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前回までに,受験生にとっての合格率という観点から,入試日程に関する二つの状況を考察してきた。
今回は,そこで得られた結果をまとめてよう。
まずは,ある大学を受験する機会が複数回ある場合に,受験生がそれらを併願すれば,その受験生の合格率が必ず上昇するのかどうかを考察した。最近の状況を見ると,一般入試に限っても,様々な入試方式の下に,受験生にはますます多くの受験機会が与えられる傾向にあると言えよう。それらを併願して受験機会が増加すれば,受験生はその大学に合格しやすくなっているように感じるかもしれない。
しかしながら,このことは必ずしも正しくなく,以下のことが示された。
≪考察結果1:同一大学への併願の効果≫
1. 全ての受験生が,自分の実力ランキングを正確に知っている場合には,併願しても合格率は変わらない(実力上位者は単願で必ず合格するし,下位者は併願しても決して合格しない)
2. 全ての受験生が,自分の実力ランキングを正確に知っている場合に,もし受験者がランダムに単願と併願を申し込むならば,実力が中程度の受験者は併願によって合格率を高められる。
3. 全ての受験者が,自分の実力ランキングを不正確にしか知らない(ある確率で間違った順位を認識している)場合には,実力が中程度の受験者は,併願によって合格率を高められる。
現状では,全国模試などを通じて,多くの受験生は自分の実力をある程度把握しているものの,その順位は実力を正確に反映している訳ではないだろう。つまり,上の三番目の状況が成立すると言えるかもしれない。
その場合には,自分が合格ラインのボーダーを少し下回るくらいだと思っている受験者は,併願によって合格率を高められる余地があることになる。
次に,受験生にとって同じくらい魅力的な幾つかの大学において,受験生にとって自分の合格率が高いのは,入試日が重なっている場合と異なっている場合のどちらなのかを考察した。直観的には,受験日が重なっている場合には,受験の機会が減ってしまうために,自分が合格する確率が下がってしまうように感じられるかもしれない。現実には,多くの大学の受験日は重ならないように設定されており,上の直感によれば,このような入試日程は全ての受験生の合格率を高めるように思える。しかしながら,このことは必ずしも正しくなく,以下のことが示された。
≪考察結果2:同一日程とばらばら日程≫
1. 受験者の実力が拮抗している場合には,受験生の合格率は試験日程に依存しない(入試日程が重なっていても異なっていても結果は等しい)。
2. 受験生の実力がばらけている場合には,実力ランキングの高い受験生にとっては,入試日程が重なっている場合の方が,自分の合格率は高くなる。
3. 他方で,実力ランキングの低い受験生にとっては,入試日程が異なっている場合の方が,自分の合格率は高くなる。
先の述べたとおり,現実には,多くの大学の受験日は重ならないように設定されている。つまり,現状は,実力上位者にとっては厳しく,実力下位者にとってはチャンスのある入試システムになっていると言える。
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