還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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ニューヨークタイムスが日曜日に出している「NY Times magazine ニューヨークタイムスマガジン」で、日本レストランの「お任せ」というシステムについて特集を組んだらしい。
勿論、この「お任せ」という聞き慣れないメニューの選び方の発祥は日本だ。
それも、古くからあった呼び名を取り入れて造り上げた新システムと言えそうだ。
そもそもの起こりは「寿司」だと思われる。
寿司は長い伝統を持つ日本の料理の一分野だが、同じくらい長い間客を悩ませて来た。
たとえメニューがある店でも、カウンターに座れば其処は別世界。
今は知らないが、昔のカウンターは特別な人間の座る場所だった。
と言っても、別に肩書きが必要なわけではない。
寿司が終わり、茶を呑み終わった頃にやって来る「勘定書」にたじろがない精神力のある人。
若しくは、職人が勧める高いネタを避けて「ゲソ」「タコ」「コハダ」などで終始出来る人。
それが出来ない人たちは、テーブル席に坐って「お品書き」から注文するしかない。
私が子供の頃、寿司店に入ることは滅多になかったが、その場合は常にテーブル席だった。
カウンターとテーブル席の懸隔は、目には見えないが実に大きなものだったのだ。

一方寿司店も新しい客層の開拓に腐心し、ネタ毎の価格を貼り出す店も増えた。
だが、価格を壁に貼り出せば、店の格も下がってしまう。
それは所謂「上客」を失うことにもなり兼ねない。
つまり、価格不明の店を愉しむ客層もあったということだろう。
残念ながら経験は無いが、カウンターの真ん中に坐って寿司職人と雑談を交わしながら食べる寿司は格別の味があるものなのかも知れない。
まあ、景気が上向き始めた辺りから、会社の金で寿司を喰う所謂「社用族」が増えて来た。
だからと言って、店の扱いが変わったわけではない。
いや逆に一層大事にして、店に来る頻度を増やすことに力を入れただろう。
こういう場合、客は寿司の値段を聞くことはないし、店もそれに触れることはない。
黙って食べて帰れば、会社に請求書が届くというシステムが定着したのもこの時代だろう。。

最近流行の「お任せ」システムは、この昔の方式とは異なっているようだ。
先につまみの酒肴を出してビールや酒を愉しませ、頃合を見計らって握りに移行する。
店にいる客は全て同じ「お任せ」だから、出て来るものも順番もほとんど変わらない。
一般的には1時間半くらいで終わるように仕組んであるらしい。
コースが終わった後、追加のオーダーは個人個人で異なる。
だから勘定書きも異なるが、基本的には1万円くらいから2万円程度で納まるようだ。
このシステムの優れている点は幾つかある。
先ず、店は客数に応じて魚の仕入れが出来る。
つまり無駄が少なくなるし、仕入れ価格をコントロール出来る利点がある。
特別な高級魚をコースに入れたら、他のネタで仕入れ値を下げれば良い。
「大間のマグロ」、「富山のブリ」、「佐賀関のサバ」、「明石の鯛」などがラインアップに加われば、客も喜ぶだろうし噂にだってなる可能性もあるだろう。
予約さえきちんと入れば、ある意味理想的なビジネススタイルと言えそうだ。

ニューヨークタイムスマガジンが指摘したのは、最近のマンハッタンの日本レストランの多くがこのシステムを取り入れて来ている、ということらしい。
確かに人づてに聞いても、「お任せ」で幾らというようなことをはっきり言っている店も増えた。
高い店で300ドル、安ければ80ドル程度、という辺りのようだ。
随分差があるようだが、これはどれだけ日本からの輸入物を使うかで変わって来るのは当然。
また同じ輸入物でも「天然」か「養殖」か、で大きく差がつく。
「ブリ」などはほとんどが養殖物で、以前は「はまち」と呼んでいたが、何時頃からか呼び名が変わった。
「真鯛」や「鯵」、「シマアジ」や「カンパチ」も今ではほとんど養殖物。
養殖池で与える餌は似たようなものだから、味も似通って来るのが道理。
つまり高額な店は「天然物」を取り寄せて、それを売り物にしているわけだ。
とは言え、食べてみてその差が簡単に見分けられる客はそれ程多くない。
しかも、今のマンハッタンの高級日本レストランの客の中心はアメリカ人らしい。
差別するつもりはないけれど、天然物と養殖物の味の差を食べ分けられる人がそれ程いるだろうか。
はっきり言えば、日本人にだってそれが分る人はそれほどいないのではないか。

アメリカにせよ日本にせよ、レストランのレベルを知るのに一番手っ取り早いのは価格だろう。
200ドルの店より300ドルの店の方が味に於いても優れている、そう考えるのは普通だ。
数年前からニューヨークで一番高い店と言われている寿司屋があるが、今でも予約で一杯だそうだ。
その理由を考えるとき、「高価」ということが大きなファクターになっているのではないか。
日本最高と謂われている寿司店は、30分で済ませて3万円だそうだ。
嘘か本当か知らないが、この店で自分の好きなネタばかりを注文し続けた場合、7,8万になるという。
この店で7,8万払って好きなものをオーダーするのが良いか、「お任せ」の店の2万円で上げるのが良いか、その判断は難しいだろう。
普通の人であれば答えはほとんど明々白々だろうが、そうでない人も少なくないのが今の世の中。

「お任せ」が今後ニューヨークの日本食の主流になって行くのかどうか。
このシステムがアメリカの多くの日本食ファンに、すんなり受け入れられるだろうか。
考えてみれば、イタリアンやフレンチの100ドル前後のコースを食べることと、「お任せ」の100ドルとの間には大きな違いはない、とも言えそうだ。
何と言っても、不明朗と看做されて来た「寿司屋」の会計が客が食事を始める以前に知らされているという点は、かなり評価して良いのではないか。
日本はそれ以前に「回転寿司」という一段も二段も安く分り易いシステムが全国に蔓延してしまったが。
ニューヨークにも2,3軒の「回転寿司」がオープンしたが、結局撤退の憂き目に会った。
その辺りに、日本とアメリカの客の相違が表われているのかも知れない。
「お任せ」というシステムの狙いは、客から「割高感」を払拭することだろう。
過去の日本人が抱いていた「寿司」という食べ物が持つ曖昧さや不確実性は、少しづつであるにせよ薄められて行くのではないか。
ニューヨークに「お任せ」が定着するかどうか、を云々するのは時期尚早だろう。
日本の中級高級の寿司店で、このスタイルは一定の地歩を固めつつあるようだ。
その人気が安定したものになった頃、「お任せ」はニューヨークのみならず世界の大都市に拡がるだろう。
ただ、それだけの鮮魚を供給し切れるだけの水産資源が世界に残されているかどうか、は別の話だ。


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