還暦スイマー望郷日記

30余年のニューヨーク、今浦島の心境を…

過去の投稿日別表示

[ リスト | 詳細 ]

全1ページ

[1]

デパートが好きな男がいる。
嫌いな男もいる。
女は、言うまでも無くデパートが大好きである。
私は、
「買う気があるなら好きだが、その気も金も無いのに行く気はしない。」
方である。
昔は有名デパートのすぐ傍に住んでいたから、時間つぶしに冷やかしていたことはあるが。

日本のデパートは、店員がうるさい。
仕事熱心な人を、うるさがるのはいけないと思うが、やはりうるさい。
「シャツをお探しでございますか?」
「そのお上着に合う、ネクタイをお求めですか?」
ぶらぶら見るだけ、の人は認めない気迫である。
「お客さまのご年配でしたら…。」
この台詞も嫌いだ。

日本では、年相応の服飾プランがあるようだ。
「50代からのズボン」
「シルバーのお洒落な外出着」
見ると実に地味だ。
着ただけで、さらに年を取りそうだ。
なんでそんなに渋い格好をしなきゃならないんだ、え。
苦情の一つも言いたくなる。

アメリカでは、年齢による服装の違いは、基本的には無い。
「Kid's Corner(子供用)」
というセクションはあるが。
それ以外、何を買うのも、何を着るのも自由。
年配の男性が、ジーンズにTシャツ、素足にスリップオン、で闊歩している。
ショートパンツにランニング、スニーカー姿もよく見かける。

ニューヨークの郊外には、多くの年配者の為のビレッジがある。
広大な敷地に、2,3世帯住宅が立ち並ぶ。
プール、遊技場、病院、レストランなどの施設。
大体65歳以上のカップルが住んでいる。
勿論、配偶者に先立たれた人もいる。

ここへ行くと、その服装に驚かされる。
原色の赤、黄、青、緑。
まさに百花繚乱。
これでも西海岸に比べれば、地味なのだそうだ。

こういうビレッジでは、色々趣向を凝らした催しが企画されている。
往年の歌手たちのショー、マジック、ダンスパーティ。
皆、着飾って出て来る。
丁度、日本のキャバレーの女性の服装、と言ったら怒られるだろうか。
笑い、拍手、喚声。
音楽は1950年、60年代のものが多い。
ビートルズは、まだ若い。

ビング.クロスビー、ペリー.コモ、パティ.ペイジ、ペギー.リー。
SP盤レコードの世界。
それに合わせて、ダンスを踊る。
紅いドレス、黄色いワンピース、青いパンツスーツ。
全てが晴れの日の為にある。
周りが何を思おうが、「I don’t care(関係ない)」。
残った人生を、精一杯楽しむだけ。

郊外のパブリックのゴルフ場は、週末以外は、「シニア割引」がある。
65歳以上は、半額でプレー出来る。
精々15,6ドル程度で18ホール。
リタイアしてから始めた人も多い。
夫婦揃って初心者が、経験者と組んで和気藹々。
こういうグループが前にいると大迷惑だが、微笑ましいことは確かだ。

「This young lady(この御嬢さん)」
結構な年配の女性を、そう呼んだ人がいた。
初めは、冗談で言っているのかと、私は思った。
だが、そう言った男性は、笑みすら浮かべていない。
「アメリカでは、女性は全てヤングレディなんですよ。」
あとで、そう教えられた。

「She is 70years old young(彼女は70歳です)」
注意して聞いていると、TVでも司会者は、そう言って出場者を紹介する。
ごく自然に、周囲も若者のように扱う。
彼女もそれに対して、妙に謙遜せず素直に乗って行く。
肉体はともかく、精神は何時までも若々しくありたい。
そういう姿勢が、こちらにも伝わって来る。

日本の高齢者も、最近は随分活発になって来たようだ。
亭主の尻を叩いて、トレッキングに、名所巡りに余念が無いらしい。
帰国の折に行った鎌倉のお寺も、中高齢の女性で溢れかえっていた。
「おばさんパワー」
と言うそうだ。
只でさえ平均寿命が長い女性が若々しく活動し、男は黙って従って行く。
「夫唱婦随」
今は昔。
まあ、老々介護の世の中、先に失礼する方が勝ち、と言う考え方もある。

アメリカのスポーツ界には、
「One year wonder (1年の奇蹟)」
と言う言葉がある。
要するに、突然現われて活躍し、翌年は消えてしまう選手のこと。
山口瞳の本の中に、
「一時力(いっときぢから)」
という洒落た言葉を見つけた。

あるシーズン、無名の選手が彗星のごとく出現し、スターになる。
ところが、翌年にはさっぱり。
だんだん出番も少なくなり、いつか姿を消してしまう。
でもファンは忘れない。
記憶には残る。

昔、オリックスになる前の阪急に、矢野清という選手がいた。
10年間の下積み生活から、突然打ちまくりだした。
4番も打ったと思うが、活躍はそれ程長くない。
「一時力」と呼ぶのは気の毒かも知れないが、まあそれに近い。

1976年、デトロイト.タイガースに新人投手が現われた。
マーク.フィドリッチ、22歳。
ドラフト10巡目で選ばれているから、有望とは言い難い。
投手難のタイガースが、試しに昇格させてみた、というところ。
顔が、「セサミストリート」のビッグバードに似ている。
で、渾名は「バード」。

この「バード」が、あれよあれよという間に、勝ち進む。
最初の試合が、5月半ば。
それが、シーズン終了時には19勝投手。
防御率2.34。
新人王を獲得。
勝ちっぷりもさることながら、マウンドでの仕種も人気を呼ぶ。
マウンドに屈み込んで、土を手でならす。
投げる前、ボールに小さく囁きかける。
打たれたボールは、主審に交換を要求する。

彼が投げる日、タイガースタジアムはいつも満員御礼。
他チームが、彼をそのチームの地元ゲームで投げるよう、頼み込むケースまであった。
「空白の1日」無しの江川、と言ったら分かって貰えるだろうか。
「駐車違反の身代わり」無しの松坂、でもいい。
その彼の年俸は、新人のそれ、16,500ドルぽっきり。

翌年のキャンプ、彼は膝を怪我する。
それでも、6勝4敗、防御率2.89。
しかし、そのシーズン中、彼は肘も痛めてしまう。
次の年は、2勝で終る。

1980年8月12日。
タイガースタジアムは久々に満員。
マーク.「バード」.フィドリッチの恐らく最後の試合。
が、彼はカムバックに失敗する。

それから先は、幾年かの無駄なもがきとあきらめ。
彼は29歳で引退した。
だが、彼の一瞬の輝きは決して忘れられることはない。
今でも彼は、「伝説」の投手である。

全1ページ

[1]


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事