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私が行くマンハッタンのジムは、摩天楼の地下にある。
ジムだから、各種のエクササイズ器具も揃っている。
何と言っても人気があるのは、ランニングマシーンとステアマスター。
ランニングマシーンは、回転するベルトの上を走る。
ステアマスターは、大きなペダルを上下に踏み続けるもの。
どちらにも前にテレビの画面があり、ヘッドフォンも装備している。
皆それぞれに好みのチャンネルに合わせて、見ながらエクササイズが出来る。
それだけそういう器具は単調で退屈する、ということなのだろう。
その他にも、部分部分の筋肉を鍛える器具もある。
どうも、全ての随意筋は鍛えられるようになっている、ようだ。
私は、器具には関心が無い。
昔、腕の筋肉を鍛えるべく器具に挑んで、肘を痛めた。
どうも、こういう器具には然るべき順序があるようだが、それを知らなかった。
おっちょこちょい、と認めざるを得ない。
だから、このジムではもっぱらプールだけ。
地下2階にある。
ロッカールームで着替えて、プールに行く。
「プールに入る前には、シャワーを浴びること」
ニューヨーク市の法律、と麗々しく貼り出してある。
此処では、誰でもシャワーを浴びている。
自宅にあるプールは、シャワーを浴びない人が多い。
私は、いつもそれが気になっている。
浴びない人の傍に行って、水をかけてやりたいくらいだ。
悶着はいやだから、黙っているが。
このジムのプールは、熱心に泳ぐ人が多い。
まあ、会費も馬鹿にならないから、かも知れない。
若く、泳ぎの早い人も多い。
見ていて欠伸がでるほどのろい人も、勿論いる。
私は、その中間程度か。
持続力を養う為だから、ゆっくり泳ぐ。
大体、1000ヤードが目安。
泳ぎ終わったら、ジャクジーに入る。
ジャクジーは、男性と女性のローッカールームに一つづつある。
水温は、40度Cくらい。
持ってきた新聞を読みながら入る。
主にスポーツ欄から。
ヤンキースが勝った翌日の新聞は、読むところが多い。
今なら、フットボールのジャイアンツ。
男性のロッカールームは、当然ながら男性オンリー。
私はプールから来るから水着を着ているが、素っ裸の人もジャクジーに来る。
男の裸だから、どぎまぎすることはない。
とは言え、あまり堂々と来られるのも困る。
ジャクジーは床を掘り下げた形になっているので、浴槽の一番上が床の高さだ。
立って話し掛けられると、浴槽にいる私は目のやり場が無い。
日本人はタオルなどを腰に巻くが、アメリカ人にはそれすらしない人もいる。
それが恥ずかしい、という気持ちは皆無のようだ。
女性のロッカーには入ったことは勿論無いが、こんな風なのだろうか。
はるか昔、フィンランド大使館のパーティに行ったことがある。
「サウナパーティ」と言って、飲み食いの他にサウナ風呂に入れる。
サウナなど珍しかった当時、私はタオルを腰に巻いてサウナに入った。
湯気でよく見えないが、数人の先客がいる。
眼をこらして見ると、2,3人のフィンランド人がサウナの入り方を伝授している。
彼らは、全くの裸。
教えられている日本人は、一様にタオルを巻いている。
いかにも珍妙な光景だ。
サウナで暖まったら、冷たい水風呂に入る。
本国フィンランドでは裏の湖で泳いだりするらしいが、此処は東京のど真ん中。
木製の大きな風呂桶に、満々と水が張ってある。
本場の人は、そのまんま飛び込む。
勿論、裸のまま。
日本人たちは、ためらいながらタオルを外し、前を押えて水に入る。
どうもそれはサウナの後の水浴というより、「禊(みそぎ)」のように見える。
少々痛々しい。
と言う私も、痛々しい方なのだが。
どうもアメリカ人を含め西欧の人たちは、同性同士の裸は恥ずかしいものではないらしい。
いや、そもそも「裸」は恥じるものではない、と考えているようだ。
そう言えば、欧米の美術館には裸体の絵や彫刻が少なくない。
「ミロのヴィーナス」も「ダビデ」も裸。
「裸のマハ」と初めから名乗っている絵もある。
何故か、「着衣のマハ」という双子も存在するが。
日本では、裸は長い間タブーだったようだ。
終戦後、最初のストリップと言われる「額縁ショー」には、行列が出来た。
上半身裸の女性が、額縁の中でじっとしているだけ。
それでも、満都の話題を攫ったらしい。
彼我の差は大きい。
最近は、要の東西を問わず「羞恥心」は失われて来ている。
「何も恥ずかしいことなんか無いわ。」
水着まがいで街を闊歩する若い女性は、きっとそう言うだろう。
「誰にも迷惑をかけてないじゃん。」
尻までジーンズをずり下げて履いている兄ちゃんも、そう思っている。
そう、君達は恥ずかしくはないだろう。
ただ…。
見ているこっちが、恥ずかしくってしょうがないんだよ。
今、メッツとカージナルスの第5戦が進行中。
中3日で投げるはずだった、メッツのグラビンとカージナルスのウイーバーは、昨夜の雨のお陰で、順当な中4日の休みとなった。
両者満を持しての戦い。
これはちょっと失礼しておやすみ、とは行かない。
今夜は、就眠が遅くなりそうだ。
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