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アメリカには、所謂4大スポーツと呼ばれる競技がある。
ベースボール、バスケットボール、アイスホッケー、そしてフットボール。
この4つのスポーツは、多少重なる期間はあるが、1年を分け合って行われる。
春から夏がベースボール、秋から冬がフットボール、晩秋から春がバスケットボール、そして
初冬から春がアイスホッケー、となっている。
ベースボールが162試合、フットボールが16試合、バスケットボールが80試合、ホッケーが82試合。
これはレギュラーシーズンの試合で、この他にその年のチャンピオンを決めるプレーオフがある。
つまり、1年中何かのスポーツがテレビで放映されていることになっている。
この他に、サッカーがあり、ゴルフがあり、女子バスケットボールがあり、自動車レースも放映されている。
いかにスポーツがアメリカで大きな地位を占めているか、一目瞭然。
2月3日(日)は、フットボールの最終試合、「スーパーボウル」の日。
「スーパーサンデー」とも呼ばれる。
国民全員とは言わないが、半分近くがこの試合を観る。
今年の会場は、アリゾナ州グレンデール。
普段は静かな街も、今や全米注視の的。
今年の出場チームは、ニューイングランド.ペイトリオッツとニューヨーク.ジャイアンツ。
どちらも東海岸のチームだが、前評判は月とスッポン。
シーズン開幕前から本命視されていたのは、ペイトリオッツ。
今年も、此処まで負け知らずの18連勝。
対してジャイアンツは、「運が良ければプレーオフ進出もある」、といった程度。
だから、試合前の賭け率も圧倒的にペイトリオッツ有利。
12点差のハンディがついている。
つまり、ペイトリオッツが12点以上の差で勝たなければ、賭けには勝てない。
順当に勝ち進んで来たチームと、予想を裏切って毎回のように逆転勝ちして来たチームの対戦だから、
当然と言えば当然のオッズだが。
このスーパーボウル、実は開催地から遥か離れた東海岸を熱くしている。
ペイトリオッツの球場はマサチューセッツ州の田舎町、フォックスボロにある。
ボストンから南西に30kmほど。
人口僅か6千の本当に小さな町だから、観客は主にボストンから来る。
何事によらず、ニューヨーク嫌いのボストン気質。
野球でワールドシリーズを制覇して、意気は揚がっている。
そこへ、このスーパーボウル。
「ニューヨークなんかに、負ける訳が無い」
口には出さぬが、思っていることは間違いない。
ニューヨークはニューヨークで…。
ジャイアンツとジェッツ、2つのフットボールチームがある。
が、残念ながら、どちらもここ数年ぱっとしない。
ジャイアンツが最後にスーパーボウルで勝ったのは、1991年。
ジェッツに至っては、1969年以来勝利から遠ざかっている。
野球のヤンキースも、21世紀になってからは一度もワールドシリーズに勝っていない。
野球やフットボールばかりではない。
バスケットボールもホッケーも、いつも中位か下位でうろうろ。
それでいて、選手の給料だけは、常にトップクラス。
フラストレーションも、いい加減溜まっている。
ジャイアンツは4年前、ドラフトで大博打に出た。
いの一番でドラフトされた、クォーターバックのイーライ.マニングをトレードで獲得。
彼は、昨年スーパーボウルを制したインディアナポリス.コルツのクォーターバック、ペイトン.マニングの弟。
父親も有名なクォーターバックだったという、フットボールの「ケネディ」と言われる家系。
そのイーライが過去3年、思惑通りには成長しない。
ファンはいらいら、コーチもいらいら、本人はのんびり。
それが此処へ来て、眼を瞠る活躍。
プレーオフ3試合を、あれよあれよと言う間に勝ち上がり、遂にスーパーボウル。
この間まで、
「イーライは我々の未来か?」
「あのドラフトは間違いだったか?」
そんな見出しが踊っていたスポーツ欄も、今や
「イーライがニューヨークを救う」
「Super kid goes to super bowl (超人がスーパーボウルへ)」
変わり身が早いのは、洋の東西を問わずマスコミの常、とは知ってはいるが。
アメリカンフットボールは、サラリーキャップという制度を取り入れている。
1チームの払う給料の最高額を決め、それ以上は許さない。
だから、スーパーボウルに優勝すると、多くの選手が流出して行く。
勝てば選手は給料の増額を要求する。
それに応じていれば、キャップを超えてしまう。
泣く泣く幾人かの選手をトレードしたり、クビを切ったり。
普通の場合、2,3年も経つとガクッと弱くなる、はずだ。
ペイトリオッツは2001年以来、3回スーパーボウルを制している。
言うなれば黄金時代。
これが普通であれば、主力がごそっと抜けてめっきり弱体化する。
だが、ペイトリオッツは、そうはならなかった。
コーチのビル.ベリチックと、クォーターバックのトム.ブレイディ。
この2人が、がっちりとチームを掌握している。
ブレイディは、破格ともいえる低い給料に甘んじている。
その分を他の選手に回すためだ、と言われている。
一番のスターがそうだから、他の選手も文句は言わない。
そこらへんが、このチームの強さの源とも言えるかも知れない。
スーパーボウルは、一番勝負。
だから、思わぬ番狂わせも起こりやすい。
小さなミスが、負けにつながる。
ジャイアンツにも勝つチャンスがある、と言える所以である。
「勝てっこないさ」
そんな囁きも聞かれるが、そう言われ続けて此処まで来た。
「4度目の正直」
で、黒星を喫するか。
「3度あることは4度ある」 (どうもどちらも座りが悪い)
で、大番狂わせを再現するか。
2月3日が待ち遠しいような、もうちょっとゆっくり来て欲しいような。
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