踊り場でティータイム

河惣益巳先生作「ツーリング・エクスプレス」の私設ファンサイトです。二次創作小説等を掲載しています。

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自分が表紙を飾ったアストレ・ジャーナル12月号が増刷されるとの噂を耳にして喜んだのも束の間だった。年上ながらも格下に当たるフルートの第2奏者にそれとなく自慢したのは昨日のことだったのに。
『広報部で耳にしたんですが、どうやらアストレ・ジャーナル12月号が増刷になるそうです』
喜びを隠しきれず、珍しく自分から話しかけたあの時、第2奏者は何と返事をしたのだったか。
“良かったですね”と言いながらも、何か言いたそうな表情だった。
結局それ以上アストレ・ジャーナルの話は続かなかったのだが、ハミトは気に留めなかった。それどころか、
(私を妬んでいるのか?)
などと、後になってみれば見当違いなことを思ったりしたのが悔しかった。
(せっかくディーンと共通の話題が出来たのに…)
アストレ放送管の会報誌であるアストレ・ジャーナルは定期会員以外の一般客には販売されるため、それを見込んで印刷されるのだが、その見込みを大幅に上回る売れ行きで増刷されたのが今シーズン最初の9月号だった。
その理由が表紙を飾ったコンサートマスターの写真にあったことは、追加販売を希望する人々の要望理由により明らかだった。
広報部でも予想外の反響に驚き、その後の表紙撮影に力が入ったことは言うまでもない。
その時以来の増刷と聞いて、表紙を担ったフルート首席が喜んだのも当然だろう。自分の想い人が表紙だった時と同じことになったのだから。
実際、彼が喜んだ理由はその一点だけにあったと言ってもいい。
(やはり私達は特別な絆で結ばれているのではないか…)
東洋生まれの彼は欧米人とは異なる思想の持ち主で、本気でそう思っている部分があった。
これは何かの啓示ではないだろうか…と。
ハミトは考えた。
誰よりも強く美しい男を追い、やっと手に入れたと思ったものの、最近のディーンは冷たかった。何度も誘いをかけているが、素っ気なく躱されているのが現状だった。
そこへこの増刷の話である。
これはディーンと連絡を取るための格好のきっかけになるのではないだろうか。
(いっそのことアストレ・ジャーナルを持って直接訪ねるか…)
ディーンのマンションには何度か行ったことがあり、そこで濃密な時間を過ごしたことを思い出すと、久しぶりに会報誌を手土産に訪ねるのもいいと思った。
ところが。
いつ頃増刷されるのかを確認するため広報部へ足を運んだハミトの耳に、意外な会話が飛び込んできた。
広報部のドアが少し開いていたために漏れ聞いてしまったのだが、それはハミトの神経を逆撫でするのに十分な内容だった。
「今回の反響、コンマスの時以来ですね」
「嬉しいよね。シャルル君の特集を企画した時から力を入れていたからね」
「最近ではシャルル君の特集をして欲しいっていう要望が一番多かったからなぁ」
「俺のインタビュー記事も好評で、自分のことのように嬉しいですよ。丁寧に対応してくれたオージェさんには感謝しなきゃって思っています」
「カメラマンとしてはどう?パリ音楽院での写真は大好評だけど、やっぱり嬉しいでしょ?」
「そりゃあね。何枚も撮らせてもらったけど、こっちの注文にも快く応じてくれて、ホント気持ちの良い撮影だったよ。その前の表紙の撮影で散々苦労したから余計ね」
「こいつ、音楽院を出た時からこればっかり言っているんだよね」
「よっぽど大変だったんだな、あのフルート奏者の撮影は」
「ええ、もう二度と撮りたくないですよ」
“アハハハ”と笑い声が上がり、ドアの外でハミトは拳を握り締めた。
室内では、そんな被写体の存在も知らず、特集の話題で盛り上がっていった。
「SNSの反応も良いよね」
「俺、昨日見ました。みんなオージェさんの記事に喜んでいますね。俺自身、内容の濃い受け応えだったと感じていましたが、読者も同じような感想を持ってくれたみたいで、インタビューをした甲斐がありました」
「写真にもすごい反響があるな」
「演奏中の写真よりも、音楽院での素顔の彼への反応が大きいようですね。書き込みの行間にまでハートマークが飛び交っている感じがしますし」
「一部で、どの写真が一番好きかなんて企画をしていたぞ」
「掲載されていない写真への要望もすごく多いんだぜ。“コンマスとの握手の写真はないのか”なんてコメントもあって、あれには苦笑したな」
「まあ、確かにあのコンマスが珍しく可愛がっていたそうだからな。コンマスのファンもオージェさんには親近感が沸くんだろう」
「増刷すれば、書き込みも更に増えますね」
「うちへの要望も少し拾ってみた方がいいかもしれないな。今後の参考になるかもしれないし」
「そうだな」
では今週は各人でSNSをチェックしよう…ということになった後、それぞれ仕事に戻ったようだった。
しばらくドアの外に佇んでいたハミトは、結局部屋には入らなかった。
握った両手を更に握り締めながら、彼は踵を返したのだった。

楽団員達の控室へと続く廊下は静かだった。
オフ日ということもあり、団員達はほとんど来ていないようだった。
管楽器奏者の控室に入ると、ハミトはスマホを取り出した。
彼は椅子に座り、楽団のSNSを開いた。
そこは、発売されて10日以上経ったアストレ・ジャーナル最新号の話題で持ちきりだった。
そしてそのほとんどを占めていたのが表紙についてではなく、今回の特集記事についてだった。


続く

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内緒さん
こんばんは。お久しぶりです。

>>今フランスを旅行中です。ギリシャ、スイス、イタリアの帰りに寄りました。

わあ、うらやましいです〜!
ギリシャもスイスもイタリアも、ぜ〜んぶツーリングに登場していますものね。


>>イタリアのベネチアでも、ツーリングに思いを馳せてしまいました。

ヴェネチア!いいですね〜〜〜♪
ディーンに連れられたシャルちゃん気分で散策などできたら最高ですね(^m^)


>>また、ゆっくり来たいです!

つるりんも是非、いつか欧州に足を踏み入れたいものです。
できればここに来てくださってる皆さんと一緒に(笑)

2019/8/22(木) 午後 10:28 [ つるりん ]


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