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前回は,北朝鮮の砲撃から得られる北朝鮮の利得が十分に低い場合のプレーヤー(韓国,北朝鮮)の行動を示した。
今回は,北朝鮮の砲撃から得られる北朝鮮の利得がある程度高かった場合の両者の行動を考えてみよう。
今,北朝鮮にとって「砲撃する」を選択した場合の利得がマイナス2からプラス1に変化したと考えてみよう(図3)。この状況では,北朝鮮が「砲撃する」を選択した場合に獲得する利得はプラス1であり,他方で「砲撃しない」を選択した場合に獲得する利得はマイナス1である。そこで,仮に韓国が軍事訓練を実施したならば,北朝鮮は「砲撃する」という行動を選択すると考えられる。
北朝鮮が「砲撃する」を選択することを前提として,次に韓国の行動を考えてみよう。韓国が軍事訓練を実施しない(「軍事訓練しない」)場合には,韓国が獲得する利得はゼロである。他方で,韓国が「軍事訓練する」を選択した場合には,北朝鮮は「砲撃する」を選択するので,その場合に韓国が獲得する利得はマイナス1である。つまり,韓国にとっては「軍事訓練しない」が望ましい選択肢であることがわかる。
結局,図3のような利得構造のもとでは,韓国が軍事訓練を実施しない,という結果が実現すると考えられる。このように,プレーヤーの行動は,ゲームの木に示される利得構造に大きく依存することが判るだろう。
現実には,韓国と北朝鮮の実際の利得構造は,図2ではなく図3のようなものだったと考えられる。RFA(ラジオ自由アジア)によれば,金総書記の後継者である金正恩氏の宣伝が,北朝鮮の住民に十分に浸透していなかったという。韓国に対する砲撃によって,住民に対して金正恩氏の指導力を十分にアピールできるならば,それによる利得は北朝鮮にとって十分に大きい(プラス1)と言えるだろう。そして,韓国がこの利得構造を正確に把握していれば,ひょっとしたらこのタイミングでの軍事訓練は実施されなかったかもしれない。
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