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これが「島田屋」のことを書く最後の記事になる。
前回の記事は22日に訪問をして食べたチキンヤーンについてだったが、その後に4回も訪問することができた。
今朝の記事では、そのことをまとめて書きたいと思う。
いささかしつこくなるが、ご容赦をいただきたい。
では早速に。
23日の朝食。
この朝のメニューはこの通りだった。
チキンヤーンが掲示をされていないと言うことは、未だ焼けていなかったのだろうな。
好かった、この日を最後にするつもりだったら、食べ損ねたことになる。
もっとも本当に食べ損ねたら、食べられるまで来るだけのことだけれども。
この朝は、思い出のメンチカツをいただくことにした。
自分にとっては3回目の訪問となった2014年6月、メンチカツにうっかりとかぶりついて、そのあまりの熱さに驚いてしまい、湧き出した肉汁でズボンの前を汚してしまったと言う強烈な記憶。
その後、何度か食べたが同じ間違いは経験をしていない、当たり前だな。
この朝のマカロニサラダ。
何となくと言う印象に過ぎないが、胡瓜が多めだったかな。
好い、ぶれるならば多い方には大歓迎だ。
少なくぶれられるとモヤモヤとしてしまうからね。
たまにはマヨが多めにぶれても嬉しかったかも知れないが、そう言う経験は記憶にないな。
「島田屋」のメンチカツは衣がカリカリに揚げてある。
そうしないと料理の最中に肉汁が閉じこもらないのだろうな。
このカリカリに箸をぶすりと刺すと、あたかも肉汁の泉のごとく湧いてくるのだ。
それを期待して、自分はスマートフォンのカメラを動画撮影モードにして構える。
間もなく60歳になろうと言う爺が、朝から何と馬鹿なことをしているのかと言う様だが。
ところが残念なことに泉は湧かなかった。
肉の質を好くしてしまったのかな。
何度か書いたことと思うが、肉汁がジュワジュワと言うことは使う肉が脂だらけと言うことだ。
それは本来は好い部分を使っていないと言うことだろう。
だが「島田屋」のメンチカツに限っては、それで好いと思っている。
潔いよね。
ところが、この朝は肉汁が湧かなかった、そのことは残念ではあるが、むしろ好い方向に考えたい。
ならばソースをかけていただきましょう。
オン・ザ・ライスにしてみたからと言って、それが一層に旨そうに見えたわけではない理由は、断面が薄くなってしまったからだろうね。
以前のメンチカツは肉汁たっぷりでパンパンに膨らんでいた。
だから断面にもそれなりに厚みがあったのだが、肉汁が出てしまえば、その分だけ中がスカスカになってしまっていた。
この朝は肉汁が少なかった分だけ、中が詰まって見える。
それはそれで好かったのじゃないかな。
その翌々日は25日、自分は2度目の単独一献をしに店に入った。
時間は17時を15分ほど回ったところ、先客はなしだった。
実は自分が呑み始めた頃にはポツリ、ポツリと客が入り始めて、帰る時にはカウンターがほぼ満席になってしまった。
中には若いお嬢さんがお独りで入ってスタミナ炒め定食を頼むなどと言うシーンもあり、やはり閉店を惜しんで客が入るのだと見えたね。
この夕方も瓶ビールで始める。
この時のラジオ放送は野球ではなかった。
それでもテレビではなくAMラジオ放送を聞きながらの酒と言うものは好いね。
それも夕暮れ時が好い。
仕事が終わって、帰る前の一杯と言う雰囲気を愉しむことができる。
最近の自分は、すっかり独酌好きになってしまったので、こうした愉しみ方ができるようになった。
老けたのだろうね。
並べて比べる必要はないが、日頃の胡瓜の量はこんなものだ。
まさかに2日前の朝は、マダムが気を利かせて胡瓜を増やしてくれたなどとは思わないが。
頼んで増やせるものなら、胡瓜ではなく「追いマヨ」を、一度くらいは言ってみても好かったかも知れない。
とりにく唐揚げ。
食べたことがないなどと言ったが、ご指摘を受けて過去を調べてみると2014年7月に食べていた。
なぜ自分がその時限りにしてしまったのか、どうしても思い出せない。
その時は絶賛したのにね。
それだけ他のものも旨いことがわかってしまったと言うことなのだろう。
唐揚は6個来た。
これは初回から変わっていない。
あの時からとり肉唐揚げ定食は700円で6個、値段も量もぶれなかったのだ。
大したものだと思う。
このジュワジュワの断面も変わっていない。
そのことを最後にもう一度確かめることができて、好かったね。
酒をハイボールに替える。
注文の際に「シングルですか? ダブルですか?」と聞かれたが、前回も聞かれたかな。
もちろんシングルでもらう。
ダブルなんぞ始めたら、腰が上がらなくなるからね。
前回にいただいた玉子焼きが旨かったから、もう一度 食べたかったのだが、今度は「ケチャップを添えてください」とお願いをした。
端に盛るか、真ん中に乗せるかと言ってくれたから「真ん中に、こんな具合で」とお願いをしたのが上の写真。
明らかに自分のイメージと違うし、ケチャップがずれて皿の端まで行ってしまっている。
手元が相当にぶれたらしいね。
細かいことだ、気にしても仕方がない。
前回と同様にトロトロに仕上がっている。
こうなると玉子焼きと呼ぶよりは、プレーンオムレツと呼ばせてもらう方が正しいように思えるね。
上手にに焼いたものだな。
実はこの時、メニューに面白いものが出ていた。
自分は、もし翌朝も来ることができたら、それをもらおうと決めて帰ることになった。
そして思惑通りに翌朝、再び「島田屋」を訪ねる。
あよそ12時間後 26日の朝、その面白いものとは、メニューの一番下に掲げられた煮魚(金目)定食。
なんと、1,500円。
前日にこれを見て、「出ないな。明日の朝まであるだろう。」と見極めたわけだ。
これまでにこちらで拝見をしたものの中で、1番目、あるいは2番目に高いのじゃないかな。
鰻重が2,000円だったかもしれないが。
これが全容。
スタイルはいつもと変わらないが、値段はマカロニサラダと合わせて1,800円越えだから酔狂にもほどがあるのだが…。
この朝のマカロニサラダ。
おっ、ちょっと華やかだね。
好い方向にぶれたらしい。
あははは、嬉しいね。
自分は切り身が出ると思っていたのだが、まさかに姿煮だとは。
ならばメニューに「姿煮」とか、「一本煮付け」とか書いても好かったのじゃないかな。
そうすれば、この朝までは残らなかったように思う。
身はたっぷりとある。
旨い。
伊豆辺りで好く見る、甘くこっくりと炊いたものとは違うが、肉の甘味が好くわかる煮付けだ。
「島田屋」ではたまに煮付けをいただいたが、大概は旨かったね。
値段も1,000円くらいはしたから、頻度は多くなかったが。
朝っぱらから手間のかかるものを丁寧にいただいたから、時間がかかってしまった。
そう言えば、こちらではたまに「あら煮定食」が出たね。
あれも旨かったのだが、やはり食べるのには時間がかかる。
朝は早くから川崎に着いているから、気にせずにゆっくりとやることができたけれどもね。
そして29日の早朝、自分は最後の「島田屋」訪問を果たすことになった。
本来は前日の朝に来るはずだったのだが、急な用事のために来ることができなくなってしまった。
それで最後の訪問をこの日にした。
最後の訪問は、定年したらやることにしていた「朝から島田屋のカウンターで呑む」をついに遂げる。
自分の入店は6時05分。
先客はよく見かけた方、この方はいつも呑んでいる。
それを見て自分も熱烈に呑ってみたかったのだ。
チキンヤーンは未だ焼けていなかった。
やはり名残のチキンヤーンを22日に食べておいて好かった。
チキンヤーンがないとすると、では黒豚とんかつは?、それもない。
どうも仕方がないね。
では豚肉生姜焼きにするかな。
この朝も瓶ビール。
もちろんジョッキもあるのだが、AMラジオ放送に耳を傾けながらと言うのがジョッキ生ビールには似合わないような気がしてね。
この後に用事があるから1本で済むのか、流れ落ちる涙を拭いつつ「もう1本」となるのか、それは進めてみてのことだ。
肴はマカロニサラダ、そして生姜焼き。
自分が好きなものを並べてちびりと呑る。
実は前夜の酒が少し残っているから、迎え酒気味ではあるのだが。
このマカロニサラダを何度食べただろうね。
「島田屋」の書庫には135回の訪問記事が入っている。
マカロニサラダを食べなかったことは数回はあったから、ざっと見て130回は食べたと言うことだろう。
ついに最後までぶれなかった。
さすがは創業45年の店だ、自分が訪ねたのはわずかに最後の5年だから、本当に最後の方だったのだ。
厨房にいらしたマダムが、ビールの肴を添えてくれた。
ほうれん草の胡麻汚し。
旨いね。
この後、早朝にも関わらず客がどっと入って厨房は大忙しになったから、自分はマダムのお顔を拝見せずに店を出るのだが、永く好くしていただいたお礼くらいは言いたかったな。
最後だ、ちょいと我儘を言わせてもらって、生姜焼きにマヨを添えてもらう。
マヨも、先ほどのケチャップもそうなのだが、お願いをすると厨房に置いてあるわけではなく、カウンターの下の冷蔵庫から出てくる。
要するに皿を出してからリクエストを受けてその場で対応をするケースが多かったようなのだ。
そうと知っていれば、もっと甘えることができたのに。
惜しいことをしたね。
せっかくのマヨを生姜焼きにたっぷりと乗せて。
うん、チープな旨さ、これこそ大衆食堂の味。
ああ、好いなぁ、もっと早く呑るべきだったよ。
この後は焼きタレもマヨもキャベツも一緒にして、パクパクとやらかし、ビールは1本でやめておいた。
と言うわけで、自分の「島田屋」訪問はこれで終わりだ。
訪問期間は2014年3月10日から2019年4月29日までのおよそ5年間、訪問回数は恐らく135回、約2週間に一度だったらしい。
もっと訪ねたと思ったが…。
今朝もこのように灯るだろう黄色の看板。
だが、今夜遅くにその灯は消え、そして2度と灯ることはないのだろう。
自分にはとても好くしてくれたマダムと、店のスタッフの今後のご健勝を祈りつつ、この記事を終わらせていただく。
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島田屋
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間もなく「平成」という時代が終わろうとしている。
振り返ると、とにかく思い出されるのは「災害が多かった」、このことだ。 報道のされ方も変わってきているとは思うが、地震、洪水、火山の噴火など、昭和の時代に比べて随分と多い、そう感じている。 それが年号と関係しているとはもちろん思わないが、間もなく終わる平成に対して正直なところは若干の安堵を伴う。 どうか新しい「令和」と言う時代が平穏であることを願うばかりだ。 平成の時代は4月30日をもって終わることになるが、同じ日、自分が愛する店がこの日に灯を消すことになったとの報せは、突然に入ってきた。 川崎駅東口 リバークビル内1階に6時から開けている「島田屋」、この4月末をもって店を閉めることになったと店頭に貼り紙が出たらしい。 自分にとっては「あり得ないこと」と思えるその報せを受けて、居ても立ってもいられずに確かめに行ったことは言うまでも無い。 今週 水曜日の早朝6時を過ぎた頃だ、リバークビルの1階ロビーフロアに現れた自分から見た「島田屋」、その店頭の様子。 いつでもこの黄色いサインを遠目に見ながら、自分は店へと近づく。 サインの右手にメニューボードが見えると思う。 そこにチキンヤーンの掲示を見たり、お雑煮定食を見たりしながら入店をするわけだ。 先客は2名、若い男性の2人連れだが、4人テーブルの方に座っている。 自分はカウンター席の左端に座る、そこはお気に入りの席だ。 カウンター席から見る店内の様子。 ある場所ではこの店のことを「ステンドグラス軽食 島田屋」と掲示してあるのだが、それはこの照明のことを指すのだろうな。 いささか無理があるような気もするが、今となってはどうでも好いことだ。 閉店については店頭にも掲示があったのだが、これは店内で写したもの。 閉店の理由については特に書いていない。 人手不足でも無いだろうし、材料の高騰も違うと思う、テナント料の値上げであるとすれば、そのことは知りようも無い。 とにかく、なんらかの理由で店を続けていくことにバランスが取れなくなったのだと思うしかない。 当日のメニュー。 チキンヤーンはまだ焼けていなかった。 何を食べようかな、宿題はとり肉唐揚げなのだが。 ま、この日が最後にするつもりでは無い、好きなメニューから生姜焼きを選ばせてもらおう。 マダムが茶を持ってきてくれた。 閉店することについて彼女は何も言わないし、自分も何も聞かない。 これが最後ではない、いつものように静かに注文をして、それがいつものように通る。 いけない、飯を軽くしてくれとお願いすることを忘れてしまった。 平静を装うつもりでも、心のざわめきについては隠しようもないらしい。 豚肉生姜焼き定食が来た。 いつものことだがマカロニサラダは自分が好きで添えている。 この朝には草も乗ったが、自分は例によってそれを大事に思わない。 左手に器を持ち、もしゃもしゃといただいてしまう。 おや、ちょっと旨いね。 ドレッシングが決まっているのかな。 奴豆腐は初めて掲載するのかな。 寸法は日によって違うのか、メインの食事によって違うのか、とにかく決まっていないように見える。 どうもいつもより豆腐に乗っている鰹節なり葱なりが多いようだな。 この上からさっと醤油をかけて、自分は先にいただいてしまう。 豆腐は木綿漉しだね。 その方がありがたい。
大概 豆腐をやっつけたら、次は味噌汁なのだ。 追加を払って、豚汁に替えてもらうこともできるらしい。 自分はついにそれをやらなかった。 豚汁をいただいたのは2014年の3月、初訪問の時、豚汁定食としていただいた。 もう一度 食べてみたいようにも思うが、さて、どうするかな。 大概は味噌汁を3分の1ほどやってから、マカロニサラダへ手を出す。 初訪問の時以来、このマカロニサラダはほとんど変化をすることがなかった。 途中、マカロニの種類が変わり、器が白の柄ものから黒に替わったが、味はついにぶれなかった。 大したものだよね。 5年間、全くぶれたことがない。 自分に言わせれば、これこそが豚肉の生姜焼きだと思う。 肉を食べるということに関しては後進国だろう日本人が考えた豚肉料理、薄く脂身も多いチープそうなそれを如何に旨く食べさせるか。 自分ならばタレは醤油、酒、わずかな砂糖、擦り下ろした生姜、ここに豚肉と薄切りの玉ねぎを漬け込み、味を染みわたらせるために手で揉んで置く。 わずかにサラダオイルを敷いたパンにじゅわわ〜と開け、肉の柔らかさを損なわない程度に軽く焼いて、千切りのキャベツとともに皿に盛り、最後にキャベツの横にマヨをたっぷりと。 そうか、マヨを添えてくださいとお願いすることも忘れてしまった。
「島田屋」の生姜焼きの話をしているのに、自分のレシピなど紹介をしてみても仕方がない。 だがどんな料理をやる時にも頭の中ではイメージが浮かんでいる、生姜焼きならばそのイメージは「島田屋」なものなのだ。 この旨そうな姿もこれが見納めになるのか。 本当に残念だね。 大好きな生姜焼きを飯に乗せていただくのは、これが最後になっただろうと思う。 次に来る時はチキンヤーンを狙うはずだからね。 もしとり肉の味噌焼きがあったら、そちらにするかも知れない。 そうすると、チキンヤーンのためにもう一度来なければならなくなるな。 と言うわけで、「島田屋」閉店の知らせを聞いて、たまらず訪ねたわけだが。
自分がブログで書庫まで拵えた店はたったの2軒、そのひとつが「島田屋」だ。
本当に残念なことと思う。
残すところ10日あまり、2度くらい行かれるかな。
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先週 木曜日のことだ。
この日は終日の川崎勤務。 家を出る前から朝食のことを考えてニヤニヤしている自分だった。 仕事の方は上手く行っている、個人的にも悩みなどない、ほとんどのことが順調であることを脳天気に喜んでいる悩みと言えば、それはこの朝の食事をどうしようかと言うことくらいだ。 戸塚駅前の「松屋」、「松乃家」のホームページを見るまでもなく、川崎で食べると決めた。 前日が「日高屋」だったから、選択は「島田屋」だ。 何があるかなぁと想像を巡らせてみることも愉しいし、今朝こそはとり肉のから揚げにしてみるかと悩むのも嬉しいね。 それとも久し振りに塩鯖があれば食べてみようかなどとも思う。 まあ、とにかくホワイトボードを見てからだな。 この朝のホワイトボードにはチキンヤーンがなかった。 構わぬ、前週に肴として堪能をさせてもらったからね。 塩鯖はあるな、とり肉から揚げもある。 だが待てよ、見ている内にあれが食べたくなってきたぞ。 ふうむ、困ったな、そんなつもりで来たのではないのに…。 そう、それは黒豚とんかつ定食だ。 そうでなくとも安くはない「島田屋」の定食の中で、肉類ではもっとも高価な黒豚とんかつ定食は1,000円。 自分はそれにマカロニサラダを追加するから1,200円。 こんな酔狂な客は他にいないだろうな。 黒豚とそうでない豚を見分けられるほどには味覚の繊細さも、経験も持ち合わせてはいない自分は、出されたとんかつを「旨そうな」と思って見るだけだ。 「島田屋」で出すとんかつは衣がクリスプに揚げてある。 自分はこの食感が好きだ。 薄めの衣をサックリと揚げてある。 これに卓上のソースをかけ回すと、具合よく柔らかくなってくる、それが気に入っている。 いつものようにマカロニサラダ。 自分にとっての安定剤のようなものかな。 このマカロニサラダに惚れ込んで、早くも5年かな。 よく続くよなとは自分でも思う。 この日は山芋なんぞも添えられていた。 醤油をたらりとして、かっかっとかき混ぜ、ぞぞぞっといただく。 他にもひとりいた客は離れたところに座っている。 構わないだろう、気持ちよく音を立てていただくことにしよう。 かつは決して厚いわけではない。 ほど好き厚さだろうね。 ラードの部分は決して多くはない。 自分の好みから言えば、端の方に1cmくらいは脂身があっても好いのだが、世の中の健康ブームからすれば決して喜ばれないのかもしれないね。 と言うわけで、朝っぱらから黒豚とんかつをやらかして、満足をさせてもらった。 こちらには豚ガーリックソテーというメニューがあって、これもガッツリと豚肉を食べさせてくれる。 久し振りに食べたくなってきたな。 ふふふ、次回の訪問でやらかしてしまうかもしれないね。 |
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自分が特に朝食で馴染んでいる 川崎駅東口リバークビル1階の島田屋、当ブログでは何度も登場している店だ。
自分にとっての「島田屋」は朝食を愉しむ店であることは、これまでに書いて来た通りなのだが。 随分と前から心の中に燻っていた「いつかは、ここで呑んでみたい」と言う思いは、最近になっていよいよ抜き差しならぬほどになりつつある。 ただし、それは朝にやってみたいことであって、会社を退けてからのことではない。 自分が店を訪ねる時、大概 ひとりふたりは呑んでいるのだ。 俺ももう少ししたら、そっちへ行きますと熱い視線を注ぐ日々ではあるが、まあ数年は難しそうだな、そう思っている。 その日、と言うのは先々週の金曜日、すなわち平間駅近くの「天府」にてよだれ鶏をランチにやらかした日だが、川崎での業務を終えた自分は事務所を出てバス車中に揺られていた。 窓の外に西の空を見て、ほどなく赤く染まるだろうその行方をイメージしている内に、頭の芯の辺りで静かにしていたものが、あたかも胸騒ぎでも覚えたかのようにざわざわとし始めたことに気づき始めてはいた。 ふむ、そうか、今夜は帰るつもりだったのだが…。 実はこのところ、平日の晩は出来るだけ会社を早く出て、真っ直ぐに帰宅をしている。 別段に誰が待っているわけでもない、いや待っていると言えば彼女が、そう帰宅して楽器に触れるようにしていたのだ。 目先を含めて、来年の4月くらいまでに弾かなければならない曲がいくつか来ている。 それらについて練習を積まなければならないわけだが、すでに見通しが立っているものもあるが、そうでないものもある。 時間を逆算してみて、今の時期での研鑽は避けられない。 それで酒も呑まずに帰るようにしていたのだ。 だが車中から見た、暮れ行く西の空を見ている内に「たまには好いだろう」と言う気持ちが湧いて来た。 そう、それはこの数日にすっかり忘れていた感覚だ。 野毛かな、戸塚かな、そう思いつつある中、ふとイメージが浮かんだのは例の「島田屋」だ。 そうだ、あそこで独りで呑みたいなと思っていたのだった。 よし、ちょうど好い、正に今だな、行くことにしよう。 自分が「島田屋」で朝に座るカンター席に腰を下ろしたのは、まだ17時半にはなっていないと言うタイミングだった。 先客はいない。 朝と同様にラジオが流れる店内、実に静かなものだ。 カウンターの内側には、いつものマダムとは違う女性がいらっしゃる。 時間がまるで違うからね、シフトが違うのは当然だろう。 「瓶ビールをね」、そうお願いして店内を眺め回す。 朝とは何も変わらない、いつもの「島田屋」だ。 ビールをコップに注ぎ、ほおっとひと息吐く。 グラスを掴み、こくりと呑む。
こくり、こくり、こくり…。
ふう、当たり前だが、旨いね。
客がいない「島田屋」には、ゆったりとした時間が流れているらしい。 この雰囲気、自分に合うな。 夜の「島田屋」にはもっと馴染んでも好いのかもしれない。 来るたびに注文をするマカロニサラダ。 朝の姿と何も変わらない。 相変わらずにねっとりと美味そうだな。 夜に「島田屋」に来たことは何度もあるが、独りで来るのは初めてだ。 酒をともにマカロニサラダを独り占めか。 贅沢だなとは思うが、200円のお手軽価格だからね。 朝食に付けると安いとは思わないが、こうして肴として注文をするなら破格と感じる。 そしてチキンヤーン。 そう、これをやってみたかったのだ。 幾度となく食べているチキンヤーン、これを独り占めにして肴としてやる。 ふふふ、ついに遂げたぞ。 朝食の時だって食べる時はゆっくりなのだが、この宵のように慌てて食べる必要がなければ、断面もゆっくりと観察できると言うもの。 ふふふ、知ってはいたが肉汁の滲む姿は魅力的だね。 じっくりと眺めた後に、大口開けてガブリとやらせてもらう。 旨い、いつもの朝以上に旨いように感じるのは、時間的なゆとりがあるからこそだろうな。 自分は日頃から早く食べることが得意ではないが、独りで呑むとなると一層に遅くなるようだ。 思わず「あぁ、美味しいなぁ」と独り言が漏れてしまう。 ビールもお代わりをして…。 こんな独酌ならジョッキで呑るよりも、瓶の方が好きだな。 いかにもゆったりと呑んでいるという気がする。 マカロニサラダとチキンヤーンをやりつつだが、メニューを見る。 日頃は気にもしないメニューだが、実はつまみも色々とあるのだ。 この中からもう一品、そうだね、玉子焼きでももらってみよう。 どんなものが出てくるのかな。 なるほど、こう出ましたか。 後ろに千切りキャベツがあるところは定食のおかずと変わらないな。 そして玉子焼きは…。 ふわふわのとろとろと言う奴だね。 ちょっと食べてみたら、甘いでもなく、辛いでもない。 これは真っ当なプレーンオムレツと言う奴だ。 そうか、それならばどうして食べようか。 結局はこうしていただく。 添えられたキャベツの方に醤油をさっとかけて、この塩気で玉子焼きをいただくことにした。 備え付けのソースだ、醤油だをかけ回しても好いのだが、それでは味のインパクトが強すぎるだろう。 こうしてキャベツの方にさっとかけて、玉子焼きとキャベツを交互に、少しずついただく。 灯りで言えば間接照明のようなものだ。 こうすれば素の玉子焼き味が引き立つだろうさ。 と言うわけで、ビールを干した後にはハイボールをお願いして、そのまま静かに続けた。
後から客は入ってきたようだが、ビールと定食を慌ただしく平らげて出ていった者がふたりだったかな。
やがて店内のラジオ放送は広島対巨人の中継へと切り替わった。
好いな、この雰囲気。
随分と気に入ったから、近日にまたやりそうだ。
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