) 午前 5:16 [ 豊さんさん ]

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戦争の話を親から聞いて育ちました。謝ることのできる相手は今は母一人です。馬鹿をやっていた頃の自分と同じくらいの息子がおり、先の見えない生活をしています。
豊さんの静かな言葉、胸にしみました。ありがとうございます。

2008/12/14(日) 午後 6:06 [ かみ かずしげ ]

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かみ かずしげさん
子供は親の背中を見て育ちます。
大正生まれの父は、子供の頃の私にとって、地震雷火事親父の親父でした。怖くて話せませんでした。母に話したら父に知れるので、母にも黙っていました。
私の父は、老いては子に従うこともなく、享年93歳で老衰で天寿を全うして亡くなりました。母は82歳で認知症になって84歳で病死しました。

2008/12/14(日) 午後 6:40 [ 豊さんさん ]

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