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何時頃からか、NHKの「大相撲中継」を結構熱心に観るようになった。
相撲の視聴者は高齢者が多いそうだから、これも老化現象の一つかも知れない。
子供の頃は、「仕切り直し」が退屈で仕方がなかったが、今はあれもなかなか悪くない気がする。
だが回向院でやっていた頃は制限時間が無かったとかで、延々小一時間も仕切り直しを繰り返した取り組みもあったというから、それは流石に御免蒙りたい。
当時は全てがのんびりしていたから、気の短い江戸っ子でも我慢出来たのだろうが。
NHKは朝の4時から同時中継で幕内の全取り組みを放映し、午後の6時頃にはダイジェストを流す。
相撲中継が始まったのは随分前の話になるが、その頃の視聴者はほとんど日本人だったようだ。
だが、今では英語の字幕はあるし、英語の解説もある。
つまり、アメリカでも日本語放送番組を観ている人が増えたのだろう。
家人の友達の家でも、ご主人(アメリカ人)が相撲好きで、早朝の取り組みを毎日録画しているそうだ。
面白いのは力士の好みで、彼は引退前の「朝青龍」が好きだったという。
普段の行状や発言を知る機会が無い所為かも知れないが、純粋に取り組みだけを観ていれば、力士の実力や勝ちっぷりが好きになるということなのだろう。
大相撲がニューヨークで公演したのは1985年だったと思うが、前日にパレードが行われた。
セントラルパークの南側の道を、力士はオープンカーに乗って行進した。
車上の小錦の横に、既に引退した高見山が手を振りながら歩いていたのを憶えている。
ただ、残念ながらそれほどの観衆は集まらなかったようだ。
日本ブームの今なら、はるかに多くの歓声と拍手が聞かれただろう。
マジソンスクエアガーデンで幾十人かの力士が相撲をとって見せたそうだが、あまり受けなかったという。
その20年後にラスベガスで3日制の公演が行われたが、2万5千近い観客が集まったそうだから、それだけ日本や相撲に関する知識や興味が深まっていたのだろう。
日本ブームの今なら、さらに人気を集めるかも知れない。
テレビの画面で見ていると、観客席に外人が結構大勢来ていることに驚く。
どうもツアーに組み込まれていることも影響しているようだ。
相撲のチケットは決して安いものではない。
その上に食事や飲み物を考慮すれば、ちょっとした出費だ。
ヤンキースタジアムに夫婦で子供2人を連れて来て内野席に坐れば、5,6百ドルは飛んで行く。
とても庶民に手が出るものではない。
自宅のソファに坐って、ピザでも齧りながらテレビを見るのが普通のファンだろう。
私は9歳の時、初場所の千秋楽を家族で観に行き、大関吉葉山の全勝優勝を目の当たりにした。
折りしも降り出した雪の中のパレードで、観衆に手を振る吉葉山を間近で見てファンになった。
だが、横綱昇進の祝い酒を吞み過ぎたか、吉葉山は春場所全休。
どころか、それ以後一度の優勝も無く引退という情無い引き際。
彼が引退して開いた部屋が宮城野部屋、今の白鵬の所属する部屋。
横綱で一度も優勝出来なかった力士の系統に繋がる力士が、40回近い優勝回数を誇っている皮肉。
泉下の吉葉山は、苦笑いしているだろうか。
私は60年以上の間相撲を観たり観なかったりしているわけだが、この10歳の頃を除けばそれ程夢中になった記憶はない。
考えてみれば、その頃から多くのスポーツが現れて来た。
プロ野球は既に人気スポーツだったし、中でも巨人の人気は圧倒的だった。
私の小学校のクラスでも大半は巨人ファンであり、贔屓が他チームの場合は肩身が狭かったはずだ。
それでも地方から転向して来た生徒の中には、「中日」や「阪神」のファンがいたし、稀には「広島」や「西鉄」が好きだという奴もいたが、いまいくら考えても「阪急」や「近鉄」を聞いた憶えは無い。
その不人気ぶりは相当なもので、ほとんど優勝が決まったシーズン末などは、観客数が500とか1000と新聞で発表されていた。
後で聞くと、この500や1000もお情で、それ以下の数字はなかったらしい。
もうほとんどの選手はやる気もなくゴロを打っても走るわけでもなく、選手が選手なら観客も観客で、スタンドに携帯ラジオを持ち込んで巨人戦の中継を聞いていたりする。
特にひどかったのがパシフィックリーグで、万年最下位のようなチームがあって、6チーム編成と言っても実際は4チームと考えた方が良いくらいだから、観る興趣も薄れるのは当たり前。
一方、人気球団の巨人と阪神がいるセントラルリーグは観客も集まるし、テレビの放映回数も多い。
恐らく観客数の比較で言えば、セントラルとパシフィックでは4倍近い開きがあっただろう。
と言って、両リーグが智慧を絞って入場者数を増やす策を練ったとは聞いたこともない。
パシフィックは巨人と試合がしたいからインターリーグの試合を提案するし、セントラルは現状維持の方が間違い無いからその案に乗る気配も無い。
もともとこの12球団には親会社があって、子会社である野球チームへの考え方がそれぞれ違う。
野球は毎日報道されるし、広告費と考えれば野球の赤字は吸収出来ると考えている。
人気選手は欲しいが、その給料があまり高いようならトレードに出して安い選手を使った方が良い。
そんな風で、積極的にチームを強くしようとは考えていない。
日本には野球に張り合うようなプロスポーツは相撲以外にはない。
子供の憧れが野球にある間は、現状維持でも心配はないだろう。
まあ、多少ニュアンスは異なっても、そんな風に考えていただろうと思う。
だから、サッカーが現れその他にも若者を惹きつけるスポーツがプロ化して来た今日はまさに想定外。
今小中学生に「好きなスポーツ」のアンケートをとると、1位はサッカーで野球は2位。
そして驚くことに、「バスケットボール」がプロ化して精力的にファンを集めている。
日本人の平均身長を考えれば、バスケットボールはかなり不向きなスポーツだ。
2m以上の選手がごろごろいる、アメリカのプロバスケットボールに太刀打ち出来るはずもない。
アメリカンフットボールにしても同様だ。
だが、日本には日本なりのバスケットボールがあるはずだ、と考えた人がいた。
サイズでは勝てなくても、スピードや技術でアメリカに負けないゲームを作りだせる。
勿論先行きは前途遼遠、まだまだ道半ば以前の状態。
それでも、全力でプレーする選手がいて、それを応援するファンがいればビジネスは成り立つ。
その好例が、イギリスのサッカーだろう。
全国に様々なリーグがあって、チーム総数は100を越えているようだ。
それぞれ異なる組織を作って別々のゲームを行い、それぞれにファンがいて声援を送っている。
多分、1億円を越えるプレーヤーはほとんどいないだろう。
だがそれでも、ファンはしっかり自分のチームを支えている。
イギリスは多少特殊な例としても、世界を見れば様々な事例が存在することが分る。
まあ第一に、日本くらい全てのスポーツを取り入れている国は他に類を見ない。
誰かが持ち込んで来ると直ぐに組織を作り、次いで政治家を枢要な部分に据える。
そうなれば、文科省からの援助金も当てに出来るし、海外試合も容易に組めるだろう。
そういう経緯で出来上がった団体は少なくないと思われる。
と言うより、そういう方式が既にあるから、皆そこに目標を絞っているのではないだろうか。
「おねだり方式」とでも言おうか、それが日本には非常に多いように聞いている。
それをメディアが煽り、様々なストーリーを組み合わせて報道するシステム。
諸悪の根源は何処にやある。
年を取るとそれがうっすらと分かって来るのだが、最早行動力が伴わない。
世の中は、上手く出来ているんだなあ。
しみじみ思う、今日この頃です。
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