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前回の続き
くのいち
「なにゆえに私を殺さぬのでございますか?あのような屈辱的な技をかけられては生きてはゆけませぬ」と泣いている。
慶次
「そなたに一目ぼれじゃ!殺すわけがなかろう。許せ!なんとしても味方にしたいのだ」と笑った。なんと涼やかなやさしい笑顔!甲斐ではこのような男に会ったことがない。涙がでてきた。信玄の側女になるのがいやで尾張に来たのである。
くのいちは赤くなり
「負けました。これでは甲斐に帰れませぬ。お任せしますゆえよしなに」と泣きながら言った。
いつしか、くのいちは慶次の腕に抱かれていた。
慶次は微笑みながら
「では社務所に戻り、酒を飲もう!今宵は、そなたの歓迎の夜じゃ」
鳥居の前で熱田北条横井時泰が待っていた。慶次の後ろに、くのいちが歩いている。
慶次は時泰ににやりとして右目をパチリ!
社務所では酒宴が始まった。
慶次
「今宵は歓迎の夜じゃ。ところでそなた!名前を聞いておらぬが」
くのいち
「古府中よりまいりました。山本政子でございます。よろしくお願い申し上げまする」とひれ伏した。
慶次
「政子殿の格闘術は、熱田家で存在をお伝えいただいた古武術だった。かなり苦戦した。飛び後ろ回転蹴りが当たれば俺の頭は割れ死んでいた」
時泰
「なんと!伝説の古武術でございまするか」
政子
「当家には女子しか産まれす、なんとか家を存続させたいというのが父の意思でございました。武田忍者軍はいろいろな忍者軍の集まりでもございます。山本流は古武術を基本とした流派でございます。今は10名の郎党しかおりませぬゆえ、家を残すために姉は身を捨て信玄公にお仕えいたしました。されど、女子ゆえに姉は側室扱いとされました。家を守るために姉は耐え忍んでおりまする。此度は私も側室となるような状況となってまいりましたゆえ、単身でも今川、尾張の間者となることを選びました。本当は戦は嫌いでございます。母は病気で死に。父は戦場で果てました」
神主
「山本勘助殿はご親戚ですか?やはり忍者だそうですね」
政子
「よく聞かれますが、親戚でもありませぬ。此度は山本流がどどれほど通用するか?という試しの旅でもございました。いつ死んでもいいという旅でもございました。郎党も三名も側室にされました。当家を救わない信玄公への恨みもありまするゆえ、これからどうしようかと考えていたところではありまする」
慶次
「信玄は自らの天下取りのためには同盟の今川、北条も裏切る男であろう」と言ったら政子はうなづいた。
その時、社務所に熱田北条横井徳子と一族の平時国、その嫡男の高政が入ってきた。神社の警護のためである。
徳子は微笑みながら
「ずいぶん、楽しげな雰囲気ですね。夜は長いゆえ、かなりお酒が進むことと存じます。されど、前田様はいくらお飲みになられても酔わないゆえ、安心して警護をお願いできまする」と言いあえて社務所が少し燃えたことは聞かなかった。
神主
「姫さま 私はすでに酔いました。若様もお強い!前田様くらいになれるとは思いませぬが、将来、酒でも、よき勝負をされるでしょう」と少々、酔ったようだ。
巫女
「姫さま 今宵は、順番での皆様の警護!心強い夜でございます」
徳子
「今宵は時泰と前田様で大高城に行く予定でございましたね。変更ということですか。よところで前田様、時泰と同じ忍者衣装の美しき方!前田様のご友人でございますか?」
慶次
「さよう!実はわれらの格闘術の進化を手伝ってくれる強き味方でござる」
と慶次はご機嫌である。
徳子
「それはありがたきこと。前田様のご推薦なら!」
政子は、姫と言われる自分と同じくらい年齢の娘の心が読めないのが不思議だったのだが、自分をも仲間と認めてくれる器の大きさを感じたのである。そして徳子の自分以上の闘気を。
政子は徳子にひれ伏し
「申し訳ございませぬ。武田の間者、山本政子でございます。この神社を焼きました。立合いで若様と前田様に負けました。死ぬつもりでしたが、生きることとしました。目的は山本家の古武術の進化ではなく、皆様の武術へのささやかなる貢献をさせていただきたいのです。そして前田様が言われた太平の世も夢でございます」
慶次
「姫!某と勝負をいたしました。凄まじき古武術!神一厘で勝ちましたが、勝負は時の運でございます。下手したら負けてあの世でございました」
徳子
「前田様といい勝負とは!驚きでございます」
慶次
「政子殿の古武術は当家の武術をさらなる進化することが可能かと存じまする。姫!仲間に加えていただきたいと存じまする」
政子が話に入った
「いきなり、お味方になるということではとても信じていただけないと思います。少しでも信じていただけるように、これまでの当家の内情と甲斐のことをお話させていただきたいと思います」
徳子
「時泰 そなたはどう思う?」
時泰
「姉上 政子様がここに来られたことで、なんとなく此度の戦の強き味方となるような気がする。父上が言われるように最強の武田のことを知りたい。夜は長い。聞いてみよう」
徳子
「時泰!よくわかった。では政子様 宜しくお願いいたします。政子様は武田忍軍なのですね。申し遅れましたが、私は熱田北条横井徳子でございます。こちらは一族の平時国殿 嫡男の高政でございます」
政子
「姫さまがお着きになる前に申しましたが、山本一族は10名の武田の忍者隊でございます。半分が女子でございます。男子が産まれず女子があとを取り家が続いてまいりました。どうしても信玄公を頼らざるをえなきゆえ、すでに郎党の3名も信玄公の側室となっておりまする。あととりの私の姉も側室でございます。此度、今川と尾張の偵察を信玄公から命令されました。行かねば、私も側室にされるところでございましたゆえ、此度は山本家の古武術を試してみたいこともあり甲斐をでて駿府、尾張の偵察に向かいました」
慶次
「姫 つまり、此度、今川が万が一の負けの場合、迅速に駿河を占拠するのが武田信玄の計画でござる。政子殿を使い、織田の神社を焼き織田も混乱させ、今川がやったこととし、さらに骨肉の争いをさせるという策だったと思いまする。されど、天下取りの条件は、まずは今川に勝つこと。次は本願寺、忍者を抑え、武田に勝つことが重要ということを我らがおやかた様である時延様から教えられておりまする」
政子
「徳子姫様 皆様 本当に申し訳ござりませぬ」と言いひれ伏した。
「普通なら死でお詫びせねばならぬ諸行をいたしました。私のすべてを信じていただけるとは思いませぬ。されど、甲斐をでるときにわずかながらつけられているのではないかという感が働きました。もしかして今宵は追ってが現れるやもしれませぬ。ご注意いださいませ。私の責任ゆえ私が立ちあいたいのですが、先ほどの試合で体を痛めておりまするゆえ相手が強い場合は勝てませぬ。もしかして、最強の忍 山本勘助様が来られるやもしれませぬ」
続く
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