作家を目指しつつ、リーマンに・・・

我流ではありますが、作家を目指して行きたいと思います。

MY BLUE HEVEN

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MY BLUE HEVEN 2

「やあ、お帰り。2人共、今日は良い日だったかい?」
「NPFを1機やったよ。今日のジパング・タウンのランチメニューは何?」
「チキンフライ。タツタアゲと言ったかな?後でフライトデータを提出してくれ。大した額じゃないけど、ランチ代位は報酬が出るよ」
「アンタが美味いって言ってたスシは何時になったら食えんのさ!チキンフライならステイツ・タウンに行くよ!」
「魚は貴重だからね。因みに、ステイツ・タウンのランチメニューもフライドチキンだよ」
「厄日だ」
「ハハハ、確かに君にとっては厄日かも知れないね、ラック。揚げ物は苦手なんだっけ」
「フライを食べる位なら生の方がマシだ。それと、私の名はラッキーだ」
「ラックの方が男らしいだろ?まあ、以後気を付けるよ、ラッキー君」

 シティーの案内役をこの男に任命したのが誰なのか、疑問に尽きない。
 昔はエースパイロットとして空を駆けていたとの栄光は何処へやら、だ。

「どうするラッキー?何食べたい?」
「私はセントラルにフライトデータを提出しに行く。違いは分からんがチキンフライやフライドチキンなら、セントラル支給のコンバットフードを選ぶ」
「あんなマズイの良く食べようと思うね」
「腹を下すよりマシだ。ランチを済ませたら合流しよう」
「りょーかい」
「ああ、そうだ。きな臭い噂があってね。近頃地上の奴等がシティー周辺の戦力を集結させているらしいよ」
「何時もの威嚇だろう。シティーは奴等にとって目の上の瘤だからな」
「え?何それ?どう言う意味?」
「き、君は早くランチに行かないと、ランチタイムが終わってしまうよ?」

 かつての英雄、隻腕のアレックスが苦笑いを浮かべながら、私の相棒をそれとなく諭す。
 戦闘中に被弾し、左腕を吹き飛ばされながらもNPF6機を撃墜したこの男でも、彼女の操縦は困難な様だ。
 義手を嫌い、隠そうともしない見えざる左腕の袖がシティーの風に揺れている。

「ラッキーも苦労しているね」
「慣れたさ。それで、きな臭い噂とはそれが全てか?」
「残念ながら違う。集まっているのは見た事がない航空機。しかも、コクピット付きらしい」
「最新の有人機か」

 シティーに対し地上軍が手を出して来るのは良くある事だ。
 空に戦力を持つ我々は、我々を空に追いやった者にとって脅威となっているらしい。
 自らが首輪を付けずにドックランに放った犬が怖いと言うのだから、実に情けない。
 尤も、奴等が犬だと思っていたのは狼だったのだが。

「君達にも出撃要請が出るかも知れない。覚えて置いてくれ」
「他人事ではないだろう、アレックス。左腕が疼いているのでは?」
「厳しいね。君に言われては何も言い返せないな」
「私は自分で見たものしか信じない。かつての英雄の勇姿、是非拝見したいものだ」
「その時が来ない事を祈っているよ」

 飄々と流してくれたが、自信はあり、か。
 しかし、確かにきな臭い噂だ。
 NPFによる悪戯など日常茶飯事だが、有人機となるとそうはいかない。
 場合によってはシティーと地上軍の衝突、つまり戦争になる。
 空に生きているならば、その時が来れば皆手を取り合い共通の敵と戦うだろう。
 しかし、私達の様なフリーのエアウルフが何時もシティーに居るとは限らない。

「セントラルの動きを見てくる。アレックス、何か分かったら知らせてくれ」
「了解。良い午後を」
「ありがとう。アレックス、君もな」

 アレックスと別れ、機体の航空記録を手にセントラルに向かう。
 セントラルはこのシティーの中心にあり、シティー全体の管理を行っている場所だ。
 航空記録をセントラルに持っていけば、その成果に応じて報酬が出る。
 その報酬が、我々フリーのエアウルフにとって、唯一の飯の種だ。
 古い時代では、我々の様な生き方を傭兵と呼んだらしい。
 私としては、1つの主に仕えたと言う騎士と呼んで貰いたいものである。
 どれ程金を積まれても、我々空に生きる者が地上の奴等に味方する事はないのだから。

「ラッキー!」

 セントラルに足を向けると、背中に声を掛けられた。
 アレックスはしつこい男ではないと言う認識を改めなくてはならないか。

「まだ何か?」
「今日のセントラルのコンバットフードはオニオンパイだ。君はオニオンも苦手じゃなかったかい?」
「どうやら、今日はとことん厄日らしいな」

 ランチは諦める可きかも知れないな。
 好き嫌い以前に、体が受け付けないのだから仕方がない。
 地上の奴等は食事に困る等と考えられないかも知れないが、本来住むべき場所ではない空で生きる以上、贅沢は言えない。

「もう一度言わせてくれ。良い午後を」
「ありがとう。君もな、アレックス」

 アレックスのセントラルの職員の証たる蒼いコートの左腕が、シティーの風にはためきながら私を見送ってくれた。





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MY BLUE HEVEN 1

「警報がうるさい。何とかしてよ」
「それはこちらの台詞だ。振り切れ」
「さっきからやってるよ!仕方ないだろ、旧式なんだから!」

 時速900キロで空をかっ飛ぶマシンの中、鳴り止まない警告音が命の危機を知らせている。
 背中にピッタリ張り付いた小型のNPF、No People Fighterがこちらをロックオンしたままミサイルを撃つタイミングを測っているからだ。
 黒一色に塗られた機体は"笠"が縦線よりも長い矢印の様な形状であり、無人であるが故にコクピットは無く、武装は尖った左右の翼に見られるミサイルが1つずつと機首にある機銃以外は確認出来ない。
 最近良く見られる量産型のNPFであるが、量産型であるが故に薄い装甲の軽さから生まれる速度は高いレベルにある。
 相手が無人機とは言え、鬼ごっこをするには何十年も昔の機体では分が悪い。

「こっちの残弾は?」
「15mm機銃が6発」
「話にならないじゃん!」
「コンマ2秒で弾切れだ。迎撃は諦めろ」
「こんな事なら補充しておけば良かった・・・」
「私は何度も申告した筈だ。何処かの誰かは無視して散財していたがな」
「あ、アンタだってステーキ食べてたじゃん!」
「私は与えられた物には口を挟まない。購入に踏み切ったのは君だ」
「考え無しで悪かったな!こうなりゃ自棄だ!」
「何をするつもりだ?」

 疑問を口にしてはみたが、長年の相棒が考えている事など大方予想はつく。
 そして、それは大体無理難題と相場が決まっている。

「迎撃するよ!」
「正気か?6発しかないのだぞ」
「全弾当てれば良い!」

 やはりそう来るか。
 火気管制はガンナーである私の仕事であり、6発全てを命中させよとの難題を押し付けられた訳だ。

「厄日だ」
「昨日も聞いたよ、それ」

 抜かしてくれる。
 NPFとの距離は凡そ2000、接近されつつあり。
 こちらの速度との比率を考えると、NPFは音速に達している可能性が高い。
 今だロックオン・アラートが鳴り続けている以上、下手にアクションを起こせば即ミサイルが飛んで来る筈だ。
 機体性能、装備、無人である筈なのにパイロットの人間性に至るまで、こちらはNPFに劣っている。

「3秒後に旋回、真正面から行く!」
「ミサイルが来るぞ」
「避けて見せる!アンタは照準に集中してな!」
「了解した」

 こうなった以上、私の相棒は何を言っても聞きはしない。
 正面からミサイルを避けると言うのだ、信じるしかあるまい。

「行くよ!左旋回!」
「モニター照準リンク。機銃スタンバイ」

 機体が翼で雲を切り裂き、小さな弧を描いて機体の頭をNPFに向けた。
 私専用のモニターもNPFを捉え、モニターに中央に表示された機銃の有効範囲を示すクロスとNPFが重なる。
 ヘッドオンからのファイトの始まりだ。

「目標、ミサイル発射。スタンダードだ」
「近接炸裂型じゃ無ければ避けられる!」

 当然ながら、ミサイルは音速を裕に超える速度で飛来する。
 目視で避けるなど不可能だ。
 パイロットが普通の人間ならば、だが。

「しっかり狙ってろよ!」

 ミサイルと正面衝突する直前、機体は僅かに機首を上げ、放たれた2発のミサイルの上を滑る形で見事に回避した。
 NPFのミサイルは誘導性の低いスタンダードミサイルだったが、まさに神業と言える。
 私の相棒は操縦に関しては一流だ。
 ミサイルを避けると言う偉業を"彼女"は当然の様に果たす。
 操縦以外の部分が無ければ素晴らしい相棒である。

「次はアンタの番だよ!」
「了解。狩りは得意だ」

 NPFとの距離は急速に縮まり、幸いにもミサイルは2発で弾切れらしくミサイル・アラートは解除された。
 残る脅威はNPFの機銃だが、残念ながら射撃戦に関しては諦めて貰う。
 コンピューター制御の無人機では出来ない機銃の使い方を教えてやる。

「若干ズレている。頭を1度下げろ」
「了解。外すなよお?」
「そちらこそ、撃墜した目標にぶつかるなんてマヌケをするなよ」

 目標はコンピューター制御の無人量産機であり、目標の撃墜を最優先に飛んで来る。
 最悪、体当たりしてでも対象を撃墜せよとインプットされているのだ。
 正面衝突の危険がある場合でも回避行動は取らない。
 その上で、射程距離に入らない限り火気を使う事もない。
 目標との距離は650。
 機銃の有効範囲としては僅かに達していない。
 だが、私は機銃のトリガーであるスイッチを押した。
 機体の頭、コクピットを目とするならば、犬で言う鼻に当たる部分に設置された2門機銃が吠え、6発の弾丸が空を貫く。

「急上昇!」

 機体が機首を上げ、黒煙を上げるNPFとの衝突ルートを外れる。
 6発の弾丸の内、命中が確認出来たのは6発。
 全弾命中である。
 機体そのものがミサイルなどと揶揄されるNPFは目標に向かって真っ直ぐに突っ込むしか能が無いのだ。
 多少射程距離が足りていなくとも、向こうから放たれた弾丸に当たりに来てくれる。
 15mmと言う半端な口径の機銃でも、量産NPFの装甲を撃ち抜くには十分だ。
 当たれば倒せる相手なら、やりたくはないが1発あれば事は足りる。

「お疲れ様!」
「残弾0。今度こそ補給しろ」
「分かってるよ!でも、その前にさ、ね?お腹空いてない?」
「ふむ。確かに空腹を感じる。時刻もランチタイムを少々過ぎているな」
「まずはご飯!良いね!?」
「私はガンナーだ。パイロットの決定には従おう。無茶でなければな」

 機体は再び弧を描き、風を切って駆け出した。
 これが私達の日常だ。
 命を賭けて飛び、空に生きる。
 1日の大半を空で過ごす私達を、太陽は今日も照らしている。




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