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ニューヨークの厳しい冬は、昨日で終った、ようだ。
20日以上に及ぶ零下の世界は、もう戻っては来ない、らしい。
先週降った雪が完全に溶ければ、春は始まる。
「揚げ雲雀 名乗りいで、世はなべて ことも無し」
まあ、そんなのんびりした季節になるかどうかは疑問だが。
ゴルファーにとっては、嬉しい時期に違いない。
私の家から車で30分。
「Bethpage State Park (べスページ州立公園)」
と呼ばれる、広大な緑地がある。
どれだけ広いか、細かい数字は知らない。
ただその中に、5つのゴルフ場と1つのポログラウンドとテニスコートと自転車用道路、がある。
これで、その広さが大体分かるだろう。
5つあるゴルフコースのうち、2つは年中開いている。
雪でも降れば休むが、後は大体プレー出来る。
残りの3つは、4月から開く。
5つのゴルフコースは、黒.赤.青.緑.黄と色で呼び分けられている。
それぞれ難易度が異なっている。
黒(ブラック)が、一番難しい。
それもその筈、2002年のUSオープンの会場になっている。
優勝者は、タイガー.ウッズ。
そして、2009年にもUSオープンが予定されている。
難易度から言えば、赤(レッド)が2番目。
全長6,700ヤード。
400ヤード以下のミドルホールは、1つしかない。
その次が、青(ブルー 6,500ヤード)
次いで、緑(グリーン 6、150)、黄(イエロー 5,900)となる。
ゴルファーは、自分の技倆、体力に合わせてコースを選べる。
ただ、ブラックとグリーンには、電動カートは入れない。
つまり、バッグを自分で担ぐか、プルカートを引っ張るか、しかない。
ブラックではキャディが許されているが、自分で連れてこなくてはならない。
キャディ付きでプレーしているのを、私はたった一度目撃している。
ブラックの1番ティーグラウンドには、注意書きがある。
「このコースは非常に難しいので、技倆が優れている人にのみお薦めします」
そして、大勢の人が見られるように、小高い観客席が設けられている。
「技倆が優れている」、と自負しているプレーヤーたちのドライバーショットを拝見しようという趣向。
おのずと肩に力が入りすぎて、悲惨なショットになり勝ち。
無論、プロ並みの豪打を見せてくれるプレーヤーも多い。
右ドッグレッグの曲がりっ鼻まで、約250ヤード。
そこまで届かなければ、ボギー覚悟の3オン狙いになる。
私は、このコースで3回ほどプレーしている。
「そんなに上手いんですか?」
と、聞かれたくはない。
全ては、偶然の成せる業。
別のコースを予約していて、スタートのタイムに遅れた。
「何とかならない?」
こう言うとき、このゴルフ場の係は概して冷たい。
なんせ、州の公務員。
普通なら、
「あんたが遅れたんでしょ。」でチョン。
が、この時は何故か、
「ちょっと待ってね。」
色々コンピューターをいじくり回した挙句、
「ブラックなら今やれるわよ。」
流石に私は、ひるんだ。
噂に聞く、超難易度のコース。
ためらっていると、
「どうすんの? やるの? やらないの?」
又、公務員の顔になった。
「やるよ。」
半ばやけくそ。
38ドルを払って、コースへ向かう。
向かいながら、だんだん気が重くなる。
見れば、1番ティの周囲は見物客でびっしり。
38ドルを諦めて帰ろうか、とさえ考えた。
が、スタートまでは15分くらいある。
様子を見て決めよう。
観客に混じって、ティグラウンドを窺がう。
丁度、日本人らしき4人組がスタートするところ。
腕自慢らしい青年が、ドライバーを素振りしている。
なかなかの腕、と見た。
が、残りの3人は自信無さ気に見える。
周囲を囲む観客に、怖気づいたか。
最初の一人が、フェアウェーど真中に運ぶ。
観客から、拍手。
が、次のプレーヤーはそうは行かない。
見ても分かる、かちかちの身体。
思い切り振った球は、真っ直ぐ右の藪の中へ。
次の若者は、まず空振り。
2打目で、左のラフへ約150ヤード。
(これなら俺の方がマシだ。)
見ながらそんな情けないことを、私は考えている。
その次の組は、「技倆優秀」な4人だった。
糸を引いたような打球が、フェアウエーの中央に集まって行く。
良いショットをしても、皆淡々と表情も変えない。
再び、私の自信が失われて行く。
が、次は私たちの組だ。
止めるなら今しか無い。
しかし、噂のブラックを一度は見てみたい。
(ええ、ままよ。)
私は覚悟を決め、プルカートを引いてティグラウンドへの階段を下り始めた。
私は、このラウンドを書く勇気は無い。
右に左に、ラフにバンカーに。
タイガー.ウッズが苦戦したコース。
私なりに苦戦してみた。
彼が廻ったのは、フルバックの7,300ヤード。
私は、ホワイトの6,700ヤード。
彼のパーは70。
私が自分で決めたパーは、100。
それでも、タイガーには勝てなかった。
接戦ですらなかった。
それ以後、私は2度ブラックに挑戦した。
一度恥を掻くと、人間は強くなる。
ミスショットにも、淡々としていられる。
虚心坦懐というべきか。
私のゴルフは、ブラックで一皮剥けたように思う。
しかし、スコアに何の変化が無いのが、不思議と言えば不思議…。
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