還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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「羞恥心」はどこに

私が行くマンハッタンのジムは、摩天楼の地下にある。
ジムだから、各種のエクササイズ器具も揃っている。
何と言っても人気があるのは、ランニングマシーンとステアマスター。
ランニングマシーンは、回転するベルトの上を走る。
ステアマスターは、大きなペダルを上下に踏み続けるもの。
どちらにも前にテレビの画面があり、ヘッドフォンも装備している。
皆それぞれに好みのチャンネルに合わせて、見ながらエクササイズが出来る。
それだけそういう器具は単調で退屈する、ということなのだろう。
その他にも、部分部分の筋肉を鍛える器具もある。
どうも、全ての随意筋は鍛えられるようになっている、ようだ。

私は、器具には関心が無い。
昔、腕の筋肉を鍛えるべく器具に挑んで、肘を痛めた。
どうも、こういう器具には然るべき順序があるようだが、それを知らなかった。
おっちょこちょい、と認めざるを得ない。
だから、このジムではもっぱらプールだけ。
地下2階にある。

ロッカールームで着替えて、プールに行く。
「プールに入る前には、シャワーを浴びること」
ニューヨーク市の法律、と麗々しく貼り出してある。
此処では、誰でもシャワーを浴びている。
自宅にあるプールは、シャワーを浴びない人が多い。
私は、いつもそれが気になっている。
浴びない人の傍に行って、水をかけてやりたいくらいだ。
悶着はいやだから、黙っているが。

このジムのプールは、熱心に泳ぐ人が多い。
まあ、会費も馬鹿にならないから、かも知れない。
若く、泳ぎの早い人も多い。
見ていて欠伸がでるほどのろい人も、勿論いる。
私は、その中間程度か。
持続力を養う為だから、ゆっくり泳ぐ。
大体、1000ヤードが目安。

泳ぎ終わったら、ジャクジーに入る。
ジャクジーは、男性と女性のローッカールームに一つづつある。
水温は、40度Cくらい。
持ってきた新聞を読みながら入る。
主にスポーツ欄から。
ヤンキースが勝った翌日の新聞は、読むところが多い。
今なら、フットボールのジャイアンツ。

男性のロッカールームは、当然ながら男性オンリー。
私はプールから来るから水着を着ているが、素っ裸の人もジャクジーに来る。
男の裸だから、どぎまぎすることはない。
とは言え、あまり堂々と来られるのも困る。
ジャクジーは床を掘り下げた形になっているので、浴槽の一番上が床の高さだ。
立って話し掛けられると、浴槽にいる私は目のやり場が無い。
日本人はタオルなどを腰に巻くが、アメリカ人にはそれすらしない人もいる。
それが恥ずかしい、という気持ちは皆無のようだ。
女性のロッカーには入ったことは勿論無いが、こんな風なのだろうか。

はるか昔、フィンランド大使館のパーティに行ったことがある。
「サウナパーティ」と言って、飲み食いの他にサウナ風呂に入れる。
サウナなど珍しかった当時、私はタオルを腰に巻いてサウナに入った。
湯気でよく見えないが、数人の先客がいる。
眼をこらして見ると、2,3人のフィンランド人がサウナの入り方を伝授している。
彼らは、全くの裸。
教えられている日本人は、一様にタオルを巻いている。
いかにも珍妙な光景だ。

サウナで暖まったら、冷たい水風呂に入る。
本国フィンランドでは裏の湖で泳いだりするらしいが、此処は東京のど真ん中。
木製の大きな風呂桶に、満々と水が張ってある。
本場の人は、そのまんま飛び込む。
勿論、裸のまま。
日本人たちは、ためらいながらタオルを外し、前を押えて水に入る。
どうもそれはサウナの後の水浴というより、「禊(みそぎ)」のように見える。
少々痛々しい。
と言う私も、痛々しい方なのだが。

どうもアメリカ人を含め西欧の人たちは、同性同士の裸は恥ずかしいものではないらしい。
いや、そもそも「裸」は恥じるものではない、と考えているようだ。
そう言えば、欧米の美術館には裸体の絵や彫刻が少なくない。
「ミロのヴィーナス」も「ダビデ」も裸。
「裸のマハ」と初めから名乗っている絵もある。
何故か、「着衣のマハ」という双子も存在するが。

日本では、裸は長い間タブーだったようだ。
終戦後、最初のストリップと言われる「額縁ショー」には、行列が出来た。
上半身裸の女性が、額縁の中でじっとしているだけ。
それでも、満都の話題を攫ったらしい。
彼我の差は大きい。

最近は、要の東西を問わず「羞恥心」は失われて来ている。
「何も恥ずかしいことなんか無いわ。」
水着まがいで街を闊歩する若い女性は、きっとそう言うだろう。
「誰にも迷惑をかけてないじゃん。」
尻までジーンズをずり下げて履いている兄ちゃんも、そう思っている。
そう、君達は恥ずかしくはないだろう。
ただ…。
見ているこっちが、恥ずかしくってしょうがないんだよ。


今、メッツとカージナルスの第5戦が進行中。
中3日で投げるはずだった、メッツのグラビンとカージナルスのウイーバーは、昨夜の雨のお陰で、順当な中4日の休みとなった。
両者満を持しての戦い。
これはちょっと失礼しておやすみ、とは行かない。
今夜は、就眠が遅くなりそうだ。


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