還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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私の住むアパートから歩いて10分ほどのところに、
「Fort Totten (トッテン砦)」
という一角がある。
一角と言っても、かなり広い。
陸軍の駐屯地でもあり、ニューヨーク消防局の訓練地でもあるから、全ては見られない。
それでも、一周するには小一時間はかかるだろう。

この「Fort Totten」は、ニューヨーク市の公園でもある。
だから、日中は中を散策することが出来る。
あちらこちらに「立ち入り禁止」の標札が立っているのが、いささか目障りだが。
ロングアイランド灘に面しているので、対岸のコネチカットははっきりと見える。
内海だから、いつでも穏やかでゆったりとしている。

此処に、プールがある。
夏の間は、一般にも公開されている。
「一度冷たい水のプールで泳ぎたい」
私は、言い続けて来た。
私のアパートにあるのは、室内の温水プール。
年中泳げるが、いつも「生ぬるい」のが不満。
体が引き締まるような、冷たい水で泳ぎたかった。

先週、初めてこの「砦」のプールに行った。
付いてみると、すでに長蛇の列。
「入れないかな?」
という心配は杞憂で、これから1時間は「シニアタイム」。
知らずに来た連中が、1時間待たされることになっているようだ。
シニアは55歳以上。
60を越えた私は大手を振って(あまり振りたくないが)、脱衣室へ。

粗末な脱衣室で、Tシャツとショートパンツを脱げば、下は既に水着。
シャワーを浴びて、プールサイドのデッキチェアーにタオルその他を置く。
プ-ルはL字型になっている。
Lの短い方は急深になっていて、高さ1mほどのダイビングボードがしつらえてある。
屋外でみるプールの水は、空の青、木の緑、雲の白を映して、胸が躍る。
暫く見ていたが、誰一人として飛び込む人はいない。
では、私が先陣を切ろうではないか。

ボードに上がり、飛び板の方へゆっくり進む。
軽く走って、ボードの先端で高くジャンプして、体を反らせながら飛沫を上げずに着水する。
これが「理想的なダイビングのフォーム」であるが、私には関係ない。
「軽く走る」は勿論、「高くジャンプ」なんかして滑ったら危ない。
静々と歩を進め、先端で静止する。
平静を装って、周囲を見回す。
誰も私を見ていない。
大勢が見ていたら困るが、だれも見ていないのも詰まらない。
しかし、そんなことを考えている場合でもない。

板の先端に両足の親指をかける。
板の高さは水面から1mちょっとだが、それに自分の目の高さがプラスされる。
2.5mちょっとか。
ためらうには恥ずかしいが、多少の覚悟は要る。
競技用のコースの飛び込み台のように、前傾姿勢をとった。
思い切って、両足を強く蹴った。

私の身体は、間違いなく空中にある。
1秒もない。
0.5秒くらいだったろうか。
頭から、水中へ突っ込んで行く。
水の冷たさが、頭から爪先までを心地よく突き抜けて行く。
3.6mの深さだが、プールの底が目前に迫る。
身体を反転させて、上に向かう。
頭がすっと水面上に飛び出す。
大げさだが、達成感の小さなものが生まれて来る。
数十年ぶりの、冷水へのダイブだ。 

子供は「飛び込み」を怖がらない。
たとえ泳げない子でも、平然とダイビングボードから飛び込む。
成長するに従って、頭を下にする姿勢は遠いものになって行く。
60年を越える人生を送って来た私には、そういう姿勢とは全く無縁。
辛うじて高校時代の水泳部の経験が、恐怖感から救ってくれた。
50年も前の僅かな経験。

その日私は10回以上飛び込んだ。
身体がどんどん「飛び込む姿勢」に馴染んで行く。
つまり、子供の精神状態に逆行しているのではないか。
「飛び込み」イコール「若返り」。
まあ、そんな訳はないが…。

せいぜい夏の間「Fort Tottenn」のプールで、少年期の気分だけでも楽しむとしようか。

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いやあ、やりましたね!!さぞかしよい気分、その後のビールもさぞかし旨かったことでしょう。これでお腹の脂肪もすっかり消えてメタボの心配もなくなって、故郷ではさぞかし旨い魚と酒を腹いっぱい楽しめることでしょう。おめでとさん!!みりん

2009/8/4(火) 午後 10:49 [ zug*uri*h*en*va777 ]

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お恥ずかしいところをお眼にかけました。
近々5mから飛び込む計画をたてています。
その折はまた…

2009/8/5(水) 午前 3:22 [ Masterswimmer ]


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