還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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アメリカンフットボールがシーズンに入って、ひと月少々。
毎週日曜日になるとテレビの前にどっかと腰をおろして、贔屓のチームの試合を観戦する。
フットボールは、恐らく一番危険なスポーツだろう。
大きな男たちが、全速力で走りぶつかり合う。
鍛えぬいた身体だが、それでもしょっちゅう怪我人が出る。
連盟はそれでも健康管理には、相応の注意は払っているようだ。
試合前の新聞には、出場選手の怪我の状態が報道される。
「Out アウト」とあれば、出場不能。
「Questionable 疑問」の選手は、試合前の診断で決めることになるようだ。
出て来ない場合が多い。
「Probable 多分」ということなら、診断は必要だが恐らく出るだろう、ということ。

これは単なる選手の情報ではない。
全てのフットボールの試合は、「賭け」の対象になっている。
プロのみならず、大学の対抗試合も同じだ。
主力選手が欠場すれば、「賭け」のハンディが変化する。
賭ける客も、それを参考にするわけだ。
故障のある選手を無理に出せば、あとで連盟から調査が入りペナルティが課される。
診断した球団専属の医者も同罪、ということになるのだろう。

フットボールの選手は、実に大きい。
ポジションごとにサイズは異なるが、それでも普通の人たちとは桁が違う。
180cm、100kg以上の筋肉の塊。
日本の相撲取りも大きいが、フットボール選手はその肉体が猛スピードで走る。
コーチ連中が注視しているから、手抜きはない。
文字通り、全速力で走ってぶつかる。
野球の10分の1の試合数で、ほとんど同じサラリーを貰っている。
いわば、「危険手当」のようなもの。
だから選手生命も短い。
平均したら、3,4年ではないだろうか。
入団してキャンプ、即解雇という選手だって結構いる。
野球のようにマイナーリーグがないから、解雇されれば選手生命は終りということ。

このフットボールというスポーツを見ると、実にアメリカ的だ。
高校で有望な選手は、幾つかの大学から誘われる。
その中で、彼らは自分にあったチームを選ぶ。
先ず、その大学チームのレベル。
トップレベルが常に良いとは限らない。
自分の能力以上のチームに行けば、飼い殺しの可能性もある。
次いで、レギュラーになれるかどうか。
大学のチームに行く場合、多くの選手はプロ入りも視野に入れている。
試合に出られなければ、スカウトの目にとまる機会もない。
更に、コーチの戦術だって影響する。
自分の能力を生かす戦法が、得意なのかどうか。
じっくり見極めて、初めて入学交渉にかかる。
有望選手は、色々の取り決めを文書にして取り交わすのが普通。

大学チームといっても、色々なレベルがある。
常にマスコミが取り上げるリーグもあれば、若干マイナーっぽいリーグだって少なくない。
又アイビーリーグのように、学業優秀大学で固めたところもある。
本当に趣味のスポーツ。
一般的に言えるのは、ほとんどの大学が、「アカデミック」という枠を持っていること。
つまり、学業成績が悪くなれば、試合に出して貰えない。
出られなくなった選手は、どうするのか。
仕方なく勉強して、成績を上げるのが一般的。
だが、中にはそれすらとても無理、というような選手も出て来る。
すると、学業点が甘い大学を探して転校、というような荒っぽいケースも考えられるという。
学業点はOKでも、コーチと合わないという理由で転校する選手はかなり多い。
日本の学生スポーツでは、ちょっと考えられないが。

大学で活躍すれば、当然プロという道が開けて来るだろう。
卒業を待たず、3年を終えてプロ入り宣言をする選手も結構多い。
フットボールのリーグは、「高校卒業以降3年以上経過したもの」を有資格者と見做す。
危険なスポーツだから、3年である程度の評価を得たら、一日も早くプロになって金を稼ぎたい。
卒業までプレーして、大怪我で選手生命を絶たれた例も幾つかある。
「金の卵」を持つ親兄弟の願いはただ、「無事にプロ入り」。
フットボールは「ウエーバー方式」というドラフトのシステムを守り続けている。
昨シーズンの成績が悪かったチームから順番に、欲しい選手を得られる方式。
その代わり、「いの一番」に選ばれた選手は、それなりの契約金を要求することになる。
今年の春のドラフトでは、スタンフォード大学のクオーターバックのアンドリュー.ラック。
1勝15敗のインディアナポリス.コルツが、彼を選んだ。
払う金は、5年契約で50ミリオンを越えていると言う。
大学出たての22歳が、約40億円の保証を得たわけだ。
こうして32チームが、次々と選手を指名して行く。
1順目が終れば2順目、という具合に大体7順目まで。
200数十人の新人フットボール選手が、誕生したことになる。
一チームのメンバーは53人だから、それは200数十人の現役選手が解雇されることを意味する。
その一部始終を、テレビが映し出す。
まさに「アメリカ」そのものの感がある。

では、アメリカンフットボールの面白さは何処にあるのだろうか。
私のような日の浅いファンでも、それなりに楽しめる秘密。
それは恐らく、自動車レースと八百長のないプロレスを、組み合わせたようなところにあるのではないか。
極限に近いまで鍛え抜かれた肉体の衝突。
状況に応じて、コーチは作戦をくるくる変えて行く。
接戦には接戦の、大差には大差の操縦法がある。
そして、決められた時間のコントロールと、限られたタイムアウト(作戦タイム)の取り方。
野球の監督の仕事の大半は、キャンプを終えたところまで。
ゲームになれば、選手の能力が物を言う。
だが、フットボールゲームの趨勢はコーチの力に負うところが大きい。
作戦を立て、選手に指示を出し、分業のコーチ連にも細かく自分の意図を伝える。
それを試合前には勿論、試合中にも分秒刻みでこなして行くのだ。
野球の監督なら自分でもやれそうだが(勿論間違い)、フットボールのコーチには恐れ入るしかない。

日本にもアマチュアフットボールのチームが幾つかあって、リーグ戦を戦っている。
多分そのフットボールと、アメリカのそれは似て非なるものだろう。
別に日本のフットボールを、貶めているのではない。
努力ではどうしようもない、天成の肉体の違いがこんなに歴然としているものは他にない。
ゲームに惹き込まれながらも、時々私はちらっとそれを考えてしまう。
狩猟民族と農耕民族の違いかも知れない。
まあ考えても、あまり意味のあることだとは思えない。
ゲームが面白ければそれで充分、というところか。


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