還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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「ブー」の考証

「Booooooo…(ブー)」。
選手への不満や反感を表わす、この「ブー」。
野球界でもっとも頻繁に聞くが、実は野球には限らない。
オペラでも、出演者のパフォーマンスに不満があれば、遠慮なく浴びせられる。
どんな歌唱や演技にも惜しみなく拍手を贈る日本では、あり得ない話しだが。

この「ブー」だが、よく分析してみると決していつも同じではない。
先ず、相手チームの選手への「ブー」。
強打者や、前の試合で活躍した選手に対するもの。
これは、選手にとっては勲章のような「ブー」と言える。
ヤンキースのジーターは、ボストンでは必ず「ブー」の洗礼を受ける。
と言って、ボストンのファンが心底彼を嫌っている、とは限らない。
むしろ、
「憎いあん畜生」
と言ったニュアンスが強い。

これが、アレックス.ロドリゲスならばどうか。
ジーターの場合とは、いささか趣を異にする。
その理由は、彼が一度ボストンに移籍しかけた、ということによる。
ヤンキースにトレードされる前、ボストンはロドリゲス獲得に動いた。
ムラッ気の多い外野手、マニー.ラミレスとの交換トレード。
だが、この計画は頓挫する。
25ミリオンというロドリゲスの年俸にボストンが難色を示し、ロドリゲス側がカットを承諾。
これに選手会から「待った」がかかる。
一度契約した年俸を引き下げることは許されない、という言い分。
で、このトレード話は、お流れ。
そこまでは、ボストンファンにとって納得出来る部分だったのだが…。

どうしても高給取りのロドリゲスを出したいテキサス.レンジャースは、ヤンキースに180度転換。
そして、給料の一部を負担する条件を付けた。
さらに、トレードの相手はアルフォンソ.ソリアーノ。
若く俊足、ホームランも打つ。
さらに良いことに、給料は1ミリオン程度。
だが、ヤンキースにはデレク.ジーターという、人気ナンバーワンの遊撃手がいる。
「3塁にコンバートしても良いか?」
ヤンキースの条件も、ロドリゲスが呑んだ。
かくしてヤンキースは、ロドリゲスとジーターという、夢の三遊間を手に入れた。
だからロドリゲスへの「ブー」は、ボストンファンにとっては、当然であり、必然である。

一般的に、「ブー」には幾つかのパターンがある。
先ず第一は、「憎らしい敵」。
地元のチームを叩きのめす奴。
こういう場合、「ブー」される方は歯牙にもかけない。
「おう、どんどんやってくれ」
とまでは言わないが、それに近い気持ち。
当然ながら、チャンスに三振でもしようものなら、拍手喝采鳴り止まず、という風。

次は、ちょっと複雑になる。
「昨日の友は、今日の敵」
と言うパターン。
大リーグには、このケースは多い。
契約が切れて、他球団に移る。
若しくは、契約期間中にトレードされて行く。
一番激しく「ブー」されるのは、高い年俸で他球団に移った選手。
ボストンからヤンキースに来た、ジョニー.デーモンなどが典型だ。
4年契約を希望し、ボストンは拒否。
4年を呑んだヤンキースに来た。
それなりの理由はあるのだが、ファンは斟酌しない。
よりにもよって、憎っくきヤンキースに行くとは…。

第三のパターンは、「舌禍」のケース。
大リーグには、結構おしゃべりな選手がいる。
「ヤンキースなんて、もうおしまいだよ」
「メッツなんか、目じゃないぜ」
こういう、言わでもがなの一言二言が、相手にはカチンと来る。
それがファンにも伝播して、「ブー」が発生する。

最後のパターンは、松井稼頭央が喰らった「ブー」。
つまり、味方であるべきファンからされる「ブー」だ。
打てないばかりか、エラーもする。
投手ならば、出たら打たれる。
新人や控え程度の選手ならば、それ程でもない。
稼頭央は高額の契約を貰いながら、期待外れの選手。
打てないばかりか、盗塁すれば失敗。
肝心のところで凡ゴロをトンネル。
悪名高いメッツファンに、散々野次られた。

「味方に『ブー』されるとは、思わなかった」
これは、松井稼頭央の弁。
負け惜しみに聞こえるが、理解出来なくもない。
この手の、「贔屓の引き倒し」は何処ででも、という訳ではない。
ニューヨークやロスアンゼルスなどの、大都市の特徴。
カンサスシティやピッツバーグなどの地方都市では、先ずお目にかからない。
地方では、地元チームの選手をとことん応援する。
稼頭央も、ロッキーズに移って気分が変ったようだ。
今期の活躍は、目を瞠らせるものがある。

松井秀喜は、まだ「ブー」の洗礼をニューヨークでは受けていない。
勿論それなりの活躍をして来たから、ではある。
彼の人間性が、知られているのかも知れない。
と言って、油断は出来ない。
伊良部は激しく「ブー」されたし、A−ロッドですらされている。
まあこれは、A−ロッドをジーターのライバルと見なしてのことのようだが。

井川は、既に「ブー」の洗礼を受けている。
それも1回ではない。
総額50ミリオンの投資であり、松坂の代替品でもある。
期待が大きければ、失望も大きい。
昨日も、5回投げて被安打7、四球3、自責点5。
とても合格点とは言えない。
いつ迄我慢して貰えるか。
「井川を球団に推薦したスカウトの、責任は重大だ」
今日の新聞のコラム。
まだ契約は、3年半残っている。
「ブー」の嵐の中で吹き飛ばされる前に、なんとか頑張って欲しいものだが。


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