コーヒーを挽きながら〜岸本静江のひとり言〜

ラテンアメリカのコーヒー農園村を舞台にした小説「コーヒーを挽きながら」の著者が描く『静江ワールド』

鶴舞循環器病センターの存続が危うい!


 
 私の住む房総半島中央部の市原市鶴舞地区。高台にある戸数500戸ほどの小さな集落だが、この町が県内に広く知られている理由の1に県立循環器病センター(通称鶴舞病院)の存在がある。
 
 昭和30年に県立結核療養所と地域医療を担う病院として発足以来、平成に入っても拡張を続け、平成10年には「千葉県循環器病センター」及び「鶴舞病院」として1,24ha、病床数220床の大規模病院となった。

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 病院規模の大きさだけでなく、ガンマナイフや救急ヘリコプター発着用のヘリポートなど循環器病用の先進医療機器を備える一方、地域住民の保健・治療維持のため内科、外科、歯科、眼科など通常診療科
も完備するなど、市原市南部地域だけでなく、隣接する山武長生夷隅など中房総地域の医療に大きく貢献してきた。
 
 ところがここにそんな地域住民にとって寝耳に水の情報が飛び込んできた。
 
 この病院の高度医療部門が他地域の病院に移設され、他の診療科目の縮小、やがては廃止されてしまう?かも知れないというのだ。
 
 しかも当の住民には何の説明も無しで!
 
 この県庁中枢部の計画が発覚?したのは昨年9月、県議会で自民党M議員の「『鶴舞の県循環器病センター高度医療部門』を近々設立される『千葉県総合救急災害医療センター(仮称)(千葉市美浜区豊砂)』に統合したら」という提案だった。この提案及び関連質問に対し、滝川県副知事は「統合を検討する」と答弁。
 
 この答弁に呼応して1127日開催された県の地域医療構想調整会議で県庁病院局は、すでに建設業者に発注済みの上記「千葉県総合救急災害医療センター(仮称)」の基本設計を中止、新たに「千葉県循環器病センター」(鶴舞病院)の専門医療部門を上記の「県総合救急災害医療センター(仮称)」に一本化することを表明した。(センターばっかりなので、ややこしい)
 
 126日の県議会で県議の山本議員がこの動きについて質問。県側の答弁は市原市には他に千葉ろうさい病院、帝京大学ちば総合医療センターがあり、特にこの帝京センターには24時間体制の三次救急医療制度が設置されるので、鶴舞及び周辺地域住民はそこで診療してもらえばいい、との答え。(因みに一次救急とは「帰宅可能な患者」、二次救急とは「手術・入院が必要な患者」、三次救急が「重篤な患者」だそうな。)
 
 そして、その動きの端緒として、まず鶴舞循環器病センターの脳卒中専門医7人中昨年10月に2人、今年4月には2人の移動が確定、という。それまでは7人の医師が24時間365日対応してくれていたのが、この4月からは週3日は夜間診療お断りとなる。専門医の他にも彼らをサポートする専門看護師などもすでに引き抜かれている、というから、これからは我々が脳卒中で倒れるにも、日や曜日を選ばなくてはならないのだ。
 
 そのような動きに対し、県は市原市にも、我々地元民にも何の説明もなく、住民は新聞や県議、市議、その他から洩れ伝えられる情報のみで右往左往するばかりだった。特に病院地元の鶴舞住民は病院建設に際し、用地である山林の伐採、整地、など無償の勤労奉仕をしたのだから、怒るのは当然だ。
 
 それに同じ市内とはいえ、広域の市原市。ろうさい病院はJR八幡宿駅近く、帝京病院はJR姉ヶ崎駅近く、いずれも東京湾岸に近い。両病院とも鶴舞から20km余、姉ヶ崎の帝京病院で三次救急医療を受けた鶴舞在住の脳卒中患者がその後通院するにも直通の公共交通機関はなく、バス・小湊鉄道・JR線・バス、と乗り継がねばならない。タクシー利用すると往復15,000円もかかるという。ましてや外房や内陸に位置する山武・夷隅・長生地域の住民にとってはこれが無くなると医療空白地域になってしまう。

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 この危機を前に年が明けた110日、2市3町行政連絡協議会(市原市、茂原市、大多喜町、長柄町、長南町)と長生・夷隅地域市町村(勝浦市、いすみ市、一宮町、睦沢町、長生村、白子町、御宿町)は、千葉県知事に対し、「千葉県循環器病センターが広域に供給している医療機能の維持確保に関する要望書」を提出。同時に当該地域住民による同センター維持存続を要望する住民署名運動にも着手。最終的には1520万人規模の署名を集めることを目標にしている。
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房総半島の医療施設の分布図を見ると、圧倒的に人口の多い千葉市以北の、それも東京に接する北西地域に集中している。人口密集地に多くの医療施設が必要なのは理解できる。が、その地域は他の県立や、国立、市立、大学付属の病院・診療所があり、通院のための公共交通機関も発達している。
 
 また多くの私立の医療機関が主として人口密集地に設立運営されるのも容易に理解できる。患者が多ければ経営が安定するからだ。
 
 だが、だからこそ、採算を度外視しても、過疎地域には公立病院を設置してほしい。現存する病院を維持してほしい。以前高滝ダム湖畔に存在した旧国保市民病院・国保診療所は平成218月に大幅に縮小された。医師不足か採算割れかわからない。現在は入院・外科手術施設を持たない「医療法人社団緑祐会」が運営している。
 
同じ税金を払っているのだから、いや、交通便利で市役所、図書館、市民会館、公民館等大型公共施設など行政の恩恵を受けやすい地域に比べ、税金支払いひとつをとっても不便な交通機関を利用して半日掛かりで出かけなければならない過疎地域の住民の、唯一で命懸けの願いが、我々の「鶴舞循環器病センター」の存続・維持なのだ。
 
要望書にあるようにこの千葉県循環器病センターが南総地区から無くなる、という事は住民の「命の最後の砦」を失うことなのだ。
 
25日(日)鶴舞公民館で鶴舞活性化ネットワーク主催「どうなる! どうする? 鶴舞循環器病センター存続問題」と題する講演会が行われ、100名以上、会場に入りきれないほどの住民が駆けつけ、この問題を真剣に話し合った。
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参加者の多くから「直接県の担当者から説明を聞きたい」との要望が上がった。が、出席した県議、市議、同ネットワーク役員からは、「いくら要望しても、住民からのつるし上げを恐れて担当者は絶対住民説明会には出席しない」という説明があった。
 
では病院内部の職員たちの意見はどうだろう? 
 
歴代のセンター長は広く県民一般に先進医療を施すと共に、地域住民とのつながりを重要視、地域住民の日常生活における健康維持に努めて下さってきた。2代目センター長だった龍野先生は病院側と地域住民の意思疎通の場として地域懇談会を設立して下さり、私の夫もそのメンバーだった。また私も長年病院内の治験審査委員会委員として及ばずながら一般人の立場から意見を申述してきた。治験担当医師の林田先生も新薬開発の為、また通院・入院患者の治療向上の為、ご多忙にもかかわらず尽力下さっている。その他の方々も、決して地域住民を見捨てて、ここを廃院にしよう、などお考えになっていないはずだ。
 
ましてこの周辺地域から通勤して来る看護師、薬剤師、レントゲン技師、検査技師、理学療法士、給食担当員、清掃作業員、施設管理・保全職員など病院運営に欠かせない人々にとってここは大切な職場である。ここが無くなれば地域の雇用問題にも大きく影響する。
 
他方、鶴舞のセンターを廃止、その患者を受け入れる施設として指定されている他の2医療機関(帝京大学ちば総合医療センターと千葉ろうさい病院)にとっても、事態は深刻だ。現在でさえ殺到する患者で病院職員の過労が心配されているというのに、この上さらに中房総地域の患者を受け入れる余地があるのだろうか?
 
住民の要望もきかず、地域の実情も知らず、県庁内部で、それも秘密裡にこんな住民の命や健康にかかわる問題を、一体誰が、何のために、画策しているのだろう?
 
憲法25条にはすべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」とある。
 
その第一義の「健康な最低限度の生活」が今損なわれようとしている。


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