還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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「焼酎」ブーム、だそうだ。
確かに、たまに日本に帰って旧友と飲んでも、「焼酎」を選ぶ人が多い。
「抜けが早いからね」
悪酔いしない、ということらしい。
幾度か付き合ってみた。
だが、何処となくぴんと来ない。
私は、日本酒を独酌することになる。

「焼酎」という酒のイメージ。
30年以上日本を離れている私には、決して良いものではない。
「安酒」「立ち飲み」「酔っ払い」「酔いつぶれ」
近年随分変わった、ということは知らないではない。
若者の間でも、「焼酎」は人気がある、と言う。
ソーダで割ったり、ジュースを混ぜたり。
しかし、私には何となくとっつき難い。

焼酎には、2種類ある。
蒸留を繰り返してアルコール濃度を上げた「甲類」。
一回の蒸留で醸造された「乙類」。
今ブームになっているのは、この「乙類」らしい。
原料も、米、麦、芋、そば、種類が多い。
原産地は、米があまりとれなかった九州地方が主になっている。
ブーム以前から飲んでいるから、飲み方も伝統のものがあるようだ。

酒は「焼酎」に押されて、少々低迷気味という。
若い人に、あまり好まれない、ともいう。
その傾向は、私が若い頃から見られた。
「面倒くさい」
燗をする為には、銚子が必要で、飲む為に杯かぐい飲みが無ければならない。
また、つまみもあまり手軽ではない。
刺身だ、鍋だ、焼き物だ、結構手間暇が要る。
その点ウイスキーなら、何でも良い。
20代の頃は、安いウイスキーを盛んに飲んだ記憶がある。

近年、私は日本酒党に回帰した。
勿論、アメリカでそう簡単に日本酒は手に入らないから、毎日とは行かない。
ビールやワインを飲むことが多いが、ここぞと言うときには日本酒を飲む。
「ここぞ」とはどういう時か。
日本酒に最適の、「肴」がある場合。
例えば、「干物」や「刺身」。
カナダ産ではあるが、「松茸」を手に入れた時。
秋に空輸の「秋刀魚」を買った場合。
いそいそと銚子を取り出す。

日本酒は、世界でも珍しいアルコール飲料だ。
「暖めて飲む」
この行為は、ヨーロッパでは殆ど行われない。
ウイスキーやブランデーをお湯で割るという飲み方はあるが、一般的ではない。
中国で「老酒」を温める、ことはある。
しかし、今の中国では「老酒」より「ブランデー」の方が珍重される。
日本酒だけが、「燗」という歴史的な習慣を維持しているように見える。

だが、実際のところ、その習慣も失われつつある。
たまに帰国して、飲屋に行く。
日本酒の銘柄を指定して、「燗」を頼む。
「うちでは、お燗は銘柄が決まってるんです」
つまり、燗付け器なるものにセットされた銘柄しか、燗では飲めない。
それも殆ど「熱燗」と決まっている。
「じゃあ、『冷や』で頂戴」
と言うと、冷蔵庫から壜を抱えて来る。
「いや、そうじゃなくて…」
言いかけると、
「ああ、『常温』ですか?」

昔「冷や」と言えば、壜から直接コップに注ぐものだった。
だからきちんとした店では出さなかった、ようだ。
ぐっと一杯引っかける、ような場合。
言ってみれば、「立ち飲み」スタイル。
それが何時の間にか、「常温」などという奇妙な名前になっている。
「燗」と言えば「熱燗」、で誰も不思議に思わない。
「熱燗という風習は、戦後粗悪な酒の味を誤魔化す為に始まった」
そう聞いたことがある。
が、木枯らしの吹くような晩、凍えるような寒空の下。
「熱燗で一本」
そう言いたくなる気持ちも、分からないではない。
分からないでもないが、私は「熱燗」は飲まない。

酒の「燗」は、温度によって呼び名が変わる。
日向燗 (ひなたかん)      30度 前後
ぬる燗              35度 前後
人肌 (ひとはだ)        40度 前後
上燗 (じょうかん)       45度 前後
熱燗 (あつかん)        50度 前後
飛び切り燗            55度 前後

「日向燗」とは言い得て妙だ。
生あったかい日向のような温度。
微かに酒の香りが立ち昇る。
「ぬる燗」は、酒の香がもっとはっきりする。
温泉でも、辛うじて入れる位のぬるさ。
「人肌」は文字通り、人間の体温程度。
何の無理もなく、喉を滑り落ちる。

此処までが、私の好みの温度。
「上燗」「熱燗」は無論だが、「飛び切り燗」と来れば、唯の「つけ過ぎ燗」としか思えない。
ニューヨークの日本レストランには、「アツカンクダサイ」と言う外人客が少なくない。
割り箸をパチンと割って、空中で交差させる妙なまじない同様、誰かが教え込んだのだろう。

自分で燗をする時、私は銚子に入れた酒の量で温度を計る。
銚子の首の部分を目安にして、縁まで酒が上がれば「ぬる燗」。
ちょっと下目でおろせば、「日向燗」。
この2種類で、私には充分。
これに、「煮凝り」か「鰯の丸干し」があれば文句なし。
今は、手製の「浅利の時雨煮」がぴったり合う。

今回初めて知ったのだが、「冷たい酒」にも名称があるそうだ。
雪冷え (ゆきびえ)          5度 前後
花冷え (はなびえ)         10度 前後
涼冷え (すずびえ)         15度 前後
常温                 20度 前後

「燗」の名称に比べれば、随分安っぽい。
「雪冷えで、お願いします」
とか、
「花冷えで、一杯」
なんて、いい年をした男が口に出来るだろうか。
宝塚じゃあるまいし。
「常温(じょうおん)で…」
これもあまり言いたくない。

やはり、
「男は黙って」
自分で燗をつけて、黙って飲むのが似合っている、ようだ。

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食事時、出された料理を一瞥して、酒か焼酎か決める。
妻(さい)の方も心得たもので、鰹たたき、和え物・・とくれば、
きょうは酒だな、とかまえている。

親父が電子レンジを買ったのは、
お酒の燗をするためだったと知ったのは、
親父が亡くなって随分経ってから・・。

などなど、酒の話はとめどない。

酒飲み万歳!日本酒で乾杯・・いやちびちびと!

2012/3/12(月) 午前 10:22 [ axros03 ]

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良い奥さんをお持ちですね。
長いNY暮らしで「焼酎ブーム」には無縁です。
未だにどう飲めば旨いのか、良く分かりません。
その代わり、ワインには詳しくなりましたがね。
また、酒の薀蓄などお聞かせ下さい。

2012/3/13(火) 午前 2:15 [ Masterswimmer ]


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