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私のオフィスはブルックリン区にある。
ニューヨーク市の5つの区の中でも大きく、歴史のある区だ。
車を走らせていると、壮大な邸宅が立ち並ぶ通りがある。
いかにも由緒ありげな造りだが、よくよく見ればだいぶ草臥れている。
雑草も生えているし、木も伸び放題。
隣りの邸宅は門が壊れている。
一昔前は、豊かな家族が瀟洒に住みこなしていたのだろう。
今は…。
「悪貨は良貨を駆逐する。」
という諺があるが、それをまざまざと表わしている。
少しづつ、少しづつ、堤防に小さな穴が穿たれたように…。
住人が代っていく。
いつの間にか、スラムのようになっていく。
そういう一画が、実に多い。
私が初めてニューヨークに来た30年前、ブルックリンは恐ろしい処だと思っていた。
毎日、人が襲われ、殺されている。
足を踏み入れることさえ危険だ、とも聞かされた。
それが、いつの間にか毎日そのブルックリンに来るようになった。
来てみれば、さほどのことは無い。
壊れかけた家であっても、家族の生活はある。
ただ、手入れする余裕が無い、だけだ。
どの家にもバスケットボールのポールがある。
子供達が、無心に遊んでいる。
将来のNBAのスターを夢見て、いるかどうか。
ブルックリンには、昔野球場もあった。
今、ロスアンゼルスにいるドジャースは。以前はブルックリン.ドジャースだった。
当時は、ヤンキース、ドジャース、それにニューヨーク.ジャイアンツ、3チームが人気を争っていた。
そのうちのドジャースが先ず、西海岸へ去った。
ジャイアンツが、サンフランシスコへ。
その後、メッツが誕生した。
が、いまでも、
「好きなチームは?
と聞かれると、
「ドジャース。」
と答える人は多い。
私がマンハッタンに住んでいた頃、管理人のジョンは、このドジャースファンだった。
「俺にとって野球チームは、ドジャースだよ。」
彼の部屋には、ドジャースのペナントや写真がところ狭しと貼ってある。
彼は、ヤンキースもメッツも、観には行かない。
ドジャースがニューヨークに来ても、行かない。
「あれはドジャースじゃない。」
犬を連れて散歩する時、彼はたまにブルックリン.ドジャースのユニフォームの上着を着ていた。
「ワーオ、デューク.スナイダーじゃないか。」
そう言うと。ちょっと照れ臭そうに、それでも嬉しそうに背番号を見せてくれた。
今、ヤンキースのトーレ監督も、メッツのランドルフ監督も、このブルックリンの生まれで育ちである。
昨日は、ヤンキースもメッツも休養日。
今晩から、ヤンキースはボストン.レッドソックスを迎え撃つ。
きっと切符は売り切れだろう。
メッツは、フィラデルフィア.フィリーズと敵地で。
ヤンキースはランディ.ジョンソン、メッツはペドロ.マルティネスが投げる。
どちらも観たい。
又、TVのリモートが忙しく働くことになるだろう。
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