作家を目指しつつ、リーマンに・・・

我流ではありますが、作家を目指して行きたいと思います。

紅い鎖

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紅い鎖 4

 胸の中で小さく震えるスズの頭を撫でながら、私はこの子と会った日から今日までの事を思い出していた。
 全寮制のこの学校に入学し、ドキドキの入学式やクラスメートとの顔合わせも終え、これから3年間暮らす事になる部屋の扉を開けた時。
 それが、スズとの初めての顔合わせだった。
 実際はクラスメートとの顔合わせの時点で自己紹介は終えていたのだけれど、面と向かって出会ったのは初めてって事で。
 第一印象は、そう、普通の大人しそうな女の子、だったかな。
 普通に挨拶をして、部屋の手前側と奥側でどちらがどちらののベッドを使うか決めて、緊張したなんてくだらない話をして。
 この子となら友達になれそうって安心したのを覚えている。
 で、勿論と言うか、忘れられないのは初めての夜の事。

「あの、まだ・・・起きてますか?」

 夜の12時頃、今は殆ど使わなくなった手前側のベッドに寝ていたスズが小さな声でそう言った。
 私は携帯でメールをしていて、スズのベッドにもボタンを押す音や液晶の光何かは見えていたと思う。
 私は気になって寝れないのかなって、申し訳なく思った。

「ごめん、気になる?」
「いえ、そうじゃなくて・・・」
「ん?あ、とりあえず私には敬語使わないで良いよ?私が敬語苦手だからさ。同い年だしね」
「あ、は、あ、えっと、うん・・・」
「そんなに緊張しないでよー。これから仲良くしてね。で、どうしたの?」

 どうやら私の心配とは別の問題らしかったので、取り敢えず安心した。
 顔を上げると、スズは頭まで布団を被っていて、何やら布団が小刻みに震えていたのを覚えている。
 きっと、この時のスズは怖くて怖くて堪らなかったんだと思う。

「・・・怖いんです・・・」

 元々精一杯に振り絞った声なのに、布団を被っているせいで蚊の鳴く声の方がまだマシって声だった。
 この辺りで、私は薄々この子がどんな子なのか気づいたかな。

「怖い?」
「ご、ごめんなさい・・・」
「いやいや、なんで謝るの?別に怒ってないって」
「ごめんなさい・・・」

 この子も”普通”じゃない事は直ぐに分かった。
 そう、”普通”じゃない。
 私だってそう、多分この学校の生徒達は皆何かを抱えて生きている。
 私は”普通”である事、言い換えれば”周りと同じ”である事に異常に執着し、私の意見なんて関係なく服装から仕草、何から何まで他の子と同じを強要する両親から逃げたくて、中学生に上がる前に家を飛び出した。
 でも、家出した小学生に出来る事なんて何もなくて。
 分かってくれる友達の家に転がり込む毎日を過ごす内に、段々と居場所を無くしていった私はアレに出会った。
 一寸だけ我慢をすれば、ご飯も布団もお風呂も用意してくれて、お小遣いまで貰える。
 アレの中に居場所を見付けてしまった私は、今だにアレから抜け出せない。
 でも、私にこの学校と、この学校に付属する小学校、中学校を紹介してくれた人に出会えたのもアレのおかげだから、後悔はしていない。
 とにかく、スズも何か訳があって此処に居る子何だって気付いたら、私は居ても立ってもいられなくなった。

「大丈夫?明かり、付けようか?」

 スズのベッドに移り、布団ごとスズを抱き締める。
 正直言って、この時私はウキウキしていた。
 頼る事はあっても、頼られた事なんて一度も無かったから。
 だって、私は皆と同じなんだもん。
 私に頼らなくたって、私の周りには少なくても私と同じ事が出来る人しか居なかったからね。
 そんな私にこの子は助けてと伝えて来たんだって、嬉しく思った。

「・・・」
「大丈夫、私がついてるよ」
「ごめんなさい・・・ありがとう、ございます・・・」
「謝らないで良いよ。ありがとも要らないよ。友達だもん、怖い時は一緒だよ」

 思えば、我ながらよくもペラペラと言えたセリフだね。
 この時の私はスズの事なんて何も考えてなかった。
 スズが布団の中に居るのを良いことに、ニヤニヤしてたと思う。
 今でも、半分はそう。
 
「・・・」
「ね、私も布団に入って良い?一寸寒いー」
「あ、うん、どうぞ・・・」
「お邪魔しまーす」

 人の布団に入る事に抵抗はなかった。
 スズはそれどころじゃなかったんだと思うけど、アッサリ私を受け入れてくれた。
 で、その日は同じ布団で朝を迎えて、次の日。

「あの、ラン、ちゃん・・・」
「んー?」
「・・・」
「あ、ハイハイ。布団、一寸詰めてね」

 1度やったらもう同じだと思った。
 相手は同い年の女の子だし、私も何の危機感も無かったし。 
 何より、この子が明確に私を頼ってくれた事が嬉しかった。
 それから夏休みが始まるまで、私のベッドはスズのベッドになった。
 で、夏休み。
 私は行く所なんて無かったから、休み中ずっと解放されていた図書館に入り浸っていた。
 でも、そんなの直ぐに飽きるでしょ?
 で、同じ様な毎日を過ごしていたスズに悪戯しようと思ったのが今の毎日の始まり。
 初めは軽い子持ちで胸を揉んでみたり、お風呂上がりのスズのバスタオルを捲ってみたり、それで凄い泣かれたり、思わず引いちゃう位謝られたりしてる内に、この子に何があったのかも読めてきた。

「ね、始めに謝っとくね」
「え?何?ラン」
「ランってさ、せーてき虐待って奴の被害者?」
「え・・・?」
「気を悪くしたなら謝る。ごめん」
「・・・」
「・・・」
「ランってさ、たまにすっごく遠慮ないよね」
「ごめんね。実はさ、私ってえんこーの常習犯なんだよねー。今でもやってんのよ」
「え・・・?」
「だからさ、なんて言うか、やってる事正反対なのかなって。私、スズの布団で寝てるでしょ?それ、良いのかなって思っちゃってさ」

 夏休み中のある日の朝、どうしてもハッキリさせたかったから、私はスズに少しキツい事を聞いた。
 私を頼ってくれてるのは嬉しいけど、結果としてスズを裏切っているのは我慢出来なくなったから。
 実は私の方が先にスズを好きになっていたのかも知れないね。

「・・・うん。そうだよ。お父さんと、お父さんが死んでからは叔父さん。何でもありだったよ・・・エッチなんて、一番楽だった」
「そっか。私の事が嫌いになったら、同じ事を私にして良いよ。酷い事聞いたの、分かってるから」
「死んじゃうよ」
「それでも良いよ。今私がスズにした事は、それくらい酷い事だもん」
「そう。じゃあ、今日からランはランの布団で寝て」
「・・・うん」
 
 嫌われたって思った。
 嫌われるのは覚悟の上だった。
 でも、実際言われた言葉は、私の想像よりも遥かに辛くて。
 その日のお昼、私は久し振りに街へと出かけ、アレをした。

「ただいまー」

 それでも夜になればまた、なんて思って、私は何時もスズが寝る時間よりも少しだけ早く帰ってきた。
 療の門限は過ぎていたけど、特に怒られる事もなく部屋のドアを開け、出来るだけ明るく「ただいま」を言う。
 返事は、なかった。

「スズー?」

 部屋の電気は消えていて、スズのベッドは膨らんでいたけど寝息が聞こえなかった。
 代わりに脱衣所を兼ねている洗面所の電気が点いていて、シャワーの音が聞こえていた。

「スズ、お風呂?」

 女同士と言っても念の為下を見ながら扉を開けた私の目に飛び込んで来たのは、倒れ込んで異常な速度で浅い呼吸を繰り返すスズの姿だった。
 一学期が終わる頃になると周りの子達も”普通”じゃない事は明らかになっていて、何もない場所で、何も起こっていないのに過呼吸になる子も何人か居た。
 だからと言うか、必然的に過呼吸の症状とその応急処置法を知っていた私は、慌てて袋を探し回った。
 けど、何処にも見つからなくて。
 過呼吸の対処法はとにかくゆっくり呼吸をさせる事と、落ち着かせること。
 嫌われちゃった私がその2つを出来る自信が無かったから道具を探したのに、何処にもない。
 多分、私も軽いパニックになっちゃったんだと思う。
 嫌われてるとか、アレをした直後で汚れているとか、何もかも忘れて。

「スズ・・・」

 私は私の唇で、スズの唇を塞いでしまった。
 
「ん・・・」
「・・・」

 何分位経ったのかな。
 段々と落ち着いて来たみたいだったスズに肩を貸して、私はスズとベッドに向かった。
 スズのベッドには何故か荷物がたくさん置かれていたから、シーツの交換はしてたけど久しぶりに使う私のベッドにスズを寝かせ、私はスズに膝枕をする形で座った。
 
「スズ、落ち着いた?」
「うん・・・」
「ゴメンネ、あんな事しちゃって」
「ううん・・・ありがとう」
「嫌だったよね。ゴメンネ・・・」

 スズは私がいない間、あれほど嫌っていた夜の闇に必死に耐えていたのだろう。
 私のせいだ。
 私が余計な事をしたから、スズを苦しませてしまった。

「ねえ、スズ?」
「・・・何?」
「・・・何でもない」

 今更謝っても、無駄だと思った。
 私がやった事は、スズの傷を掘り起こす様な事。
 やってはいけない事だった。

「言ってよ」
「・・・」
「私、ここを出て行く事にしたの。叔父さんの所に戻るから・・・」
「え!?なんで!?」
「・・・私は、1人じゃ生きていけない。生きていく自信がない。だから、ランに嫌われちゃったから・・・」

 私は自分の耳を疑った。
 私が何時スズを嫌ったの?
 私は、寧ろ・・・。

「ち、ちょっと待って!?私はスズの事嫌いになんてなってない!」
「え?でも・・・」
「私は、スズに嫌われたと思って・・・たんだよ?」
「私はスズの事好きだよ!嫌いになんて、なるわけない!」
「え!?」
「・・・あんな事聞いてきたの、私を嫌いになったからじゃないの・・・?」
「違う!私は、スズが好きだから!スズの全部、受け止めたかったから・・・だから、あんな酷い事・・・」
「酷いなんて思ってない!え?じゃあ、ランは・・・?」

 私の頬を涙が伝った。
 嫌われて無かったって事が、純粋に嬉しかったから。

「ラン?」
「スズ・・・私ね、また、アレやっちゃったんだ・・・それでも・・・」
「・・・うん」
「それでも・・・汚れてる私でも・・・私を好きだと、言ってくれますか?」
「うん!」

 今度はスズの方から、私の唇に唇を重ねてきた。
 そして今、私とスズは、人前でもイチャイチャする事が有る程度の仲だ。
 隠す必要なんてない、お互いがお互いを必要としているのなら、くっつけば良いでしょ?
 あの日の記念に、今は私のベッドが2人のベッドになっている。

「ねえ、スズ?キスしても良い?」
「え?う、うん・・・」
「えへへ・・・」

 震えるスズを抱きしめて、今日も私は満たされていった。




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紅い鎖 3

「今日は疲れたねー」
「うん・・・うーちゃん、元気良すぎ・・・」
「まさか中学校にプール貸せって言いに行くなんてねー・・・しかも借りちゃったし」
「私、絶対怒られると思ったよ」
「それが普通だもん。しかもさ、あの中学校は近いからーってだけで、別にうーちゃん何の関係もない学校らしいよ」
「嘘!?うわー・・・うーちゃんって凄いんだね・・・」
「色んな意味でね」

 笑い合いながら私達はユニットバスになっているお風呂を出た。
 時間はもう遅いし、もうすぐ私の大嫌いな時間がやってきてしまう。
 お風呂の中でランと一緒に温まったはずなのに、考えただけで寒くなって来ちゃったよ・・・

『なぁに?自慢?』

 構って欲しくて、ランに軽ーくイタズラしちゃおうと思った、その時だ。
 私の中で突然朝のうーちゃんの言葉が再生されて、凍えそうなくらい寒くなって・・・

「スズ?」
「・・・ごめん」

 私はまだ下着しか着けてないランに乱暴にキスをした。
 無理矢理舌を入れて、必死にランの体温を感じようと抱きしめる。

「むうっ!むー!」

 離れようとするランを押さえ付けて、嫌がるランの手に自分の手を絡める。
 私の頭の中にはもうランしか居ない。
 他の全部を追い出して、私は夢中でランを感じた。
 ランの唇、ランの髪の毛、ランの手。
 ランの全部が欲しい・・・

「スズ!!!」
「きゃっ!・・・あ、ラン・・・?」

 突き飛ばされてから、私は一気に血の気が引いた。
 目の前では顔を真っ赤にしたランが私を見てる。
 私・・・?

「あ・・・ご、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!お願いだから嫌いにならないで!」

 私、なんてことしちゃったんだろ!?
 ランは嫌がってたのに、なんて酷いこと・・・
 謝らなきゃ・・・
 殴られても良い!
 蹴られたって良い!
 灰皿にだってなる!
 だからランだけは私を嫌いにならないで!

「スズ、もう良いから・・・」
「ごめんなさい!ごめんなさい!なんでもするから!だから私を嫌いにならないで!!」
「スズ!」
「ひっ!?」
「私は怒ってないから・・・ちょっとビックリしたけど、スズのこと大好きだよ」

 ぶたれると思ったランの手が、私の頭を撫でてくれた。
 ラン以外誰もしてくれたことなんてない“いい子いい子“に私の頬を涙が伝う。

「スズ!?え、えぇ!?なんで泣いてんの!?」
「わかんないよぉ・・・嬉しいのに・・・止まんないのぉ!」
「・・・そっか。ほら、おいで?今度は私の番なんだから!」

 ランに手を引かれて、今度はベッドの中で私達はお互いを抱きしめた。
 温かい。
 温かいけど・・・

『自慢?』

 うーちゃんの言葉が忘れられなくて、私は一晩中ランの胸の中で震えていた・・・




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紅い鎖 2

「スズ!ラン!おはよー!」

 食堂でランと朝ご飯を食べていると私の隣に山盛りのご飯が乗ったお盆が置かれた。
 ご飯の他にも色んなおかずが一杯乗ったお皿を見てると、それだけでお腹一杯になっちゃいそうだよ。

「おはよ!うーちゃん、今日も朝練?」
「うん!もうすぐ試合だからさー!」
「うーちゃんって陸上部だよね?先週大会じゃなかった?」
「今度の試合は水泳の方!3校合同の練習試合なんだー!」
「部活何個掛け持ちしてんの・・・私には絶対マネできないよ」

 うーちゃんのお皿から勝手にウィンナーを食べながらあんなこと言ってるけど、ランだって運動神経すごいと思うなぁ。
 走るのとか泳ぐのが得意なうーちゃんと、ソフトボールとかテニスが得意なランの2人だけだよ、文化系の部活が強いウチの学校の運動部で大会出てるの。
 
「それでお願いなんだけどさ−・・・スズとラン!来週の水泳の大会、助っ人で出てくれない?」
「私は構わないよー。スズはどうする?」
「ランが出るなら出てみようかな・・・」
「やた!ありがとー!5人でリレーがあるんだけど、今水泳部人いなくてさー!残り2人は水泳部でなんとかするからさ!」
「ランは大丈夫だと思うけど、私は泳ぐの遅い・・・いたっ!」
「この中じゃスズが1番でしょ!なぁに?自慢?」
「ち、違うよ!でも・・・」
「なんてね、ジョーダン!スズはもっと自信持った方が良いよ!それじゃ来週、よろしくね!」

 いつの間にかご飯を食べ終わってたうーちゃんは、私達に手を振りながら食堂を出て行った。
 デコピンされちゃったおでこが痛いよぉ。
 それに、うーちゃん怒ってたみたいだった・・・

「あはは、おでこ真っ赤になってる」
「むー、ラン!」
「大丈夫、うーちゃんも本気じゃないから。私もうーちゃんもスズの性格良く分かってるもん」
「・・・うん」

 本当のことを言うなら、私だって泳ぐ自信がある。
 でも、それを口に出しちゃったら、また生意気だって思われちゃうから・・・
 私は大人しくしてなきゃダメだから・・・

「スズ?・・・よし!スズ、泳ぎにいこっか!」
「え?」
「練習!ホラ、いこっ!」
「え、え!?」
「沈んだ時は体動かすのが1番だよ!」
「あ・・・うん!」

 いけないいけない、また思い出しちゃってた。
 ランの言う通り、なんだか思いっ切り体を動かしたいかも!

「あ、でもさーラン?」
「ん?」
「ウチの学校の屋内プール、今工事中じゃなかったっけ?」
「あ、そうだったっけ!・・・うーちゃん、何やってるんだろ・・・」
「さっきチラッと見えたけど、服の下にもう水着来てたよ?」
「・・・」
「・・・」

 とりあえず、私達はゆっくり朝ご飯の続きをすることにした。




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紅い鎖

「寒い・・・寒いよ・・・」
「大丈夫。私が隣に居るから、ね?」
「怖い・・・もし、もし朝起きたら誰も居なかったら・・・もうあんなに寒いのは嫌!」
「大丈夫だって。私はどこにも行ったりしないよ。スズを一人ぼっちになんてしないから」
 私の唇に、ランの温かい唇が優しく触れる。
 それでもまだ震えが止まらない私の身体を、ランはギュッと抱きしめてくれた。
「大丈夫、ずっとそばに居るよ」
「ラン・・・」
「ほら、大丈夫でしょ?このまま一緒に寝よ」
「・・・うん」
 お互い向き合った格好のまま、ベッドの中で私は目を閉じた。
 鼻の頭にランの静かな吐息が当たる。
「ラン?」
「ん?」
「ありがとう」
「スズ、それは言わないって約束」
「うん」
「アハハ、仕方ないなぁ」
 そう言って、ランはもう一度私にキスをした。
 温かくて、嬉しくて、私もランに抱きつく。
「温かいね、スズ」
「うん、ラン」
 もう一度、今度は私からランにキスをした。
 軽く息を漏らしてから、ランの舌が私の唇を押し広げて、柔らかいランの舌に私も自分の舌を絡める。
 手を握って、足も絡めて、私達はお互いを感じあう。
「・・・エッチ」
「ランもでしょ?」
「むぅ、だって・・・」
「ラン、カワイイ」
「・・・イジワル」
「アハハ」
「あ、笑った!」
「え?」
「アハハ、なんでもなーい!おやすみ、スズ」
「もー、なによぉ!」
 口を尖らせた私に微笑みかけて、ランはすぐに寝息を立て始めた。
 寝るのホントに早いなぁ、ランは。
 私は・・・夜は嫌い。
 ランはああ言ってくれたけど、もし・・・
 私はもう、誰も居ない朝とか、一人ぼっちの夜は嫌。
 あんなに寒いのはもう耐えられないよ。
「ねぇ、ラン?」
「んむ〜?」
「・・・なんでもない」
「むにゃ〜」
 いつかきっと、ランは私の傍から居なくなっちゃう。
 なんで女に生まれちゃったんだろう、私。
 ずっと一緒に居たいよ、ラン。
 離れちゃ嫌だよ。
 さっきランが抱きしめてくれたばっかりなのに、また寒くなってきちゃった。
 怖いよ、ラン。
 怖いよ・・・
 夜が怖いよ。
 明日の朝も怖い。
 一人ぼっちって、怖いよ・・・




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