コーヒーを挽きながら〜岸本静江のひとり言〜

ラテンアメリカのコーヒー農園村を舞台にした小説「コーヒーを挽きながら」の著者が描く『静江ワールド』

カンボジアに行ってきた(その7)

 旅行最終日はアンコールワット見学。
 朝5時半ホテルロビー集合。希望者15名。まだ外は真っ暗だ。
 前日買っておいたパス(顔写真入りで外国人は37ドル、カンボジア人は無料)を係員に見せて環濠に架かる西参道(正確には現在上智大学アンコール国際調査団による修復工事進行中で、その脇の浮き橋)より境内に入場。他の遺跡は大体が東向きなのにここだけは西向きなので、日の出の太陽光を背に受けて黒々と暁の空に屹立する5つの尖塔のシルエットが見ものという。すでに大勢の観光客が今か今かと6;40のご来光を待っていた。
 
 でもその時刻が来ても太陽神の姿は見えない。神は尖塔の向こう側に隠れているのだ。と、突然誰かが「あっ、あそこに太陽が!」指さされた方角は思っていたより右側、塔と塔の狭間。その狭間から鏡のように銀色に輝く円盤が、スルスルと急上昇。辺り一面がたちまち明るくなり、それに呼応して池の中のハスの花が次々に開花する。その池面に中央祠堂のシルエットが逆さまに映る。
イメージ 1
(ご来光)
イメージ 2

                   (暁に祈る)


 いったんホテルに戻り朝食後、再びアンコールワット見学。
 
 アンコールワットとは「寺院のある都」の意でクメール王朝のスールヤヴァルマン2世が1113年から約30年かけて、王権のシンボルとして、またヒンズー教のヴィシュヌ神を祀る寺院として建設したという。
中心部はまるで3重構造から成る城郭のようだ。

イメージ 3
                  (アンコールワット中心部。「地球の歩き方」より)

まず第一回廊がぐるりと外周を四角く固める。
その内側に同じく四角い第二回廊。第一と第二の回廊間の西側には四角い四つのユニット。四つとも沐浴の池だったという。
一番内側に第三回廊。そのまた中心に高さ65mの中央祠堂がある。これは古代インド思想で仏教の元ともなった須弥山を象ったものの由。この須弥山を間直かに見るためには東側の1か所、見学者用木製階段をよじ登る手段のみ。大勢の見学者が列をなして急傾斜の階段にとりついている。
 
各回廊は建築上の制約から各部屋をユニットとして作り、それを繋げた構造なので、あるユニットに入り、仕切りの壁をまたいだ、と思ったらいつの間にか外に出ていたり、戻ると黄金輝く仏像が安置された中央祠堂に迷い込んだり。自分の居場所が分からなくなる。
 壁には昨夜アプサラダンスで見た「ラーマーヤナ」神話やデバターと呼ばれる女神像などのレリーフが、あるものはくっきりと、あるものはほとんど消えかかりながら延々と続く。

イメージ 4
                   (中央祠堂内巨大仏像と祈る人々)

 午前中一杯見学、午後は自由時間だ。仲間たちは昼食にホテルに戻った。が私と息子は欲張って昼食抜きでアンコール・トム遺跡見学。同好の士はヨネザキさん。
 
アンコール・トムは「大きな町」の意。アンコールワット建設後半世紀を経てジャヤヴァルマン7世によって建設された1辺約3kmの巨大都市。
 
トゥクトゥクでまずバイヨン寺院へ。南大門から本堂までだけでもかなりの距離。言葉通り「大きな町」だ。

イメージ 5
               (アンコールワットからアンコールトム南大門への道)

 バイヨン寺院はヒンズー教と仏教の混淆宗教寺院。やはり中央祠堂は須弥山を模している。ここだけでもアンコールワットの敷地位の広さがあり、堂々たるファサードは東京駅みたい。

イメージ 6
               (バイヨン寺院ファサード)

 ここでは仏面の大彫刻が圧巻。観世音菩薩の四面塔が54もあるという。
 
階段を上ったり、仕切りをまたいだりしていると、いつの間にか妙な男性が私達3人を誘導する。気を付けて! でもボランティアガイドかも、と用心しいしい従いてゆく。
ある地点にくると、ここをバックに写真を撮れ、という。仰ぎ見ると確かに頭上に菩薩様。彼は「この位置でこう合掌すると、いいシーンになる、いや、そうじゃない、この角度、そうそう」などと指図する。指図通り観音様バックに合掌ポーズを撮る。

イメージ 7
(バイヨン寺院仏頭)

と、いよいよ、おいでなさった! 曰く、
「自分は○○国際援助団体のメンバーだがこうして外国人を案内してその返礼に資金を援助してもらっている、云々」
言いながら資金提供した人々のサインとその支援金のリストらしきものを見せる。20ドル,30ドル,50ドル、などと書いてある。冗談ではない。すでに遺跡地区入場料として37ドルも支払っているのだ。でもすごまれるのはいやだし、2ドルで勘弁してもらう。
 
みなさま、こういう手合いにご用心!

 

 未舗装の道を東に死者の門まで、そこから一度北へ行き勝利の門で再び東へ。途中トイレ休憩。ついでに道端でモンキーバナナ1房を買い、風を切って走るトゥクトゥク上で食べる。おいしい…
 
道路を挟んでチャウ・サイ・テポーダとトマノンがほぼ向かい合っている。二つともこじんまりした遺跡。ただ前者には長い空中参道がついている。各遺跡に入場するには入口で係員に例のパスを提示しなければならないが、丁度係員が見えず、提示しないで入場。
 
二つの遺跡見学の次はアンコールワットより古いと言われるタ・ケウ。
ところがここで事件勃発。私のパスが、無い! 確かさっきまで首にかけておいたのに、無い!
そうだ、トイレに行った時落としたに違いない。
チャウ・サイ・テポーダには寄らず、トイレまで戻る。が、無い!
 息子がさっきバナナを頬ばる私の写真を撮ったが、それを見れば、トイレの前か後か、トゥクトゥク乗車中、強風で吹き飛ばされたか、判断できる。で、スマフォで写真確認。バナナ食べてる顔の下にちゃんと写っている! ということは、トゥクトゥク車上で吹き飛ばされた?

イメージ 8
(顔写真入りパス)

 そうだとしたら、出て来るわけない。私は早くも諦めた。息子とヨネザキさんだけ見学させ、その間私は遺跡前のレストランで休憩していよう。
 再びチャウ・サイ・テポーダの前を通る。と、さっきはいなかった係員が私のパスをヒラヒラさせながら手を振っている。ここで落としたのだ。思わず駆け寄って係員と握手、顔写真入りだから悪用はできないだろうが、持ち主に金銭を要求しようとすれば、できないことはないのに。
 ありがとう、カンボジア人。さっきはガイドまがいに騙されたけど、それは多分例外。
 
 ホッとしてこぎれいなレストランでひと息つく。
 
 さて、タ・ケウ遺跡。ここはピラミッドのよう。中央祠堂に至る階段は11段の段差が大きく、しかも急勾配。手摺は、無い。
 
 息子とヨネザキさんに前後を固めてもらい、短い足を思い切り振り上げ、ところどころ出っ張っている石を支えによじ登る。目や頭がクラクラする。落ちたら百年目だ。
でも踏ん張り甲斐あって頂上からの鳥瞰は言葉にならない。

イメージ 9
               (タ・ケウ遺跡の急傾斜石段)

最後はタ・プローム遺跡。ここは規模がさらにデカイだけではなく、スポアン(榕樹)という巨木が遺跡を破壊(あるいは遺跡を抱いている?)ので有名。
イメージ 10
               (巨木に抱きかかえられる?遺跡)

この凄まじい光景を目の前にして思わず「自然破壊!」と叫んでしまったが、うっ、この言葉、通常は人間が自然を損なう意味だから、ここの古い遺跡を巨木が押し潰しかけている、という現象には不適切だ。でも逆にこの木が支えていなかったら、建物は自然崩壊してしまうかもしれない。
 
ここは当初ヒンズー寺院として創建、後仏教寺院となり、その後ポルポト政権の原始ヒンズー教回帰で仏像のレリーフなどが削り取られた。これは自然破壊でなく人災だ。
 

その破壊もあるのかあちこちに建物跡らしい石材が堆積していて、歩行も困難。その石材をまたぎこし、大勢の人々をかき分けかき分け出口に向かう。

 
アンコール遺跡全部をたった1日で見尽くすなんて、不遜極まりない。
事前にしっかり勉強して、しかももっと時間をかけて見学すべきだ。
 
そういえば、カメラマンだった私の亡兄、下尾彰彦、が1990年代東海大学現代文明シリーズの一環として「クメールの微笑み〜アンコール遺跡 復興にむけて」という映画を撮っている。旅行前に見ておけばよかった。
そうだ、今度ゆっくりそれで勉強しよう。
兄嫁によれば、撮影時はポルポト政権時代で兄は随分怖い思いをしたらしく、亡くなる直前にも「ポルポトに追いかけられた」と、うなされていた、という。
 
 集合時間ギリギリにホテル帰着。今回の支援旅行最後の夕食会が始まる。

イメージ 11
(挨拶する亮子さん)

 亮子さんの挨拶。今回の支援旅行への謝辞。これからの支援継続のお願い。最後に日本留学中のボレー君の日本語試験パスの報告に拍手が上がる。
 最後に団長のタカサキさんの、これからも支援を続けます、との約束と支援金贈呈。
 
 レストラン前での全員記念写真。
 
 いい旅行だった。いい仲間だった。一期一会。もうこれで再会できないかもしれない。でも「岩田亮子支援」の目的は一緒。
 これからもその目的のため、各自がそれぞれの立場で、それぞれの方法で応援していこう。
 そう誓った最後の晩餐でした。



.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事