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◆初めてお越しの方はトップページよりお入りください。 エテ・ファーレは静かにセラフィスの傍に近づいた。セラフィスはエテ・ファーレの華奢な躯を抱き寄せた。 「そなたたち会うのは初めてであろう?紹介しよう。エテ・ファーレだ。東龍王から頂戴した王子だ。」 「王子?!ではあなたが養子になさったというのは・・・」 「そう・・・このエテ・ファーレだ。まだ元服前の子供ゆえ仲良くしてやってくれ。」 ルカスは目を疑った。女子のような格好をしているからてっきり少女なのだと思っていた。 「何故・・・そのような女子のような格好を・・・?」 「何故・・・?エテ・ファーレはまだ変化を迎えていない両性体ゆえかまうまい?」 「しかし・・・」 エテ・ファーレが怯えた目でルカスを見つめていた。それは吸い込まれそうなほど澄んだ金色の瞳だった。 ルカスは眩暈を覚えた。セラフィスが自分の代わりに選んだ相手がこんな少女のような姿をした王子だったことに脅威を感じずにはいられなかった。 「エテ・ファーレ・・・どうしたのだ?ノアーレ公のルカスとその奥方だ。挨拶をしなさい。」 セラフィスに言われてエテ・ファーレは我に返った。ずっとルカスを見つめていたことに気付いて顔を赤らめた。噂に聞く以上に美しいルカスを見て呆然としていたのだ。 「あ・・・申し訳ございませぬ。エテ・ファーレと申します。不調法をお許しください。」 小鳥のように怯えるエテ・ファーレを見てルカスは眉をしかめた。 「私のことはご存知か?」 「はい・・・お噂はかねがね陛下よりお聞きしております。」 「どんな噂を耳になさっておいでで・・・?」 「大変美しい方だと・・・このラジールで一番美しい方なのだと・・・」 エテ・ファーレの言葉を聞いてセラフィスはくすっと笑った。それを見てルカスは顔を紅く染めた。セラフィスがどんなふうに自分のことを話したのかと思うと恥ずかしくてならなかった。 「エテ・ファーレ・・・?あなたは本当に両性体なのですか?」 「・・・?」 「ルカス・・・いきなり何を言うのかと思えば・・・エテ・ファーレはまだ子供なのだ。苛めないでやってくれ。」 「陛下・・・あなたは変られた。私の知らない間にあなたは・・・」 ルカスは唇を噛み締めた。何故だか悔しい想いが湧き上がって躯が震えた。 「そなたがいなくなって私は一度死んだ。どうしようもないほど死の淵を彷徨い続けた。だがこのエテ・ファーレが私を闇の中から救ってくれたのだ。エテ・ファーレは私を導いてくれた光だった。」 セラフィスはエテ・ファーレを抱き締めるとその柔らかな唇に口づけをした。 「・・・」 ルカスはその光景に目を見張った。エテ・ファーレが抗うこともなく素直にセラフィスの口づけを受け入れていたことに驚愕した。セラフィスはそっとエテ・ファーレから唇を離すとルカスを見つめた。 「ルカス・・・エテ・ファーレは私を蘇らせてくれた天使なのだ。エテ・ファーレは私に至福を与えてくれる。」 ルカスの中で何かが崩れ落ちた。硝子が粉々に砕け散ったような衝撃が躯の中を駆け巡った。 終わった・・・ ルカスはそう思った。自分とセラフィスはもう終わっていたのだ。セラフィスはもう自分を必要としていない。自分はセラフィスを勝手に捨ててしまったというのに、心のどこかでまだ未練を残していたのだ。 「陛下・・・あなたは今幸せですか・・・?」 ルカスは震える声を振り絞ってセラフィスに尋ねた。 「ああ・・・エテ・ファーレがいれば幸せだ。」 セラフィスはエテ・ファーレを見つめて微笑んだ。エテ・ファーレも恥ずかしそうにセラフィスを見つめ返していた。 ルカスは居た堪れなくなってその場を去った。二人を見ているのが辛かった。こうなることはわかっていたはずなのに、心のどこかで認めたくない自分がいたことに今更ながら我慢が出来なかった。 「ルカスさま・・・大丈夫ですか?」 辛そうな顔をしているルカスを見てライナは心配そうに声をかけた。ライナにはわかっていた。ルカスの気持ちが痛いほどわかっていた。どうしていいのかわからずただルカスの手を握り締めることしか出来なかった。 「すまない・・・ライナ・・・」 ルカスはライナのやさしさに触れて、忘れかけていたものをようやく思い出していた。 自分にはライナがいる。いつも傍にライナがいてくれたことを危うく忘れるところであった。ルカスは人前もはばからず、思わずライナの躯を抱き締めていた。 「あっ・・・ルカスさま・・・?」 「ライナ・・・私から離れないでくれ・・・」 ルカスはしばらくライナを抱き締めたまま動こうとはしなかった。 「陛下・・・よろしかったのですか?あんなことを仰って・・・」 エテ・ファーレが心配そうにセラフィスの顔を見上げた。セラフィスはそっと笑ってみせた。 「もういい・・・私にはそなたがいる。それで充分だ。他には何も望むまい。」 「陛下・・・」 エテ・ファーレは胸が苦しかった。セラフィスが自分を大事にしてくれるのはとても嬉しかった。だがセラフィスがまだルカスのことを愛しているのではないかと思うと辛くてならなかった。 「エテ・ファーレ・・・今夜は寂しい・・・ずっと傍にいてくれ。」 「はい・・・陛下・・・」 セラフィスはエテ・ファーレの肩をやさしく抱き寄せた。エテ・ファーレは思わずセラフィスの首に腕を回して、セラフィスに唇を重ねていた。それはどこか切なくて悲しいほどに苦しい口づけだった。 =外伝 銀の森 第六章 迷夢= 完 いつもご愛読いただきましてありがとうございます。 続きは「外伝 銀の森 第七章 花迷宮」にてお楽しみくださいませ。 |
第六章 迷夢
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◆初めてお越しの方はトップページよりお入りください。 「おや・・・あそこにいらしているのはノアーレ公ではないか?」 「これは珍しい。ルカス殿下はなかなか城にはお出でにならないと伺いましたが・・・」 「さすがに王妃の葬儀に顔を出さぬわけにはいくまい。」 「それにしても相変わらずお美しい。隣にいらっしゃるのは奥方ですかな?」 「あら・・・可愛らしい奥方ですこと。」 ノアーレ公ルカスは夫人のライナを連れて来ていたが、その珍しくも美しい銀色の髪と瞳で一際目を引き、瞬く間に集まる人々の注目を集めていた。セラフィスもルカスがいることに気付くとすぐさま駆け寄った。 「ルカス・・・来てくれたのか・・・?」 「陛下・・・ご無沙汰しております。王妃さまのお見舞いにも来ずにこのようなことになってしまって・・・どうかお許しください。」 複雑な想いで見つめるセラフィスにルカスは深々とお辞儀をした。ルカスの変らぬ美貌にセラフィスは目を細めた。 「そなたは変わらぬ。あの頃のまま美しい・・・」 セラフィスは手を伸ばしてルカスの銀色の髪に触れた。ルカスはそれを見て後じさりをした。 「ふふ・・・そなたにはもう何もしない。安心しろ。」 セラフィスの様子がどこか以前とは違っているのに気付いて、ルカスは戸惑った。それはセラフィスのかつては燃えるような黄金色に輝いていた美しい髪が老人のように白く変っていたことだけではなかった。誰もが憧れる太陽のように煌く金色の瞳も、男も女も魅了してやまなかった精悍な美貌も、かつての華やかさは消え失せて色褪せてしまった花のようにどこか寂しくルカスの目に映った。セラフィスは荒々しい神々のごとく強い精気に満ち溢れていたラザ王とはまるで別人のように、今は穏やかな空気を纏っていた。 「どうした?久しぶりに会ったというのに随分と素っ気無い。私の姿があまりにも変わり果てて驚いたか?」 「私は陛下がお元気でお過ごしならばそれで・・・」 「冷たい男だな・・・」 二人のやり取りをルカスの後ろで聞いていたライナは怯えた目をして立ち尽くしていた。それに気付いたセラフィスがライナの方に視線を向けた。 「これは奥方どの。しばらく見ぬ間に一段と美しくなられて・・・」 ライナは慌ててセラフィスにお辞儀をした。 「陛下もお元気そうでなによりでございます。」 「ふっ・・・どうだ?ルカスは・・・?そなたを大事にしてくれておるか?」 セラフィスの金色の瞳に見つめられて、ライナは胸の鼓動が激しくなった。 「はい・・・ルカスさまにはよくしていただいております。」 「そうか・・・可愛がってもらっているのか・・・?」 揶揄するように笑みを浮かべるセラフィスを見て、ライナは顔を赤らめた。 「奥方どのはまだ初心なようだが・・・連れ添ってから随分たつというのにお子を生してはおらぬようだな。」 「陛下・・・そのような話はここでは・・・」 「不謹慎だとでも言うのか?」 「・・・」 ルカスは言葉を詰まらせた。久しぶりに会ったセラフィスと騒ぎを起こしたくなかった。ルカスはただ亡くなった王妃に追悼と感謝の意を抱いて城に来ただけなのだ。ルカスはライナとの結婚を王に進言してくれた王妃には頭が上がらぬ思いでいっぱいだった。あのとき臣下を説き伏せて王の許しが得られたのは他ならぬ王妃の力添えがあったからに他ならなかった。 「ルカス・・・そんな顔をしないでくれ。私はこれでもそなたたちのことを心配している。そなたたちの子が生まれればどんなにか嬉しいであろう。」 「陛下・・・?」 「私がこんなことを言うのは可笑しいか?」 「いいえ・・・そのようなことは・・・」 優しい目で微笑むセラフィスを見てルカスは戸惑いを隠せなかった。 「そなたたちの子ならさぞかし綺麗な子が生まれるであろう。私はこの手でそなたの子を抱いてみたい。」 セラフィスの言葉を聞いてライナは驚きの余り目に涙を浮かべた。ライナの目からは耐え切れず涙が零れ落ちていた。 「ライナ・・・?」 泣いているライナを見てルカスも驚いた。 「あっ・・・ごめんなさい。私・・・陛下からそのようなお言葉がいただけるとは思わなくて・・・」 ライナはずっとセラフィスに後ろめたい気持ちでいっぱいだった。セラフィスから大事なルカスを奪ってしまった自分のことをさぞかし怨んでいるのだろうと思っていた。だが今目の前にいるセラフィスが穏やかに微笑んでいるのを見て、ライナは張り詰めていた糸が切れたかのように緊張が解けていた。 「本当に奥方どのは可愛らしい。ルカスの為にもよい子を産んでくれ。」 ライナは涙を堪えながら頷いた。ルカスはどう応えていいのかわからなかった。セラフィスが何故こんなやさしい顔をしているのか不思議でならなかった。 ふとそのときルカスは背後に気配を感じた。 「エテ・ファーレ・・・こっちにおいで。」 セラフィスが嬉しそうに笑みを浮かべたのを見て、ルカスは後ろを振り返った。 ルカスは驚愕した。そこには白金の長い髪を揺らした美しい少女が一人立っていた。透けるように美しい肌と、セラフィスと同じ金色の瞳を持った儚げな少女がルカスをじっと見つめていた。 |
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◆初めてお越しの方はトップページよりお入りください。 「ラセス殿下がご帰国なさいました。」 ラセスは急いでラザの王城に戻っていた。ラザの王城は重々しい空気に包まれていた。それがただならぬ事態であることにラセスも気付いていた。ラセスは勢いよく回廊を通り抜け、王妃が住まう後宮に向かった。 ラセスが王妃の部屋に入ろうとしたとき、扉の向こうからセラフィスが姿を現した。ラセスは慌ててセラフィスに会釈した。 「陛下・・・只今戻りました。母上のご様子は・・・?」 「ラセス・・・早かったな。王妃が待っている。傍についていてやれ。」 「・・・?」 セラフィスはラセスの肩を軽く叩いて、ラセスと入れ違いに部屋を出て行った。すれ違いざまにちらりと見えたセラフィスの横顔はどこか寂しげに映った。 ラセスが王妃の寝所に入ると、中に居た侍女や女官たちが一斉に道を開けた。ラセスは王妃の眠る寝台に駆け寄った。 「母上・・・!」 寝台の中には蒼白い顔で眠るやつれた姿の母がいた。 「母上は・・・?母上の容態は・・・?」 「王妃さまは突然お倒れになられて・・・ずっと殿下の名を呼んでいらっしゃいました。ですが昨夜から昏睡状態に入られて・・・」 傍にいた王妃付きの女官が涙ながらにラセスに語った。ラセスは侍医の顔を見た。 「助からないのか?母上はもう・・・無理なのか・・・?」 「王妃さまは大量の血を吐かれて・・・手は尽くしましたが・・・これ以上はもう・・・」 ラセスは震える拳を握り締めた。自分にはどうすることも出来ない悔しさに涙がこみ上げてきた。 「母上・・・何故・・・目を覚まして・・・もう一度私を見てください。お願いだから・・・」 ラセスは王妃の痩せ細った手を取り、両手で握り締めた。祈るように手を何度も擦り合わせて、王妃の手に接吻をした。そのときラセスの願いが届いたのか、王妃の指がピクッと動いた。 「母上・・・?」 ラセスが顔を見上げると、王妃の瞼が薄く開いた。ラセスと同じ蒼色の瞳が虚ろに天を見ていた。 「母上・・・母上、気が付かれましたか?私です。ラセスです。ウルリカから戻って参りました。」 「・・・」 王妃はゆっくりと視線を落とした。傍にラセスがいることがわかったのかそっと微笑んだ。その様子に周囲はどよめいた。 「母上・・・私がわかりますか?」 王妃はじっとラセスを見つめた。その目はやさしく穏やかだった。 「ラ・・・セ・・・」 王妃の細く掠れた声が微かに聞こえたかと思うと、王妃は静かに瞳を閉じた。閉じた瞼から涙が一筋流れていた。ラセスは王妃の手をもう一度強く握ったが、その手にはもう力を感じることはなかった。 侍医が王妃の腕を取り、脈を診た。侍医は首を横に振った。 「ご臨終でございます。」 「はは・・・う・・・え・・・」 ラセスは王妃の胸に顔を埋めた。ラセスの嗚咽が部屋の中に響き渡った。それにつられるかのように後ろに控えていた侍女たちが涙を零していた。 「王妃は亡くなったか?」 王妃の寝所から出てきたラセスに、蒼ざめた顔のセラフィスが尋ねた。ラセスはセラフィスに気付くと手で涙を拭った。 「はい・・・たった今・・・とても安らかな笑顔で・・・まるで眠っているようです。」 ラセスは震える声で気丈に答えた。 「そうか・・・苦しまずに逝ったのか・・・」 「父上・・・?」 「そなたは知っていたのか?王妃の病のことを・・・」 「はい・・・」 「ラセス・・・何故私に何も言わなかった?」 ラセスは唇を噛んだ。涙がこみ上げてくるのを必死で堪えた。 「私だってあなたに言いたかった。しかし母上があなたには話すなと、そうおっしゃったのです。」 「王妃がそう言ったのか?」 「はい・・・私にはどうすることも出来なかった。あなたにどれだけ言いたかったか・・・苦しくて息が詰まりそうでした。私は・・・出来ることならずっと母の傍についていてあげたかった。」 セラフィスは震えるラセスを見て胸が痛んだ。 「すまない。わかっていればそなたを急いでウルリカには行かせなかったものを・・・」 「父上・・・あなたが悪いわけではありません。私も母の病にもっと早く気付いていれば・・・」 「私のことをさぞや怨んでいたのであろうな。最期まで私は王妃に嫌われたまま・・情けない男だ。」 ラセスはセラフィスのこんな気弱な姿を見たのは初めてだった。いつも太陽のように光り輝く眩しい存在だった父が急に身近なものに感じられた。 「母上はあなたに病に侵された姿を見られたくなかったのだと思います。あなたに弱い自分を晒したくなかったのだと思います。」 「ラセス・・・」 「いつも強がってばかりいたけれど・・・母上は本当にあなたのことを心から愛していました。」 「私を愛していた・・・?こんな私を愛していただと・・・?」 「父上は母上のことを少しも愛してはいなかったのですか?」 セラフィスは顔を歪めた。王妃と同じ蒼い瞳で見つめられて胸が苦しくなった。 「愛が何たるかも知らぬようなそなたにそんなことを言われるとは思わなかった。」 「父上・・・?」 「私なりに愛したつもりだったが・・・そなたにはわかるまい。今更何を言っても言い訳にしか聞こえぬ・・・そうであろう?」 セラフィスは苦しそうに笑みを浮かべると、踵を返して部屋を後にした。セラフィスの背中はどこか寂しく、ラセスはその後姿を見るのが辛かった。 そして翌日、王妃の葬儀はしめやかに執り行われた。突然のことに臣下たちも動揺を隠せなかった。国中から集まった人々は皆王妃の死を悲しんだ。 「まだ若いというのに・・・気の毒なことだ。」 「ラセス殿下も元服を終えられたばかりだというのに・・・」 「確か王女が二人おいでだったが・・・末の姫君はまだ幼い。不憫なことじゃ。」 「でもあまり大きな声では言えませんが、あの末の王女は王のお子ではないと専らの噂・・・」 「王妃さまは若い愛人を何人も囲っておいででしたから、きっとその中の誰かが・・・」 「こんなときに滅多なことを言うものでない。」 そんな噂や中傷があちこちで囁かれていたことはラセスも知らないことであった。 だが王妃が亡くなったことで、臣下たちの間では再び王位継承の問題が巻き起こった。ラセスが無事元服を済まし留学を終えて帰国したとはいえ、ラザ王のエテ・ファーレへの寵愛は変ることなく臣下たちを不安にさせた。 セラフィスは葬儀の間も片時もエテ・ファーレを傍から離すことはなかった。エテ・ファーレがまるで寵妃のようにセラフィスに寄り添うのを人々は訝しげに眺めていた。 エテ・ファーレは困っていた。なんとかしてラセスに会って言葉を交わしたかったが、セラフィスがずっとエテ・ファーレを離そうとしないのでそれも叶わなかった。だがセラフィスがエテ・ファーレから傍を離れた隙に、エテ・ファーレはそっとその場を離れた。 今のうちにラセスに話しかけないと、王が戻ってきてしまう。 そう思って慌ててラセスの傍に近寄った。ラセスがエテ・ファーレに気付いて振り返ったが、いつもとは違う寂しげな表情のラセスを見てエテ・ファーレの胸は締め付けられた。ラセスはエテ・ファーレを見て静かに微笑んだ。だがそれはどこか悲しくて辛そうだった。 「エテ・ファーレ・・・」 「あっ・・・なんてお悔やみを言っていいのか・・・」 口籠ってしまったエテ・ファーレを見てラセスは嬉しそうに話しかけた。 「こうして会うのは久しぶりだね。元気にしていた?」 「・・・」 こんなときに自分を気遣ってくれるラセスを見て、エテ・ファーレはどう言っていいのかわからなかった。 「どうしたの?元気がないね。具合でも悪い?」 エテ・ファーレは首を横に振った。エテ・ファーレはラセスのやさしさに耐え切れなくなって思わず言葉を漏らした。 「こんなことになるなんて・・・私のせいで・・・私がこの城に来たから王妃さまは・・・」 ラセスはエテ・ファーレの肩を掴んだ。 「きみのせいじゃないよ。そんなふうに自分を責めるのはおよし。」 「でも・・・」 「そんなことを言ったら陛下が辛い思いをなさる。きみが陛下の傍について陛下の沈んだ心を慰めなくてはならないというのに・・・」 「あっ・・・」 何故・・・この人は自分も母上を亡くして悲しいはずなのに、私や陛下のことまでやさしく気遣ってくれるのだろう・・・ エテ・ファーレは自分が恥ずかしかった。自分がもっとしっかりしてラセスのことを慰めてあげたいと思っていたはずなのに・・・ 「陛下のところに行ってあげて・・・陛下が寂しがるといけない。」 ラセスがいつものやさしい笑顔を見せるので、エテ・ファーレは黙ってラセスの傍を離れた。エテ・ファーレはラセスが自分を必要としてくれていないことが寂しかった。自分ではラセスの役には立てないのだと思うと悲しかった。 |
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◆初めてお越しの方はトップページよりお入りください。 ラザの王子ラセスは生まれ育ったラジールを離れ、ウルリカの学院に留学で訪れていた。 ラザの王族として生まれた男子は元服した後、ウルリカに留学して大神殿で長老の調印を得なければラザの王位継承者として認められたことにならない。それはラザ王家に代々受け継がれてきた大事な儀式でもあった。今では形式的なものに過ぎなかったが、無益な王位争いを避けるための有効手段として今も続けられている。 ウルリカはかつての都であった。神の子フロネ・シスの子孫が神々の住むというレルーダの山から降り立ち、この地に国を築いた。いつしか神殿が建てられ大勢の神官たちがそこで暮らすようになった。そして救いを求める民人たちが集まるようになると街が作られた。神の子であるラザ王が統治して国は繁栄し、人々に富をもたらした。 やがて国が巨大化していくとウルリカだけでは都としての機能は果せなくなり、時の王が領土拡大の為に新たにラジールに遷都して王国を築いた。信仰心の厚い人々からは反対する声も多く上がったが、神の子であるラザ王には誰も逆らえなかった。 ラザ王は神殿や神官たちが力を持つことを恐れていた。信仰と政治の分離を図り、ウルリカは聖なる地として国家から切り離された。大神殿は信仰の為だけに存在を許され、ラザ王の統治に意見出来なくなった。それでも人々の信仰心は衰えることはなく、今尚巡礼に訪れる者たちで街は溢れ、ウルリカはかつての都としての面影を今に伝えている。 ラジールの国政から切り離されたとはいえ、ウルリカはラザ王直轄の監視下で独自の統治を許されていた。それは神殿の長老を頂点とする支配体制で、全てのものが神殿の加護の下に統率されていた。 とはいえラジールとウルリカの関係は微妙で、古くから伝わる王家の儀式や祭礼には神殿の権威が必要とされた。ラザ王は神殿にそうした力を与えることでラジールとの均衡を保とうとしたのである。その信頼の代償としてラザ王は王族の娘を斎の姫として神殿に捧げ、時には王族の男子も神官として神殿に下ることもあった。神の子の血筋を神殿に迎えることによって、ウルリカはラジールへの忠誠を誓い国政には関与出来ないようにさせられた。そうしてラジールとウルリカは長い歴史を刻んできた。 度重なる戦火を潜り抜け、ウルリカはラジールに護られて平和であった。今の斎の姫がその地位に就いてからは長く、ウルリカの治世は安定していた。 斎の姫は未婚女性しか許されず、一度その身を神に捧げ契りを交わすと、一生その身が朽ちるまで神殿の奥で祈り続けなければならない。斎の姫は神の代弁者であり神に最も近い存在として人々から崇められる。だがその斎の姫とて人の子である。先々代のラザ王の異母妹であった斎の姫はかなりの高齢であった。神殿は斎の姫の後継者を欲しがっていた。 だがラザ王セラフィスはそんな神殿の長老たちの声に耳を傾けることはなかった。セラフィスには王妃との間に二人の王女がいたが、どちらかを神殿に差し出す気など微塵もなかった。セラフィスにとって王女は政略結婚に利用できる最大の武器に他ならなかった。かといって神殿の申し出を無碍にも出来ずセラフィスには頭が痛かった。 神殿の長老たちはセラフィスに並々ならぬ好意を寄せていた。かつてセラフィスがウルリカに留学で訪れたとき、神の子として相応しい金色の瞳と太陽のように輝かしいまでの精悍な美貌を見て、迎えた長老たちは皆平伏したのだ。 そんなときにセラフィスの後継者であるラセス王子の留学が決まり、神殿側も浮き足立っていた。長老たちはラザ王の血縁者である姫君をなんとしても斎の姫にと願っていた。神殿にとってラセス王子の留学はまたとない好機であった。 最後にラザの王族が留学で訪れたのはノアーレ公ルカスのときであった。セラフィスの異母弟だというルカスは銀の森の王女であった母の血を強く受け継いだが為に、ラザでは珍しい銀色の髪と瞳を持って生まれた美しい王子であった。長老たちはルカスに斎の姫の話を持ちかけて王に進言してもらうつもりであった。だがセラフィスの激しいまでの寵愛を受けていたルカスは、心配したセラフィスに王の護衛官を同行させられてウルリカでもまるで自由がなかった。調印の儀式が済むとルカスはすぐにラジールに連れ戻され、長老たちと話を交わす時間すらも与えられなかった。そんなこともあって長老たちはラセス王子に期待を寄せていた。 しかしウルリカを訪れたラセスを見て、神殿の長老や神官たちは驚いた。本当にあのセラフィス王のお子なのかと皆が目を疑った。ラセスはあまりにもあの偉大なるラザ王に似ていなかったのである。長老たちの落胆は大きかった。ラセスはそんなことには慣れていた。ラセスは気にすることもなく、真面目に長老たちや博士方の講義を受けた。最初は懸念していた長老たちもラセスの勤勉さや真面目な性格にはさすがに感心せずにはいられなかった。やがて長老たちもラセスを王位継承者として認めるようになった。 ラセスは一刻も早くラジールに帰りたかった。ラジールに残してきた病の母のことが気がかりでならなかった。ラセスはまめに王妃宛に手紙をしたためた。 「ラセス殿下は大変真面目なお方じゃ。セラフィス王とはまるで似ておらぬようじゃが、あのやさしいご気性や勤勉さは王として少々危ぶまれる・・・」 「どちらかといえばラセス殿下は先代の王に似ておいでだ。先代は人徳の厚い王で民草からも慕われておった。」 長老たちはそんな勉学熱心なラセスを見て調印の儀式を執り行うことにした。ラセスは喜んだ。調印が済めばラジールに帰れる。そんな想いでいっぱいだった。 そして待ちに待った調印の日、式が無事に終わろうとした頃、ラザからの突然の知らせが舞い込んだ。 「恐れながら申し上げます。只今ラザ王家より火急の知らせが・・・王妃さまご危篤の由、ラセス殿下には早急に城にお戻りいただきますようにと・・・」 「なんですと?それは誠か?」 「はい、一刻も早くラジールにお戻り願いますよう・・・」 ラセスは呆然と立ち尽くしていた。恐れていたことが突然やってきたのだ。 「殿下?!大丈夫でございますか?しっかりなさいませ。」 ラセスは従者の声で我に返った。 「あっ・・・ああ・・・大丈夫だ。長老・・・調印式は・・・」 「殿下、式は無事に済みましてございます。これであなたも立派に王の後継者となられる。何も心配することはございませぬ。」 「では・・・もう・・・?」 「お母君がお待ちでございましょう。すぐにご出立なさいませ。」 「ありがとうございます。長老方にはお世話になりました。こんなふうに立ち去るのが悔やまれてなりませんが・・・」 「お母君のご無事をお祈り申し上げます。」 「・・・」 ラセスは何か言いたげに長老を見つめた。だがその口は堅く閉ざされたまま開くことはなかった。 「殿下、さあこちらへ・・・」 慌しくラセス王子の一行は神殿を後にした。長老や神官たちは複雑な思いで一行を見送った。 「長老・・・お行きになられましたな。」 「うむ・・・まさか王妃さまの病がそれほどお悪いとは・・・」 「殿下はご存知だったのでしょうか?」 「おそらくは・・・殿下がこのウルリカにお出でになられたとき、どこかお元気がないと感じたが・・・今思えばあれは母君のことを心配なさってのことであったのだ。あまりの生気の薄さに殿下がご病気なのかと勘違いしてしまったが・・・」 「確かにセラフィス王と較べましても覇気が感じられませんでした。随分と大人しい王子だと思っておりましたが・・・」 「気丈に振舞っておいでだった。あの強い眼差しでこのわしを物言いたげに見つめておったわ。一瞬あのセラフィス王と同じ目をしなさった。」 長老は深く溜息を吐いた。神官長は心配げに長老を見た。 「では・・・例の件は殿下にお話なさっては・・・」 「調印式が済んでからじっくり話をするつもりであった。ノアーレ公のときのようにすぐに連れ戻される心配はないと思っていたが・・・まさかこんなことになるとはのう・・・」 「またとない絶好の機会を逃してしまいましたか?神は我らに味方してはくださらなかったのか・・・」 「諦めるのはまだ早い。今はまだ時期ではないのかもしれぬ。我々はちと事を急ぎすぎたようじゃ。」 「しかし長老・・・斎の姫はご高齢・・・最近ではもうお一人で歩くこともお出来にならぬ。もう目も耳も弱っておいでです。このままでは・・・」 「何を言う?斎の姫は神の力をお持ちじゃ。斎の姫は心の目で我らを見てくださる。斎の姫には世の中の全てが見えておるし民草の声までも聞こえておるのだ。」 「ですが・・・斎の姫とて血の通った人間です。いずれは命も尽きましょう。そのとき跡を継ぐべき者がおらねばこのウルリカは・・・」 「焦ることはない。まだ時間はある。それまで斎の姫には長らえていただかなくては・・・」 「いつまで待てばよいと・・・?ラザの王女をどうやったら斎の姫に迎えることが出来るのですか?」 「今はあの王に何を言っても無駄であろう。ましてやラセス殿下にお願いして王に進言してもらおうなどと虫のよい話だったのじゃ。」 長老は考え込んでいた。ラジールが落ち着くまでは待つしかないと腹を決めた。 「あの様子では王妃もそう長く持つまい。その為に殿下の元服と留学を急がれたのであろう。」 「ではラザの風向きが変りますな。あの王がどう動くのか我々はしばし眺めておればよいのですね?」 「さよう・・・」 長老は窓から遠くラジールの方を見つめた。長老の目に一体何が映っていたのか、神官長には図り知ることは出来なかった。 |
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◆初めてお越しの方はトップページよりお入りください。 ◆R18ご注意ください。 「エメリア伯・・・」 寝台の上で放心していたシェラ・ドーネは無意識のまま愛しい人の名前を呼んだ。 シェラ・ドーネは一瞬頭の中が真っ白になって、何が起きたのかよくわからなかった。顔を上げたエメリア伯爵が濡れた唇を舌で舐めながら上目遣いに笑ったのを見て、ようやくシェラ・ドーネは何をされたのか理解した。シェラ・ドーネは羞恥した。エメリア伯爵が自分の吐精を飲み干すことまでしてくれるとは思わなかったのだ。 「こんなことをされるのはお嫌でしたか?」 シェラ・ドーネは顔を紅く染めたまま首を横に振った。 「もっとほしい・・・もっとあなたを感じたい・・・」 シェラ・ドーネはまだ足りないとばかりにエメリア伯爵の肌に指を這わせた。 「私に何をお望みですか?」 シェラ・ドーネは銀色の双眸を妖しく煌かせてエメリア伯爵を見つめた。 「あなたのその熱くなった剣で私を貫いて・・・」 エメリア伯爵はふと笑みを零した。 「あなたの花が傷ついてしまう・・・」 「好きだよ・・・エメリア伯・・・あなたになら何をされてもいい・・・」 「泣いて後悔なさっても知りませぬ。」 「そんなこと・・・やってみないとわからない・・・」 シェラ・ドーネは拗ねた顔でエメリア伯爵を見た。エメリア伯爵は静かに寝台から立ち上がった。 「しばしお待ちを・・・」 「・・・?」 エメリア伯爵が寝台から離れたのを見て、シェラ・ドーネは不安になった。エメリア伯爵が戻ってくるのを待つのが辛かった。その間にもシェラ・ドーネの躯は沸々と熱いものがこみ上げて我慢できそうもなかった。先ほど放ったばかりだというのに、シェラ・ドーネの花茎はすでに硬く擡げ始めていた。 すぐにエメリア伯爵が戻ってきて、シェラ・ドーネはほっと安堵の溜息を漏らした。エメリア伯爵の手には何かの瓶が握られていた。 寝台に横たわるシェラ・ドーネの足の間にエメリア伯爵の躯が入ってきた。エメリア伯爵はシェラ・ドーネの足を広げて持ち上げると、枕を置いて腰を浮かせた。 「あっ・・・何・・・?」 エメリア伯爵が手にとろりとした液体を垂らしたのを見て、シェラ・ドーネは一瞬怯えた表情をした。 「ご安心を・・・香油でございます。害はございませぬ。」 エメリア伯爵は穏やかに笑ってみせた。濡れた指先がシェラ・ドーネの双丘を押し開いて蕾の中にするりと押し込められた。 「あっ・・・」 花のような馨しい香りと共に滑った感触が中に広がって、その違和感にシェラ・ドーネは腰をくねらせた。 「我慢なさいませ。これで痛みも和らぎますゆえ・・・」 シェラ・ドーネの中に生温かなものが染み渡って、エメリア伯爵の指で掻き回されているのがわかった。それだけでも十分にシェラ・ドーネは躯を熱くさせて感じていた。 「おや・・・もう感じておいでですか?蜜が零れていますよ。」 いつのまにかシェラ・ドーネの花茎の先は蜜で濡れていた。エメリア伯爵は蜜を指先に絡ませた左手で花茎を愛撫しながら、右手の二本の指で巧みに蕾の奥を刺激していた。 「あっ・・・早く・・・お願い・・・」 我慢出来ずにシェラ・ドーネはエメリア伯爵に懇願した。エメリア伯爵は焦らすようにシェラ・ドーネの蕾を指で丹念に揉み解していた。シェラ・ドーネの濡れた蕾は紅く色づき、花弁を震わせながら可憐な姿を見せていた。 「おわかりですか?もう指を三本も咥えていらっしゃる。シェラ・ドーネさま・・・物欲しそうに私の指に吸い付いてくる。」 「ああっ・・・」 エメリア伯爵の指先だけでいかされそうになって、シェラ・ドーネは思わず声を漏らした。エメリア伯爵は指を引き抜くと、代わりに己の熱くなったものを押し当てた。 「あああっ――」 それは思ったよりも大きく、シェラ・ドーネは目を見開いた。指とは比較にならない圧迫感にシェラ・ドーネは背中を仰け反らせた。あまりの苦しさにシェラ・ドーネは耐え切れずに喘ぎ声を漏らした。先端を挿入させただけで苦しがるシェラ・ドーネを見てエメリア伯爵も動きを止めた。 「シェラ・ドーネさま・・・力を抜いて・・・すぐに気持ちよくなりますゆえ・・・」 「あっ・・・やだ・・・エメリア伯の・・・大きい・・・」 躊躇うシェラ・ドーネを見て、エメリア伯爵は目を細めた。 「お嫌ならここで止めてもよろしいのですよ。」 意地悪そうに微笑むエメリア伯爵の顔を見て、シェラ・ドーネは首を横に振った。 「では私の言うとおりに力をお抜きになってください。」 シェラ・ドーネはこくりと頷いてエメリア伯爵の言うとおりに躯の力を抜いた。するとたちまちエメリア伯爵の熱く猛った牡がシェラ・ドーネの奥まで押し込まれて中をいっぱいに満たした。 「あっ、あっ・・・」 シェラ・ドーネの息が乱れて身悶えた。だがその喘ぐ姿が更なる欲情を誘うことをシェラ・ドーネは知らなかった。苦しさから逃れようとシェラ・ドーネは敷布を掴んで強く握り締めていた。 「シェラ・ドーネさま・・・もっと淫らに欲しがってください。もっと乱れてもかまわないのですよ。」 「ああっ・・・やっ・・・」 シェラ・ドーネの目からは涙が零れた。シェラ・ドーネは自分の躯が可笑しくなるのを止められなかった。エメリア伯爵が自分の中で動く度に快楽の中枢を刺激されて身悶えることしか出来なかった。 エメリア伯爵に内壁を擦られて滑った音が響き渡った。辺りに広がった香油の花のような香りが躯を包み込んで、シェラ・ドーネは陶酔したような心地になった。痛みよりも痺れるような感覚が躯を支配して、次第に熱い衝動が躯の奥から湧き起こった。それは甘く気だるくシェラ・ドーネを虜にさせた。 シェラ・ドーネは我慢出来ずに腕を伸ばしてエメリア伯爵の背中を抱き寄せた。肌が密着して更に二人は深く繋がった。シェラ・ドーネの銀色の髪とエメリア伯爵の金色の髪が絡み合うように寝台の上を流れ落ちた。気がつくとシェラ・ドーネは足をエメリア伯爵の腰に絡めて自ら腰を振っていた。 次第に激しさを増すシェラ・ドーネに翻弄されたのはエメリア伯爵のほうだった。熱くなったシェラ・ドーネの中は蕩けてしまいそうなほど気持ちがよかった。シェラ・ドーネに締め付けられる感触にエメリア伯爵は思わず喘ぎ声を漏らした。それを聞いてシェラ・ドーネは笑みを零した。 「ああ・・・シェラ・ドーネさま・・・そんなに強く締め付けられては・・・動けませぬ・・・」 シェラ・ドーネはエメリア伯爵も感じているのがわかって嬉しかった。 シェラ・ドーネが腰から力を抜くと、エメリア伯爵は解放されて熱く息を吐いた。だが再びエメリア伯爵の腰が激しく振動して、シェラ・ドーネは歓喜に躯を震わせた。エメリア伯爵の熱く張り詰めた牡が自分の中で狂おしく蠢くのを感じて、シェラ・ドーネもまた心地よい酩酊に身を躍らせた。 「ああ・・・いいよ・・・エメリア伯・・・すごくいい・・・」 「シェラ・ドーネさま・・・」 「もっと・・・いかせて・・・」 エメリア伯爵はシェラ・ドーネの誘うような瞳に魅入られて腰を強く突き動かした。その瞬間熱いものがシェラ・ドーネの中に溢れ出した。シェラ・ドーネも同時に精を放っていた。 二人の息は熱く乱れていた。エメリア伯爵はシェラ・ドーネの唇に口づけを落とすとやさしく躯を抱き締めた。シェラ・ドーネの意識は朦朧としていた。夢でも見ていたかのように視線は虚ろだった。 「大丈夫ですか?シェラ・ドーネさま・・・」 エメリア伯爵は汗で濡れたシェラ・ドーネの額に落ちた銀色の髪をかきあげて、上気した頬に指を這わせた。シェラ・ドーネは目の前にエメリア伯爵の顔があるのがわかると、嬉しそうに笑みを浮かべた。 「痛みはありませんか?」 「平気・・・あなたがやさしくしてくれたから・・・」 エメリア伯爵はシェラ・ドーネの頬にそっと口づけをした。 「素敵だ・・・エメリア伯・・・夢でも見ていたみたいだ。」 シェラ・ドーネはエメリア伯爵の手に自分の手を重ねて夢ではなかったことを確かめていた。 |


