東北の田舎で内科医さんちゃごがたまに書く日記

悲観主義は気分によるもの、楽観主義は意志によるもの。楽観主義で参りましょう!

言葉

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もうずいぶん前になりますが、『つち(土)について』という記事をUPしました。
  ↓
『つち(土)について(改訂版)』
http://blogs.yahoo.co.jp/twomothers1452/54582685.html

この記事を書いていて、あるいは記事に寄せられたコメントにお返事をしていて、

一つ気づいたことがあります。

それは「“混沌”とは何か?」についてです。

ず〜〜と記事にしたかったのですが、今日という今日は意を決して書きます!

ちょっと長くて、理屈っぽいのですが、よろしかったらお付き合い下さい。


  ☆ ☆ ☆


まず、つち(土)についておさらいしてみます。

つち(土・地)

 地球の陸地の表面をおおう物質。

 風化した岩石の細かい破片、生物の遺骸およびその腐敗物、

 微生物などよりなる。土壌。


                            三省堂『大辞林』第三版

この辞書の記述にもある通り、“つち(土)”というものは単一の物質ではなく、

様々なものが混じり合ってできています。

水分や砂などの無機物、タンパク質などの有機物、そして菌類や虫などの微生物…

これらが渾然一体(こんぜんいったい)に混じり合ってできるのが、つち(土)。

あれこれ考えるうちに、つち(土)のこのような本質を表すのには、

“混沌”という言葉がぴったりだなあと思ったのが始まりでした。


  ☆ ☆ ☆


次いで、“混沌”という言葉について考えました。

“混沌”は、ギリシア語ではカオス(Khaos)といいます。

その対になる言葉は、もちろん“秩序”(コスモス Kosmos)です。

さてこの“混沌・秩序”という言葉を聞いて、皆様はどのように感じるでしょうか?

多くの人が何となく、

  混沌(カオス)=悪しきもの・醜いもの・劣ったもの・死

  秩序(コスモス)=善きもの・美しいもの・優れたもの・生命


というイメージを思い浮かべるのではないかと思います。

そして漠然と、両者は“対立するもの”と捉えているのではないでしょうか…。

かつては私もそうでした。

しかしよくよく考えた末、

『古代ギリシアの人たちは、そういう考え方はしていなかったろう…』

と思い直すに到りました。


  ☆ ☆ ☆


“つち(土)”の本質を“混沌(カオス)”と表現できることは先ほど書きました。

一方“秩序(コスモス)”という言葉が当てはまるものとして、

多くの人が“花”を挙げられると思います。

(ちょうど野に花が咲き誇る春の盛りですね。)

しかしここで気付くのは、“花”と“つち(土)”は切っても切れない緊密な関係に

あることです。

春になって土から芽を出した草は花を咲かせ、冬になると枯れて土に還る…。

しかし次の年、暖かくなるとまた芽が出る…。

この様子を観察していたギリシア人は、一体何を思ったでしょうか?

“花”と“つち(土)”の間で、循環する命を感じただろうと、私は想像します。

(特にアリストテレスはこのように感じた(観じた)と断言できます。)


  ☆ ☆ ☆


つち(土)は、それ自体“死”であっても、花の命を生み出すもの…。

混沌は、秩序の否定ではなく、秩序を生み出す原動力になる…。

それらの繋がり方は、“対立”ではなく“循環”するもの…。


古代ギリシアの人たちは、このように観じたのではないかと思います。

そこから素直に延長すれば、

『生と死は循環する』という死生観や

『混沌の中から秩序が生まれた』という宇宙観が育つのは、むしろ自然でしょう。

これらの考え方は、仏教の基礎となる輪廻転生や、

多くの神話で語られる宇宙開闢(かいびゃく)の物語にも共通しています。


  ☆ ☆ ☆


このように、古代ギリシアの人たちの考え方(宇宙観や自然観)は、

私たち日本人が昔から抱いている考え方に相当近いといえます。

それは(キリスト教などに代表される)善悪を峻別する考え方とは異なるものです。

閉じる コメント(18)

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さんちゃごさん、おはようございます。混沌と秩序は反対語として捕らえていました。考えてみると確かにそのとおりかもしれません。もう少し自分なりに考えてみたいと思いました。

2009/5/8(金) 午前 7:02 [ プーサン ]

深いぃ〜話ですな。古代ギリシャ人の死生観や物質に対する思考がどのようなものだったかは、あくまで想像になってしまいますが、少なくとも仏教のように森羅万象を受け入れ、自然に逆らわないような教えのほうが、キリスト教のような、こじつけの多い教えよりも無理がないように感じます。

2009/5/8(金) 午前 8:38 トロツキー

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先生、全く仰せの通りです。
キリスト教世界などを代表に、どうしても「二元論」の対比で物事を解決しようとして行き詰ってしまうという矛盾を繰り返しています。
その点、日本には「清濁併せ呑む」に代表される、峻別しない考え方が伝統的にあります。
いわば日本人の「一元論」的な、自然に対する畏れを抱いたと尊敬を持った考え方ですね。
それが日本人の精神性の根っことなって来たと思います。

勉強になりました。
感謝の傑作

2009/5/8(金) 午前 11:30 [ 敬天愛人 ]

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自然界が織り成す不思議な世界が広がっています。

海の世界、宇宙の世界、植物の世界、生き物の世界も・・・・

森羅万象を受け入れ、素晴らしい対応能力を頂いていますね。

命を頂き、自分をどう生かすか〜

同じ一生悪いことをする人も多いですが・・・

世のため人のためにと・・

一生の選択をする方はホントご立派ですね。

尊敬いたします。

2009/5/8(金) 午後 10:20 [ pokapoka ]

プーサンさん。こんばんは。
仰るとおり“反対語”という捉え方が、現代では主流だと思います。
しかし、昔は少数派だったと思うのです。
ものの考え方は、時代によって変化しています。これも“循環”の一つです。
(日本人の歩き方が、江戸以前と明治以後で大きく変化したのと同じようなものです。)
それを知るだけで、物事の見方が広がります。

2009/5/8(金) 午後 10:56 さんちゃご

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私も反対語的な対立についてあるときから
考えを改めました。
物事に境目があると思うから反対という考えが
生まれます。ほとんどの場合物事の境目あたりは
段階的に繋がっていて境というものは存在しません。
いろいろな事に関する真実は最低2つ以上はあります。
その2つは反対であったりします。
私はいい人であって、悪い人です。
おばかであって賢いです。
とても楽しくて苦痛な人生です。
まあ楽しいと思ったほうが得でしょう。

2009/5/8(金) 午後 11:08 hanapapa

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トロツキーさん、こんにちは。
ギリシア神話を覗くと、その自然観・宇宙観などおよそ類推できます。
Wikipedia『ギリシア神話』を拾い読みするだけでも、結構示唆に富んだ記述が見られますよ。
“カオス(最初は混沌ではなく、空隙という意味?)が最初に存在した…………コスモス(秩序)が世界に成立する。”
“人間は…神々も…元々はすべて「大地(ガイア)の子」である…”

旧約聖書の創世記とは、全然違いますね〜。

2009/5/8(金) 午後 11:23 さんちゃご

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敬天愛人さん。こんばんは。
二元論・一元論とも、ふる〜〜くからある考え方です。両方の考え方の特徴を知っていることが必要だと思います。
(高校あたりで、哲学の授業を(さわりでも)取り入れるべきだと思います。)

仰るとおり、日本人の思考・生活・社会習慣などなどは伝統的に一元論的な考え方の上に成り立っていますね。

2009/5/8(金) 午後 11:33 さんちゃご

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mokoさん。
豊かな自然・豊かな土に恵まれた民族では“循環”“一元論”的な考え方が優位になる傾向にあります。(日本・インド・古代ギリシア・ケルト)
一方、厳しい自然・砂漠の(土がない)環境で生きる民族では“対立”“二元論”の考え方が支配的になります。(ユダヤ・アラビア)
環境が人の考え方に大きく影響するのは当然です。

まあ私たちは、自然の恵みに感謝することを忘れないようにしなくてはなりませんね。

2009/5/8(金) 午後 11:44 さんちゃご

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HANAPAPAさん、こんばんは。
そうですね。人は矛盾を併せ持った存在であると認め、あるいは自覚した方が、ずっと豊かに過ごせると思います。

2009/5/8(金) 午後 11:48 さんちゃご

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哲学的なお話ですね。「混沌」と「秩序」は
循環するものですか。
確かに普通の人は混沌≒悪、秩序≒善と考える
でしょうね。でも、私はくだらない理由から
そう考えないんです。私は「女神転生」というゲームが
大好きで、このゲームは悪魔(一般に神や天使とか
呼ばれる様な存在もこのゲームではひとくくりで悪魔)
を仲間にして戦うRPGでこの悪魔たちが「混沌」と「秩序」
「光明」と「闇」という属性で分類されていて、
例えばインドのシヴァ神は「混沌」と「光明」、
ヴィシュヌ神は「秩序」と「光明」の属性と、
混沌と秩序に別れていてもこの世に善をもたらすもの
として扱われているのです。くだらない理由で
すみません。「秩序」も「混沌」も必要ですね。

2009/5/9(土) 午前 6:40 [ マッドサイエンティスト ]

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こんにちは。既に本文で触れられていますが、インド哲学も同じように考えています。「輪廻」という思想そのものがそうなのでしょう。
ヒンドゥー教のシヴァ神は、破壊の神ですが、この破壊は“創造・再生”を含有するものだそうですから…。

2009/5/9(土) 午後 3:28 Rev.Ren'oh

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マッドサイエンティストさん、こんばんは。
「女神転生」面白そうですね。(私は「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」しかやったことがありません。)
RPGって作者の世界観がゲームに大きく反映されていて、そこが楽しいんですよね。

2009/5/11(月) 午前 0:32 さんちゃご

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Ren’ohさん。
解説ありがとうございます。

>シヴァ神は、破壊の神……“創造・再生”を含有する…

昔はこれが理解できなかったのですよね。今はだいぶ解るようになってきました。本当に嬉しいことです。

2009/5/11(月) 午前 1:13 さんちゃご

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さんちゃご先生、こんばんは。
宇宙を表すコスモスという言葉は、また秩序という意味もあるのですね。
混沌と秩序は決して相反するものではなく、ウロボロスの蛇のように滑らかに連続している・・・。
今回も大変興味深く、為になるお話を有難うございました。

ところで、こちらのブログを私のブログのブックマークに入れさせて頂いても構いませんでしょうか?

2009/5/16(土) 午後 9:12 [ 偏屈王 ]

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偏屈王さん、こんにちは。
>ウロボロスの蛇
古代中国の陰陽太極図なども、同様の考え方がシンボル化されたものといえますね。
>ブックマーク…
はい、どうぞ。喜んで。

2009/5/17(日) 午後 1:12 さんちゃご

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ご快諾有難うございます。
では、早速入れさせていただきますね。
これからも宜しくお願いいたします。

2009/5/19(火) 午前 8:57 [ 偏屈王 ]

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こちらこそ、よろしくお願い致します。

2009/5/19(火) 午後 5:35 さんちゃご


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