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既に、大腸がんにおける標準的化学療法(FOLFOX4)とbevacizumab(Avastin:アバスチン)の記事は先日取り上げた通りで、FOLFOX4だけ、あるいはbevacizumab(Avastin:アバスチン)だけの治療を受ける患者さんに比べ、その併用療法は、統計学的有意に全生存期間と、進行までの期間の延長が確認されたと報告されました。 |
2005 ASCO Topics
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世界最大のがん臨床腫瘍学会です。米国では、毎年この学会をさかいに標準治療が変わるといわれています。
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現在でもマスコミを賑わしているイレッサですが、今年もいくつかの重要な発表がありました。 上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)ゲフィチニブ(イレッサ)は、EFGR-TKドメインに変異が認められる患者に劇的に奏効することが報告されている(Lynchら、PaezらおよびPaoら)。 Lynchらは、IDEAL試験(イレッサ単独投与)、および INTACT試験(化学療法プラチナ製剤を含む2剤併用化学療法+イレッサ)に 登録された患者から腫瘍サンプルが解析可能であったものについて、EGFR-TKドメインのエクソン配列18-21およびEGFR遺伝子変異とEGFR 遺伝子増幅を分析し、奏効率および生存率を含む治療効果に及ぼす関係について検討した。 評価可能サンプルについてEGFR遺伝子変異とEGFR遺伝子増幅を、性別、喫煙の有無、腺癌、人種、年令で検討した。 これまで報告されている結果と同様に、EGFR遺伝子変異のある患者において、有意に高い奏効率が見られた。EGFR遺伝子増幅に関しては、奏効率との相関がみられなかった。なお、EGFR変異が生存に及ぼす影響についても検討したが、症例数が少ないために結論を引き出すまでには至らなかった。恐らく、この記事だけでは理解しにくいと思いますが、簡単に言えば、イレッサが作用すると思われている作用部位(上皮成長因子受容体)に遺伝子異常のある患者さんは、変異のない患者さんより、効果がより高いというものです。 この報告では、遺伝子異常のない患者さんで効果が確認されたのは10%であったのに対し(この率派は今も昔も同様です)、遺伝子異常のある患者さんは約50%の患者さんに効果があったというものです。しかし、報道にもあるようにサンプル数が少ないため、確定的な結論ではないことに留意しなければなりません。 では実際には、自分に遺伝子異常があるかどうかというのは、恐らく今の保険制度では認められておりませんし、通常の治療で一般的に行われるかというと難しいというのが現実です。 ブログを初めて思うのですが、イレッサについては本当に情報が錯綜していますし、その捉え方はいろいろです。このような問題を理解する上では、信頼できる情報か、情報源か、ニュートラルな情報か、感情的なものでないかなどなど、バランスを持った判断が必要です。 マスコミも鵜呑みに出来ません。抗がん剤(健康食品)の報道に関しては特に注意して下さい。ご存じのようにイレッサは開発当時「夢の新薬」でした。それを報道した大手新聞社は、今どうのような報道をしているでしょうか?また、先に健康食品で逮捕者を出した史輝出版の広告を、毎日のように大手新聞では取り上げていました。このような新聞社には、大変真面目に抗がん剤・がん治療の報道に取り組んでいる方がおられる事は知っています。しかし、前述の報道姿勢の一貫性のなさには注意して下さい。
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全世界が注目する米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology1)の総会が、米国オーランドで開催され終了しました。毎年、各疾患(がん)の標準治療が変わる程の重要な発表、重要な研究が発表されます。今後、いくつかのトピックスをシリーズでまとめます。 ヒト化モノクローナル抗体bevacizumab(Avastin:アバスチン)は、VEGF(血管内皮成長因子)に結合して血管新生を阻害し、進行大腸癌の治療に化学療法(抗がん剤)と併用すると生存率を改善することが知られています。 この試験は、 (A)FOLFOX4とAvastin(アバスチン)併用療法 (B)FOLFOX4単独療法 (C)Avastin(アバスチン)単独療法 の3つの治療法を無作為化第III相試験で比較したものでした。 FOLFOX4とは、日本でも先月承認されたオキサリプラチン(商品名:エルプラット)を含む、以下の3剤併用療法のことです。今回の試験で使用されたスケジュールは以下の通りです。 オキサリプラチン85mg/m2、2週毎投与、ロイコボリン200mg/m2、2時間静注およびフルオロウラシル400mg/m2、ボーラス静注、その後、フルオロウラシル600mg/m2、22時間持続静注 試験対象はフルオロピリミジンおよびイリノテカンで治療されていた進行大腸癌患者829例(評価対象822例)とし、A:FOLFOX4+Avastin(アバスチン)併用群、B:FOLFOX4投与群、C:Avastin(アバスチン)単独投与群に無作為に振り分け、全生存期間および無憎悪生存期間を比較検討した。観察期間中央値は18.7か月でした。 この結果は、A群はB群よりも全生存期間および無憎悪生存期間が優れていることが示された。これらから、Avastin(アバスチン)は既治療の進行大腸癌患者の治療において、 FOLFOX4にAvastin(アバスチン)を加えることにより、生存期間を改善することが認められたと発表されました。 この発表以前も、進行性大腸がんにおいては、生存期間や腫瘍増殖までの期間を延長するなどの発表が相次いでおり、更にC225(Erbitux:エルビタックス)という薬剤にも期待が高まっています。Avastin(アバスチン)について言えば、本学会では非小細胞肺がんにおいても、同様の研究で生存期間の延長が確認され報告されています。 日本においては、つい先日まで欧米では標準治療となっているFOLFOX療法ができませんでした。恐らくこの発表を受けて、米国ではFOLFOX4にAvastin(アバスチン)を追加するという治療法が標準治療となっていくと思われます。 大変残念な事ではありますが、Avastin(アバスチン)も、C225(Erbitux:エルビタックス)も日本では承認されていません。恐らく、現在開発企業により、鋭意開発臨床治験が進められていると思います。このような重要な治療薬が、一刻も早く日本の患者さんにも使用できるようになって欲しいと思います。 ところで、Avastin(アバスチン)や、C225(Erbitux:エルビタックス)は、今までの細胞毒性を持つ抗がん剤ではなく、分子標的薬剤というカテゴリーになります。厳密には異なりますが、非小細胞肺がんで承認されたイレッサと同じカテゴリーになります。 読者の中には、イレッサと同じ危険性を指摘するかもしれません。しかし、イレッサとは大きく異なる点は、最も信頼性の高い第III相試験(無作為化比較試験)でその有用性が証明された事です。イレッサは、非小細胞肺がんでの予備的試験の結果のみで承認され(第III相試験の結果を待たず)、ここ数年やっと無作為化比較試験の生存期間の延長なしとの結果が出てきている点です。
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全世界が注目する米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology1)の総会が、米国オーランドで開催され終了しました。毎年、各疾患(がん)の標準治療が変わる程の重要な発表、重要な研究が発表されます。今後、いくつかのトピックスをシリーズでまとめます。 アスピリンについて少しまとめます。この薬剤をご存じない方は少ないと思います。恐らく、皆さんの認識は、解熱鎮痛剤の代表というものだと思います。もちろんその発見から100年を経た今でも、その位置付けは変わりませんが、この古くて新しい薬は今でも研究途上なのです。 1970年代、米国でアスピリンには、血小板の凝集を抑制することが発見されました。ご存じのように血小板は、止血(怪我をした際にかさぶたができますよね)に重要な働きをしてはいますが、同時にこれが血管内で起これば血栓を生じ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクともなります。 そこで、研究者達は、このアスピリンの抗血小板作用に着目し、臨床試験の結果「低用量のアスピリンを定期的に服用することで、心臓発作のリスクを47%低下させる。」が発表され、またたくまに米国に広がり、多くのアメリカ人が日常的にアスピリンを常用するに至っています。米国では、低用量アスピリンは、OTC薬(一般の薬局で買える薬)として購入できますが、日本では血栓予防目的の低用量アスピリンは、医師の診断と処方が必要で、このような効用は一般の方にはあまり知られていません。 このような効果に加え、アスピリンはがんの予防・発生を防ぐとの報告もあり、今回のASCOで重要な発表がなされました。 死亡と再発のリスクがおよそ50%減少でき、この効能は手術や標準的化学療法を凌ぐとの研究 Larry Schuster Medscape Medical News Reviewed by Gary D. Vogin, MD 【オーランド 5月16日】 III期の結腸癌患者は、手術や化学療法単独に匹敵するほどの効能をアスピリンで得られる可能性がある。予備試験によると、こうした患者に対してアスピリンを補助療法として用いると、その寄与によって再発や死亡のリスクがさらに50%減少することが分かった。 ダナ・ファーバー癌研究所の研究者らが行ったこの前向き非ランダム化試験は、患者830例を対象にしており、celecoxib(商品名Celebrex)およびrofecoxib(商品名Vioxx)についても同様の結果が得られている。ダナ・ファーバーの内科准教授であるCharles Fuchs, MD, MPHが、米国臨床腫瘍学会(ASCO)2005年度年次会議においてこの試験の結果を発表した。 Fuchs博士の報告によると、アスピリンを定期的に使用した群は非使用群に比べて、中央値で2.4年間の追跡期間後における結腸癌のリスクもしくは再発率が55%減少し、死亡のリスクが48%減少した。celecoxibまたはrofecoxibを使用した患者群は、再発リスクが44%減少した。 対象になった患者830例のうち、8.7%の者がアスピリンを使用し、その大部分の者が325 mgを毎日もしくは1日おきに使用した。一方、4.3%の患者はその他の2種の薬剤のいずれかをきちんと服用した。患者らは、化学療法を開始した時期にアスピリンを使用し始め、そのまま試験期間を通じて使用を続けた。 患者は全員が、標準的化学療法および手術を受けた。この病期の結腸癌に対しては、化学療法は手術単独に比べて生存率をおよそ35%向上させる、とFuchs博士はインタビューで答えている。それに対して、アスピリンまたは2種のシクロオキシゲナーゼ2 (COX-2)阻害剤は、再発と死亡のリスクをおよそ50%減少させる。これは、手術後に化学療法を実施した場合に得られる結果を凌ぐものであった。 「今回のデータによれば、観察されたこの効能は、現在われわれが採用しているどのような癌治療法よりも、少なくとも利益があると考えることができるだろう」とFuchs博士はMedscapeに語った。しかし博士は、現在採用されている治療法はランダム化試験を通過したものであるが、今回の試験は予備的であり、ランダム化していないことを言い添えている。 今回の結果が堅牢な臨床試験で確認されるまでは、暫定的にアスピリンは補助療法として使用するようにFuchs博士は進言している。自らの患者に対して、同博士自身は、続発性のポリープや新規癌の発生リスクを低下させるための予防的療法としてアスピリンを用いるように助言している。 この推奨は、アスピリンは癌リスクを減少させることができるというこれまでの臨床試験の説得力のある証拠に基づいている。そうした臨床試験に基づき、アスピリンは癌発生を予防でき、もしかすると補助療法において使用できるかもしれないという説の検証をしたいとFuchs博士は考えている。さらに、Fuchs博士は2種類のCOX-2阻害剤を選択し、COX-2の標的にもそうした効果が見られるかどうかを検証した。その結果として、COX-2は癌と癌抑制において実際に重要な役割を果たしているという証拠になった。このアスピリン試験の結果は好ましいものであったが、現時点ではIII相試験を実施する計画はない。 Fuchs博士が主任担当医師を務める、IV期結腸癌を対象にしたランダム化試験 (BICC-C)で、化学療法およびプラセボの組み合わせと、化学療法およびcelecoxibの組み合わせの比較を行うことになっている。この結果が出るのは来年の予定である。BICC-CはIII相の転移性結腸直腸癌相試験で、Pfizer社が支援している。 今回の試験結果は「非常に印象的であり興味深い。そしてアスピリンを始めとするCOX-2阻害剤を用いた予防化学療法の試験結果と非常によく一致する」とRandall Harris, MD, PhDはMedscapeに語った。同博士は、オハイオ州立大学の癌総合センター(オハイオ州、コロンバス)に所属しており、成書『COX-2 Blockade in Cancer Prevention and Therapy』の編集者も務めている。 「今回の試験は、まるでNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)を用いた初期の試験のひとつかのように思われ、選択的COX-2阻害剤は結腸癌治療において重要な働きができることを示しているようである」とHarris博士は述べた。また、この薬剤の用量は、関節炎に対する治療量としては低用量であっても、癌に対しては十分な治療量になると考えられる。「こうした既存のデータは、低用量でも効果があることを示している」。 「これらの薬剤は、結腸癌に関係するCOX-2などの標的やそれ以外のメカニズムに対して干渉していると考えている」とHarris博士は語る。「これらの薬剤は、癌細胞のアポトーシスの再開を促し、血管新生を阻害すると思われる」。 「結腸直腸癌やその他の種類の悪性腫瘍に対する補助療法として、選択的・非選択的COX-2阻害剤の用量、使用期間、副作用、費用効果を確定する試験のさらなる実施を強く支持したい。特に、癌予防試験の中でNSAIDに反応することが示されている乳癌、前立腺癌、肺癌が重要である」。 Harris博士は「こうした薬剤は、化学療法薬に対して副作用を持っていてはいけないので、その評価にすぐにでも取り掛かるべきである」。とも語った。 ASCO 2005 annual meeting: Abstract 3530. Presented May 16, 2005. Medscape Medical News 2005. (C) 2005 Medscape 少し長い記事の引用ですいませんでした。要点は、アスピリンは信頼性の高い施設と研究により、がんのリスクを低下させること、更にがんの手術後の服用で再発と死亡のリスクを軽減するというものです。更に、今回の発表ではある種のNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)も、アスピリンと同様の効果が観察されたというものです。 報道をざっとみるとこの記事の重要性がわかりにくいですが、実はこれは大変凄いことで、まず発表施設が信頼性の高いことで、ダナ・ファーバー癌研究所はメモリアル・スローン・ケタリング癌センター、M.Dアンダーソン癌センターと同じように全米を代表する施設です。 また、死亡と再発のリスクがおよそ50%減少という意味は、もしその疾患で100人の患者さんがお亡くなりなる、あるいは100人に患者さんが再発するところを、アスピリンやある種のNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)で、死亡・再初が50人になるということで、これまでの抗がん剤の研究においても、ここまで大きなインパクトを持つものは、実はあまり多くありません。 残念ながら、日本において、アスピリンやある種のNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)は、がんの予防や、再発・死亡リスクの軽減として抗がん剤との併用は、認められていません。低用量アスピリンも医師の処方なく入手できません。しかし、この重要性は結構前から指摘されており、情報の早い医師などは、研究として、患者さんの同意を得て、アスピリンやある種のNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)を併用し抗がん剤治療を行っている医師もいるようです。 このような状況ですので、薬剤自体は日本でも使用できるものですが、保険適応がありません。したがって、ご興味のある方はまずは主治医にご相談されてみてはいかがでしょうか?個人的意見ですが、その時、そんな発表は知らない、ASCOなんて知らないという医師は、ちょっと?です。
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