還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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我は昔の我ならず… 

「還暦スイマー」は、このところ無聊をかこっていた。
ブログもさぼっているし、泳ぐ方も何年に一度という寒波もあってプール自体がクローズする有様。
それでも、寒さが和らいで来た先週辺りから、思い切って朝の水泳に挑戦することにした。
朝の8時頃に水着を着てプールに行くと、既に3人ほどが泳いでいる。
泳ぎを見るとそれぞれ基本は出来上がっているようで、フォームも良いし結構速い。
3コースあるうちの真ん中を2人、一番窓際を1人が占めている。
残り1レーンは歩行専門の高齢者や子供が来た場合に備えて、空けて置くのが習慣になっているようだ。
となれば私は窓際のレーンに潜り込むしかない。
昔ならばいざ知らず、今の私にはこの3人のスピードに合わせるのは不可能だろう。
本来ならば端っこに入るべきだろうが、既に中央よりを空けてくれている。
別に競争するわけではないからと割り切っているつもりだが、無心でいられるかどうか。

ゴーグルを嵌めて、ゆっくりと泳ぎ始める。
私の外側の泳者も中央レーンの2人も、ほとんど同じ速度で泳いでいるかのようにほぼ同じタイミングでターンし、申し合わせたように休みながら会話を交わしているようだ。
気づくと、真ん中のコースの私の横で泳いでいる泳者は、見覚えがある。
15年ほど前、私が初めてこのプールに入った時も、彼が私の横を泳いでいた。
私よりは随分若いが、それでも50歳近いだろう。
当時も頭は完全なスキンヘッドだったが、細身の身体は充分に鍛えられているようだ。
彼も私を見て、「ハイ」と挨拶を送って来た。
7,8年ほどこのプールには来ていなかったから、すぐには思い出せなかったかも知れない。
記憶にあるだけで、15年前から今までこのプールに来ている人は3人程度だろう。
「私はね、92歳だよ」
知り合ってすぐにそう話しかけて来た爺さんがいたが、もういないだろう。
この彼ともう一人、年齢不詳の高齢女性が15年前と変わらずバックで泳いでいる。
そしてもう一人、プールサイドに大きなバッグを持ち込み、そこからシュノーケルを取り出して装着する70代の男性も相変わらず朝早く姿を見せるが、家人に言わせるといつも寄り添っていたワイフはもういないようだ、という。

周囲の3人のペースは無縁のこととして、私はゆっくりと泳ぎ始める。
「速く」でもなく、「力強く」でもなく、ただただ単純に「水中を進んで行く」だけ。
驚くことに、ちゃんと両腕が疲労を感じ、高々2,300m泳いだだけでいっちょ前に休みを要求する。
仕方なく3人のペースとは無関係に休憩をとり、水を呑む。
昔年長の連中と遊んだときの、「おみそ」を思い出した。
あの頃は「おみそ」の位置から脱却する日を夢見ていたのだろうが、今は違う。
現在の力量を知り、それに甘んじて身体を鍛えて行こう、と考えているわけだ。
ほぼ1年間のブランクを取り戻すのは、容易ではないだろう。
いや、取り戻すことなど到底出来ないのかも知れない。
かく言う私だって、数年前の体調に戻れると安易に考えていたのではない。
ただ一定の距離を泳いでいれば、それなりの鍛錬にはなることは間違いないように思う。
現に寒波が去って以降、ストロークに力強さが増しているように思われる。
12月の初めに風邪を引いて、2週間くらいプールを休んだ。
その後の復帰初日、100泳いで休み200泳いで休みという無残な有様だったことを思えば、格段の進歩。

しかし、ひと休みしていると少し開けられたドアから入る風の冷たさが身に滲みる。
プールの周囲を巡回しているガードに声をかけた。
「Could you close doors? It’s too cold. (ドアを閉めてもらえる? 寒いんだよ)」
ガードはちょっと困ったような表情を見せて、
「They request to open the doors in the morning time. (朝はドアを開けろというリクエストが多いんです)」
そう言われてみれば、ひと休みしている連中は、この寒風をものともしていないようだ。
汗こそかいていないようだが、この冷気を楽しんでいる気配さえ感じる。

思い起こせば15年くらい前、私はガードに水温を下げることやドアを開けることを依頼した覚えがある。
だが、浅いところを歩行訓練する高齢者優先らしく、願いが聞き届けられたことはなかった。
まあそれが理由で私はこのジムを辞めて、マンハッタンやクイーンズのジムを転々としたのだ。
そして今戻って来て見れば、私の立場はくるりと逆転してしまっていた。
あの頃温度が高すぎると感じた水温も、今では肌寒く感じるくらいだし、ドアが開いていればそこから忍び込んで来る冬の風は震え上がるほど寒々しく感じたりもする。
15年前にはこの寒さが心地良いほどだった、ということなのだろう。
おそらくひと泳ぎした後などは、見えないながらも汗をかいていたのではないか。

それでも松の内を過ぎた頃から、泳げる距離もどうにかこうにか格好がついて来た。
1日泳げば1日休むという風だったが、今では週5,6日は水に浸かっている。
他の泳者のスケジュールも大まかながら呑み込めたから、なるべく人のいない頃合を狙って行く。
800前後泳いでからジャクジーに20分ほど浸る。
ロッカールームのシャワーで身体を洗い、髭を剃って本日の終了。
サウナや蒸し風呂もあるが、そこまでは手が廻らない。
それでもひと頃に較べれば大変な進歩だ、と本人は思っている。
ぼちぼちと機械ルームにも手を出してみよう、などという計画も温存中。

第2の成長期だ、と本人は勝手に思っている。
乞うご期待。


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