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ニューヨークに住み始めてもうかれこれ30年だ。
来た当初、「10年住んでいる。」とか「もう20年かなあ…。」
などという人に会うと、
「凄いもんだ、とても真似は出来ない。」
と思っていたのが今では可笑しい。
今では、「住んでしまえば何処でも一緒」くらいの気持ちだと思う。
「住めば都」
という言葉があるが、あれは半分真実で、半分嘘である。
世界中何処に住んでも、日本と同じようには行かない。
どこかで我慢をして生きている。
しかし、ニューヨークはその中ではかなりマシなところである。
此処ではかなりの物が手に入るし、通信網も整備している。
細かいことを言わなければほとんど日本同様の暮らし方も出来る。
30年前、日本語のTV番組は朝の1時間だけだった。
それを食い入るように観ていた。
今はNHKの放送を朝から深夜まで流している。
ニュースは勿論、「功名が辻」「きらり」「試してガッテン!」から何故か民放のはずの「どっちの料理ショー」や「ごくせん」(これは古い番組だが)までNHKで放映している。
週刊誌だって航空便で発売翌日にはニューヨークの日本書店に並ぶ。
昔、ニューヨークで創業60年という日本食料品店に週刊誌が並べてあった。
顔見知りのオーナーに(この人はアメリカ生まれの2世)、
「今週号の新刊来てないの?」
と聞くと、
「まだ先週のが随分あるんだ。あれが売れ終ったら出すよ。」
と言われて二の句が継げなかった。
以前は日本に帰ると米の飯が旨かった、憶えがある。
今では、アメリカの米の方が旨い、と言えるかも知れない。
6,7年前日本の「コシヒカリ」を売り出したが、2,3年で見なくなった。
まあ、最高級の日本の米より上、とは思わないが、アベレージは行くのではないか。
価格まで考慮に入れれば圧倒的にアメリカの勝ち、だろう。
なんたってこちらは「米国」なんだから。
「さぶー。」と言われそうだが。
ヤンキースは、もたもたしながらもボストンの不調にも助けられて首位に立った。
だが、松井のスランプは未だ前途遼遠に見える。
ヒットは出るが大体1日に1本だ。
平均4打席あるからこれでは.250にしかならない。
実際松井の打率は昨日までで.258、ヤンキースのレギュラーの中では最低である。
日本のマスコミは松井秀喜には甘いから、「例年4月は悪い。」とか「もうどん底は終った。」などと希望的観測ばかりだが、今年はそう簡単には行かないかも知れない。
理由は、と言えば松井はもう4年目だ、ということだ。
既にヤンキースにしっかり根を下ろし、中堅としてそれだけの評価もされ、高給も取っている。
言うなれば野球選手としては何の過不足も無い状態、と言える。
普通であれば、後顧の憂いなく野球に打ち込める、筈だ。
そんな文句のつけようのない状態でのスランプはちょっと理解し難い。
私は、ひょっとすると「目標を見失った状態」に、松井はいるのではないかと思う。
松井は口を開けば「ワールドシリーズに勝つこと」を大目標に掲げている。
それはそれで悪くはないが、それは彼一人ではどうにもならないターゲットである。
普通スポーツ選手は、例えそれがチームスポーツであっても、自分個人の目標を持つものだ。
野球はその個人目標を簡単に見つけ易い。
3割、30本、100打点、何れもバッターとしての大きな目標になり得る。
だが、松井は既に日本でそれよりもはるかに高い地点に自分を運んでしまっている。
大リーグでだってその全てをクリアーしている。
では何が松井に不足か、と言えばそれはタイトルだろう。
しかし日本と異なり、大リーグで何かのタイトルを手にするのは至難の技に近い。
セントラル.リーグは高々6球団の小さな輪である。
アメリカン.リーグには14球団が所属している、倍以上だ。
そしてそこでのライバルの数は6:14の比ではない。
彼は恐らく幾度となく「あれは日本だったら入っていたな。」と思われる外野フライを難なくキャッチされただろうし、「日本の内野手の肩だったら当然セーフ。」の凡打を打たされているだろう。
「じゃあ松井はどうすれば良いんだ。」と聞かれれば、「分からない」と答えるしかない。
だが、多くのメジャーリーガーは自分の稼ぐ年俸を大きなモチベーションにしているし、それ以上に家族を生きがいとしている。
だが、松井は金銭には恬淡としているようだし、独身である。
そこら辺が答えになっている、かもしれないが、どうだろう。
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