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前回の続き
愛知知多郡の桶狭間に近い熱田家の横井村を後にした服部半蔵と本多忠勝。
二人は鳴海道を鳴海城に向かい歩いている。
服部半蔵
「熱田殿はすべてわかっておられるようじゃ。まるで我らの心の奥まで見透かされておられる。此度、俺の読心術が利かぬ相手は初めてじゃ。されど、三河衆の艱難辛苦をご理解いただけて思わず涙がこぼれそうになった」
本多忠勝
「それに殿(松平元康)のご苦労をご理解いただいておる。まずは家を守ることじゃな。
確かに雪斎殿がいない今川は義元公が倒れれば終わりじゃ。嫡男の氏真では天下をまとめることは無理じゃ。殿のご苦労は並大抵の人間では耐えることはできぬ。氏真の女である築山殿を妻に押し付けられた。
戦とならばいつも岡崎衆が先陣!多くの三河武士が犠牲となった死んで行った三河武士の無念はいかほどのものであろう」
元康を兄と慕う忠勝である。
半蔵
「そして此度の戦!やはり我らが先陣!されど、戦場で死ぬのは流れ矢が多い。もし流れ矢が義元公に偶然でも当たり死んだら?今川は終わりじゃ。今川軍はわれ先に駿府に逃げる者が多いだろう。氏真では義元公の代わりはできぬ。政は義元公のみという今川家だ。それゆえに殿をあととりとすべきなのだが、その動きは見えぬ。義元公は武術の達人、護衛も達人が多い。されど政はとなると疑問が残る」
確かに、戦場で死ぬのは流れ矢が一番多い。
忠勝
「いっそのこと、今川を裏切り織田とともに天下を目指すか?半蔵殿」と笑った。
半蔵も微笑
「実は俺もそのことを考えていた。されど、まずは家を残そう。それには大高城占拠が条件じゃ。その後に動静を見極めよう。いかが?」
忠勝
「さすが半蔵殿 忍ぶことが忍者の特技!確かに、この地を見て思うが、小高い山が多く、木々に覆われた場所も多い。ゆえに何がおきるかわからぬ。織田は劣勢だが地の利においては優勢じゃ。万が一のこともありえる。今川の義務を果たし大高城を占拠し動静を見極める!これじゃな!」
半蔵
「そういうことじゃ。本音を言えば、殿がお嫌いな氏真は我らも大嫌いじゃ。一泡吹かせたい。蹴鞠と女ばかり!あれでは政はできぬ」
忠勝
「お家のために事態を冷静に見る!じゃな。半蔵殿」
半蔵
「さよう!殿の忍ぶ心は忍者以上じゃ。殿は我らと同じことを今、考えておられると思う」
二人はそろそろ鳴海城に到着する。夜が迫っていた。
荒子城に近い宝神熱田社にて
熱田北条横井時泰 前田慶次 阿蘇貴教 毛利新助 服部小平太による戦場格闘技の修練は続いていた。
貴教
「沓掛城 鳴海城への襲撃はある程度の効果がでている。松平家は今川への恨みが多いゆえ、大高城への兵糧を持ち込んだ後に情勢がどう動くかを静観することもありうる。木下の猿殿は織田家の策を理解したので今回は裏切らないであろう。となれば、今回の強敵!近隣の強敵は鳴海の岡部じゃ。幸い、慶次殿が岡部の側近をしとめてくだされた。今川本体襲来前にできれば岡部をしとめたい」
慶次
「かなりの猛将ということがわかりました。武士の矜持もかなりのもの。義元への忠誠心も相当なもの。あれでは寝返らせることはできますまい。いっそのこと、鳴海城を焼き討ちしてしまうのもよいかと存じまするが警護はかなりのものでござる。焼き討ちも無理やもしれませぬ」
時泰
「沓掛城は簡単に落とせまするが、落としてしまえば今川本体を桶狭間山に導くことができませぬ。つまり義元公を討ち取ることはできませぬ。確かに今の最強の敵は岡部殿でありまするな」
慶次
「時泰殿の強さを言い当てた岡部でござる。戦場格闘術は義元以上だと思いまする。されど次回は立ち会ってみたい。血がたぎりまする」
桶狭間山にて
今川襲来の戦勝祈願を桶狭間山の頂上の熱田社で、熱田北条横井佳美は祈っていた。今日は佳美が社の清掃当番である。社の清掃が終わったあとに、今回の戦の戦勝祈願をしたのである。祈りの後に山を降りるとき、柄の悪そうな三人の武士が登ってきた。
徳子は礼をして山を降りようとしたが、武士のひとりが
「よきおなごじゃのう」とにたりと笑い言った。
もうひとりが
「手篭めにしてくれようか」と言ったとたんに襲いかかってきた。
このとき、佳美の必殺人中打ちがひとりに炸裂した。鼻の下が人中である。くの字に曲げた中指を敵の鼻の下に命中させた。骨が砕けた。絶命かもしれない。
驚いたもうひとりが刀を抜いた。
佳美
「どちらの手のものか」と叫んだ。
武士
「この地は沓掛近藤家のものじゃ。今のわざには負けぬぞ。これからそなたを犯す」といい上段から刀が振り下ろされた瞬間に佳美が消えたのである。低空の水面蹴りが敵の両足を払い、敵は前のめりに倒れた。佳美は宙に舞い敵の頚椎に踵を落とし敵は動かなくなった。
もうひとりは刀を抜き突きで佳美を襲う。
高速の右回し蹴りが敵の手首に命中!刀は手から離れた。そのまま空中で回転し飛び後ろ回し蹴りで敵の後頭部を蹴った。敵は前のめりに倒れた。
この時、郎党の平時国が山に登ってきて佳美の格闘を見て驚いたのである。
「姫様 ご無事でございまするか」と叫んだ。
倒れた敵は、ふらふらと起き上がり刀を拾い再び佳美に切りつけようとする。時国の飛び蹴りが敵の後頭部を襲い、敵は完全に失神した。
佳美
「大丈夫です。死んだ者もいますゆえ、狼煙をあげて熱田家を集めてくださりませ。死人は麓の寺に運んでくださりませ」
時国
「姫様 半殺し状態でございます。今後も戦士として戦に参戦できるほどの力はなくなりました。武士でも人間でもなくなりました。むごき所業ではございまするが、介錯も救いでござりまする」と言い、倒れている三名の首に貫き手を打ち込んだ。これで三名は絶命!
続く
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