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つばき日記
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加代子は、カサブランカのような白いドレスを身につけ、赤い天然石のペンダントにこの香りをつけておいた。

そして、男の前に、さりげなく立ち、小さな小瓶を手渡しながら

『私、香水開発担当の大島加代子です。新しい香水を開発しましたので、どうぞ。インスピレーションという名の

香水です。この香りを嗅ぐと恋に陥ってしまう危険な香りです。』そう言って目をみつめた。


男は香りの感想は一切いわず、戸棚にあったバカラーのワイングラスを新聞にくるみ記念に持っていってくれと

加代子に差し出した。

『あとで、社の方に香りの感想をメールしておくから。』長身の男は、そういって部屋をでていった。

加代子はバカラのグラスをくれたくらいだから、よっぽど、この香りがきにいってくれたんだと思った。

夕方・・・


『あの香りは素晴らしすぎる、僕はさりげない野に咲く花のようなそんな香りが好きだ。僕の店では、この香りは、使わない。』


高級なバカラーのグラスを新聞紙で包むような男だ!あんな男に認められなくてもかまわない。

だが、なぜか、自分が、わざとらしい香り、小さいときに育った下町の香りを引きずっていると言われたような気がした。

縁がないって、こういうことか・・・・


ビジネスのためでなく彼の心を捉えるために開発した香りだったのに・・・

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一朗は来る日も来る日もメールを待った。ナース恭子からのメールは、なかった。

自分から連絡すると、いつも電源が切られているか、電波の届かないところに・・というメッセージ届く

のみであった。

メールで送るとエラーになった。

ある土曜日、一朗は、とうとう、バスから降りる恭子を待ち伏せして、話しかけた。

『君の手のぬくもりが忘れられない』


『私が貴方の手を握った時、貴方の脈は速くなるかと思ったら、ちっとも、変化しなかった。洞性徐脈

かも、しれないわ。  じゃぁ、職場に急ぐので。』恭子は、そういって、走り去った。


スポーツ心臓なんだよ  と答えたかったが最近一切スポーツをしていない自分に気がついた。


一朗は若いナースを恨むことをやめた。

小さな整形外科の看護師の恭子は裏マニュアルどうり、恋人役を演じただけだ。

一朗は退院し、恋は終わったのである。


最後にたったひとつだけ、言った真実の言葉だけを大切にしよう。これからは、体も動かそう!

一朗は涙が止まらなかった・・・・


風の中にあるタンポポのように、ふっと吹けば、消える恋もある・・・・(おわり)


(画像は、失恋を表したイラスト)
 

                                       

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僧侶一朗は、地方新聞の連載小説親鸞を、生クリームたっぷりのチャイを飲みながら読み、ため息をついた。

食は、行乞に、よる。・・・これが、出家の第一歩。

衣は糞掃衣によれ・・・打ち捨てられ、垢にまみれたぼろ布をまとえと言う意味。


時代時代によって、必要とされる宗教は変化するんだ・・と、自分に言い聞かせ、エレベーターを降り

ちらっと、自分のバーバリーのマフラーの結び目が、流行風になっているかを、確認し授業にむかった。

道の途中ナース恭子のことが、頭をかすめた。バス通勤の恭子からは、バスの中から、僕のマンション、

そして、僕が通ることもバスの中から見えるはずなのだ!




一朗は寺の傍のマンションに住んでいる。41歳、独身、高校の世界史を教えるかたわら、土曜日曜は

僧侶としての仕事も、たのまれて、やっている。

人は一朗のことを、マンション坊主とよんでいる。

ある日一朗は怪我をして、街の小さな整形外科に2週間ほど、入院した。

入院中、若いナース恭子から携帯のメールアドレス教えてね、といって手を握られた。一朗は動揺した。


実はこの小さな整形病院には、裏マニュアルがあり、患者さんには恋人のように振舞うということが、

常識となっていた。

一朗は、そんなことも知らないで、僧侶であることも、忘れ、世界史も、忘れ、恭子しかみえなくなった。

恭子のせつないくらい細い首と白衣からも想像できるウエストのラインが一朗の頭から、離れることは、

なかった。

ナース恭子のひとこと、ひとこと、おはようございます程度に思っておけば、よいものを・・・

(画像はバスの中から見えるあろうと思われるマンションのイラストを、描いては消し、描いては消し昨日 不本意ながら完成としたものですが、マンション その他、風景は、特に描くのが苦手です。我慢して見てください。)

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『斉藤さん・・・もう、お別れね。』

恭子は、斉藤に握手を求めた。

『手紙書いてくれな。』斉藤は住所と施設の名が書いてある紙切れを恭子に渡した。

『でも、斉藤さんは、字が読めないんでしょ。誰かに読んでもらう?』

『うん。』と斉藤は、うなづいた。

恭子は斉藤が病気で字が本当に読めないのか、疑問を持っていた。

『私の住所も本名もいえないけど、つばきという名ではがきを書くわ。でも、つばきという名忘れる?』

斉藤は大きな目でじっと見つめ、

『忘れない!』と言った。

恭子は斉藤に絵2枚を、渡した。

そこに小さくローマ字で、つばきとサインが書いてあるのだ。

斉藤は外国中を旅し、各国の料理が作れるとも言った。

が、しかし、今は病気で歩くことさえもできない。財力もない。

『恭子、背中を丸めないで、胸を張ってまっすぐ、歩けよ。』

斉藤はそう言って車椅子を手で漕いで、自走で部屋を出て行った。


斉藤がいなくなった後、恭子は目を閉じた。

目を閉じた世界の中、斉藤が車椅子から、降りて、スタスタ歩き英語、中国語、日本語をスラスラ話す

姿が浮かんできた。不思議な幻想的な一瞬の夢からさめた、恭子は目をあくと、戸までが、ゆがんで

みえた。外は冷たい雨が降っていた。

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男からのメールが、届いた・・・

男からの着信は、通常、壁に電動で釘を差し込むような音である。

が、男はその日の気分で、着信の音を変える。

靴のコツコツする音だったり、風の音だったり、波のおとだったり、雨だれの音だったり・・・

今日は、滝の流れる音の着信!


着信があると、女は、いてもたっても、いられない。


駅であろうが、道端であろうが、しゃがんで、メールを読み、即、打ち返す。このときなぜか女は鼻のとこ

ろへ、手を持ってくる・・・


男はハッカーで、日本でも5本の指に入ると言う人間だ。


セキュリティ会社に、引き抜かれたが、もう30歳も目の前、だんだん、技術力も古くなり、平凡となっ

ていった。自分より2歳年上のこの女、だますことくらいなら、わけは、ないが・・・


女は、女で、男がだましていることは、百も承知していたが・・・



同業か。。。。    女はつぶやいた。

(画像は、昨夜私が描いたイラスト、画像上、デッサンやその他おかしな部分が多々ありますが、ハッカ ーのメールを待つ女が描いてみたかったのです。)

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