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「中々やるじゃん。お前さ、ボクシングとかやってみない?」 「ハァ、ハァ、ハァ・・・折角ですけど・・・遠慮します、よ!」 もう三、四回目になる黒谷との勝負だが、俺は完全に本気になったプロボクサー・黒谷に手も足も出せないでいた。 最初の頃は黒谷の天然、中盤は属性の相性で勝てた。 むしろ、弱い相手だくらいに思っていた。 でも今は・・・ 「メ・・・」 「おっと、スキルは使わせないってんだよ」 黒谷からドジが消え、スキルではなくライセンス付きのボクシング重視の戦法になり、ついでに俺のスキルは陣を出した段階でジャブに掻き消される。 意識を強く持てば攻撃されながらでもスキルは撃てる、なんてディックが言ってたっけかな? 無茶言うなよ。 ジャブとは言ってもそう何個も貰えないぞ、これ。 「悪いけどよ、俺ももう後がないんだよ。キッチリお前を連れて帰らないと俺がヤバイからよ」 「ぐ・・・ヴィシヴ・・・」 「よっと!」 「がっ・・・く、そ・・・」 ちょっとまて。 プロボクサーのジャブだぜ? 素人の俺にガードできるはずがないだろ? 最初から顔を守ってたら腹に厳しい一撃をお見舞いされたし、打開策が全く思いつかねーよ。 『三十六計も難しいです・・・慎様・・・』 (まだ諦めるかよ。向こうは俺を殺すわけにはいかないんだろ?) 『はい。ネヴァーの目的は慎様のスキルを利用することなので、慎様を殺害してしまっては意味がなくなります』 (だったらまだだ!どっかにチャンスが・・・) 「メアとの作戦会議はまだかかるか?」 起き上がれないフリしてたのバレてたか・・・ 参ったな、本格的に勝てる気がしない。 でも、今の間にちょっとした仕掛けができたぜ。 うまく嵌まればクールにドカンだ! 「デヴィ・・・」 「お前もしつけーなー。ほら、うぉ!?」 よし、決まった! 落とし穴作戦No.2、大成功だぜ! 見えないように地面の中に陣を出して、陣から下だけ消せば蓋付きの落とし穴がバレずに作れるんだよ! さぁて、後は・・・ 「悪いけど、これ以上邪魔されたくないんで。生きてたら、また。そん時はサイン書いてくださいね・・・メア!」 落とし穴をさらに深くして、穴の中腹辺りを穴と直角になるように横に広く消す。 コンクリート舗装されてる訳でもないし、これだけでホラ。 地面が崩れて穴が埋まるって訳だ。 『み、民家が何軒が傾いていますが・・・』 (三十六計なんとやらだ!) 多分、作った落とし穴の深さはミュランの作った穴と同じくらいあるはずだ。 普通なら埋めるまでもなく落ちて死ぬと思うけど・・・竜也のスキルで復活した例がある奴だしな。 竜也・・・一体お前は何を持っているんだ・・・? と、今はそれよりもネヴァーの襲撃をどうにかしないと。 あの爆発の一箇所からは黒谷だけが攻めてきたって言うならとりあえずノルマはクリアしたかな? はぐれたレヴェッカとか、M・Dと一緒の香穂里とか、雪姫が負けるとは思わない。 だけど、薫とミュランのペアはちょっとマズイんじゃないか? 二人とも常時フルパワーで戦うから、数で来られると厳しい(M・D談)。 しかも、ミュランは身体強化+明雷門水月歩拳と広範囲破壊スキルしか使えないから、複数の敵や味方が近くに居る時の戦いには向かない(同上)。 極太の竜巻を操る薫は元々対複数を考えて修業してきたって本人から聞いたけど、あの竜巻はそんなに大量には撃てないだろう。 それと、トリニティー・アローのリローとインシンはどんなスキルを使うのかも知らない仲間だ。 まずはどこに向かえば良い? どちらもエヴァーのお墨付き同士のペア、そう簡単にはやられないはずだ。 後のことを考えれば、スキル温存の為にも薫の所か? それとも、まだ分からないならとりあえずリローの所? 「ヤッホー、慎兄。元気してた?」 あれこれ考えていた俺は思わず笑ってしまった。 だってそうだろ? 誰を助けに行くかなんてもうどうでもいい。 目の前のコイツ、竜也を倒せば全部終わりだ! 「あれ?慎兄やる気満々じゃん。怖いな〜」 「香穂里の分まで殴るって約束して来たからな」 「へ〜・・・慎兄、やっと香穂里姉にコクったんだ?」 「へ?」 「気付いてないとでも思ってたの?慎兄が香穂里姉のこと好きなの、俺も雪姫姉も薫兄もずーっと知ってたよ?」 「・・・マジ?」 「うん。知らなかったの、香穂里姉だけなんじゃないかな?・・・そうだ!香穂里姉のことも連れてきてあげるよ!二人だけの部屋も用意しようか?」 そうだった。 昔と同じ悪戯好きの笑顔の裏は、もう昔の竜也じゃないんだ。 向こうは俺を殺せない。 だからって、俺も竜也は殺せない。 ってことは、やることはやっぱり一つだな。 まずはぶん殴ってやる!! 応援よろしくお願いします!
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ファースト
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『ストップ!止まりなさい!!』 「ヤァァァ!!!」 『止まりなさいっての!!』 「ダァッシュ・アンド・ラァァァッシュ!!!」 『止ま、ちょっ、あー、もう!』 一緒に走っていた筈の慎とはぐれてからもう十個近い曲がり角を曲がった。 私の弟ながら、勢いと直感だけで行動する癖はどうにかならないかなぁ? 『マイ・シスター?』 (とっくの昔に慎とはぐれてるでしょ!ちょっとは状況把握もしてよ!) 『リアリー!?シット!俺っちとしたことが!』 完全に気付いてなかったのね・・・ まぁ、らしいと言えばらしいけど。 とにかく、早く慎に合流しなきゃ! ・・・でも、慎は慎で勢い任せなところがあるんだよね・・・ 今から会うのって難しいかな。 あ、そっか! 爆発があったところを慎より早く全部回ればどっかで会えるかも! 「疾風!」 そうと決まれば、ダッシュ・アンド・ラッシュ! ガンガン行くよ! 「フレアトルナード!」 とりあえず1番近くまで来ていたポイントに向かうと、そこでは“ザ・ナイトメアー“と“ザ・ウィザード“がネウ゛ァーのメンバー数人と戦っていた。 そういえば、“ザ・ウィザード“がアンコモンの属性のスキルを全部使えるスキルマニアなのは知ってるんだけど、“ザ・ナイトメアー“ってどんな奴だったっけ? いっつも存在感ないし、トレーニングもトリニティのメンバーとしかやらないから全然分かんないや。 通称三矢の悪夢の戦い、ちょっと興味あるかも! 「レインボルト!・・・アースショット!」 さっきから“ザ・ウィザード“が使ってるスキル、二つの属性のスキルを同時に打ってるんだ。 しかも、言ってるスキル名は聞いたことないから多分オリジナル、トリガーとしては成立していない。 二つのスキルを同時発射ってだけで結構難しいのに、それをクイックでこなしてるってことね。 三矢の称号持ちは伊達じゃないみたい。 「どうした暴風。我々に加勢は必要ない」 「うわ!いきなり後ろから話かけないでよ!」 「すまない。以後気をつける」 戦闘中に後ろからいきなり全身真っ黒なマントに包まれた人に肩を捕まれた私は、思わずそいつの顔をぶん殴ってしまった。 でも、マントの男“ザ・ナイトメアー“はまるで何もなかったみたいに平然とマントのフードを外し、黒くて長い髪を風に揺らしている。 確かに鼻の骨を折った手応えがあったんだけど、どうなってんの? 「何?あんたは加勢しないわけ?」 「私のスキルは対個人で力を発揮する。あのように集団が相手では、味方を巻き込む可能性があり危険だ」 「ふーん。ま、“ザ・ウィザード“だけでも余裕っぽいしね」 「そういうことだ。ここにお前の探し物はない。私達に任せて他に向かえ」 う・・・なんか気味の悪い奴だなぁ。 なんで私が慎を探しているのが分かったのよ。 でもまぁ、ここは任せてくれるらしいし、お言葉に甘えちゃおう。 「負けんないでよ!」 「トリニティ・アローを見くびって貰っては困るな」 苦笑いを浮かべた“ザ・ナイトメアー“に背を向けて、私は次の場所へと向かった。 「ヌゥゥゥ!」 「ゼイヤァァァァ!」 今度はまだ爆発地点に着く前に聞き覚えのある暑苦しい声が聞こえた。 ヴァイコフと、ブラルだ。 あれだけグチャグチャにされたのにまだ生きてたんだ、あの化け物。 「ヴァイコフ!」 「その声、筋肉か!?」 誰だよ筋肉って。 うっかり言い間違えるにも限度があるでしょ。 「すまんレヴェッカ、勢いで筋肉と言ってしまった」 今までブラルと何話してたんだよ、この筋肉馬鹿二人。 そんなことより、ヴァイコフと一緒だったはずのディックと雪姫が見当たらない。 ディックも雪姫も簡単にやられる程弱くはない筈だけど、まさか・・・ 「あの二人なら砂原の援護に向かわせた。ブラルとは俺が決着を付けたくてな」 「・・・」 そういうことなら、私だって。 ディックと雪姫なら慎を任せても安心だし、ブラルとは私だってケリを付けたい。 「待ちなよ、私だってこの筋肉馬鹿とはケリ付けないといけないんだ」 「何!?こいつは俺の獲物だ!」 「私はもう二、三回ブラルと戦って今に至ってんの!譲ってよ!」 「断る!戦いは早い者勝ちだ!」 「頭まで筋肉なわけ!?レディーファーストよ!」 「俺のエスコートに任せろ!このエセ筋肉をズタズタにするのは俺だ!」 「キサマラァァァ!俺を嘗めているな!?二人まとめて来い!さらに鍛えられた我が筋肉の鎧はもはや何人にも傷付けること叶わぬと知れ!」 私とヴァイコフはこの瞬間、ブラルには気付かれないように笑っていた。 応援よろしくお願いします!
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「香穂里!」 急いで爆発した辺りに向かうと、香穂里とM・Dが先に来て・・・戦っていた。 それも、相手は八人。 見覚えがあるアフロ達が香穂里とM・Dを攻撃している。 まぁ、パッと見でも優勢なのは香穂里とM・Dだけど。 「ブラザー!」 遅れて追い付いたレヴェッカの指差す方、今俺達が居る場所の右手の方の壁から煙が上がる。 どうでも良いけど、レヴェッカの頭に乗ってるそれはモグラか? 初めて見たけど結構可愛いな。 「慎!こっちは私達でなんとかするから!」 「砂原さんはギルドのホームへ!ネヴァーの狙いは砂原さんです!」 って言われても、さらに四ヵ所から煙が上がってるんだが。 薫&ミュラン、雪姫&ディック&ヴァイコフ、“ザ・ナイトメアー“&“ザ・ウィザード“・・・一つ余るよな。 その一つとどうせ戦うなら、こっちから行ってやる。 「砂原さん!」 「ブラザーには俺っちが付いてるヨ。それに、どの道数が合わないし、先手必勝だヨ!」 「もしも竜也に当たったらどうするつもりですか!?」 「慎・・・」 香穂里が俺っちレヴェッカ顔負けの巨大な竜巻でアフロ達の炎を蹴散らしながら、不安そうな顔で俺を見る。 ・・・近い内に、逆らったらいけない人リストに名前が一つ増えそうな気がするなぁ、なんて思いながら、俺は香穂里に拳を突き出した。 もちろん、どうするかなんて決まりきってるぜ! 「一発ぶん殴る!」 「・・・うん!私の分までよろしくね!」 まだ止めようと口を開いたM・Dにアフロ達のブラックハウンドが迫る。 それを蹴り飛ばしながら、M・Dは大きくため息をついた。 「はぁ・・・私の分も、お願いしますよ」 「任せとけ!」 って、言ったのは良いんだけど・・・ 俺この町の道ほとんど知らないんだよね。 とりあえず壁伝いに行けば爆発した所は全部回れると思ってそう来たはずなのに、なんで俺は町のどまん中にいるんだろう? 『まさか本当に迷子なんですか?』 (いやいやそんなわけない。俺はただ、町中突っ切って行こうと思っただけだぜ) 『・・・』 ああ、モネの無言が痛い・・・ ってか、レヴェッカはどこ行った? 途中まで一緒に居たぞ? 『レヴェッカ様なら三つ前の曲がり角を慎様とは逆に走って行きました』 (なにっ!?そういう事はもっと早く言えよ!) 『申し訳ございません、言い忘れました』 三つ前って言うと、今から合流なんて絶対無理だな。 俺が迷う。 『やっぱり迷子じゃないですか』 (キコエナイキコエナイ) 『・・・面白い冗談ですね。今後私も使わせていただきます』 (ごめんなさい許してください) 『キコエマセンキコエマセン』 「見つけたぞ!」 どこかで聞いたオウムの声だな。 アイツ生きてたのか。 ミュランの戦った跡見たけど、すっげー深さだったぞあの穴。 「しつけーなー・・・え?」 忘れようがない黒谷の声で話していたのは、整っているというか、イケメンというか・・・いやいや、この人が黒谷のはずないだろ。 だってこの人は、アマチュアボクシング時代からから通算二十五戦二十五勝のスーパールーキー、黒谷さんじゃないか! 俺、大ファンなんだよね! 「マジですか!?リアルに黒谷さんですか!?」 「なんだ、知ってるんじゃねーか」 「・・・」 「どうした?」 「黒谷さんはそんな声じゃない!黒谷、てめぇ同じ名字だからって!ボクシングってのも嘘か!?」 「この声はホレ、ボイスチェンジャーだ。折角こんな世界に来たんだ、別の黒谷になってみるのもありだろ?」 黒谷、いや、黒谷さんが白い全身タイツの喉元から十円玉位の大きさの機械を外す。 なるほど、この世界の楽しみ方は人それぞれってやつだな。 すげーよ、本物の黒谷さんだ! 「あのブッサイクな顔も気に入ってたんだけどなー・・・ミュランだっけ?危うく死ぬところだったぜ。あいつ今どこに居るよ?」 「むしろ良く生きてましたね」 「俺とブラルはネヴァーの中でも前線に良く出るからな。竜也のスキルがなかったら何度も死んでるよ」 「・・・何のことですか?竜也のスキルは痛みですよね?」 「違うんだよな〜・・・ま、良いじゃねーか。まずはお前だ。巷で話題のスーパールーキーと戦えるなんて光栄だろ?今回は本気だぜ」 「確かに光栄です!今度もぶっ飛ばしますよ!」 「も、とか言ってられるのは今の内だけだぜ!」 戦えるどころか何度も倒してるなんて、多分誰も信じないんだろう。 何か気になることを最後に言ってたけど・・・今回も俺が勝つ! 応援よろしくお願いします!
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「では、今日の組み合わせを決めましょう」 毎朝恒例のトレーニング相手を決める話し合いが今日も始まった。 この話し合いで相手を指名したりされたりしながらトレーニングの相手をするんだけど・・・ 「M・Dー!今日こそ勝負だー!」 「おっと、ミュラン!今朝のパンの借りを返すぜ?」 「そんじゃー俺はヴァイコフ!ついでに雪姫!俺とどうよ?」 「“サードマン“だっけ?私に勝てるかなぁ?」 「M・D!私の新技受けてみろー!」 「香穂里さんは段々ミュランに似てきましたね・・・お手柔らかに」 大抵皆相手決まってるんだよなぁ。 薫なんて朝っぱらからパン一枚を巡ってミュランと火花散らしてたし。 残ってるのはレヴェッカとトリニティー・アロー三人衆の内二人か。 うーん・・・何となく俺とタイプが似てるらしいし、トリニティー・アローの“ザ・ナイトメアー“と戦ってみようかな。 ちなみに、他のエヴェーのメンバーとトリニティー・アローの大半は、各所でネヴァーのプレイヤー狩り阻止の任務に就いている。 怪我人とか”ゲームオーバー”の情報も聞くし・・・今、俺達は戦争してるんだなって改めて思うよ。 「慎!」 「うぉい!?」 いきなり声をかけられて、考えごとをしてた俺はかーなり恥ずかしい裏声を出してしまった。 辺りを見回すと、幸いもう部屋には俺とレヴェッカの二人しか残っていない。 薫達が居たらまたからかわれる材料にされるところだったぜ。 ・・・待て、レヴェッカと俺の二人しか残っていない・・・? 「慎とやるのは久しぶりだねー!最初に会った時以来かな?」 「俺的にはかなり頻繁に戦ってる気がするけどな・・・」 「私も本気じゃないし、慎も反撃しないじゃん?あれは戦いじゃなくてよわ・・・お仕置きでしょ?」 今、何か違うこと言おうとしてなかったか!? よわってなんだよ!? 思いつく言葉が弱い者イジメしかないぞ!? 「細かいことは気にしないの!正々堂々・・・勝負!」 「デヴィジョン!」 レヴェッカのヴィルヴェルヴィンドを高速デヴィジョンで相殺して、俺はすぐにクイックでヴィシヴルを使った。 アスキル代わりのスキル相殺方法を生み出したのは良いけど、これはメアが使えない時は防御にしか使えない・・・ とりあえず、デヴィジョンを使った今の俺にはスキルでの攻撃手段がないから・・・透明になって後ろから一撃! うわ、俺本当に主人公なのか自信無くなってきた。 屋内なのに容赦なくヴィルヴェルヴィンドってのもヒロインとしてどうかと思うけどさ。 「今のヴィルヴェルヴィンドを相殺・・・かなり本気だったんだけどね。本当に強くなったね、慎」 「そいつはどうも!」 珍しく褒めてくれたレヴェッカの後頭部を思いっきしぶん殴って・・・あれ? 「って訳で、今日は俺っちが相手だヨ、ブラザー!」 真後ろからいきなり行ったのに、俺っちレヴェッカの手が俺の拳を掴んでるんだが・・・ それに、俺っちレヴェッカって私レヴェッカより強いんじゃなかったっけ? この距離だと高速デヴィジョンも反動とかがあるから使えない気がするんだけど!? 「いくヨ!八重スキル・・・」 「ちょっ!?」 八重スキルってモモタロウと戦った時のスキルだよな? ・・・死ぬ!当たったら絶対死ぬ! ととととりあえず冷静に距離を取ってててて高速デヴィジョンで・・・ 『落ち着いてください!』 (いや無理でしょ!?どう考えてもあれは無理でしょ!?) 『確かに無理ですが、距離を取るといってもここはレストランの中、限界があります』 (ああ、今度こそ死ぬのか・・・死ぬ前に香穂里に会えて良かったぜ) なんて、諦めるのは俺らしくない。 ふふふ、気づいてるんだぜブラザー! 八重スキルなんてハッタリで、本命は・・・ 疾風で加速しながらのタックルだ! 「ワォ!よく気づいたネ!」 「さすがにこんなところであの大技はね!」 と言うより、さすがに勘弁してくれって思っただけなんだけどな。 さて、タックルは上手く避けられたから良しとしても、疾風モードのレヴェッカに攻撃を当てる自信はない。 ヴィシヴルからの奇襲も通じなかったし、戦いの場数が違うってやつか? メアを使えたとしても疾風で高速移動が出来るレヴェッカをスコープできなきゃ意味がない。 いや、疾風モードは狭いところの戦いに向かないって前に言ってたな。 自爆は狙えないか? 「どうしたブラザー?俺っち相手にメアなしじゃインポシッブルだヨ?」 「メアは禁止令が・・・」 なんて、言ってる場合じゃないか。 折角俺っちモードと戦うんだし、俺も久しぶりに全力で行きたいぜ! 「メア!!」 久しぶりに使うと、こんな便利なスキルは他にないって思う。 例えば、壁を消して外に出ることも出来る。 ・・・ここ二階なの忘れてたけど。 「ヴィシヴル!」 なんとか着地して、レヴェッカが追って来る前に透明になっておく。 後は、レヴェッカが来たら着地地点をメアで消して・・・ 名付けて落とし穴作戦だぜ! 『す、ストレートですね・・・』 (シンプルイズベストだぜ!) 「イヤッホォォ!!」 来た! なんか目茶苦茶テンション高いけど、落とし穴作戦発動! ・・・そこだ! 「メア!」 「ん?おぉ!?」 よし、バッチ・・・ なんだ!? 「ノォォォォ!」 この間竜也が壊した辺り、修理中の壁の方で爆発が起こったのと、レヴェッカが見事に穴に落ちたのはほぼ同時のことだった。 応援よろしくお願いします!
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「雪姫!?」 「巻き込んじゃってゴメンね。でも、もう決めたから」 雪姫とは結構長い付き合いなのに、あんな悲しそうな顔は初めて見た。 竜也が亡くなったって話した日にもあんな顔は見せなかったぜ。 「なんだか分かんないけど、私は負けないぞー!」 そんな雪姫に構わず突撃したミュランは次の瞬間には俺達の遥かに後ろまで吹っ飛ばされていた。 雪姫がスキルを使った様子はなかったけど、どうなってんだ? 「雪姫!」 「薫、来てくれてありがとう。ごめんね」 今度は薫が吹き飛ばされた。 間違いなく雪姫はスキルを使ってる。 早過ぎて見えないだけだ。 って、それどうやって戦うんだよ!? 「慎と香穂里も、ありがとう」 来る!? たしか、雪姫も香穂里達と同じく属性・風だったはずだ。 だったら、直撃しても死にはしないよな。 失敗して吹っ飛ばされた時の着地だけ頼むぜ、香穂里! 「デヴィジョン!」 さっきの香穂里のヴィルヴェルヴィンドではなく、薫が吹っ飛んだ時に感じた風を撃つ。 はずだったんだけど、俺の手から出たのは香穂里の竜巻だった。 雪姫はそれを相殺して、俺に向かって手を伸ばす。 「ごめんね」 腹の辺りで何かが爆発したみたいな衝撃に、俺も薫と同様に吹き飛ばされた。 薫や香穂里のそれとは使い方が全然違うけど、これは間違いなくウィンドだ。 一箇所に風を圧縮させてから一気に爆発させてるのか。 ってことは、俺が感じたのはスキルの風じゃなくて本物風か? 大失敗だ。 「キャア!」 と、分析してる場合じゃない。 俺はスライディングの要領で滑りながら衝撃を吸収して、飛んできた香穂里を受け止めた。 勢い余ってゴロゴロ転がりながら、起き上がったミュランと薫が雪姫に向かうのを見る。 「落ち着けよ!雪姫!ヴィルヴェルヴィンド!」 「いっくぞー!」 薫のヴィルヴェルヴィンドも簡単に相殺されて、ミュランは雪姫に近寄る前にまた飛ばされた。 四対一でも勝てないなんてもんじゃない、圧倒的だ。 雪姫の奴、本当に竜也を殺すつもりなのか? 「させないよ!慎!」 「当然!」 今度は俺と香穂里が立ち向かう。 香穂里がヴィルヴェルヴィンドを撃って、雪姫がそれを相殺している内に俺がデヴィジョンでさっきのお返しだ! 「もっと強くなるんだ!私が、私が・・・竜也を止める!」 「ダメだ!目を覚ませよ!」 デヴィジョンで軽くよろけた雪姫の胸倉を薫が掴む。 よし、計算通りだ! 『本当ですか?』 (勿論嘘だ!) 薫が雪姫に何か言ってる間に、俺は香穂里に頼んでちょっと特殊なウィンドをデヴィジョンに溜めてみた。 雪姫のウィンドで思い付いたこの技、名前はどうしようかな。 と言うかその前に・・・ 「だ、大丈夫?涙出てるよ?」 「へーき、バッチリ・・・」 すっげー痛い! 手加減して貰えば良かった! ってか、いつものギリギリ避けをすれば良かったんじゃないか!? またも失敗したぜ・・・ 「私じゃないとダメなの!」 「決め付けてんじゃねー!俺が居るだろ!慎と香穂里も!一人で思い悩んでんじゃねーよ!」 「この間竜也と戦って分かったの!竜也は私が殺さないと、いっぱい誰かを悲しませる!」 「だからって!」 そうか、あの場には雪姫も居たんだから、竜也は雪姫の目の前で薫と香穂里を半殺しにしてるのか。 実の弟が恋人と友達を傷付けるのを目の当たりにしたら・・・ でも、竜也を殺すってのは違うだろ。 「竜也は誰にも止められない!だから私が止めるの!」 「俺達全員で止めて見せる!」 「薫じゃ無理!香穂里はもっと無理!私が強くなって、私がやるの!」 「俺のこと、忘れてないか?」 完全に頭に血が上ってる雪姫には何を言っても無駄だ。 実は頑固何だよな、雪姫って。 同じく真っすぐな薫と上手く行ってるのは・・・多分雪姫に頭が上がらないからなんだろうなぁ。 「慎は瞬殺されたじゃない!」 「おま、ドストレートになんて酷いことを!」 「うっさい!もう決めたんだから! うわー、何て言うか、何て言うんだろう。 人の善意を踏み潰すと言うか・・・ とりあえず、俺は実は短気なんだぞ!? 「薫、どけ」 「あぁっ!?」 「雪姫の目ぇ覚ましてやる」 さっき香穂里の協力で生まれた新技を見せてやる。 まずは雪姫のウィンドを真似て、相手の傍に圧縮された風の球を作る。 そしたらその球に張り手! 手の平で壁を作ることで、爆発した風の威力を一方向=相手だけに当てる、名付けて風爆発だ! 「うわ、ダッサ!ネーミングセンスなさ過ぎ」 「さ、さすがに風爆発は・・・」 「だからなんでお前等は俺の考えてることが分かるんだ!?」 なんて言ってる間に、俺の新技はバッチリヒットした。 勿論、雪姫を庇うために盾になった薫の腹にだ。 で、この技は俺の予想通り、薫を雪姫ごと遥か彼方までぶっ飛ばした訳だ。 ちなみに、手の平の壁にも当然風は当たる訳で、逆方向に同じくらい俺も・・・ この技は封印しないとダメだな。 俺と香穂里の初の共同作業も大失敗だ。 「いったぁ・・・」 「お、ま・・・ぁ・・・」 「俺だって戦える。少しは頼ってくれよ」 「・・・」 「私も!私も皆の友達だもん!」 「・・・ありがとう・・・」 やれやれ、雪姫も落ち着いたか。 あ、薫がピクピクしてる。 「私の出番ですね」 「メアなしで勝っちゃったよ・・・慎、強くなってるなー」 何とか平和に終わったか・・・ なんて、胸を撫で下ろした俺はまだ知らなかったんだ。 ボソッと言ってたレヴェッカの言葉が明日への伏線になってるってことを・・・ 応援よろしくお願いします!
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