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私は影を見ていた。
私の影は、長身のその青年にすっぽりと抱きかかえられ、彼の中にいた。
あまりきつく抱きしめられて、息もできないくらいだった。
「イタイ。。。。」
「ごめん!。。。」
彼は私を放してまっすぐ見つめた。澄んだ涼しい目だった。
なんて情熱的で綺麗な目なんだろう?!
「僕のバイクに乗って!」
今度は、スタスタと青年はバイクに向かって歩き出した。
「待ってよ。バイクって、私スカートだから、乗れないよ」
振り返った彼は、
「ヘーキ、ヘーキ!!お姫様座りすればいいから!」
と言って、手を振った。
川沿いの道をバイクで、しかも、お姫様座り。
誰かに見られたら、どうするつもりだったのか??
「何処へ行くの?」
「。。。。。。」
彼には私の声など聞こえるはずもなく、私を乗せたバイクはドンドン暗闇を走り抜けた。
青年の体温が、私の腕や胸からジャケット越しに伝わり、それがとても気持ちよかった。
信号で止まるたびに彼は、私の手の上から彼の手を重ねた。
これから、どうなるの??
25歳にもなって、そんなことわかりきっているくせに、私の胸の鼓動は高まり、それと共に不安が胸をよぎった。
20分くらいしてバイクは止まった。
ついた先は、青年のアパートだった。
「こんなところに私を連れてきたわけ??」
と、聞こうとしたそのとき、私は彼の異変に気づいた。
バイクに片手をついて、うつむいている彼の肩は震えていた。
顔をあげて、
「ちょっと待っててくれる??」
と,言って一歩踏み出した彼の足元はふらついていた。
近寄って、額に手を当てたら、すごく熱いではないか。
「スゴイ熱じゃない??」
とにかくとんだことになってきた。一体いつの間にこんなに熱が出ていたのか??
私は、今にも倒れそうなその青年の手をとってアパートに入った。
どうしてこんなことになったのか??
とにかく小さな部屋に入り、ベッドに倒れ込んだ彼に水を持っていき、濡らしたタオルを額にあてた。
「ゴメン。。。なさい。。。。」
「いつから具合悪かったわけよ??」
「なんで、もっと早く言わなかったのよ??」
「。。。。今日じゃないと、あなたとはもう逢えないって知ってたから」
そう言って、私の手をとったその青年を、なぜか愛おしく思えた。
何て答えればいいの?
どうしていいかわからなくなってきた。
「お腹減ったから、何か作る」
「お米はどこ??」
わたしは、返事から逃れるように、キッチンに立った。
私は、きっとこのまま熱が下がらない彼の明日のことも考えて、おかゆでも作って帰ろうと思った。
小さな冷蔵庫には、梅干しが幸いにも入っていた。
「梅干し。。。。」笑”
似合わなさすぎる。
”もこみち”の冷蔵庫に梅干しだもの。
とんだことになったもんだ。。。。
今からどうして帰ればいいのか??
カタカタと音を立てて、鍋の中のお粥が煮えるのを待ちながら、
途方に暮れてベッドにもたれかかり、そのまま不覚にも私は眠ってしまった。
逢ったばかりの青年のアパートで。
=====長くなったので、この続きは次回に。。。。ちなみにこれは実話です=====
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