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1950〜60年代、ステレオ録音黎明期に同じ演奏がモノラルとステレオの両方で発売された時期がありました。で、まことしやかに「モノラルとステレオは別マイクで収録しマスタリングも別に行われていた(ケースもあった)」と言われています。実は英Deccaの名盤、クナッパーツブッシュ指揮VPOのBruckner第5交響曲は、そのようなケースであったと思われます。 私がクナッパーツブッシュを聴きはじめた頃、そのレコードはまことに数が少なく、Bruckner第5交響曲も新品では入手が不可能なものでした。神保町界隈の中古レコード屋を定期的に巡回し、日本キングの廉価版GTシリーズの1枚物をようやく手に入れたものです。 MXシリーズは「最新リカッティングによるみずみずしい音質」をうたっていましたっけ。高校生であった私はその宣伝文句を疑いませんでしたが、後年あるきっかけで大きな衝撃を受け、現在は同じ演奏の異なるリリースを積極的に収集する泥沼にはまっています。さて「第5」です。これはマニアはよくご存じ、初出当時、本国のイギリスではモノラルLXT規格だけが発売され、数年後にアメリカでステレオCS規格が出たものです。LXTは高価で手が届きにくいので、 ・モノラル:米London CM9168/9 ・ステレオ:米London CS6114/5 というのが手持ちの最初期盤(ジャケ写真は上がCS、下がCM)。 この二つ、一聴してまずホールトーンが全然違います。ステレオは、この頃のDeccaゾフィエン ザール収録の特徴であるオンマイク気味で各楽器が生々しく捉えられた、分離のよいサウンド を楽しめます。対するモノラルはもっとたっぷりと残響を含んでおり、ムジークフェラインザー ル録音の「第3」「第4」と共通する響きの世界でBrucknerに浸らせてくれます。 ・ステレオ:第1楽章終結部 ・モノラル:第1楽章終結部 最初にCM盤を聴いたときは電気的エコー付加か?と思ったのですが、ステレオではまったく 聞こえないコトンという物音があったりすることから、これはモノラルは「音場型」のマイク セッティングで別に録音したのではないかと推察します。 また、第1楽章の後半、第2主題の再現の途中、モノラルでは「ハッとするほど」軽やかなテンポ になる部分があります(サンプルの50秒付近から数秒間)。同じ部分、ステレオではいつもの クナ節、踏みしめる足どりを崩しませんので、別マスタリングというのも本当らしい。
・ステレオ:第1楽章、第2主題再現 ・モノラル:第1楽章、第2主題再現 いまのところ、モノラルとステレオに明らかな違いを認められるのはこれだけですが、別マイク、 別録り、別マスタリングのような「コストを度外視した」作業がされていたとは…これもやはり、 古き佳き時代ゆえでしょうか。
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この記事を読んでからモノーラル盤が気になっていて,ようやくドイツプレスの初版を手に入れました.おっしゃる通りで残響がたっぷり,そして第1楽章だけ明らかに足取りの軽い部分があります.モノの方がまとまりの良い音で,ステレオにない良さが楽しめてよかったです.ちなみに初版とはいえRIAAでちょうどよかったです.
2016/7/18(月) 午前 0:32 [ nekosuke ]