還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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最近、時々鼻歌を歌っていることに気づいた。
ほとんど無意識に歌っていたようなのだが、それも大抵同じような歌が多い。
大人になってから憶えた歌はほとんど無く、もっぱら小中学生時代に聴いたものばかり。
さらに、日本の歌は皆無に近く、圧倒的に戦後アメリカから渡って来たポピュラーソング。
実際にラジオで聴いたり、歌ったりしたのは日本の歌が多いはずなのだが、鼻歌にも向き不向きがあるようだ。
確かに、色恋沙汰を歌い上げた演歌などは、気楽な鼻歌向きではないだろう。
「〜惚−れて、惚れていながら 行く俺に 旅を急かせる ベルの音〜」(哀愁列車)では、気恥ずかしくてまともな神経では歌えっこない。
日本にも、軽快なリズムで鼻歌向きの歌謡曲が無かったわけではない。
「〜みどりの風も 爽やかに 握るハンドル 心も軽く サイクリング サイクリング ヤッホー ヤッホー〜」なんて歌も、そこそこの人気はあったように思うが、如何せん軽過ぎる。
主力はどうしても男女の間がテーマであり、マイナーコードで恨めしい響きが目立つ。
「湯の町エレジー」、「待ちましょう」、「お富さん」、「旅の夜風」、どれもこれも夜向きのものばかり。

そこへ行くとアメリカ渡来のものは、リズム感が良く、調子に乗り易い。
戦後ということもあって、そういう感じの歌が主に選ばれたのかも知れないが、ああいうリズム感は戦前の日本の音楽には、先ず見られない。
私が、真っ先に憶えたのは、「腰抜け二丁拳銃」という喜劇の主題歌、「ボタンとリボン」。
勿論意味は全然分からないが、「バッテンボー」というフレーズがえらく調子が良い。
この「バッテンボー」が誰ぞ知らん「Button and bow バトン アンド ボウ (ボタンとリボン)」だったらしい。
それを知ったのは、この歌のことさえ忘れ果てた20代の頃。
「Button ボタン」はまだ分かっても、「Bow ボウ」とは何ぞや。
知るには少し時間がかかった。
20代になって、スーツを着るようになり、ネクタイなども買い求めた。
その時、ネクタイ売り場に、まるでテープのように巻かれた奇妙な代物を見つけた。
「これ、何ですか?」という問いに、売り場の若い女性店員は、「これは蝶ネクタイでございます」と答える。
どうやら適当な長さに切って買い求め、自分で首に巻きつけるらしい。
そして、私はその「ボウタイ」を買ったのである。
きちんと首に巻けるまで、結構時間がかかった。
そして、それを首に巻いて外に出るのもひと仕事だったと思う。
幾ら昔のこととは言え、ボウタイをしている人は、滅多にいなかったのだから。
それでも2,3回は、ボウタイ姿で外出した記憶がある。
止めたのは、気恥ずかしかったのか、手間が面倒だったのか憶えていない。


East is east and west is west  And the wrong one I have chose
Let's go where I'll keep on wearin'  Those frills and flowers and buttons and bows
Rings and things and buttons and bows

訳: 東は東へ西は西へ  僕は間違った方を選んだのさ:
さあ行こうよ、君がいつも着飾っていられる所に
フリルに花にボタンにリボンなんかを、 指輪にいろんな物にボタンにリボンを。

和訳になると、この歌の持つリズム感が失われてしまうのが良くわかる。
戦後間もない頃は、特にリズムが軽快な歌が多く持ち込まれたような気がする。
「You are my sunshine ユーアーマイサンシャイン」なども、その代表的なもの。
「テネシーワルツ」を大ヒットさせたのは女性歌手パティ ペイジだが、彼女も「How much is the doggie in the window?  あの窓の子犬は幾ら?」というような軽快な歌もヒットさせていた。
敗戦に打ちひしがれていた日本人はうらぶれた陰惨な歌に向かう傾向にあり、「GHQ進駐軍」は、何とか明るい雰囲気の軽やかな歌を広めようとしたのだろうか。
柔道や剣道を教育の場では禁止した時期もあるように、進駐軍司令官ダグラス マッカーサーは、日本人の情緒的な面の教育を重大に考えていたふしがある。
敗戦と同時に、180度の転換をそれ程の抵抗無く受け入れた国民性に、いささかの疑問があったのだろう。
ラジオ放送だって進駐軍の検閲があったはずだから、流される曲の選択もそれなりのものだったに違いない。
「森の水車」や「りんごの唄」などの、無難な歌が好まれただろう。
そして当時幼稚園児であり小学生だった私には、アメリカのリズム感溢れる歌曲が刷り込まれたわけだ。

それにしても、「Button and bow バトンアンドボウ」を「バッテンボー」と記憶したように、多くのアメリカの曲が耳に入ったまま、子供の脳に記憶されたようだ。
「ノーティレーディオーシェーディレーン イッツザタンライカボン」と憶えた「裏町のお転婆娘」が実は、
「The naughty lady of shady lane had hit the town like a bomb (裏町のやんちゃ娘は、まるで爆弾のよう)」
という意味だったことだって、ずっと後で知ったのだ。
それでも、その軽快なリズムだけは子供の心に深く浸みこんでいたのだろう。
この心地よい響きは、その後の海外からのヒット曲に共通のもので、「ウスクダラ」とか「うちへおいでよ」、「アンナ」など、意味は分からずとも、調子の良さに乗せられて、という感が強かったように思う。

対比してみると、日本の映画においては、音楽の比重は軽かったようだ。
戦前の名作と言われる映画で、ヒットした主題歌を持つものはほとんどない。
いや戦後だって、その傾向はあまり変わっていない。
ただ、ヒットした歌謡曲に後から台本を拵えて作った映画は、また別の話。
それは、言うなれば「歌謡ドラマ」とも呼ぶべきもの。
この手の映画も、ひと頃は大流行した。
「哀愁列車」、「湖愁」、「有楽町で逢いましょう」はじめ、数え切れない。
言うなれば、曲の人気に乗っかっただけのお手軽映画。
すると、映画を作って主演俳優に主題歌を歌わせる、という新機軸も現れた。
当時は、人気のある俳優は、ほとんど歌も唄っていた。
高峰秀子、鶴田浩二や高田浩吉などが有名だが、山本富士子や有馬稲子などもレコードを出していた。
映画の中で突然ヒット曲を歌い出すのを、誰も不思議に思っていなかったから面白い。
美空ひばりなどは、それがお約束だったと言える。
言うなれば、日本の映画は、小屋掛け興行のスタイルをそのまま持ち込んだものだったようだ。
それに続いて出て来たのが、「スターシステム」。
先ず人気俳優があり、そして脚本が生まれ、最後に主題歌が出来て来る。
石原裕次郎などが、その典型的なスタイル。
映画会社の方針で、年に10本以上の映画を拵え、そこで歌った主題歌をレコードで売る。
それは高倉健や藤純子に受け継がれて行く。
飽きられるのを覚悟で、人気があるうちに映画を撮り続ける。
精々1年か2年に1本の映画出演で莫大なギャラを受け取るハリウッドスターから見れば、自分で自分の首を絞めているように見えるだろう。
まあそれはアメリカと日本の映画市場の差、と考えるしかないのだが。
そして、そこからは人々の記憶に残る主題歌は生まれて来ない。

私が日本を離れた頃から、日本映画は斜陽時代に入る。
ヒットが生まれないから、映画会社は予算を渋るようになって来た。
小粒な映画ばかりが作られ、テレビドラマと似たような筋立てが増えてしまう。
人気俳優は映画からお呼びがかからず、テレビやコマーシャルで糊口を凌がざるを得ない。
コマーシャルは俳優から神秘性を奪い、手垢がつけばファンは益々離れて行く。
悪循環の繰り返しが、日本映画の現況ということだろう。
映画少年だった私だが、日本映画の主題歌で覚えている歌はひとつもない。
観た数はずっと少ないアメリカ映画には、心に残る音楽を幾つも思い出せる。
「真昼の決闘」、「OK牧場の決闘」、「慕情」、「エデンの東」、「此処より永遠に」、「南太平洋」…。
そして、「ボタンとリボン」や「テキサスの黄色いバラ」などの口ずさめる曲。
そういう曲は、数十年を経た今でも口を衝いて出て来る。

考えてみると、アメリカと日本では、「歌」の概念が異なっているのかも知れない。
日本の歌は、身構える歌。
それは和歌や漢詩の伝統を踏まえて、起承転結を備えた韻文形式。
対するにアメリカでは、日常生活の中から発生した、気楽なお喋りとでも呼べるような散文。
勿論作る人たちも、色々な工夫を加えて来ているのだろうが、根本は変わっていないのではないか。
そんなことを考えながら、「バッテンボー」を口ずさんでいる。

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おはようございます。いきなりで失礼いたします。今「ローハイド」の歌の替え歌を
作ろうかな・・・ローレンローレン?をロージン、ロージン、・・・として見ようかなと思案中です。アメリカの歌が日本人の頭にどんなふうに入っているのか調べていてこちらと出会いました。それでは

2017/3/12(日) 午前 6:17 [ サブプライム ]


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