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加代子は、カサブランカのような白いドレスを身につけ、赤い天然石のペンダントにこの香りをつけておいた。
そして、男の前に、さりげなく立ち、小さな小瓶を手渡しながら
『私、香水開発担当の大島加代子です。新しい香水を開発しましたので、どうぞ。インスピレーションという名の
香水です。この香りを嗅ぐと恋に陥ってしまう危険な香りです。』そう言って目をみつめた。
男は香りの感想は一切いわず、戸棚にあったバカラーのワイングラスを新聞にくるみ記念に持っていってくれと
加代子に差し出した。
『あとで、社の方に香りの感想をメールしておくから。』長身の男は、そういって部屋をでていった。
加代子はバカラのグラスをくれたくらいだから、よっぽど、この香りがきにいってくれたんだと思った。
夕方・・・
『あの香りは素晴らしすぎる、僕はさりげない野に咲く花のようなそんな香りが好きだ。僕の店では、この香りは、使わない。』
高級なバカラーのグラスを新聞紙で包むような男だ!あんな男に認められなくてもかまわない。
だが、なぜか、自分が、わざとらしい香り、小さいときに育った下町の香りを引きずっていると言われたような気がした。
縁がないって、こういうことか・・・・
ビジネスのためでなく彼の心を捉えるために開発した香りだったのに・・・
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