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保安隊日乗 低殺傷兵器 2

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 ハンガーを出ると思い思いに銃を背負って疲れ果てたような顔をしている兵士達が現れた。

「姐御は絞るねえ」 

 要が兵士達、保安隊警備部員の姿を見てつぶやく。一応中佐や大尉の階級のラン達を見つけてよろよろと敬礼する警備部員。イヤープロテクターをはずそうとする姿は明らかに疲れ果てて見えた。

「あ、ラン。これからそいつの訓練か?」 

 中で一人、長身の女性将校が金色の髪をなびかせながら近づいてきた。警備部部長、マリア・シュバーキナ少佐。その姿を見てランはにやりと笑う。

「その様子だと相当走らせたな・・・銃の訓練はそれからか?」 

「まあ体が資本だからな、この業界は。それと銃の扱いも多少は慣れるべきだろう」 

「慣れるってれべるじゃねーだろ」 

 ランがそう言うのももっともだった。月に一万発のアサルトライフルでの射撃訓練。そんなことをしている部隊といえば東和には一つもなかった。

「ランのところが甘すぎるんだ。多少は鍛えるべきだろ?」 

「予算がねーよ。うちはただでさえアサルト・モジュールなんていう馬鹿みたいに予算を食う機材を扱ってるんだ。それに茜お嬢様のお手伝いもしないといけないからな。なかなか難しいもんだよ」 

 そう言うとランは手を振って自分についてきた誠達をせかした。

「ちゃんと訓練をしておけよ」 

 マリアが明らかに誠に対してそう言った。誠も射撃に関しては自身がないこともあって申し訳ないという表情で敬礼をしてみせる。

「ついて来い!」 

 ぎこちない誠の腕を要が思い切り引っ張る。よろめきながら誠は射場が見えるハンガー裏手に向けて歩き出した。


 空薬莢が転がる射撃レンジで静かに先頭を歩いていたアイシャが手にしたバスケットからショットガンの弾薬の箱を取り出す。

「どーれ・・・サンドバック弾か・・・こいつは銃には悪そうだよなー」 

 駆け足でアイシャに追いついたランが仕方がないというようにオレンジ色の毒々しい箱を開け始める。誠やカウラも仕方がないというように土嚢を蹴って射場に上がった。

「誠、オメエ的な」 

「西園寺。冗談を言う暇があったら弾を込めろ」 

 カウラはそう言うと新しい弾の箱から取り出した弾薬を一発一発青い銃に込めていく。

「これって何が入っているんですか?」 

 実は普段から同じ構造のショットガンを銃の下にぶら下げて使用している誠の言葉に要は大きくため息を着いた。

「あのなあ、基礎も基礎だぞ。弾頭には布製の袋が入っているんだ。その中身は重量のある樹脂。約5メートルで10センチくらいの大きさに開いて目標に到達。打撃力で相手を無能力かすると言うのが売り文句だ」 

「有効性があるのが25メートルくらいだからな。かなり銃を撃つタイミングが難しい。クバルカ中佐。私からでいいですか?」 

 言葉を継いだカウラが弾を込め終わると静かにフォアグリップを引いていた。

「おっし。口で言っても分からねーだろうからな。そこの鉄板にぶち込んでやれ」 

 ランがそう言うとそのままカウラは10メートルくらい先の鉄板に狙いを定めた。すぐに初弾が放たれる。銃声の後、鉄板が鈍器で殴られたように大きく揺れる。

「へえ、面白いわね。じゃあ私も」 

 そう言うとアイシャはシャムが使っているショットガン、サイガと同型の青いショットガンの重厚を30メートル先のペーパーターゲットに向けた。

 三発の銃声。そして着弾点で上がる土煙。

「面白いわね」 

 ニコニコ笑いながらアイシャはテーブルに置かれていたオペラグラスに手を伸ばした。

「ああ、当たってるわね。私すごいわ」 

 満足そうに頷くアイシャ。その同じ方向を要が見つめている。サイボーグらしく望遠機能を使用しているようで静かに額に右手を当てている。

「・・・当たり前だ、こんな距離」 

「じゃあお手本を見せてよ」

 口を尖らせるアイシャに対して笑みを浮かべて青い銃にマガジンを叩き込む要。すぐさま五連射。満足げに全弾撃ちつくしたと誇るように誠達を見回す。

「さすがよねえ。これは一応褒めとくわね」 

 再びオペラグラスを手に取ると頷きながらアイシャは着弾点を確認した。

「じゃあ私もやるか・・・」 

 カウラがそう言って初弾を装てんしたところでランがカウラの銃に手を置いた。

「オメー等射撃ごっこしているわけじゃねーんだ。全員そこに並べ」 

 仕方ないと言うようにカウラは銃口を上に向けて要達が使っていた射撃レンジに立った。要もアイシャも小さいとはいえ上官のランに逆らうわけには行かずに隣のレンジに移る。

「あのー僕は?」 

「神前は撃ち方自体がおかしいから。ここでアタシの撃ち方を見てろ。

 そう言うと130cmに満たない小さな体には大きすぎるショットガンの銃口をターゲットに向ける。

「まず反動は普通の殺傷弾よりでかいからな。こうしっかりホールドするわけだ」 

「まずアタシは普通の人間よりちっこいからな。こうしてしっかり銃にぶら下がるわけだ」 

 ランの声まねをする要。思わず噴出しそうになる誠だが上官相手とあって必死になってこらえる。

 完全に要を無視していたランが初弾をターゲットに命中させる。そして驚いている誠に見せ付けるようにして短い手で起用にポンピングしながら5発の弾丸を発射して見せた。

「こうやるもんだ」 

「小さいからな。よくできたなあ」 

「西園寺。一度死んでみるか?」 

 殺気立つラン。その元々にらんでいる様な顔がさらに殺気を帯びる。

「とりあえず見本だ」 

 カウラはそう言うと等間隔で五発の連射を行なう。ターゲットの金属プレートが煙に覆われる。

「低殺傷能力でもこれは危ないんじゃないですか?」

 誠の言葉に要が心底呆れたという顔をしている。

「『低』だからな。オメエが三ヶ月前まで使ってた22LR弾だって当たり所が悪ければ人は死ぬぞ。こいつも同じだ。頭とかに当たれば場合によっては十分死ぬからな」 

「そんなものよ。警棒を振り回すより文化的でしょ」 

 要は取り外したマガジンに、アイシャはバレルの下の弾倉にオレンジ色の派手な色のショットシェルを押し込んでいる。

「なんやかんや言いながら嫌いじゃないんだなお前等も」 

 そう言いながらカウラも装弾を開始している。仕方なく誠も慣れた手つきで弾倉を開いてショットシェルを押し込んでいく。

「遊びじゃねーんだからな。狙う対象は暴動に発展しそうな興奮状態の暴徒。それを一撃で殺さずに行動不能に陥らせる。それを頭の中でシミュレーションしながら撃てよ」 

 ランもまた装弾を開始していた。バスケットの中の弾は五箱。実銃の射撃訓練に比べると明らかに少ない。

「これも高い弾なんですか?」 

 弾を全弾装てんしてフォアエンドを引いて薬室に弾を込める誠。

「まーな。結構な値段だがスラグ弾やバックショットとはかなり弾道が違うぞ。急激に初速が落ちるからかなり狙いより下に当たることを考えろよ」

 親切なランの言葉を聴くと誠は銃口をターゲットに向けた。


「ボスン」 

 誠の撃った初弾はあっさりと出たがターゲットの手前で着弾した。

「もっと銃口を上げろ。初速は普通のスラグなんかよりぜんぜん遅いんだからな」 

 ランの言葉に少しばかり焦りながらポンピングをする。

 そして狙う。照準装置の無いショットガンでは感覚で着弾点を覚えるしかないことが誠も知っていた。

「ボスン」 

 今度はターゲットを飛び越えて白い弾頭らしきものが飛んでいくのが見える。

「ったく・・・お前本当に東和軍の幹部候補の過程を通過したのか?」 

 呆れる要に首をひねりながら再びショットシェルを込めて銃口をターゲットに向ける。

「ボスン」 

 ようやくターゲットの中央に弾が当たったのが分かる。人型の鉄板が揺れて着弾を表している。

「ボスン、ボスン」 

 四発撃ち尽くして誠は大きなため息をついた。

「誠ちゃん。もう少し練習しようね」 

 アイシャもさすがに呆れたと言うように誠の肩を叩く。仕方が無いとうつむく誠を見ながらカウラは自分の銃に弾を込めていた。

「まあ神前には剣があるだろ?どうせこの距離くらいでの衝突だ。警棒で対応できれば文句は無い」 

「その警棒で対応できないからこいつを使うんじゃねえのか?甘いねえ、隊長殿は」 

 カウラのフォローを台無しにする要。誠はいつものことなので逆に開き直って銃に弾を込め始めた。


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