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 臨床試験シリーズは、まず「がんの臨床試験(1)人体実験か?」からお読み下さい。

 前回の記事から少し時間が空いてしまい申し訳ありません。ここまで、10回を超える記事で臨床試験を紹介し、単剤のPhase I Study、Phase II Study、更に市販後の併用でのPhase I Study、Phase II Studyを紹介しました。

 前回の記事では、非小細胞肺癌の進行例をサンプルに併用でのPhase II Studyまでをおさらいし、仮想の製薬会社ABC製薬の薬剤Xが単剤のPhase I/II Studyを経て、非小細胞肺癌の現在のKey Drugであるプラチナ製剤との併用のPhase I 及びII Studyで有用性がある可能性が示唆されたというところまできました。いよいよここからが、最終の臨床試験であるPhase III Study、いわゆる無作為化比較試験です。

 ここからは、実際の臨床試験をサンプルに紹介したいと思います。これは米国のECOGというグループが実施し、既にNew England Journal of Medicineという雑誌に掲載されたもので、非常に有名な臨床試験と論文になっています。

 この試験では、進行非小細胞肺癌(Stage IIIbの胸水貯留例と遠隔転移を有するStage IV)の患者さんが対象で、その当時期待をもって併用でのPhase II Studyを終えた4つの治療法の比較試験でした。ここで重要なのは、これまでの試験では、Phase I Studyでは用量の設定と安全性、Phase II Studyではいわゆる腫瘍(がん)の塊の縮小率と安全性で、それぞれの治療法自体の評価をしてきたわけですが、Phase III Studyでは、実際にこれまでの標準治療(あるいはコントロールアーム)と比べて相対的にどのような有用性があるかを確定的にする試験と言えます。すなわち、患者さんにとっての真の有用性は、がんの塊が単に小さくなるだけではなく、どれだけ長く生存する、あるいはどれだけ長く病気の進行がないかという事になりますので、いわゆる無作為化比較試験の真の目的(これをPrimary Endpointといいます)は、全生存期間や、無病あるいは無病勢進行期間となるわけです。

 さて、話をECOGの臨床試験に戻しましょう。その当時、ECOGでは、シスプラチンとパクリタキセルの併用療法を、標準治療アーム(コントロールアーム)としていました。それに対し、新たに候補として上がってきたのが、
シスプラチンとドセタキセル併用療法、
シスプラチンとジェムシタビンの併用療法、
そしてカルボプラチンとパクリタキセルとの併用療法
でした。

 こう考えるとわかりやすいかも知れません。すなわち、シスプラチンとパクリタキセルが当時のチャンピョンで、これに挑戦するのが、3つの治療法であったということです。結果から申し上げると、この比較試験(タイトルマッチ)は、この試験のEndopoint(ECOGのタイトルマッチのルールと考えて下さい)では、ドロー引き分けに終わってしまいました。厳密に言うと、病勢進行までの期間は、シスプラチンとジェムシタビンの併用が少し長かったのですが、毒性やその他のファクターを考慮すれば、この4つの治療法は、同じ位の有用性であるとの結果がとなったわけです。この試験の結果(結語)では、そのような結果ではあるものの、ECOGとしては毒性のプロファイルや、患者さんの認容性を考慮すると、カルボプラチンとパクリタキセルとの併用療法をその後のコントロールアーム(標準治療)とする事を決定し、その後の臨床試験に続くわけです。

 この後、報告されたカルボプラチンとパクリタキセルとの併用療法をチャンピョンとして実施され今年のASCOで発表されたのが、カルボプラチンとパクリタキセルとの併用療法と、その治療法に新規の薬剤Avastinを加えたもので、ここにまた新チャンピョンが生まれたわけです。ただし、このAvastinは日本では未承認ですし、またその生存期間の延長はコストを考慮した場合、わずかなもので賛否両論もあります。

 とここまでで、Phase III Studyまでを終了させる事にどれだけの長い時間と労力が払われ、現在の標準治療(現時点で最も期待される治療)を構築されるかがお分かりになったと思います(と思いたい)。これらの結果に基づき、いわゆるがん患者さんの日常臨床としての診療ガイドラインなどが編纂されるわけです。

 実は、もっともっときれいな結果、チャンピョンに対して挑戦者が圧倒的に勝ったという試験も紹介できれば良いのですが、これについては新しいシリーズ「目的別抗がん剤(抗癌剤)治療」でご紹介できればと思います。

 このシリーズの最終回は、例えを使った臨床試験の解説で閉めたいと思います。ここまで自分で書いてきて、果たして臨床試験の重要性や、その大変さがおわかり頂けたかどうか疑問ですが、私もこれからまだまだ修行して、よりわかりやすいものができるように致します。

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