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この小説をアップする前に夏目漱石の夢十夜を再び読み返してみた。
今は、ほぼ何でもネットで手に入る時代で、夏目漱石 夢十夜 ってググッたら、簡単に見つかった。
しかも知らなかったのだが、映画にもなってるらしい。
夢十夜は、もちろん夢の話なのだが、それを紐解くと、夏目漱石自身の苦悩や将来への不安などが、織り交ぜられていたり、男性自身への渇望だったりが、全編を通しての解釈だったりするらしい。
そんなことは、中学生時代のまだ尻の青かったガキの頃の自分には到底わかる訳もなく
「心の中ってこんな表現方法があるんだ!!」って素直な気持ちで感動したことを覚えている。
感動してからは、早くって2週間くらいで一気に原本手書き部分40編くらいを書き上げたと思う。
その原本手書き部分は今手元にない。今手元にあるのはその中から当時自分が選んだ30編の部分。
自分自身では完成版の黒い本。
あるとき不意に妻に「あ〜たってロマンチストだよね」って言われたことがあった。どのような理由で妻が言ったのか聞けばよかったのだが、その時は別になんともなくスルーしてしまった。しかし妻はいつもいる自分をみて何かを感じてそういったのだと思う。
自分自身はというと、そんなこと露とも思っていなかったりする。まぁ、そりゃ誰でもそうなんだと思うけど、でも、妻にそういわれたときは、ちょっとびっくりした。
自分はトランペットを吹いていて、実は妻もトランペットを吹いている。
妻の目指す音楽と、自分の目指す音楽は、同じトランペットを吹いていてもまったく違う。
もちろん、目指す目標は、お互い違えども高みを目指して日々努力しているのだから、どちらがあってるとか違っているとかはないと思うのだが、自分の目標は、誰かが自分のラッパを聞いて独りでも良いから感動してくれたらいいなぁ。程度の目標だったりする。なので、コンクールとか、ソロコンテストとかにまったく興味がない。
音楽に優劣をつけるのは、間違っているとさえ思っている。
ちょっとニュアンスは違うのだが、もちろん、ソロコンとかで優勝しちゃうトランペッターの音色や音楽性は多くの方を虜にし、感動を与えるだろうと思う。自分自身も高橋さんの熱烈ファンで、切ないほどの色彩豊かな音色にはマジしびれてしまっている。はたまた超絶技巧や、トランペット協奏曲をチャラリと吹いちゃってブラボーコールの上がるプロは星の数ほどいると思う。
自分にはそんなこと到底出来やしない。でも自分は、誰かのために、と思ってる。今度、自分の職場でラッパを吹く。自分が企画して調整して。聞きに来てくれる誰かのために。いつもと変わらない日常にちょっとだけワクワクした何かを与えられたら、どんなに素敵なんだろう!って思いを胸に秘めて。
誰かの心に届いてくれることを願って。でも、心に届く音楽を奏でることって、最も遠い遥か先の、自分じゃ到達できないその先にあるんだよね。でも、そういった祈りを自分の音に乗せて、自分の今出来る精一杯の音楽を表現するつもりでいる。
って、まぁ、こんなこと本気で思っている所が、妻にしてみればロマンチストなのかもしれない。
黒い本。
中学生の頃書いたものなので、もう既に家にはないかと思っていたのだが、実は探してみたら案外簡単に見つかった。家の実家のばあちゃんが大切にしまっておいてくれたらしく、すぐに見つかった。
読み返してみて、ストレートだなぁ。ってのが、感想。
でも、なぜ今頃ふと思い出したのだろう・・・・・・・今まで一度も思い返さなかったのに・・・・・・・
今手元に、その黒い本がある。他にもいくつかの書きかけの小説も一緒に入っている。
その頃大分高価だったワープロを母親に譲ってもらってせっせと書き上げた30編。
ストレートで、むちゃくちゃ夢十夜にそっくり。
でも、そこには思春期真っ只中の自分がいる気がする。
今まで失ってきた心の欠片が其処にある気がする。
黒い本が探し当てて欲しかったのか?って最初思っていたのだが、実は、自分自身の心が黒い本を探したかったのかも知れない。最近、人生は、順風満帆。自分は本当に幸せだと思っている。
でも、そんな微温湯につかりながら忘れかけていた大切なもの。
例えば、人を愛することだったり、思いやる気持ちだったり。
中学の時の自分は黒い本を自虐的思いを込めながら全編を書いているのだが、強引にハッピーエンドを引き寄せようとしている感がある。なるべくオリジナルで行こうと思っているが、かなり恥ずかしい編もあるので、その辺を抜いたり、表現変えたりしながら、新しい黒い本を編んでいこうかと思っている。
これを読んで、何かの足しにしてくれるかもしれないあなたのために・・・・・・
でも、本当は自分のために・・・・・
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黒い本
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これは、自分が中学生のまだガキの頃、夏目漱石の夢十夜に感動し、作った小説です。
生と死、愛と失恋など、混沌としています。
今こんな時世なので特に死に関する物語とかありますし、戦争をモチーフにしたものなどどちらかというと、灰色の小説です。そういった物語を敬遠される方は、読まない方がよろしいかと・・・
生と死、愛と失恋など、混沌としています。
今こんな時世なので特に死に関する物語とかありますし、戦争をモチーフにしたものなどどちらかというと、灰色の小説です。そういった物語を敬遠される方は、読まない方がよろしいかと・・・
本編は、中学生の時に書いたものを手直しせず、アップしていこうと思いますが、中学生の自分は、どちらかというとハッピーエンドを強引に引き込んでいる感があります。本当はどろどろしたものを書きたかったと思うのですが、誰かに見られたら・・・・みたいなヘンな思いで、強引に取り繕っている所もあり、多少、オリジナルとは違った表現をしている所もあります。
まぁ、興味ある方は、どうぞご一読していただけたら幸いです。
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街角の古い本屋の中にいた。なぜそこに足が向いたのか解らない。でもなんとなく、本当になんとなく、その本屋の中にいた。その本屋の中はとても雑然としていた。古本が至る所に山積みにされていた。
薄暗い中にちょこんと、いまにもずり落ちそうな眼鏡をかけたばあさんが、其の、今にも音を立てて崩れ落ちてきそうな本の中にうずくまって1つの本を読んでいた。
すいません
と声を掛けると、ばあさんは眼鏡を指で上げ、僕を見た。
これください
なぜ其の本を指したのか解らない。山積みの本の丁度真ん中あたりに其の本はあった。黒い背表紙の本だった。
ばあさんは
これかい
と言って其の本を造作もなく山の中から取り出した。ばあさんは
幾らだっかなねぇ
と其の本を包みながら言っていたので、財布の中の小銭をありったけ取り出して本と交換した。
本屋を出て少し考えた。別の其の本が無性に読みたいわけでもなかった。なぜ此の本を選んだのだろう?
自分の部屋に着き、早速本を無造作に取り出した。
真っ黒な本。背表紙には何かごつごつと書いてあったがそれが何と書いてあるのか解らない。文字なのかさては何かの記号なのかさえも解らない。表紙にもそれらしきものがあったがさっぱり解らない。
本を捲ってみた。
書き出しの最初には何も書いていない。それでも字面を目が追っているのが解る。
何にも書いてない本を僕は読んでいた。
でも、内容が掴めない。一体どんな類の本を読んでいるのか解らない。
危険な冒険小説なのかもしれない。と思っていると、一風変わった恐怖小説だったりする。そう思って読み耽っていると、何時の間にか伝記に変わっている。
そして、おかしなことに読んだ頁は増えていくのに一向に先の頁は減っていかない。
そろそろ本が
疲れた。
と言い出したので僕も眠りに就くことにした。
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自分は何でも、狭い檻の中にいる。なぜそこにいるのか、なんとなくわかるような気がする。
所へ、女が自分の飯を持ってきて、鉄格子の隙間から、こっちへ入れてよこした。
女はとても綺麗だった。目尻は多少吊り上っていて、切れ長で鋭く、唇は薄くきっと締まっていて自分の前で、決して笑う事はなかった。髪は長い時もあれば短い時もあった。着ている服は始終変化して一度も同じ服を着てきたことがなかった。背は高く、足はカモシカの物のように細く美しかった。
或る時、女は自分に向ってこう言った。
可哀そうね。
自分は、そんな気がしたので、
ああ
とうなずいた。女は、
あと3年であなたは人間じゃなくなる。
と言った。
それから少しずつ自分が変化していった。
どこがどのように変化しているか解らないが体中が変化していくことが解った。
女はそれからも毎日やってきた。髪型も服装も一度も同じ時はなく、優しそうなその顔には、ほんの小さな笑みもなかった。
やがて女は来る度に横に別の人を連れてくるようになった。其の人たちは自分をみると悲しそうな顔をして帰って行った。そんな人たちを見ていて、自分がだんだん恐ろしくなってきた。
或る日女が1人でやってきたので、
助けてくれないか
と頼んだ。しかし女は、
そりゃ、無理だ。
と言った。自分もそうだろうと思って諦めた。
そうしているうちに3年が過ぎていった。そして3年たった今日、女は初めて同じ服を着てきた。3年前の今日、女と初めて会ったときと同じ、真っ白な服。
やっと醜くなったねぇ。
ああ。
自分もそう思ったので言った。
可愛そうにねぇ。
女が言った。自分は答えなかった。
今楽にしてやろう。
刹那、女が何をするのかうっすらと解ったような気がした。
女は懐から小さな袋を出して、折の隙間からよこした。
女の口元が、見る見るうちに裂け、きっとしていた目元は崩れ、甲高い声で笑い出した。
自分は今目の前に鎮座している地獄の鬼の顔よりも、
最後に見た女の顔の方が恐ろしく、醜い顔だと思っている。
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自分は元来イワヒバが好きだった。
或る時、自分の友人が、
そんなにイワヒバが好きなら、叶山に行って見ろ。あそこはまだ誰も人が入ったことのない山だから、
きっと良い物が見つかるに違いない。
と言ってきた。
自分は、早速叶山に行ってみることにした。
さて、。叶山を独りで歩いている。良い天気なのに何だかあまり気分が良くない。鳥の声、虫の声すら聞こえない。
やがて、森が深くなる頃、しくしく鳴き声が聞こえてきた。
誰かいるのか
と聞いても返事はない。人が未だに一度も入ったことのない山だということだったので、自分以外の人はいない。
当然道もない。
山の中腹に差し掛かった辺り、ふと目の前の大木を見上げると、悲痛なうめき声を上げ、天辺の方から枯れ始めた。あれよあれよと言う内に大木は消えてしまった。
不思議なこともあるものだ。と思って見ていたら、あちらの木もこちらの大木も同じように枯れて消えてしまった。
木が枯れ草が枯れ、風が吹き土を取り払ってしまった。
最後に自分の足元にあった小さなイワヒバが残った。
苦しそうにしているイワヒバを両の手でそっと持ち上げ聞いた。
おい、何故この山は禿げたんだ?
するとイワヒバは
悪魔が遣って来たのだ
と言った。
山をこんなにする悪魔は自分が懲らしめてやろう。と思い振り向くと、ずっとずっと下の方に到底こんな山奥には似つかない豪華な車と、その中に乗っている金銀を良く喰らって太った悪魔を見つけた。
悪魔はこの禿げた山を見て嬉しそうに笑っていた。
自分はここで崖崩れを起こして、悪魔を懲らしめてやろうと思ったが、自分には到底その力がないことを知り、イワヒバを見た。
イワヒバは悲しい眼をして、そして、皆と同じように消えてなくなった。
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