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日本は、花見の時期だ。
南の方では、早くも散っているかも知れない。
逆に緯度の高い東北、北海道はこれからという頃だろう。
テレビでも、桜前線の報道は毎年の定番になっている。
稀には、トップのニュースになることもあるらしい。
私は、数十年日本の桜を見ていない。
開花時期の4月初旬に帰国したことがない、という訳だ。
日本にいた頃は、別に桜を見に行こうという気は起こらなかった。
ござを敷いた花見の宴でも、飲み食いに終始していた記憶がある。
無いとなると欲しがるのが、人の常。
たまには満開の桜を見ながらの一献も悪くない、と思うこともある。
一向に実現はしないが。
日本で「さくら」と言えば、通常「ソメイヨシノ」を指すらしい。
だから私は、「ソメイヨシノ」が古来の桜だと思い込んでいた。
ところが…。
「ソメイヨシノ」は、江戸時代に作られたものだそうだ。
「ソメイ」というのは、「染井」という地名。
現在の巣鴨、駒込辺り。
此処の植木屋が、「オオシマサクラ」と「エドヒガン」をかけ合わせて出来た。
当初は「ヨシノサクラ」と呼んだそうだが、明治33年に「ソメイヨシノ」と命名された。
奈良の「吉野桜」と混同されない為、と言う。
すると、西行法師が「春死なむ」と望んだ花は、ソメイヨシノでは無かった訳だ。
これは、所謂「ヤマサクラ」であったらしい。
つまり、それまでに詠まれた多くの和歌の中の桜は、「ソメイヨシノ」ではなかったことになる。
万葉集、古今集、新古今…。
「ソメイヨシノ」が出現したのは、江戸末期と謂われる。
なんと、俳聖と呼ばれる芭蕉も、この桜を見ていない。
「花の雲 鐘は上野か 浅草か」 「四方より 花吹き入れて 鳰(にお)の海」
この句の桜は、別種だったことになる。
「花は桜木、人は武士」
こんな文句があった。
散り際のいさぎよさを見立てたのだろう。
だが「ソメイヨシノ」の誕生は、武士社会の終焉と、ほぼ時を同じくしている。
何となく皮肉ではないか。
「ソメイヨシノ」の美しさは、他の桜に見られぬ「散りっぷりの良さ」なのに。
私の家族は、インターネットを使って「家族俳句会」を続けている。
勿論素人ばかりだから、たいした句は出来ない。
が、鑑賞力も似たようなレベルなので、釣り合いはとれている。
「ちちははに 遠く暮らして さくら聞く」
これは3年前、「桜」という題に私が拵えた句だ。
見ることの適わない桜が日本で咲き、それを電話で聞く。
本人にとっては、いささかの自信作であった。
が、採点結果はゼロ。
まあ、こんなもんでしょうがね。
高校を出たばかりのルーキー、楽天の田中将大がプロの中で揉まれている。
高校ナンバーワンの実力でも、未だ勝ち星が無い。
いずれは勝つだろうが、7,8勝出来れば上々ではないか。
野村監督だって、時期尚早は充分承知の上だろう。
球団経営の面からも、彼の人気が必要なのかも知れない。
考え様によっては、危険な賭けとも言える。
アメリカでは、高校出たての選手がいきなりメジャーに上がってくることは無い。
例えそれがどんなに、超高校級の人気者でも。
1A,2A、3Aと大事に育てる。
かなりの選手で、3年くらいでメジャーにやって来る。
並みのレベルなら5,6年は普通。
勿論上がれずじまいは、枚挙に暇が無い。
ドラフトいの一番だった、アレックス.ロドリゲス。
彼でさえ、マイナーで2年プレーしている。
デレク.ジーターは、メジャー定着までに4年かかっている。
早く上げない理由は、色々ある。
選手層が厚いことも大きな要因。
彼らをじっくり鍛える時間は、たっぷりある。
若い彼らの身体が出来上がっていないことも、忘れてはならない。
1シーズン162試合をこなすには、強靭な体力がいる。
マイナー時代のバスでの移動は、結構こたえると言う。
野球漬けの日々で、精神面も強くなっていく。
どんな一流選手でも、初めてメジャーへ呼ばれた時のことは忘れないそうだ。
それは春のキャンプの最中のこともあるし、マイナーの試合が終わって着替えている時のこともある。
「天にも昇る」
本当にそんな気持ちらしい。
給料だって、年間5万ドルから、その日付で38万ドルになる。
1軍と合流するのに、飛行機で行ける。
合流すれば、晴れてメジャーリーガーだ。
大スターと並んで、ロッカーも貰える。
同じカフェテリアで食事も出来る。
もっとも、それで定着出来ない場合も多々ある。
怪我をした選手の代役は、彼が戻って来れば再びマイナーへ。
給料も5万ドルベースに逆戻り。
移動はバス。
「何としてでも、メジャーへ戻りたい」
その気持ちは一層強くなる。
1軍と2軍を行ったり来たり。
そういう選手は、トレードの要員になり易い。
7月31日の無条件トレード期限は、一つの関所。
1軍にいる選手は、トレードされないことを祈る。
2軍にいる場合は、トレードでメジャーへ行けることを祈る。
違うことを祈っているようだが、根っこは同じ。
メジャーでプレーしたい、という気持ち。
田中は甲子園で投げ合った斎藤に比べれば、ずっとプロに向いている。
身体も大きいし、球も速い。
何よりも、「プロになる」というはっきりした意志を持っている。
順調に行けば、日本のプロ球界を代表する投手になれる可能性がある。
と、私は思っているのだが。
後は、育て方次第。
滅多に出ない「金の卵」を、枯らしてしまわないように。
野村監督に期待したいものだ。
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