還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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銃刀剣等不法所持?

私の手許に一梃の銃がある。
少なくとも、作られてから60年以上はたった古銃。
何故そんな年代が分かるか、と言えばその形式から。
これは、旧日本帝国陸軍の三八式歩兵銃なのである。
銃身こそ鉄製だが、台座台尻は木。
弾は元込め式だが、何連発かは分からない。
生憎弾丸までは持っていないので撃ったことはないが、未だ充分使えるように見える。

とにかく重い。
少なくとも3,4kgはある。
私は現代の日本人としては、まあ平均的な体格だ。
その私にとってこんなに重いのだから、小さかった昔の兵隊には堪えただろう。
まして持つ物はこれだけではない。
この銃の先に、「ゴボー剣」と称する刃物がつく。
それだけではない。
行軍の際は、自分の衣類、食料、勿論予備の弾薬も自分で持たなければならない。
頭には鉄兜をかぶり、重たい軍靴を履いている。
それで、灼熱の東南アジア、酷寒の北満州を行軍する。
想像するだに、怖気づいてしまう。

かれこれ20年近くなるだろうか。
この銃を、私はニューヨークで手に入れた。
偶然と言えば偶然。
細長いロングアイランドの端っこに、モントークという港町がある。
昔は、捕鯨の基地として栄えたらしいが、今は有数の避暑地。
そこに、私の友人がいる。
海洋生物学の博士だが、水産物の卸売りもやっている。
彼の事務所は、それこそガラクタが山積。
ビジネスの書類の横に、魚の骨が置いてある。
事務机の横に、山羊が座り込んでいる。
海洋学、海洋微生物学の本棚には、ショットガンが並べてある。

この三八銃も、そのガラクタの中にあった。
「見てみろ、日本軍はこんな銃で戦っていたんだぜ。」
彼は、訪ねて来た漁師たちにこの銃を見せる。
「なんて重たい鉄砲なんだ。相手を殴る為か?」
彼らは、大声で笑った。

「俺の親父は、第二次世界大戦に兵隊として行った。」
漁師たちが帰った後、私は友人に言った。
「この銃は、ひょっとしたら俺の親父の銃かも知れない。」
「Possible. (かも知れない)。」
友人は、面白そうに聞いている。
「親父の戦友のものだったかも知れない。」
「Maybe. (ひょっとしたらね。)」
「いずれにせよ、これはお前のものではない。」
それが、この銃が私の物になった経緯だ。

別にどうしようという当てがあった訳ではない。
貰って来たって、どうすることも出来ない。
これでも一応銃だ。
しかも、携帯許可証も無い。
銃刀剣等不法所持、ということになる。
それでも、何となく持って来たかった。
この銃だって、私のところの方が居心地が良いだろう。(訳はないか。)
本当のことを言えば、この不恰好な銃に妙な愛着を覚えた、といったところ。

台座、台尻の木は、かなり黒ずんでいる。
銃口や遊底部分も、多少の錆はあるがそれが逆に「ほんもの」を感じさせる。
引き金を引けば、「カチッ」という撃鉄の音が耳を打つ。
射撃音も火薬の匂いも無いが、紛れも無い兵器だ。
誰が何処で、この銃を携行していたのか。
どういう状態で、アメリカくんだりまで来ることになったのか。
全て不明。

以来、この三八式歩兵銃は私の身近に転がっている。
どうしたら良いか。
いささか持て余し気味でもある。
剥き出しに置いておくことは出来ない。
何と言っても、不法所持の銃だ。
官憲の知るところになれば、ことは簡単ではない。
いきなり逮捕、とはならないだろうが、調書くらい取られるかも知れない。
「日本人、日本陸軍のライフルを隠匿」
「日本軍の亡霊、NYで発見」
そんな記事が目先にちらつく。

どうも、厄介な代物を手に入れてしまったのかも知れない。
でもまあ、十数年起居を共にして来た奴だ。
なるようになるまで、身近に置いておくつもりだが。


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