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英国つれづれ草
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その188 - 日本散策(1)桜便り ‐
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桜について最近読んだ本「チェリー・イングラム 日本の桜を救ったイギリス人」があります。ロンドンに住んでいるジャーナリストの阿部菜穂子氏が2013年にイギリスの桜について記事を書く機会に、日本の桜の魅力にとりつかれた研究家のイギリス人コリングウッド・イングラムCollingwood Ingram (1880 – 1981) という人物がいたことを知ります。イングラムが残した膨大な資料と大勢の人々の協力を得て、2016年3月にこの本は出版されました。桜に魅せられて以来、桜守として稀有な生涯を送ったイングラムの功績を巧みに描いていますので、是非読んでいただきたい1冊です。

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彼の桜に対する熱い思いを描いたノンフィクションは、日本人であればなおさら特別な感情をもって読むことができるのではないでしょうか。106ページにあるように、日本で絶滅したと思われた品種の「太白 (Great White Cherry)」と名づけられた桜は彼のおかげで祖国日本へ里帰りをしています。日本へ逆輸入された「太白」は、あまり見かけないようですが、多摩森林科学園近くの公園で木を見ることが出来ました。開花には、少し早すぎたようで、残念ながらまだ咲いていませんでした。近づいてみると、いつも見ているソメイヨシノの幹とは少し違っているようでした。たまたま義兄が昨年撮影した「太白」の写真をもらった時には、なんだかイングラムの想いに出会ったような気がしました。
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4月6日付けタイムズ紙のSaturday Review の書評欄にはさまざまな分野で話題となった本が数冊紹介されていました。その中の一冊が阿部菜穂子氏が英文で書いた’Cherry’Ingram The Englishman who Saved Japan’s Blossoms by Naoko Abeでした。書評を書いたリチャード・パリーRichard Lloyd Parryは、あえて「The blossoms of the kamikaze」と題して解説していました。日本語版の139ページに書かれていますが、桜は軍国主義に利用され、ぱっと咲きぱっと散ることが美徳とされ、軍歌「同期の桜」の歌詞のように「散り際」に焦点が当てられるようになりました。これが戦争へ出かける兵士たちを励ました時代がありました。この本を紹介したリチャード・パリーにとって一番印象的だったのは、神風特攻隊だったのかもしれません。日本人が、世界でもまれにみるほど桜を愛でて、春を象徴する木への思いがあるのにもかかわらず、歴史、政治や戦争に左右されたことが、より強く印象に残ったのではないでしょうか。この書評を最初に読んで、実際に本を手にする読者たちはどのように感じるのか興味がありますが、桜とイデオロギーの側面よりも桜そのものへの想いを強くするに違いありません。両国で出版された本が多くの方々に読まれることを願っています。

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弘前に生まれ育った母は、父の転勤でそこを離れ、再び訪問する機会はあまりありませんでしたが、弘前城で毎年5月に行われる観桜会のことを時々懐かしそうに話してくれました。ちょうど駅には桜が満開のポスターがあり、幼いころにうろ覚えだった風景を思い出し、いつかまた訪問してみたいと思いました。
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今回、日本で大いに利用した海外で生活する人たちが購入できるジャパン・レールパスの表紙はまさに富士山と桜でした。英国の旅行会社の宣伝にも、日本を訪れるのは、物事の始まりを象徴する淡いピンクの花が見られる春が一番いい季節と書かれています。Visit Japan the best time to see the pale pink flowers which symbolizes new beginnings.長い辛い冬を越して迎える春の象徴である桜は、花が咲いてから葉がつき、再び来年に向かって備えます。季節を日々感じることが出来る樹木だといえるでしょう。

ロンドンの自宅に戻ると近くの八重桜が寒空の中で満開になっていました。リージェント・パークにある八重桜並木は、4月下旬から楽しませてくれそうです。その149のキュー・ガーデンで書いたように、日本と同様にイギリスには世界から植物を集めるプラント・ハンターplant hunter たちがいました。英文の記事になったようにコリングウッド・イングラムは100歳で亡くなっています。桜に魅了され、ケント州にある自宅で、世界各地から収集した桜を大切に育てたアマチュアの植物ハンターだったのです。The story is told indirectly through the life of Collingwood Ingram, a British amateur horticulturalist who died in 1981 aged 100.
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英国人には日本人のような桜に馳せる思いはないかもしれませんが、先月の新聞の記事に英国で桜を鑑賞することが出来る場所が紹介されていました。今年は、久し振りに春に一時帰国しましたので、日本で桜を鑑賞することが出来る場所を訪問し、美しい花を愛でたので、格別に忘れられない桜への想いを感じました。
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