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「Booooooo…(ブー)」。
選手への不満や反感を表わす、この「ブー」。
野球界でもっとも頻繁に聞くが、実は野球には限らない。
オペラでも、出演者のパフォーマンスに不満があれば、遠慮なく浴びせられる。
どんな歌唱や演技にも惜しみなく拍手を贈る日本では、あり得ない話しだが。
この「ブー」だが、よく分析してみると決していつも同じではない。
先ず、相手チームの選手への「ブー」。
強打者や、前の試合で活躍した選手に対するもの。
これは、選手にとっては勲章のような「ブー」と言える。
ヤンキースのジーターは、ボストンでは必ず「ブー」の洗礼を受ける。
と言って、ボストンのファンが心底彼を嫌っている、とは限らない。
むしろ、
「憎いあん畜生」
と言ったニュアンスが強い。
これが、アレックス.ロドリゲスならばどうか。
ジーターの場合とは、いささか趣を異にする。
その理由は、彼が一度ボストンに移籍しかけた、ということによる。
ヤンキースにトレードされる前、ボストンはロドリゲス獲得に動いた。
ムラッ気の多い外野手、マニー.ラミレスとの交換トレード。
だが、この計画は頓挫する。
25ミリオンというロドリゲスの年俸にボストンが難色を示し、ロドリゲス側がカットを承諾。
これに選手会から「待った」がかかる。
一度契約した年俸を引き下げることは許されない、という言い分。
で、このトレード話は、お流れ。
そこまでは、ボストンファンにとって納得出来る部分だったのだが…。
どうしても高給取りのロドリゲスを出したいテキサス.レンジャースは、ヤンキースに180度転換。
そして、給料の一部を負担する条件を付けた。
さらに、トレードの相手はアルフォンソ.ソリアーノ。
若く俊足、ホームランも打つ。
さらに良いことに、給料は1ミリオン程度。
だが、ヤンキースにはデレク.ジーターという、人気ナンバーワンの遊撃手がいる。
「3塁にコンバートしても良いか?」
ヤンキースの条件も、ロドリゲスが呑んだ。
かくしてヤンキースは、ロドリゲスとジーターという、夢の三遊間を手に入れた。
だからロドリゲスへの「ブー」は、ボストンファンにとっては、当然であり、必然である。
一般的に、「ブー」には幾つかのパターンがある。
先ず第一は、「憎らしい敵」。
地元のチームを叩きのめす奴。
こういう場合、「ブー」される方は歯牙にもかけない。
「おう、どんどんやってくれ」
とまでは言わないが、それに近い気持ち。
当然ながら、チャンスに三振でもしようものなら、拍手喝采鳴り止まず、という風。
次は、ちょっと複雑になる。
「昨日の友は、今日の敵」
と言うパターン。
大リーグには、このケースは多い。
契約が切れて、他球団に移る。
若しくは、契約期間中にトレードされて行く。
一番激しく「ブー」されるのは、高い年俸で他球団に移った選手。
ボストンからヤンキースに来た、ジョニー.デーモンなどが典型だ。
4年契約を希望し、ボストンは拒否。
4年を呑んだヤンキースに来た。
それなりの理由はあるのだが、ファンは斟酌しない。
よりにもよって、憎っくきヤンキースに行くとは…。
第三のパターンは、「舌禍」のケース。
大リーグには、結構おしゃべりな選手がいる。
「ヤンキースなんて、もうおしまいだよ」
「メッツなんか、目じゃないぜ」
こういう、言わでもがなの一言二言が、相手にはカチンと来る。
それがファンにも伝播して、「ブー」が発生する。
最後のパターンは、松井稼頭央が喰らった「ブー」。
つまり、味方であるべきファンからされる「ブー」だ。
打てないばかりか、エラーもする。
投手ならば、出たら打たれる。
新人や控え程度の選手ならば、それ程でもない。
稼頭央は高額の契約を貰いながら、期待外れの選手。
打てないばかりか、盗塁すれば失敗。
肝心のところで凡ゴロをトンネル。
悪名高いメッツファンに、散々野次られた。
「味方に『ブー』されるとは、思わなかった」
これは、松井稼頭央の弁。
負け惜しみに聞こえるが、理解出来なくもない。
この手の、「贔屓の引き倒し」は何処ででも、という訳ではない。
ニューヨークやロスアンゼルスなどの、大都市の特徴。
カンサスシティやピッツバーグなどの地方都市では、先ずお目にかからない。
地方では、地元チームの選手をとことん応援する。
稼頭央も、ロッキーズに移って気分が変ったようだ。
今期の活躍は、目を瞠らせるものがある。
松井秀喜は、まだ「ブー」の洗礼をニューヨークでは受けていない。
勿論それなりの活躍をして来たから、ではある。
彼の人間性が、知られているのかも知れない。
と言って、油断は出来ない。
伊良部は激しく「ブー」されたし、A−ロッドですらされている。
まあこれは、A−ロッドをジーターのライバルと見なしてのことのようだが。
井川は、既に「ブー」の洗礼を受けている。
それも1回ではない。
総額50ミリオンの投資であり、松坂の代替品でもある。
期待が大きければ、失望も大きい。
昨日も、5回投げて被安打7、四球3、自責点5。
とても合格点とは言えない。
いつ迄我慢して貰えるか。
「井川を球団に推薦したスカウトの、責任は重大だ」
今日の新聞のコラム。
まだ契約は、3年半残っている。
「ブー」の嵐の中で吹き飛ばされる前に、なんとか頑張って欲しいものだが。
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