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ラピスラズリの歴史はとっても古くて、
エジプトでは紀元前5千年頃から「天空と冥府の神・オシリスの石」として崇められて、
黄金に匹敵するほどの価値があったっていわれてます。
そうそう、世界で初めて「神秘の力を持つ石」として認められたのも、
ラピスラズリだったっていわれてますよね。
黄金のマスクで有名なツタンカーメン王のお墓にも、
ラピスラズリは、いっぱい使われていたみたいです。
ラピスラズリの特徴は、なんていったって、その深い青色。
この神秘の青には魔よけの力があるっていわれてて、
エジプトをはじめとした周辺地域では、砕いた粉で壁画を描いて護符としてたみたいです。
大昔はラピスラズリの産地は、アフガニスタンの北東のバダフシャンにあったそうです。
ヨーロッパの人々は、灼熱の砂漠を越えてやってきたこの石を、
遥かなるオリエンタルへの夢と憧れを込めて、「澄み渡った砂漠の夜空」って呼んでました。
ラピスラズリはよく黄鉄鉱(おうてっこう)をともなって産出されます。
その清冷なきらめきが、紺碧の空に散りばめられた星屑のように見えたから、
こんな呼び名がついたんでしょうね。
ラピスラズリの鉱物学的な定義は、ちょっと複雑なんです。
本来は、方ソーダ石グループの鉱物が主成分で、複数の鉱物の固溶体のことを指して、
黄鉄鉱はあくまでもオマケ的な含有物に過ぎないんですが、
その取り合わせがキレイから、黄鉄鉱まで含めて「ラピスラズリ」って呼ぶこともあるんです。
和名の「青金石(せいきんせき)」も、もともとは方ソーダ石の一種で、
ラピスラズリの主成分のひとつである「ラズライト」っていう鉱物のことをいいますが、
やっぱり黄鉄鉱まで含めて名づけられたのに違いありません。
でも、含有物をまったく含まない目の覚めるような青一色のラピスラズリもあるんですよ。
ラピスラズリっていう名前は、ラテン語で「石」という意味の「ラピス」と、
アラビア語の「天空」や「青」を意味する「ラズワルド」が
ミックスされて作られた造語です。
日本では「青金石」って呼ばれてますが、仏教の七宝のひとつに数えられる、
「瑠璃(るり)」っていう名前のほうがよく知られてますよね。
西洋では、ラピスラズリの粉末を用いて作った顔料を「ウルトラマリン」っていいます。
「海(地中海)を越えてもたらされたもの」っていう意味だそうです。
現在のウルトラマリンは他の成分を合成して作られてるんですが、
ルネッサンス期には遠い国から持ってこられた本物が使われてて、
その価格は純金と同じか、それ以上だったっていわれてます。
巨額の富でルネッサンス美術を大いに発展させた、
フィレンツェの支配者『メディチ家』とラピスラズリは、深い関わりがあります。
それはイタリアのウフィツィ美術館にあるメディチ家の紋章にも象徴されるんですが、
「純金と同じか、それ以上の価値」とされたウルトラマリンが、
この時代の美術工芸品にいっぱい使われたのは、なんていってもメディチ家の財力と、
芸術に対する深い尊敬と愛があったからこそ。
ルネッサンス期は、古代から使われてきた顔料を、
より鮮やかで美しい発色に精製する技術が急速に発達した時代でもあります。
この「色彩革命期」を代表する色が、「天空のかけら」って呼ばれたウルトラマリンなんです。
ウルトラマリンには、「フェルメール・ブルー」っていう別名があります。
これは「真珠の耳飾の少女」で有名な、画家フェルメールにちなんでつけられたもの。
フェルメールが活躍したのは、イタリア・ルネッサンスが終わりを迎えてから半世紀ほど後の、
17世紀中頃だったんですが、ウルトラマリンはまだまだとっても高価な顔料で、
他の青い顔料の百倍の値段だったっていわれてます。
普通の画家は、キリストのローブなど、ごく限られた部分しか使わなかった貴重な顔料なんですが、
フェルメールは惜しげもなくいっぱい使い、なんと下地にまでしてたっていうんだから驚きます。
フェルメールが死んだ後、多額の借金を残したって伝えられてるんですが、
ウルトラマリンの極上の青の魅力には、どうしても勝てなかったんでしょうね。
傑作「真珠の耳飾の少女」の青いターバンも、もちろんウルトラマリンで描かれてます。
東西の世界を結ぶ道といったら、シルクロードが有名ですが、
そのはるか前から、交易の道はあったそうです。
紀元前4000年頃、メソポタミア地方(現在のイラク)に突如として都市文明国家が登場しました。
シュメール文明っていいます。
彼らはヒエログラフより半世紀以上も前に、世界最古の文字体系を作り出して、
車輪やろくろ、天文学や植物の系統的な改変など、後に繋がる文明の基礎のほとんどを創りました。
この国家の女王のお墓からも、首飾りや王冠の装飾のラピスラズリが多数みつかってます。
古代のラピスラズリの産出場は、シュメールとは険しい山脈を隔てた、バダフシャンだけ。
でもメソポタミアを経由して、エジプトに至るまで、各地の遺跡からラピスラズリは発見されてます。
この線を結んで、超古代文明の交易を明らかにしようと立ち上げられたのが、
「ラピスラズリ・ルートの研究」なんです。
ラピスラズリは、知性や洞察力、直感など「頭脳」に関する全てに効果があるっていわれてます。
あとイメージの視覚化を助けて、素晴らしい発明に結びつけるともいわれてます。
シュメール人たちが築いた、奇跡の超古代文明都市は、
あるいはラピスラズリによってもたらされたものなのかもしれませんね。
ラピスラズリ・ルートは、西はギリシアまで、東は中国、そして日本へと続いてたそうです。
中国にはラピスラズリをあしらった豪華な硯箱や、塗料として使われた絵画なんかが残されてます。
あと、日本の正倉院御物には「紺玉帯(こんぎょくのおび)」って呼ばれる牛皮製の帯があります。
真言宗の開祖空海(くうかい)は瑠璃を守護石としてました。
空海も、新しい仏教を切り開いて、革新へと生きた人ですよね。
空海に関する不思議な逸話はたくさん残されてますが、
その中で一番有名なのが「空海は千年の時を経てもなお生き続けている」っていうもの。
これは、「金剛峰寺建立修行縁起」の中の
『四十九日を過ぎても色つやに衰えは見られず、髪や髭が伸びつづけた』っていう
記述に基づいた伝説なんですが、もしかしたら瑠璃の持つ神秘の力を表現したものなのかも。
古代エジプト人の残したパピルスには、その強力な邪気を払う力から、
目の疾患や頭痛、心の病などの薬としてラピスラズリの粉末が使われたって書かれてます。
特に視力への効能は広く伝えられているみたいです。
あと真実を見通す「第三の目」を開いて、
優れた知性と創造性を引き出す力があるっていわれてますんで、
古今東西の芸術家にも、とっても愛されてきた石なんです。
青色の石は全般的に浮ついた心を静めて、癒しのパワーがあるっていわれてますが、
ラピスラズリはそれに加えて、厳しい試練もあたえてくれます。
これは精神を磨きあげる邪気払いの一環だっていうことです。
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