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 これも先の記事に引き続き、2005年12月18日の朝日新聞の九面の記事の紹介です。シリーズ社会保障で紹介されています。

 本記事は、「治療(薬剤含む)の値段を市場で自由に決めようという考えが実現したら」、「どうなる」、「どうする」、「なぜ」というパートで構成されています。

 「どうなる」では、市場原理を導入している米国の例が紹介されています。市場原理とはおわかりのように需要と供給の関係であり、製品・サービスを提供する企業に競争が生まれ、価格が抑えられ、質も向上するというものです(いわゆるどの企業も参入可能な薬剤などでは可能性があります)。一方、市場が小さい(希少な疾患)、競合のない優れた製品(抗がん剤など)では、価格が高く設定される可能性があります。記例外もありますが、同じ薬剤の日米比較では多くの薬剤の価格は米国の方が高いという現実が紹介されています。

 「どうする」では、市場原理を導入している米国と、日本や欧州が採用している公的な医療保険の考え方の違いを紹介しています。米国は、「医療も経済力に応じて供給する」、日本・欧州の考え方は、「医療は貧富の差なく、平等に提供される」という姿勢の上になりたっていると紹介されています。その結果、米国では収入が多い程医療費支出が多く、日本では収入の差があっても医療費支出はほとんど同じとなっています。これは何を意味するかというと、米国では収入によっては、日本で平均的に提供される医療が提供されず、日本ではもっとお金を出して良い医療を受けたいというニーズを抑制している可能性があるということです。

 「なぜ」では、医療ではなぜ市場に任せた方が医療費が高くなるかを紹介しています。これは、一般の商品やサービスと異なり、その商品(薬剤など)・サービス(手術・手技など)の特殊性に由来し、決定には売り手側(病院・医師)に主導権があるからと述べられています。実際、日本・米国の経済全体における医療費の比率は、日本が7.7%、米国が14.5%、個人の医療費/年も日本が2139ドルに対し、米国5287ドルと、いずれも日本の2倍以上となっていると紹介されています。

 この議論は、今後とても重要なものとなってきます。2005年は、がん治療においては、患者さんやそのご家族が立ち上がった、がん医療改革元年とも言われています。そのような議論の中で、多くの患者さんや、マスコミも米国との対比において、未承認薬の問題、医療の専門性の欠如、標準治療・ガイドラインの普及が不十分などの議論がなされました。これは、私自身も指摘したきた事です。

 しかし、そのような議論の中で、切り込めない(言及しにくい)問題は、経済的な負担とコストに関してです。実際、NHKの特集番組においても、がん患者大集会でも、この問題・話題には触れない(あるいは避けて通る)という感さえありました。

 これは、今がんと闘う患者さんやご家族だけでなく、今後がん医療を受ける可能性のある健康な者も十分考えなければならない問題です。恐らく、早く新薬を開発して欲しい、新薬が早く普及して欲しい、専門家を増やして欲しい、標準治療が普及して欲しい、これは患者さんだけでなく、全ての方が望むところです(実際は、健康な時はこのような問題・現実があることすら知らないというのが現実ですが)。
 
 しかし、現実には一人一人がこれ以上の医療費負担を覚悟する、あるいは国が充実した医療に更なる予算を覚悟すると言う事が必要です。また、これを推し進める政党・議員を選ぶといった責任も生じます。また、日本・米国といった両極端ではなく、その中間、すなわち一定の医療は国の保健で賄い、それ以上の医療を望む場合は個人負担で可能とする(現在は混合診療はできず、また保健適応外の薬剤や未承認薬を保健診療と一緒にはできません)という選択もあるかもしれません。

 これはとても難しい問題で、先日も記事にした米国ではもう普通になった生命保険の買い取りなどの問題にも関わってくると思います。しかし、この問題は私たち自身が早晩決定しなければならない重要な問題である事は確かです。


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