|
これも先の記事に引き続き、2005年12月18日の朝日新聞の九面の記事の紹介です。シリーズ社会保障で紹介されています。 |
抗癌剤の話:報道
[ リスト | 詳細 ]
|
2005年12月18日の朝日新聞の一面の記事です。朝日新聞が独自に行った日本緩和ケア協会に加盟する151の病院を対象にした調査で、100病院から回答を得ています。 |
|
私のもう一つのブログ「抗がん剤ヘルプデスク」7月23日の記事「がん患者さんが抱える経済的問題」で、生命保険の買い取りについてご紹介しました。先日、これに関する裁判の判決があり、日本で初めてのこの提訴は、棄却される結果となりました。まずは、本裁判の報道をご覧頂くと理解が進みます。 http://www.asahi.com/national/update/1117/TKY200511170360.html ごくごく簡単にこの裁判を要約すると、ある肝臓がんの患者さんが、がんとなった事で、その闘病で仕事ができなくなり(経済的基盤を失い)、経済的困窮に陥りました。そこで、自身が加入する生命保険を、日本初の生命保険買い取りの会社(リスクマネージメント研究所)に、その補償額の何割かで買い取ってもらうというもので、実際には2,830万円の保証に対し、名義変更とともに(その後の掛け金は、同企業が負担)849万円で買い取るというものです。これには、契約生命保険会社(AIG生命)の名義変更の同意が必要ですが、AIG生命はこれを拒否しており今回の提訴に至っていました。すなわち、この裁判ではこの肝臓がんの患者さんが、AIG生命の名義変更を認めてもらうために、患者さんと生命保険会社の間で争われた形となっています。冒頭にも紹介した通り、17日東京地裁はこの男性の訴えを棄却し、保険会社の名義変更の同意拒否は不当とは言えないとしました。 ここで、この裁判に関連し、少しこの周辺の状況についてまとめたいと思います。 ・この種の訴えは日本で初めての裁判ですが、実は米国ではこの「生命保険買い取り」というのは実際に行われていて、AIG生命も米国では名義変更に応じている。 ・ここ数年の医療費の高騰化で患者さんの経済的負担は益々大きくなっている(特にがんの患者さん)。 ・将来的にも、国の財政難から負担増は容易に想像でき、更に今後承認される期待されう抗がん剤の薬価は、これまで以上に高価になる事が予測されます。 ・このような現状で、実際に闘病により職を失い、経済破綻を起こす家庭は出てきており、契約している生命保険の毎月の支払いも困難となり、解約という選択を迫られる。 ・生命保険を解約した場合の、契約者の利益はほとんどなく、今回のケースでは2,830万円の保証が、わずか30万円弱となってしまう。 ・生命保険会社にとっては、今後このようなケース(買い取りが認められる場合)に応じた場合、大幅な利益減が予測される。このような患者さんの場合、解約して貰う事が生命保険会社にとって一番の利益となります。 このような背景で、今回の棄却理由は、「米国では不当に安く買い取られる危険性も指摘され、保険会社の同意拒否は不当とは言えない」というものでした。更に、保険金に関連する犯罪の増加も懸念されると指摘もあります。 この判決は、日本で初めての判例となる事から注目され、様々な立場の人達が異なった見解を述べていますが、報道にある保険評論家は「健康保険や民間医療保険が充実している日本は米国と違って、保険買い取りの社会的ニーズはない。買い取りを認めれば逆に保険の転売が繰り返され、保険金殺人などの犯罪が起きる危険性が増すだけだ」とこの判決を評価しています。 私は保険の専門家ではありませんし、民間医療保険についても明るいわけではありません。しかし、これだけは言いたいと思います。間違っていれば、ご指摘下さい。 健康保険や民間医療保険(これはわかりません)が充実している日本とありますが、ここ数年患者負担は増大する一方(今後も増大するのは火を見るより明か)で、果たして本当にそうでしょうか?また、充実している(?)というのであれば、本来この恩恵を最も受けるべき生命に関わる患者さんにこれが適応・還元されているでしょうか?私見ですが、病院(医院)経営のため(これは制度の問題で病院・医院にとってはしかたないのかもしれませんが)、必要のない検査や投薬で、保険を圧迫するといった運用の問題はないのでしょうか? 保険買い取りの社会的ニーズはないというのは本当でしょうか?これは、もの問題が顕在化していないだけではないでしょうか?今後、がんに罹患する人は益々多くなります。例えれば、働き盛りの一家の大黒柱が闘病で職を失い、余命幾ばくもないと言われた場合に本当にニーズはないのでしょうか?ニーズがないのであれば、経済的困窮に陥り生命保険解約はほとんどないと予測されますが、本当でしょうか? これも個人的見解ですが、今回の判決は、まさに今がんと闘い経済的に困窮する患者さんの利益より、まだ起こっていない保険金殺人・犯罪を未然に防ぐ事の方が重要であるというものであったと思います。 しかしながら本裁判では、「多くのがん患者が生活の困窮から救済される方法を切望している」、「生保の売買が患者にとって有効な方法となり得ることもうかがわれ、今後、是非について議論を尽くすべきだ」とも提言されていますし、ある専門家は「ニーズが顕在化し、第三者への売却を認める外資系保険会社の参入の可能性はある。売却に対してどのような規制が必要なのか、国は考えておかなければならない」との指摘もあり、今後もこの議論は継続されるものと思われます。既に、この患者さんは控訴手続きを終えられました。 再度申し上げます。私は、保険や法律の専門家ではありません。しかし、今後も議論が必要で、今がんと闘う患者さんを経済的にサポートする枠組みや手法の構築は急務だと思います。是非、このような議論がある事を、多くの皆さんに知ってもらいたいと思います。
|




