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私はいじめられっ子だった
「この問題の
答えがわかる人は
手を挙げてください」
黒板を指差し
先生は言った
私は答えを知っていても
引っ込み思案で
6年間、一度も自分から
手を挙げることが出来なかった
内気な生徒だった
「4月からは
皆さんは中学生です
これが小学校時代の
最後の試験です」
その当時は
それが当たり前であったが
ガリ版刷りの問題用紙を
先生は、50数人の生徒一人一人の
机に配って歩いた
試験が終わって数日後
晴れた日であった
私は教務室に呼ばれた
先生の顔はやさしかった
「試験問題の答えが
間違っていところまで
S君にそっくりなのは
どいうことですか」
「君が盗み見したと
S君は言っていますが本当ですか」
「僕は盗み見なんかしていません」
「S君が盗み見したのですね」
「わかりません」
S君と私の机は並んでいた
S君は私より成績がよく
それでいて番長的な存在であったが
私がS君に従おうとしないので
何かにつけて私をS君はいじめた
例えば、授業中に
先生にわからないように
私の鉛筆を取り上げたり
私のノートに悪戯書きをしたりして
S君は私をいじめた
私はそのことを一度も
両親に言ったこともなく
また先生に話すことなどできない
内気な生徒だった
「盗み見したのは自分でない」
盗み見したのはこの私だと
S君はクラス中に言いふらした
S君の言葉を信じたのか
それを否定するものは誰もいなかった
しかし、私は信じている
先生は盗み見したのはS君だと
知っていて私を教務室に呼んだのだと
何故なら、最後の試験は70点で
私にふさわしい出来だったからだ
そして私は
昭和28年3月
いじめられっ子のまま
小学校を卒業した
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