還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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私が相撲少年だった頃

子供の頃、まあ11,2歳だが、私は相撲少年だった。
相撲を取るのが好きなのではない。
当時の小学校では、相撲は休み時間の花形だった。
私もその仲間に入ってはいたが、あまり強くない。
それほど弱くはないが、クラスの横綱には手も無く負ける。
皆がやるから僕もやる、程度のもの。

私が好きだったのは、本当の大相撲。
発端は、分かりすぎるほど分かっている。
昭和29年初場所。
生まれて初めて相撲を生で見た。
それも千秋楽。
横綱鏡里13勝1敗。
大関吉葉山14戦全勝。
これが千秋楽最後の取り組み。

あれは多分、両国の国技館だったのだろう。
四本柱もあった筈だ。
親父が貰ってきた升席。
料理もあれば、お土産のおもちゃの軍配などもあった。
何を食べたか、なんて憶えていない。
憶えているのは、結びの一番だけ。
吉葉山が鏡里を寄り切って初優勝。
館内、座布団が宙を舞う大騒ぎ。

のぼせやすい小学生は、すぐのぼせた。
帰り際に見た、吉葉山の優勝パレード・
おりしも降る初雪。
大観衆に囲まれてオープンカーがゆっくり進む。
真ん中に吉葉山。
彼も興奮していただろうが、小さな小学生も大いに興奮した。

当時は、「貸し本や」なんて商売があった。
毎週1回、何冊かの雑誌を置いて行き、翌週新しいのと取り替える。
母にせがんで、「相撲」という雑誌を取ってもらうことになる。
力士名鑑、お好み対談、好取組の写真、往年の名力士。
何度も読み返せば、たいてい憶えてしまう。
幕内力士の身長、体重、得意の技、なんでも憶えた。
吉葉山、身長5尺9寸、体重38貫、得意左四つ寄り切り。
まだ尺貫法廃止のずっと前。

初代若乃花はまだ前頭。
栃錦は確か関脇だったような。
横綱は、昇進したばかりの吉葉山に鏡里、東富士と千代の山。
最近まで相撲解説の人気者だった出羽錦が幕内、緒方さんこと北の洋がやはり幕内。
体重19貫そこそこの鬼龍川、なんてやせっぽちもいた。
今なら72.5kg、私とそれほど変わらない。

とりあえず吉葉山のファンにはなったが、彼は次の大阪春場所を全休。
今考えれば、贔屓のお座敷を廻りすぎての糖尿病だった、と思うが。
雑誌「相撲」にはそんなことは書いてない。
「新横綱の場所に出られず、大変残念」
という談話は出た。

確か、その2月末あたりだったと思うが。
私は母の付き添いで、東大病院に行った。
母が診察を受けている間、ぼんやりと待合室にいる。
と、なんだとても大きな和服の男が、前を通り過ぎて行く。
ひょっとしたら…。

果たしてそれは、吉葉山。
もう母のことなど何処かに忘れて、私は彼の後をつける。
だが、それ以上の才覚は無い。
消え去った診察室の方を見ているだけ。

そこへ、助けの神だったのか。
数人の私と同年輩の少年たちが現れる。
彼らは別に付き添いではない。
横綱が現れるのを知って、この病院に侵入して来た、らしい。
じっと診察室を見ている私に、リーダー格らしい少年が声をかけて来た。
「今、吉葉山が通ったろう?」
「うん、多分…。」
「今日、ここへ来るって聞いてたんだ。」

彼らは、吉葉山にサインを貰う準備をして来ているようだ。
このチャンス、逃してなるものか。
「僕も、サイン貰って欲しいんだけど。」
「おう、いいよ。」
頼もしい言葉とともに、リーダー格は診察室の方へ向かって行く。
私は、仲間とともにじっと待つだけ。

しばしあって…。
彼は、意気揚々と戻って来た。
手には、何枚かの帳面の切れ端を持っている。
「どうだった?」
尋ねる仲間たちに、
「簡単、簡単。」
頼もしげなリーダー格。
私にも、2枚の吉葉山のサインが分配された。
いま、それが何処にあるかは知らない。

この一件は、私の相撲熱をさらに煽ったのだろう。
肝心の吉葉山は、その後さっぱりだったが。
結局横綱として、一度も優勝すること無く引退する。
代わりに、栃錦、若乃花、朝潮、大内山、多士済々。
そして、大鵬、柏戸へと続く。

実は、柏鵬の頃には私の相撲熱はかなり冷めていた。
野球の全盛時代である。
相撲の仕切りの繰り返しにも、いささか辟易していたのだろう。
それでも、NHKの中継は時々見る。
だから、角界の趨勢は大体分かっていた。
貴乃花、輪島、北の湖。
千代の富士から小錦、曙、武蔵丸。

相撲はどんどん変わっていく。
技より力、力より体重。
いま私は、アメリカで相撲を見ている。
2代目貴乃花から朝青龍、そして白鵬。
さらには、ヨーロッパ勢の台頭。

外人の横綱、大関。
別に悪いとは思わない。
柔道は、42年前にヘーシンクに王座を奪われた。
相撲だって、同じことだろう。
外人横綱をファンが嫌えば、相撲は衰退する。
衰退すれば、外人はもうやって来ない。

でも、昭和29年の初場所の熱気は、もう無い。
あの頃、日本人は全身全霊で相撲を見ていた。
その後、野球に、ONに熱中した。
更には、オリンピックに、サッカーに。
今現在は、ちょっと空白の時代。
来年は、どんなスポーツが人気を集めるのか。
相撲も、生き残りに賭けるだろう。

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こんにちは。 大道芸観覧レポートという写真ブログをつくっています。 昭和31年の「大相撲」という雑誌の広告もとりあげています。 よかったら、寄ってみてください。 http://blogs.yahoo.co.jp/kemukemu23611

2007/1/17(水) 午後 9:33 [ kemukemu ]

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ありがとうございます。拝見しました。 昭和31年の「大相撲」、読んでみたいものですね。 又相撲関連お願いします。

2007/1/20(土) 午後 10:29 [ tyke0914 ]


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