作家を目指しつつ、リーマンに・・・

我流ではありますが、作家を目指して行きたいと思います。

籠女

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籠女7

 町の喧騒で目を覚ました。
 窓の外は既に明るく、端末の時刻は午前6時となっている。
 慣れない旅の疲れが出たのか、気付かない内に寝てしまったらしい。
 朝から辺りが騒がしいと不快だ。

「お客様、おはようございます」

 部屋の戸の向こうから女将の声がした。
 目覚ましなど頼んでいない筈だ。
 それに、何やら廊下が騒がしい。
 宿の従業員でも客でもない複数の人間の気配を感じる。

「何かありましたか?」

 何かと聞いたが、俺の中で既に予想は出来ている。
 朝になっていると言うのにケンゴ達が戻っていないのだ。
 大方、マサ辺りが無理に酒を飲んで暴れた挙げ句面倒を連れ込んだのだろう。
 昨今では未成年者に飲酒を奨めた者は勿論、止めなかった者にも責任が生じるらしい。
 全員仲良く警察の世話にでもなったのか。

「失礼します。まずは、落ち着いて聞いて頂きたい」

 悪い意味で予想通り、女将が連れて来たスーツの男達は警察手帳を提示した。
 落ち着いて聞けなんて言う等と、落ち着いて聞いていられる内容ではないと言っている様なものだ。

「昨日、お連れの皆様はどちらに?」
「食事に出掛けたまま戻っていませんよ」
「そうですか・・・」

 手帳には田中とあった白髪混じりの刑事はふうと溜息をついた。
 溜息をつきたいのは朝から取調べ紛いの質疑応答を強いられている俺の方だ。
 どうやら面倒事に巻き込まれたのは間違いないらしい。

「昨日、貴方はどちらに?」
「ずっとこの部屋に居ましたよ」
「成る程。では、何もご存知ないのですね?」
「はい」
「分かりました。改めて申しますが、くれぐれも慌てずに聞いて下さい。実は、昨日近くの峠で飛び込みがあったのです」
「自殺ですか?」
「町の人間でないのは確かです」

 答えになっていない返答だ。
 田中の後ろに控えている比較的若い男は俺をジッと見詰めており、俺が疑われているのは間違いない。
 よそ者が死んだ事件でよそ者が疑われるのは仕方ないか。

「お連れの方のお名前を教えて頂いても?」
「構いませんけど、帳簿は見たんですよね?疑われてるのは気分も悪いので、言いたい事があるなら結論から言って下さい」
「・・・失礼しました。では単刀直入に。亡くなったのは佐山孝明と言う男性です。ご存知ありませんか?」
「知りませんね」
「そうですか。ご協力ありがとうございます。またお話を聞かせて頂くかも知れませんが、その時はご協力お願いします」
「分かりました」

 全く知らない人間が偶然に死んだだけだ。
 出掛けたまま戻らないケンゴ達はともかく、少なくても俺には何の関係もない。

「最後に1つだけ。佐山氏を最後に見掛けた人が言うには、貴方くらいの歳の男性と一緒に居たそうです。お連れ方が戻りましたら一度お話を伺いたいのですが」
「分かりました。連絡先を頂いても?」
「勿論です。では、こちらまでお願いします」

 田中から予め用意されていたらしい携帯の番号が書かれたメモを預かり、部屋に再び静寂が訪れた。
 外の喧騒も話をしている内に納まり、自殺の名所と言われるだけあって珍しくもないのだろうと窺える。

「・・・」

 思考をまとめるには丁度良い静けさだ。
 今だ戻らないケンゴ達が何らかの鍵を握っているのは間違いない。
 それを踏まえ俺が取る可き行動は何か。
 あっさり引き下がった事から、俺に掛けられた疑いは田中達にとってもゼロではない可能性の調査程度だったのだろう。
 引き下がったのは礼状がないからだとしても、俺に確認したかったのは死んだ人間との関わりだけなのだと思われる。
 ならば、下手に動いて有らぬ疑いを掛けられるよりも此処でケンゴ達を待つのが無難な策だろう。
 ケンゴ達を探す場合はどうか。
 荷物が宿にある以上、ケンゴ達が町から出るとは思えない。
 ただ待つよりは早く合流出来る可能性が高い策だ。
 だが、先の喧騒から町の人間がよそ者を警戒している可能性が高い。  余計なトラブルとの遭遇率も高い筈だろう。
 次に俺1人で今すぐに帰った場合。
 正直、今俺が最も採用したい策だ。
 余計なトラブルで俺の時間を奪われるのは御免被りたい。
 だが、疚しい事があり逃げたのではと思われるのも御免だ。

「面倒臭・・・」

 思わず声に出てしまった。
 やはり慣れない事はするものではない。
 1人で生きていく方がよほど気楽だ。

「・・・あ」

 一先ず昼まで待機していようと端末を手にしたところで気が付いた。
 ケンゴ達は携帯電話を持っている。
 こんな簡単な事に気が付かないとは情けない限りだ。
 とにかく、両親を入れて6件しか登録されていないアドレス帳からまずはケンゴに連絡を取ることにした。

籠女6

「トウマ、気分はどうだ?」

 僅かに頬を赤らめながら、ケンゴは1時間程で戻って来た。
 肩が上下しているのは走ったからか。
 アルコールの臭いはせず、どうやら俺を心配して1人急いで戻って来たらしい。

「大分良くなりました」
「そうか!トウマは何か食べたか?コンビニを見付けたから、何か買ってくるぞ」
「女将にお握りを作って貰いました。ご心配おかけ致しました」
「おいおい、そんなに畏まるなよ!困った時はお互い様だぜ!」

 申し訳なくなる程爽やかな人物だ。
 ケンゴが傍に居ると自分が卑屈に見えて来る。
 事実であるから尚更申し訳ない。
 だからと言って自分のスタイルを変えるつもりはないが。

「そうだ、面白い話を聞いたぜ。タマのママが忌寄せの事知ってたんだよ!」
「え?」
「何でも、忌寄せってのは大昔からある呪いみたいなもんらしいぜ!卑弥呼とかの時代から、人の負の感情をひたすら集めて出来た呪いだとさ」

 人の負の感情を集めて出来た呪い。
 そんなもの、ネットに転がる都市伝説ではありがちな作り話だ。
 それがどうなれば現実に存在する歳を取らない人物と繋がる。

「・・・」
「ん?どうしたトウマ?」
「いえ、ちょっと考えてみたんですけど、そのタマのママっていくつぐらいの人でした?」
「見た目はそんなに老けて見えなかったな。50代ぐらいだと思うぜ!」
「そうですか。じゃあ違うかな」

 本当の忌寄せを知る人物が居るとしたら、50年間歳を取らない人物と何らかの関わりがあった可能性が高い。
 例えば歳を取らない人物に同年代の友人が居たら。
 俺が調べた情報では、歳を取らない人物は15から18歳辺りのまま身体の変化が止まっているらしい。
 ならば、現在70歳近い人に可能性がある筈だ。
 勿論、忌寄せと歳を取らない奇病に関係があればだが。

「お!何か思い付いたのか?」
「・・・仮にも病人なので、あんまり騒ぐ可きではないと思ったんです。歳を取らない人が居るって話、あれは本当なんですよ」
「マジか!?」
「この町の病院に居ます。カルテを確認したので間違いありません」
「スゲエ!マジなのかよ!・・・ん?トウマ、カルテなんて何処で見たんだ?」
「俺の趣味は調べ物なんです。変わってるって良く言われますけど、知る為なら何でもします」

 結果を明確にする為なら経過は問わない。
 不正アクセス、ウイルス拡散、情報抽出は俺の十八番だ。
 ネットに繋がっているPCから情報を盗む、ネットに繋げている監視カメラの映像を見る、方法はいくらでもあった。

「スゲエけど、完全に犯罪だよな・・・」
「バレれば犯罪ですね。バレませんけど」
「まあ、トウマは悪用してる訳じゃなさそうだしな!」
「さっきのはケンゴさんだから言いました。人間としてはしっかりしてそうですし」
「はってのが気になるけどまあ良いや。病人を訪ねる訳にもいかないわなあ・・・」
「忌寄せは実在する。それで良いと思いませんか?」
「そうだな。目的はあるかどうか確かめる、だったしな」

 腕を組み、ケンゴが何度か頷いている。
 他の誰でもなくケンゴ自身を納得させているのだろう。
 俺もそうだ。
 忌寄せと奇病の関係は気になるが、その為に病人をより苦しめるのは気が引ける。
 知られたくない事情があるから奇病について発表もせずにひた隠しにしているのだ。
 第三者が興味本位で首を突っ込んで良い話ではない。

「そんじゃ、明日はBBQでもやって帰るとするか!トウマ、病気の件は内緒だからな!」
「分かってます。ところで・・・」
「そういえば、他の奴等が遅いなあ。店出るまでは皆一緒だったのに」

 俺が他の皆はどうしたのかと聞くより先にケンゴが立ち上がった。
 ケンゴと話し出してからもう20分は経っている。
 女将の口ぶりからしてタマは宿の近所であると予想されるのだが、それにしては帰りが遅い。
 散歩でもしているのだろうか。

「ちょっくら探して来るぜ!」
「手伝います」
「体調悪い奴は寝てろよ!直ぐ戻るからさ!」

 ケンゴが軽い足取りで部屋から出ていき、俺はまた1人になった。
 思えば、ここで疑問に思うべきだったのだ。
 チェックインを済ませた客が夜遅くに何度も出入りしているのに宿から何も言って来ない事を。
 思い出す可きだったのだ。
 宿の女将が常に俺達の様子を伺っていた事を。
 考える可きだったのだ。
 マサ達が戻らないのは散歩ではなく、何らかの事件に巻き込まれていた場合を。

「ケンゴさん、今まであった中じゃかなりマシな人だな・・・」

 感心しながらもお言葉に甘え、俺は横になる事にした。
 日付が変わるまでもう大して時間はない。
 思えば、ここで疑問に思うべきだった。
 チェックインを済ませた客が遅い時間に何度も出入りしていると言うのに、宿側が何も行って来ないのはおかしいと。





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籠女5

途中3ヶ所のサービスエリアで休憩を挟んだ事もあり、件の町に着いたのは辺りがすっかり暗くなってからだ。
 途中でケンゴに変わりアユミが運転したのには驚いたが、他には特に変わった事もなく21時前には無事に宿屋に着いていた。
 道中では飲み会をやろうだの夜の町を探検したいだのと騒いでいた面々も、疲れからすっかり口数が減っている。

「お待ちしておりました。お夕飯の時間は過ぎておりますが、宜しければ何かご用意致しましょうか?」

 宿屋に着くと、まず女将が部屋まで案内してくれた。
 男3人で使うには十分過ぎる広さの部屋だ。
 その上、夕飯に間に合わなかったのはこちらだと言うのに用意してくれるらしい。
 サービス面も良さそうである。

「いえ、こちらが遅れたので・・・。今日は外で食べますよ」
「畏まりました。この連休中はお客様以外にご予約は頂いておりません。何かありましたら、何なりとお申しつけ下さい」

 還暦は過ぎているであろう女将は深々と頭を垂れ、部屋の戸を音もなく閉じた。
 成る程、確かにこの町の宿屋が儲かっているとは考え辛い。
 何せあるのは山と海だけで、海は自殺スポットと来ている。
 サービス面が良いのではなく、単純に暇を持て余しているのかも知れない。
 俺達の様な物好きはともかく、この町で宿屋を使う人間が他に居るのだろうか。

「さて、と!取り敢えず女子連中と合流しようか!」
「そうですね!まずは腹拵えですよ!」

 簡単に荷物をまとめ、宿屋のロビーに向かう。
 ロビーと言っても、此処はホテルではなく民宿よりは上等なだけの宿屋だ。
 木製のベンチに囲まれる様にチューナーが付けられたブラウン管のテレビがあるだけで、長い時間を過ごせる様な場所ではない。
 待ち合わせや待機の場と言うより、町の井戸端会議に使われそうな雰囲気を感じる。

「お待たせー」

 俺達のすぐ後に女将に案内されていたユリとアユミは、俺達がロビーで寛ぎ出してから15分程で用意を済ませて来た。
 俺達しか客が居ない事もあり、女子の部屋は男子の部屋の隣だ。
 部屋の間取りはそれ程変わらないと予想されるのだが、たかが食事に行く準備だけで何故ここまで時間が掛かるのだろう。
 女と言うのはどうも分からない。

「集まったな!それじゃ、早速のみ・・・いや、食いに行こう!」
「さんせーい!何食べよっかー!?」
「私、居酒屋行ってみたいですネ!」
「アユミさんとケンゴさん以外はまだ未成年だろ」
「トウマ君は真面目だね。僕、少し位ならハメを外しても良いと思うよ?」
「以外だな。マサは俺と同じ考えだと思ってたが」
「トウマ君、ひょっとしてお酒弱いのー?」

 弱いも何も俺は未成年だ。
 酒なんて飲んだ事も無ければ飲みたいとも思わない。

「おっと!他のサークルは知らんけど、地方伝承究明会は清く正しく美しくだぜ!マサ、気持ちは分かるけど二十歳まで我慢だな!」
「分かりました・・・。あの、楽しみにしてて良いですよね!?」
「おう!そんときゃパーッと行こう!」
「はい!」

 マサと言う人間が分からなくなって来た。
 たかが飲み会の約束をしただけで何故涙目になるのだろう。
 それとも、何か強い思い入れでもあるのか。
 まさか友達と飲むのが夢とか。
 マサなら有り得そうなのが怖い。

「食事にお出かけなら、当宿を出て右に進むと水色の暖簾でタマと言うお店がありますよ。町の海の幸が食べられます。私達町の人間も良く行くんですよ」

 話を聞いていたのか、何処からか現れた女将がニコニコしながら簡単な地図を渡して来た。
 白髪混じりの頭と小皴があるが清潔感もある顔で、少なくても笑っている感じは人が良さそうな女将だ。
 見た目だけでは無いと信じたいが、そうして近寄って来た人間程何を考えているか分からない。
 地元の人間が勧める店とは言え、自殺スポットとなっている海の幸を食べるのも抵抗がある。

「海の幸か!良いね!」
「決定だね!早速行こーう!」
「オウ!トウマ、どうしましたカ?」
「すみません、何か気分が・・・」
「え!?トウマ君、大丈夫!?」
「少し横になってても良いですか?車酔いが抜けてないみたいです・・・」
「そうか・・・。分かった。ゆっくりしててくれ!明日もあるしな!明日は調査のついでに酔い止め買っとけよ?」

 ニッと笑って肩を貸そうとしてくれたケンゴには悪いが、気分が悪いなんて嘘だ。
 無知は罪なんて言葉があるが、ならば有知は罰かも知れないな。
 この町に居る間は魚介類は食べられない。

「ありがとうございます。あ、1人で平気です。女将さんも良い人そうですし・・・。皆さんは食事に行って下さい」
「そうか?・・・何かあったら直ぐに連絡してくれよ!」
「はい」

 俺は残ると言い出しかねなかったケンゴも渋々引き下がってくれた。
 やはり1人の方が気が楽だ。
 部屋に戻り、何時の間にか女将が敷いていた布団に横になる。
 携帯端末のスイッチを入れると、昨日調べた結果の画面が表示された。
 信じ難い事だが、50年間体が一切成長も悪化もしない奇病の患者がこの町の病院に実在するのだ。
 患者の名は清瀬蛍。
 余りにも奇妙な符号に、俺はこれをケンゴ達には言えなかった。




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籠女4

「そう言えば、トウマ君さー?」
「何ですか?」
「トウマ君って、何で地方伝承究明会に入ったの?そもそもあんまり信じてないでしょ?」
「・・・ユリに誘われたからですよ。誘われたタイミングで拒否する理由が無かったので」
「ふうん。そうなんだあ・・・」

 事実を言っただけなのだが、これでまた誤解が深まった気がしてならない。
 どうもアユミは俺とユリを玩具にしようとしている様だ。
 ユリに彼氏が居るかを気にしていた節も見られたし、他人の交友関係が気になるタイプなのだろうか。
 だとしたら、個人的に余り好ましくない性格だ。
 アユミとは余り深く接しない方が良いかも知れない。
 いや、元々深く接するつもりもないか。

「ねえねえ、マサ君は?」
 運転席で地図を覗き込んでいたマサは、待ってましたとばかりに振り返った。
 マサは人の話に聞き耳を立てるのが好きな男らしい。

「僕は黒魔術に興味があるんです!呪いとか、悪魔召喚とか!日本の地方伝承には結構黒いのが多いじゃないですか!」
「呪いたい人が居るのですカ?」
「え?あ、いや、べ、別に・・・」

 容易に想像出来る理由と原因だ。
 マサのやつ、結構歪んだ性格をしているな。
 やはり深く接しない方が良さそうだ。

「ケンゴさんはどうなんですか?」
「おう、トウマ!よくぞ聞いてくれたな!」

 運転中にマサと同じ反応をされたらどうしようかと一瞬不安になったが、ケンゴは前を見たまま嬉しそうに笑った。
 そもそもの元凶が何故生まれたのか、興味が少なからずある。

「トウマは神隠しって知ってるか?」
「人が忽然と居なくなる事ですね」
「そう!俺はその神隠しを追ってるんだ!何故起きるのか、消えた人間は何処に行くのか!」
「神隠しに遭った方が?」
「・・・いや、そうじゃない。俺が勝手にそうであって欲しいと願ってるだけさ・・・」

 どうやらケンゴには過去がある様だ。
 このタイミングで自ら言わないと言う事は、余り聞かれたくもない話なのだろう。

「ね、ねえねえ、ユリちゃんは?」
「私は日本の歴史、気になるますネ!教科書のじゃなくて、ディープな部分を見たいですヨ!」

 アユミはケンゴの過去を知っているな。
 慌てて話題を逸らすなんて、自ら墓穴を掘っているのと同じだ。
 だが、隠そうとしている他人の過去をわざわざ掘り起こす様な真似は文字通り墓穴を掘りかねない。
 俺の経験がソースだ。

「ケンゴさん、そう言えば忌寄せについて調べた結果なんですが・・・」
「おう!何か分かったのか?」
「関係あるかは分からないんですが、今向かっている町には清瀬って言う名士が居るみたいです。特に企業の社長だったりはしないみたいなんですが、航空写真を見た感じだと少なくても町で一番大きい家に住んでいました」
「トウマ君、それ、どうやって調べたの?」
「独自のルートです」
「ナイスだトウマ!話を聞いて見るのはありかもな。呪いの話なんて持って行ったら怒られそうな気もするけど」

 忌寄せと清瀬。
 同じ町で重なった2つは偶然の産物なのだろうか。
 それに、気になったのはそれだけじゃない。
 航空写真で件の海見の峠と思われる峠を見た際に立入を禁止する為の冊の様な物が確認出来たのだが、それが何故か山側にも見られたのだ。
 山から峠に行く人間が居るのかも知れないが、見たところ山に道の類はない。
 わざわざ山を突っ切ってまで峠に出る人間が果たして居るだろうか。
 しかも、山側の冊はあくまでも山の一部分から峠にかけてまでしか囲われていない。
 あれでは冊に囲われた部分には何かありますと行っているのと同じだ。

「トウマはインテリさんネ!」
「褒め言葉と受け取って良いのか?本来は知識がある人って意味だぞ」
「勿論ですネ!私、トウマは尊敬してるヨ!」
「へえ?ユリちゃん、講義受けてる時のトウマってどんな感じなのかなあ?」

 ユリとアユミが盛り上がっているところで、車は高速道路に入った。
 3連休だけあり、渋滞とは言わないまでも中々混み合っている。
 恐らく、今日は町に着いても情報収集の時間はないだろう。
 果たして明日だけで答えが出るのか。
 俺の予想では、それは不可能だ。

「思ったより混んでんなー!こりゃ今日は宿着いたら夜だな!」
「本格的な調査は明日からですかね?」
「そうだな。場合によっちゃ、2班に分かれるのもありかもな!」
「この分だと最終日は帰宅ラッシュになりますね。早めに切り上げないと週明けがキツイですよ」
「何も1回目の調査で白黒つくとは思ってないさ。まあ、全員で行く下見みたいなもんだと思ってくれ!」

 まさか何度も来るつもりなのか。
 乗り掛かった、いや、乗ってしまった船とは言え、何度も休日を潰されるのは勘弁願いたい。
 しかし、一度手を付けた案件を途中で投げるのも負けた気がして嫌だ。
 もしも過去に戻れるなら、ハッキリとユリに誘われた時に断らなかった俺を殴ってやる。

「まあ、そうは言っても次の連休は再来月だしな。今回で結果が出るのが何よりだ」
「僕、頑張ります!」
「私もやりますーヨ!」
「頑張ろー!」
「お、おー・・・」

 俺は車に酔った振りをして寝る事にした。
 気持ち悪さなんて全くないが、居心地の悪さと頭痛がある。
 原因は、言うまでもなかった。





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籠女3

 金曜日の集まりでは俺を除く全員がもはや忌寄せの呪いとやらの真相よりも初遠征に対し盛り上がりを見せており、4時間に及んだ会の内容は大半が何処で何をして遊ぶかが占めていた。
 チラホラと本来の趣旨も覗かせてはいたが、少なくてもユリとアユミはBBQをメインに考えている様だ。
 ケンゴは予想通り忌寄せの呪いは実在すると主張し、検証プランとして寺への訪問と歳を取らない女性の捜索を提案していた。
 見掛けと口調に寄らず、それなりに考えてはいるらしい。
 マサが上の空だったのは、本人の呟きから読み解くに友人と呼べる人間と何処かに行くのが楽しみで仕方がないのだろう。
 一方、俺は自分の心境の変化にまたも戸惑っていた。
 海見の峠が自殺者多数の為現在は立入禁止とされているのは分かったのだが、忌寄せと言う単語がいくら調べても出て来ないのだ。
 不本意ながら、現地に赴きマサの言う寺の住職に話を聞くより打つ手がない。
 つまり、気付けば俺もノリ気になってしまっている訳だ。

「よーし、皆集まったな!これが俺の愛車だ!皆、早速乗ってくれ!」

 あっという間に訪れた出発の日、待ち合わせ場所に指定された場所に行くと約束の10分前にも関わらず到着は俺が最も遅かった。
 ケンゴが自慢げに紹介した車は裕に10人は乗れそうな白いワゴン車で、車内には窓から見えるだけでもかなりの荷物が入っている。
 まだ海水浴には早い時期の筈なのだが浮輪や膨らませるタイプのボートまである様だ。

「トウマ君、もうちょっと詰めてー」
「ワオ!トウマは大胆ネ!」
「ユリ、悪いが俺は席を詰めただけで、ユリとの心理的な距離を詰めた覚えはない」
「トウマ君!女の子に意地悪しちゃダメだぞー?」
「アユミ先輩、そもそもなんで俺が真ん中に?」
「エヘヘ、役得でしょ?」
「はあ・・・」

 運転はケンゴ、助手席にはマサ、後ろに俺とユリ、アユミが詰めて座った。
 何故か俺はユリとアユミに挟まれる形となり、本来は楽に座れるだけの面積に荷物が侵入している為に肩なり脚なりが触れ合ってしまう。
 ケンゴならば喜べる場面なのかも知れないが、俺にとっては落ち着けない、ハッキリ言って迷惑な配置だ。

「凄い荷物ですね」
「何が待ってるか分からないからな!考えつく限り全部の用意をして来た!」
「そういえば、宿の手配は出来たんですか?僕、自分の準備だけで手一杯でした・・・」
「最近出来たばかりの宿屋が取れたぜ!男女別の2部屋な!2泊3日で1人2万の予算内!朝と夜は出るみたいだから、食事も心配ないぜ!」

 その宿屋なら調べ物中に俺の目にも泊まった。
 予算の心配は端からしていないが、ケンゴとマサと同室か。
 願わくば個室が良かった。
 うるさい夜は好きじゃない。

「最悪野宿も覚悟してたよー」
「おいおい、俺は女の子にそんな事はさせないぜ?」
「私、スプレー持って来てますヨ!虫グッバイスプレー、要りませんでしたカ?」
「ユリまで・・・。なあ、トウマ?俺はそんな事しそうに見えるか?」

 俺も当日になって忘れてたと言われる可能性は考慮していた。
 念の為24時間営業のファミリーレストランの場所も調べていたのだが、無駄に終わったらしい。
 前回の集まりでは俺を覗いて唯一主旨を忘れていなかった事もあり、俺のケンゴに対するイメージを修正していたつもりだったのだが、予想よりもしっかりした人間の様だ。
 普段の態度とは裏腹に人望があるのも納得出来る。

「この前の打ち合わせまでは見えてました」
「軽くショックだぜ・・・。トウマに言われると、特に」
「何故ですか?」
「トウマはお世辞とか言わないタイプだろ?ズバリと本当の事言いそうだからな」

 なるほど、人を見る目もあるらしい。
 俺は嘘をついてまで他人を褒めるなんて無意味な事は嫌いだ。
 マサには聞かないのも、つまりそう言う意味なのだろう。
 ついでに、ユリとアユミは野宿でも構わなかったのか。
 ある意味、俺達よりもタフだ。
 俺が2人を褒めるとしたら、まずこの点だろう。

「すみません、僕が余計な質問を・・・」
「気にすんなよ、マサ。さあ、そろそろ出発しようか!」
「いよいよですネ!私、昨日は寝かさなかったですヨ!」
「な、何を?まさか、ユリちゃん彼氏が居るとか・・・」
「アユミ先輩、今のは眠れなかったと言う意味ですよ」
「そうなの?・・・ふうん。トウマ君、ユリちゃんに詳しいねえ?」
「同じ講義に出てるので。付き纏われているんですよ」
「そうなんだあ。同じ講義に出てるから、ねえ?」

 ニヤニヤしているアユミに怒りを覚えるが、この程度で態度に出していられない。
 俺の調べでは、目上の人との旅を円滑に終わらせる為には妥協と諦めが最善の手であるらしい。
 今更拒否も拒絶も出来ない。
 車も走り出し、思えば先々週の集まりで顔を合わせるまでは全員が全員と赤の他人であった地方伝承究明会は一歩目を踏み出してしまったのだから。





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