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初期盤、その魅力には抗し難いものがあります。出会いは突然に…。
その一枚は、米London LL-451、クナッパーツブッシュ指揮VPOによるワーグナー管弦楽曲集でした。収録曲は、 ・A面:「リエンツィ」序曲 ・B面:「パルジファル」第一幕前奏曲と場面転換の音楽 というもの。ディスクユニオンあたりで買ったような記憶はあるのですが、なぜこれを買ったのかは覚えていません。安かったからか、ジャケット左上に小さく印刷されたクナの写真がそれまでもっていないものだったからか…(当時は、米Londonが英国プレスであることすら知らない初心なコレクターでした)。ただ「すでにもっている録音」であることは意識していたと思います(最近は、買ったら「あった」ケースもときどきありますが 「すでにもっていた」のは日キングの廉価版MZ-5128ですが、LL-451の両面分を片面に 詰め込んだ徳用盤でした。まあそれでも30分を少し出る程度なのですが、「ゆったり収録 の方がよい音がするかな」程度の期待はあったでしょう。ところが針を落として出てくる音、 それにすっかり魅せられてしまったのです。MZ盤の音はぼやけて寸詰まり、「古くさい」と いう表現がピッタリくるものです。ジャケット解説に「…は今回初めて発売されるもので、 1940年後半のSPであろう」という推測がされているのも、無理からぬところ(実際は、 1950年6月の録音〜吉田光司編ディスコグラフィによる)。 それに比べてLL-451は、音圧が高くダイナミックで高域も輝かしく伸びています。「リエ ンツィ」では熱気が、「パルジファル」では神々しさが何倍にも増して聴こえます。これ を聴いてしまっては、演奏家の魂に触れるためにも初期盤に手を出さないわけにはいかない、 そう決心させられてしまったまさに「運命の一枚」だったのでした。 ・MZ盤から「リエンツィ」の一部 ・LL盤から「リエンツィ」の一部 その後、同じくクナッパーツブッシュ指揮VPOの「ワルキューレの騎行」でも同じような (差は、さらに激しい)経験をします。この演奏は昨日述べたリカッティングMXシリーズ の一枚に収められていて、1953年の録音としても古色蒼然たる響きだと思っていました。 ところが初期盤のそれは実に鮮明な音なのです(手持ちのLXT盤では、英プレスよりも仏 プレスがより鮮烈に聴こえます)。加えて、演奏が始まる前2秒程度、ステージ雑音までも が録音されており、楽員がクナの棒を凝視しまさに演奏が生み出されるその場所に、一瞬 にして連れ去られてしまいます。そこに生々しい音で「ワルキューレの騎行」が開始され るのですから、これはまことにたまりません。 ・MX盤から「ワルキューレの騎行」冒頭 ・LXT盤から「ワルキューレの騎行」冒頭 残念ながら流通している初期盤の「程度」は(特に1950年代前半、グルーブガードのない フラット盤では)千差万別。その中からピカ盤に巡り会い、名演の「最良の姿」に触れる、 その至高の体験を求めてコレクションは増殖し続けるのでした。 |

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