小説「竜の爪 竜の牙 ぼくらの冒険」

ふうわりとあたたかくてきゅんとしたらさいこう。

教会編1章 少女キリエ

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〜8話 教会〜

セーラもジョシュも、黙ったままだった。

小さな女の子のつたない言葉で語られた思わぬ話に、頭が混乱していた。
信じられない思いはあったけれど、キリエの身なりの様子や表情から、それを信じた。
それに二人は、見かけ以上にとても広い世界を知っていた。
世の中には、不思議なことや恐ろしいことがたくさんあることを、知っていた。

キリエは話し終えてホッとしたのか、少し落ち着いた表情を見せたが、突然
「あ!」
と声をあげた。
「どうしたの?」
「・・・石。石がないの!コレくらいの、お母さんがくれたの!」
キリエは両手で、輪を作る仕草をして、すがるようにセーラを見てから、
ハッと何か思い出したのか、あわててポケットを探った。
出てきたのは、キラキラといろんな色のガラス玉が付いた、かわいい髪飾りだった。
キリエはそれを見つめると、両手でそっと包み込んだ。

「石って、それの事?」
「違うよ。これは、お父さんが私の誕生日にって買ってくれたんだもん。・・・ありがとうは・・・言えなかったけど・・・」
セーラは、キリエの髪をそっとなでながら言った。
「そう。。。じゃあ、きっと似合うわね」

黙って二人の様子をぼんやり見ていたジョシュが、突然「あぁ」と言った。
そして、胸ポケットから小さなビー玉くらいの小石を取り出した。
キリエが言っていたのよりも、だいぶ小さなそれは、いくつかの色が混ざったような変わった色をした、キレイな物だった。
「それは?」
「お前が泣いてた辺りに落ちてたんだよ。
 さっき外で見つけたんだけど、面白いから拾ってきた。こんな小さいけど?」
キリエはジョシュから石を受け取って、まじまじとそれを見つめた。
手に乗せると、思ったよりもずいぶん軽くてすごく小さい。でも、奇妙な色の混ざり方は、あの石と同じようだった。
「たぶん、これだと思う。。でも、なんでこんな小さくなっちゃったんだろ?」
「力を使っちゃったんじゃねえの?こういう場合。 お前をふっ飛ばしてきたんだろ、それ?」

足を組んで頬づえをつきながら、さらりとジョシュが答えた。どうでもいいという感じに。
せっかく見つけたいいものを取り上げられた子供みたいだった。

でも、キリエはなんだか本当にそんな気がした。きっと自分を助けてくれた石。祖母と母の石。
ふと、このまま消えてなくなってしまいそうに思えて、慌ててギュッと握りしめた。

「お母さんとおばあちゃん、どうしたかな。 どうして一緒に来なかったんだろ・・・」
ポツリとつぶやくと、涙がポタリと落ちてシャツに染みをつけた。
それを見ると、また後から後から涙がこぼれ落ちてきて、キリエはうつむいたまままた泣いた。
どんどんシャツが濡れて、染みが広がった。

セーラは、かける言葉が見つけられず、そっとキリエを抱きしめた。
ジョシュは、やっぱり頬づえをついたまま、二人をぼんやり見つめていた。。。

〜7話 誇りを胸に〜

「なに?!」
キリエは驚いて、作業場の奥にある台所の方を見た。けれど、二人ともそれには答えず、
祖母はスカートのポケットから、子供の拳くらいの大きさの石を取り出すと、
すばやく母に手渡した。
受け取った母は、うなずいて、テーブルの上にあった、父からの贈り物の髪飾りをとり、
キリエの手を引いて隣りの部屋に駆け込んだ。
と同時に、数人が部屋に上がる音がした。


強気な祖母の声が聞こえる。
「いつまでこんな事を続ける気だい?」
相手は、知り合い・・・なのだろうか?男の低い声が、当然のように答える。
「オレたちだって、平和に静かに暮していたいさ。それは、みんな同じだろ」

「だったら、断ち切ってしまえばいいじゃないか!・・・忌まわしい・・・そんなものは」

男は、ため息を一つつくと、ゆっくり続けた。。
「それができるなら、とっっくにそうしてるさ。 あんた達だって、同じだろ?
 ・・・みんな、逃れられないんだ。
 でも安心しな。 それも、もうすぐ終わる。
 あの子で、終わる。・・・大人しく子供を渡せば、他の人間には何もしない」
諭すような、でもどこかイヤらしい笑いを含んだような言い方で、男は続けた。
「オレたちだって、好きで続けてきたわけじゃあないんだ。ばあさんも、新しい人生をはじめりゃいいじゃあねえか」

しばらく間があって、祖母が言った。
「一つ聞くけど、あんたのそれは・・・誇りかい? それとも呪いだと?」
男は吐き捨てるように、忌々しそうに即答した。
「呪いだよ」
「こんなものを誇りだなんて言ってたのは、お互いもうずいぶん昔のことだろ?
 まぁ、考え方は変わっても、やってる事は同じなんだが・・・悲しいことだねぇ」

そんなことはどうでもいいというように、男は言った。
人ひとりの命なんて、もはや何てことないのだろう。

それを聞いた祖母は、凛とした、強い口調で言い放った。
「あの子は、渡さないよ!」

「自分の人生すべて呪いのせいにして、人を殺し続けている。そんな連中に、あの子を渡すわけにはいかない!
 これは、一族の誇りにかけて・・・」


それを聞いた母は、何か決心したようにキリエに向き直った。
「誇り・・・そうね。
 強い誇りを持ってこそ、未来を切り拓いていけるのかもしれない・・・。」
祖母から受け取った石をキリエの手に握らせ、髪飾りをシャツのポケットに押し込んだ。
そして、力強く抱きしめた。
「自分を責めることなく、強く生きなさい!生き延びなさい!
 お父さんもお母さんも、おばあちゃんも、みんなあなたを愛してる事、ずっと忘れないでね。あなたは絶対、大丈夫よ!」

そういうと、何か知らない言葉を唱えた。

隣りの部屋から、ガターンと何かが倒れる大きな音と、数人の足音がした。

と思うと、キリエの視界は次第に小さく暗くなり、
母の優しい顔が、かすんでいった。
「お母さん!お母さーーーん!!」
そして、母の笑顔が見えなくなった。。。。



気づくと、見知らぬ村の古びた教会の前にいた。
(お母さん!!)
悲しくて悲しくて、泣いた。ここはどこなのか、どうなってしまったのか。
おばあちゃんは、お母さんは?
考える余裕など、まったくなかった。ただ泣いた。

すると、1人の女性が近づいてきた・・・。

〜6話 誇りと呪い〜

父の葬儀の手配は、隣家のおじさんとおばさんがすべてやってくれる事になり、準備のため二人は帰っていった。

家の中は、朝なのに薄暗く、重苦しい空気が充満していた。
誰も何も言わない。いえない。
テーブルに置かれた髪飾りを、離れた所から見つめていたキリエは、とうとう泣き出した。
激しく大声で泣きながら、手袋のことを打ち明け、必死に、言葉にならない言葉で謝った。
怖くて怖くて、心細くて不安で、わけのわからないままただ泣いた。
自分のせいで父が死んだとしか思えなかった。
溢れてくる感情をとどめることはもうできなかった。
そんなキリエを、母はただぎゅっと強く抱きしめて、
「ごめんね、ごめんね」
とだけ言った。
その意味は、キリエにはわからなかった。


しばらくして、落ち着いたキリエをイスに座らせると、その手からそっと黒い手袋をはずした。
久しぶりに直接触れる、母の手の感触、ぬくもり。
風の温度。
強く手を握られると、さっきまでの高ぶった感情はすっかり消え去り、静かな穏やかな安心感がやってきた。

母は、キリエの前に膝をついて座ると、まっすぐにその目をみつめた。

「キリエ、お父さんもお母さんもおばあちゃんも、みんなあなたのことを愛してる。
 誰よりも、何よりも大切な宝物なの。それだけは忘れないでね。いつも、いつまでもずうっと愛してる、ずっとそばで見守ってるからね」
「私だって、みんなの事大好きだよ、愛してるよ!……なんでそんな事いうの?」

一瞬寂しい笑顔をみた気がしたが、すぐにぎゅっと抱きしめられ、表情は見えなくなった。
キリエも力いっぱい抱きしめ返した。

手袋をはずした手のひらに、キリエは見慣れないものを見つけた。
両方の手に、いつの間にできたのか、小さな傷のような痣(あざ)のようなものがあったのだ。
手をゴシゴシこすり合わせてみたけれど、消えるものではなかった。
「それは、呪いよ」
「誇りだよ」
母の声と、祖母の声が重なった。

呪いと誇り。。。
どちらの言葉も、キリエにはピンと来なかったし意味もよくわからなかった。

「まだ誇りなんて言うんですかっ?!これのどこが誇りなんです!大切な家族を奪われて、それでよくそんなことが言えたものね!」
母のあまりに激しい声に、キリエは驚き身を硬くした。
今までそんな姿は一度も見たことがなかった。
幼い娘の前でそんなことを言ったことを後悔したのか、母はぷいと後ろを向いてしまった。
祖母は肩を落として、悲しい顔をした。
「確かに、そうかもしれない。私だって何度もそう思った。。。家族を失ったのは、一度だけじゃあないからね……」
「だったら!!」
「でもこれを、キリエの小さなカワイイ手のひらにこれを見つけた時。もちろん初めは絶望的な気持ちになった。どうしてこんなって……。でも、でもなぜだか、希望もみえたんだよ。
 この子はきっと大丈夫だって、何か明るい方へ向かっていくような、そんな気がして。これまでのすべてが、意味があったんじゃないかって、そう思えてきてね……」

祖母は、いつもと同じ、穏やかで優しい顔でキリエを見つめ微笑んだ。
納得できない顔をしていた母も、つられてキリエを見た。


家族をたくさん失った事。手のひらの痣の事。希望?意味?
キリエにはわからない事だらけだった。
ひとつひとつ聞いてみよう、と口を開きかけた時……。

ガシャーーーーン!!
台所の窓ガラスが割れる、大きな音が響いた。

〜5話 父の死〜

みな信じられないという顔をしていた。
母は力なく座り込んでうつむき、消えそうな小さな声で言った
「主人は・・・」
「まだ警察の保安事務所に。。夕方にはこちらにお運びしますよ」
50歳くらいの、口ひげを生やした優しい眼差しの警官は、母のそばに座ると、肩に手を置いて言った。
そして、申し訳なさそうに続けた。
「大変言いにくい事なんですが、いろいろお聞きしたい事がありまして・・・」

家の中の暗いリビングに、母と祖母と隣りの家のおじさん、警官が座った。キリエは隣家のおばさんと、少し離れたイスに座った。
おばさんはキリエの手を握り、しきりに「大丈夫よ、大丈夫よ」と繰り返していた。

「強盗の仕業ではありません。売り上げらしい大金があったのですが、そのまま残っていました。
 仕事でトラブルなど、ありませんでしたか?
 傷口が・・・刃物なんですが、何ていうかこうプロの仕業じゃないかと思うんです・・・」

重い沈黙を破った警官の言葉に、母と祖母の目の色が変わった、ようにキリエには見えた。
そして祖母と視線が合った。
その瞬間、指先が冷たくなり、心臓を吐き出しそうに鼓動は激しくなった。
思わず目を伏せたその視線の先には、黒い手袋があった。


「恨みをかうようなことはありません。どうしてうちの人がこんなことになるのか、全くわかりません」
母は強い口調で、警官に言った。
「そうですか。大変失礼しました。警察は全力をあげて必ず犯人を捕まえます。でも、どんなことでも何か思い出しましたら、すぐに連絡をください」
「あ、それからこれ、・・・」
警官は、袋から小さな木箱を取り出した。
「身元を調べるために、封を開けてしまったんですが・・・娘さんへの贈り物のようでして」
母がそっと蓋を開けると、赤や黄色の小さなガラスが散りばめられた、花の形の髪飾りがちょこんと入っていた。
明日はキリエの6歳の誕生日だった。

〜4話 黒い手袋2〜

家に戻ると、そうっと扉をあけた。
台所には母の後ろ姿、織物の作業場には祖母の姿がいつもと変わらずにあった。キリエはホッと息を吐いてから、わざと大きな元気な声で言った。
「ヤギのミルクもらってきたよ!すごいの、絞りたて!!」
振り返った母と祖母の笑顔は、いつもと何も変わらないものだった。。。


その日がいつもと違ったこと。
それは、いつになっても父が帰らないことだった。
夕方になっても、日がすっかり沈んで夜になっても、父は帰らなかった。
同じように町に行った者はみな帰ってきていたし、隣町で父を見かけたという人はいたが、どこで何をしているのか全くわからなかった。今までそんな事はなかったので、真っ暗な中、母は隣町まで探しに行こうとまでしていた。しかし、それ以上にキリエは恐怖でいっぱいだった。
朝、手袋がはずれたことは、母にも祖母にも言えずにいたからだ。
何も起こらなかったし、平和に楽しく一日は過ぎていって、そして終わるはずだったから。
怖くて怖くて、口に出す事さえできずにいた。

眠れない夜が過ぎ、村中が暗い空気をたたえたまま朝になった。
母が隣家のおじさんと馬車で隣町に向かおうとしていたとき、峠を越えて一頭の馬がやってきた。警官だった。
それは、父の死を告げにやってきたのだった。

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