還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

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ささやかな夢

「釣り」と縁遠くなって3,4年経った。
止めた直接の理由は、釣り船に同乗させてくれたショーンが家族揃ってフロリダへ移住したこと。
道具はあるのだが、これが時を同じくして動かなくなってしまった。
リールは2つあったが、どちらも回転しなくなり今やうんでもすんでもない。
まあ30年以上使って来たのだから寿命と思うしかない。
どちらも安物だから未練はないのだが、馴染んだ器械だから一抹の淋しさはある。
リールが無ければ竿だって使い道は無いが、2本あるどちらも未だ使える状態だから無碍に放り出すわけには行かないし、何時またリールを買って再稼動させるかもわからない。
竿は2本とも長さ2m程度の船竿で、竿先に撓りが出る「先調子」というタイプ。
確か1本は3千円程度だったし、もう1本は伯父が買ってくれたもの。
30数年で、「平目」を100枚以上は釣っているだろう。
マンハッタンの自宅から地下鉄に乗ってブルックリンのシープシェッドベイという埠頭へ行き、客待ちのパーティボート(乗り合い船)に乗り込む。
朝8時出港で午後3時帰港が1日乗り合い、8時―12時、1時―5時が半日船になっていた。
ニューヨークの「平目」は5月末頃に接岸し、9月頃に深場へ戻って行く習性がある。
そして入れ替わりに「カレイ」が秋口に湾に近づき、翌年の春まで釣りの対象魚になるわけだ。
ただ近郊の釣り場は対象魚が限られていて、精々3,4種程度でさらに喰って旨い魚はもっと少ない。
我々がほとんど相手にしない魚でも、乗合船で数を釣る客も結構いるらしい。
聞いてみると、釣れたらフィレーにしてバターで焼いてソースをかけるのが料理法だという。
であれば、何の魚でもバターとソース味で統一されてしまうから、喜んで食べるのだろう。
その点日本人は「刺し身」になる魚を狙うから、「平目」か「シーバス」程度しかない。
「平目」は夏場の魚で「シーバス」は冬に釣れるから、辛うじて何かしら刺し身魚があるわけだ。

アメリカ中で一般的かどうかは知らないが、ニューヨーク周辺の乗合船は釣り客同士が釣れた魚のサイズを競う「プール」と呼ぶ遊びをする慣わしがあるようだ。
一人が2,3ドルづつ出して釣れた魚の重量で勝者を決める仕組み。
全員参加という決まりではないが、多い時で4,50人くらい参加するようだ。
そうなれば最大の魚を釣り上げた場合、勝者は100ドル以上を手にすることになる。
お遊びと言えばそれまでだが、いい年をした大人が釣れた魚のサイズに夢中になっている様子はむしろ微笑ましいと言えなくもない。
私がニューヨークで乗りあい船の釣りを始めた頃、船賃は半日で20ドルくらいだった、
貸し竿に餌がついての値段だから、それ程高いものではない。
ただ、その頃から州の法律で持ち帰れる魚のサイズは毎年シーズン前に決められる。
確か14インチ(35.6cm)だったと思うが、私が釣りをしなくなった頃には21インチ(53.3cm)になっていたから、20cm近く規制は厳しくなったわけだ。
可笑しなことにこのサイズは州法で決めるので、ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカットそれぞれに独自の規定を持っていることになっており、同じ釣り場にいても持ち帰れる魚の大きさは違っている。
日本から見れば奇妙な規制だが、各州が独自のルールを持つことは当たり前なのだろう。

私はアメリカに来る前には、釣りに熱中した時代があった。
ただそれは「磯釣り」と呼ぶ、波が打ち寄せる岩場の上だったり、船で渡す離島から長い竿で釣るものだったりで、専ら三浦半島や伊豆半島が主な釣り場だった。
朝早く釣り場に着き、アミやイワシなどの撒き餌を潮の流れに乗せ、沖から忍び寄って来る魚を釣る。
主たる対象は「クロダイ」や「メジナ」などが主で、夜釣りで「イサキ」なども狙ったりもした。
確実に魚を獲得したいなら乗り合い船の釣りが間違いないが、どうも肌に合わない。
釣り船は場所によって釣果が変わるようで、一番良いのは船尾の「トモ」であり、次に船先の「ミヨシ」、そして真ん中辺の「胴の間」となっているらしい。
今は状況も変わって来たようだが、以前は良い釣り座は船の常連が優先的に占めており、初心者や滅多に来ない釣り人は残された釣り座に坐らされることになる。
だが最近は流石にそういう風習は改められて来たようで、スマートフォンなどで抽選して決めるシステムが取り入れられているそうだから、遅まきながら改革が進んだのだろう。
ただ、釣り客の顔触れも変わっているそうで、いまやルアーで大物を狙う若い人中心で、釣り座にどっかと座り込む昔風の釣り人は敬遠されているという。
可能であれば帰国して釣りを楽しみたいという気持ちはあるが、さて一体どういう釣りなら今の私に出来るのか、さっぱり検討もつかない有様。
いくらなんでも荒磯や離島に行けるとは思わないが、船でルアーを振り回すのも遠慮したい。
そういう風に考えていると、高齢者向けの釣り場、つまり防波堤とか砂浜の投げ釣りなどが浮かぶ。
と言ってはみたものの、投げ釣りだってもう40年もやっていない。
言ってみれば、浦島太郎が竜宮城から戻って又漁に行くようなものだ。
この間に著しい進歩を遂げた、リールや竿などに歯が立つだろうか。
こちらでNHKの「釣り人バンザイ」という番組を放送しているが、釣りが好きな芸能人や俳優などが日本各地の釣り場を訪ねて土地の釣り名人のアドバイスを受けながら大物を狙う、というもの。
観ていて気づいたのは、所謂餌釣りが少なくなっていること。
大半がルアーや擬似餌で竿先を間断なく動かして魚を誘い、粘りに粘って良型を釣り上げる。
稀に生き餌なども使うがほとんどはメタルジグというルアーで、今はルアー全盛の時代だと思わされた。
そして、「釣って食べる」という昔ならごく当然な考え方も、今ではそれが別のものになってしまったようだ。
「キャッチアンドリリース」という日本には全く馴染まなかった考え方も、今では多くの人が普通に行っている。
着古したジャンパーにズボンが釣師の正装だった時代は過ぎて、いまや釣り道具店でも華やかなアングラーファッションを勧めるらしいし、増え続ける女性釣師は釣り場の雰囲気を大きく変化させたに違いない。

日本に帰って釣りをするという私の小さな希望は、果たして可能なのだろうか。
勿論高望みはしていない。
あまり人の来ない防波堤辺りで、短めの竿を担いで岩礁の隙間にいる小魚を探る。
若しくは、沖に向かう潮に撒き餌を乗せて、沈んでいく浮木に竿を合わせて精々手のひらサイズの磯魚を釣り上げ、鱗を削ぎ3枚に下ろし焼くなり煮るなりして一杯呑む、程度のことなのだが。
何処まで飛ぶかは分らないが、軽い投げ竿で砂浜から沖に向かって軽めの錘を投げ、昔なら舌打ちをしながら放り出した「メゴチ」や「小キス」を天麩羅にしてビールを傾けることが出来ないだろうか。
勿論、お馴染みの「ボーズ」を食らった日は、親しくなった魚屋でカワハギや小鯵を買い込んで面子を保つなんてこともあるだろうし、魚屋が休みの日にはスーパーで「マグロ」ということもありだろう。
それでもかつての釣師の意地として、魚は天然に限りたい。

なに、昔捨てた魚を拾う覚悟をすれば、まだまだ天然魚は結構いるはずだから…。


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