東北の田舎で内科医さんちゃごがたまに書く日記

悲観主義は気分によるもの、楽観主義は意志によるもの。楽観主義で参りましょう!

山のあなた

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私は山に登ります。

登りたいと思えば、たとえ厳冬期の雪山だって登ります。

先日同僚と飲みに行った時、下のような遣り取りがありました。

同僚 『…だって冬山でしょ?危険じゃないですか?どうして登るんですか??』

私  『私の中の何かが、私を突き動かすから…』

同僚 『普通は、危険を避けて、安全な道を選ぶのが本能だと思うんですよね…』

全くその通りです。

しかし、あえて危険に挑む本能もあると思います。

それは“私達のDNAに刻まれた進化の歴史”で説明できます。

以下は私の仮説です。

かなり独断的かと思いますが、ご一読下されば幸いです。


  ※ ※ ※


生命は、数十億年前、海の中で誕生しました。

今からおよそ4億年前、海や河…水の中の世界は生命に満ちていました。

私たちのご先祖様は、その頃まだサカナの姿をしていました。

しかし楽園であった水中の世界も、次第に生存競争が激しくなり、

決して安住の地とは言えなくなってきました。

この時、生存競争の渦から抜け出す方法が一つありました。

陸に上がることです。

そのころの陸上には、まだ生物の影はほとんど見当たりません。

不毛の荒野が広がるのみでした。

ご先祖様は、二者択一を迫られました。

危険を冒してでも陸上を目指し、新天地に活路を見出すか…。

このまま水中に留まり、危険を避けつつひっそりと暮らすか…。

この“究極の選択”、ご先祖様は前者を選んだのです。

数千万年の時間をかけ、ひれを足に変え、肺呼吸を覚え、

魚類から両生類に進化して、ついに上陸を果たしました。

およそ3億6千万年前のことと言われています。

ご先祖様の進化は、もちろんこれで留まりませんでした。

乾燥にも耐え、暑さ寒さに負けぬよう、時には低酸素や食糧不足にも耐えるよう、

両生類から爬虫類へ、そして哺乳類へと進化していきました。

全ては『生き延びる』ための、絶え間ない格闘でした。

道のりは困難を極めたでしょうが、しかし喜びも大きかったと思います。


  ※ ※ ※


その数億年・数十億年の生命の進化の果てに、私たちがいます。

遺伝子DNAには、進化の歴史がすべて記憶されています。

3億6千万年前の『上陸』の記憶は、今現在でも強烈な本能として作用し、

私をして“より高いところ”(つまり山)に向かわせるのだと思います。

それはヒトという種(しゅ)の、活動範囲・生存範囲を拡大しようとする

大きな意志の現われの一つなのだと思います。


  ※ ※ ※


一方で、『山は危険』なのも事実です。

そして、危険を避ける事も、生命が生き延びるための本能に他なりません。

生命の本能という観点から、ヒトの行動を見直してみます。

『生き延びるチャンスの拡大』⇒『山は未知の領域』⇒『山に登ろう…』

『(生き延びるため)危険を回避』⇒『山は危険な世界』⇒『山は避けよう…』

この二つの選択肢は、『生き延びる』という目標から発した点で、全然矛盾しません。

ただ、種(しゅ)としての生命は、

ある者には前者を選ばせ、別なある者には後者を選択させているだけです。

そして私は前者を選択しがちな者に、私の同僚は後者を優先する者に

属しているだけなのです。


  ※ ※ ※


山に登りながら、私はそんなことを考えています。

そのようなわけですから、山よ、私が登って下りようとしているしばしの間、

どうぞ寛大でいて下さい。

閉じる コメント(18)

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なぜなんでしょか、私も昔山をやっていましたが考えたこともありませんでした。そこに山があるからという明答がありましたがそのまま受け入れていました。山に登っているときに感じる幸福感や(厳しければ厳しいほど)雑念が徐々になくなってゆく「心の透明感」は独特なものがあります。大自然の中で体ひとつで挑戦して生き延びようと言う生存本能を刺激してくれる山が私は大好きです。

2009/4/23(木) 午前 6:52 [ プーサン ]

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私の身内も、「山、イコール登るもの」という公式を持っているようです。

2009/4/23(木) 午前 7:56 letgo

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私も中学時代、山に嵌りました。もっとも中学生ができる範囲の登山ですが。

しかし、登頂した時のなんとも言えぬ気持ちよさ、あれこそDNAの叫びだったんでしょうね。

2009/4/23(木) 午前 10:09 トロツキー

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先生おはようございます。
人間の進化の歴史、全く仰せの通りですね。
案外知らない人が多いので、非常に参考になったと思います。
「そこに山があるから」という有名な言葉がありますが、理屈じゃないんですよね。本能に体が動かされて登るのでしょうね。

傑作

2009/4/23(木) 午前 10:41 [ 敬天愛人 ]

山での遭難のニュースなどを耳にする度に「どうしてわざわざ危険な山に登るのだろう?」と考えてしまうのですが、今回さんちゃごさんのお話を伺って、なんとなくですがその気持ちが分かった気がしました。とにかく登られる際には、どうか万全の準備をお忘れなく。

2009/4/23(木) 午後 6:56 あずまいら

プーサンさん、こんばんは。
本当ですね。山を歩いていると、汗と一緒に雑念が流れていくようで気持ちがいいです。

2009/4/23(木) 午後 11:18 さんちゃご

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Letgoさん。積極的でいいですね。
登るべき目標として立ち現われた山は、同時に登るための力や勇気を私たちに与えてくれます。

2009/4/23(木) 午後 11:26 さんちゃご

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トロツキーさん。
同感です。60兆の細胞の真ん中からの叫びです。

2009/4/23(木) 午後 11:31 さんちゃご

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敬天愛人さん。
私の場合は、「山が(また)私を呼んでいるから…」という感じです。

2009/4/23(木) 午後 11:41 さんちゃご

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azumaira2さん。
お気遣い下さりありがとうございます。
山に登りたいという気持ちは本能的なものですが、山に登って無事に下るためには、綿密な計画や準備が欠かせませんから。

2009/4/23(木) 午後 11:49 さんちゃご

登山の経験がないのですが〜〜〜

今年は霊峰石鎚山に登ってみようかと思っています
ただいま、ウォーキングで足を鍛えていますが、自信ないな〜〜
どうなるやら・・^^;

2009/4/24(金) 午前 9:31 marieru

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マリエルさん、こんにちは。
石鎚山ですか〜。素晴らしいです。是非満喫してきて下さい。

2009/4/24(金) 午後 0:58 さんちゃご

山登りってあまり経験が無いけれど、なんだかわかるような・・・
山は登るものですよね。私も登ってみたくなりました!ぽち♪

2009/4/24(金) 午後 11:20 [ -- ]

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はなこさん、こんにちは。
実は私も大学に入学するまで、登山には全然興味ありませんでした。
ひょんなことから山岳部に入部しまして、初めて穂高(ほだか)に連れて行かれて…。
だんだん楽しさが分かってきたという感じです。

2009/4/25(土) 午後 1:32 さんちゃご

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このお話をお伺いするまで

山岳部の方のお気持ちが分かりませんでした。

重い荷物を背負い暑い山を登る、

凍傷するぐらい寒さに耐えながら登る。

なぜ人はこんなに過酷なことに

挑戦しようとするのだろうか?

真相をお聞きしたいと思っていました。

ロマンですね〜〜〜

素敵なお話をありがとうございました。

2009/4/27(月) 午後 10:02 [ pokapoka ]

面白い解釈ですね。
山には登るものの・・・未だにその理由を明確に説明できないでいます。
自然に足が向くので、やはりDNAにプログラムされているのでしょうね。

2009/4/28(火) 午後 8:10 Bokka

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mokoさん。
はい、山はロマンです!登山者は皆、間違いなくロマンチストです。
しかし「山から無事に下りよう」と願うなら、山は時に登山者に対して、徹底した現実主義者(リアリスト)になるように求めることがあります。

2009/4/30(木) 午後 1:42 さんちゃご

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Bokkaさん、こんにちは。
そうですね。“自然に”登りたくなってしまいます。

2009/4/30(木) 午後 3:56 さんちゃご


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